アットウィキロゴ

姫千歌 ふたもの

神無月の巫女 エロ総合投下もの

姫千歌 ふたなりもの

 

注:生えます

姫宮邸のように豪奢ではないが、二人で住むには十分な広さのマンションで二人が
暮らし始めてしばらく経った日曜日。
「え…。や、やぁっ……!」
 とろとろと朝寝坊を楽しんだ後、先にシャワーを浴びに行った姫子の声が聞こえて、
千歌音は慌てて風呂場に向かった。次いでガタガタと何かが倒れる音がする。
「姫子?どうしたの!?」
「千歌音ちゃん、来ないで…っ」
 言う姫子の声は震えて涙混じりだ。ドアの向こうからは押し殺した嗚咽が漏れ聞こえ
てくる。
 しばし迷って、千歌音が無理やりドアを開けて風呂場に踏み込むと、床にへたり込んだ
姫子が悲痛な顔を上げて千歌音を見た。
「あっ、やあぁ…っ!」
「姫子!?」
 上にパジャマを羽織っただけの半裸の姫子は、千歌音が近づくと体を縮めて背を向け、
涙を流した。
 先ほどの物音はこれだろう。小さな脱衣棚が倒れて姫子の服と一緒に転がっている。
「姫子?いったいどうしたというの?」
「こないで、千歌音ちゃん…っ。…やだ…っ、やだよう…!見ないで…っ」
 はらはらと涙を流しながらも、その場から立つ様子も逃げる様子も無い。見た感じ
どこも怪我をしている風ではなかったが、もしかしたら転んで足首でも捻ったのかも
知れない。
「大丈夫?姫子…?…ああ、そんなところに座っていては腰が冷えてしまう」
 近づいて背をなでてやりながら、極力優しい声で千歌音は言った。けれども、姫子は
ただ涙を流すばかりでいっそう訳が分からなかった。
「歩ける?とりあえず寝室に戻りましょう?」
 それにも姫子はただ首を振って涙を散らす。
 いったい、これはどうしたことだろう。
 焦りを押し隠して、微笑みながら姫子の顔を覗き込んで――
「え…っ?」
 千歌音は目を疑った。視界に飛び込んだそれを、まじまじと凝視してしまう。
 姫子の脚の間にある、それは――
 千歌音が体を強張らせると、肩に掛けた手からそれが伝わって姫子は顔を上げた。
 知られてしまった、と眉を寄せ表情を歪めていく姫子を千歌音はただ呆然と見つめて
硬直する。
「ふぇ…、っく、……っ!ぁ、あぁ…っ」
 まるでこの世の終わりのような顔をして、とうとう姫子は声を上げて泣きはじめた。

「姫子……これは…」
 ようやく見間違いで無いと認識して、千歌音の喉から出た声は少し上擦っていた。
そんな声を出してしまったことに心中で舌打ちする。
「やだ、見ないで…見ないでっ、千歌音ちゃん…!!お願いだから…」
 顔を覆って姫子が懇願する。悲痛な声に千歌音の胸がズキズキと痛んだ。
「なんで……いつから?」
「そんなの、こっちが知りたいよ……!起きたときから、なんだか少し変な感じで…っく、
うぅ…昨日まで普通だったのに…っ、どうして……!」
「姫子…」
 千歌音は姫子を抱きしめて天を仰いだ。細い体は小刻みに震えていて、頼りない。
何よりも姫子が嘆き悲しんでいるのが千歌音には辛かった。千歌音の反応が姫子を
悲しませている事も。
 常識の範囲外のことに、千歌音も動揺していた。しかし、今は千歌音がしっかりしな
ければならない。姫子を支えるのは千歌音しか居ないのだから。
「千歌音ちゃん…私、どうしたら…っ!…どうしてこうなっちゃったのかな…ひぅ…っ、
…もうやだ…生きていけないよう……」
「姫子…そんなこと言わないで?それより、腰が冷えてしまう。体に悪いわ。服は…
着なくてもいいから、寝室に戻りましょう」
「っく、ふぇ…っ。……そんなの、どうでもいいよ…もう……」
 掠れた声には自棄的な響きが混じっていた。
「駄目、良くないわ。ね?戻りましょう?」
 優しく言うと、姫子は逆らう気力も無いように壁をよすがに立ち上がって、千歌音に
ついて歩き出した。

 寝室に戻ると、千歌音はまず温かいココアを作って姫子の手にカップを握らせた。砂糖は
少し多めの一杯半。甘いもので少しでも落ち着いてくれたらいいと思った。
 姫子が悄然と腰掛けたベッドの隣に千歌音も座る。姫子は始終俯いていて千歌音に顔を
見せないから表情は分からないけれど。
 はらはらと流れる涙が、痛ましかった。
「…もう、やだ……どうしてなの?千歌音ちゃん…私、何か悪いことしたのかな…。私が
悪い人間だから、神様がこんな罰…」
「姫子…落ち着いて…」
「落ち着けないよぅ……!こんなのって無いよ…、どうしてっ」
 しゃくりあげる姫子の涙が落ちて、カップの水面に波が立った。
 千歌音は姫子の肩を抱き寄せようと腕を伸ばす。が、姫子は体を強張らせ、体の向きを
変えてその手を逃れた。
「やだ…っ、触らないで!」
「姫子……」
 姫子に拒絶されて、千歌音の心臓に抉られたような衝撃が走った。
 途端に心が臆病になる。嫌われるのが怖くて、手を引っ込めてしまいそうになる。
 けれど、
「千歌音ちゃんが汚れちゃう…!もう、やだ…!こんな…もう、わたし、生きていけないよ……」
「姫子…!」
 姫子の抵抗よりも強く。千歌音は姫子の体を、胸に抱きしめた。
「や、あ…、千歌音ちゃん…!」
 姫子の突っ張る腕の力なんてたかが知れている。
「姫子…そんな悲しいこと言わないで。私がついているから…きっと何とかしてあげるから」
「……っく、でも、もしこのままずっと戻らなかったら…」
 姫子が顔を上げて、ようやく千歌音を見る。千歌音はその両頬を流れる涙をそっと唇で
拭った。
「こんな体じゃ…。千歌音ちゃん、嫌でしょ?嫌いになるよね…私だって、やだよ…こんな、
こんなのがいきなり…っ」
「嫌じゃないわ」
 千歌音は姫子の脚の間に手を伸ばした。
「あっ、駄目…汚いよ、千歌音ちゃんっ」
「汚くなんてないわ、姫子…ね、嫌かもしれないけどちゃんと見せてみて?」
「やだ…っ!千歌音ちゃんに、だけは…見られたくないよぅ…」
「ちゃんと、状態を知っておかないと。…それは、私だってあまりこういうの詳しくは無い
けれど…書庫には医学書なんかもあるし。今は嫌かもしれないけれど、ちゃんと検査して
原因を調べて…」
 姫子はカップを傍らのサイドテーブルにおいて、諦めたように千歌音に向き直った。
「でも、それでも戻らなかったら…っ」
「そのときは、私が出来る限りのことをしてあげる。ちゃんと調べて、下着を仕立てて、服も
用意して…定期健診も、姫子が嫌な思いをしなくてすむように。お医者さんだって信頼でき
る人を用意するわ。世の中には、そういう人だって居るんだし…原因は分からないけれど、
別に悪い事じゃないのよ、姫子」
 それでも姫子は泣き止まない。
 背中を撫でながら、どうか泣き止んで欲しいと千歌音は思った。姫子の涙は綺麗だけれ
ど、姫子がこんなにも悲しんで流す涙は、直視できないほどに千歌音の胸に痛い。
 嗚咽の合間に姫子が言葉を搾り出す。小さなそれに千歌音は耳をそばだてた。
「だって、千歌音ちゃん…こんな身体いやでしょ…?気持ち悪いし、嫌い…だよね。だって、
こんな気味が悪いの…。もう、千歌音ちゃんと一緒に居られないよ……っ。
千歌音ちゃんに…こんな体じゃ、もう千歌音ちゃんに触れない…っ!触ってもらえない…!」
 ぎゅ、と目を瞑った拍子に涙が両頬を流れる。
「……っ」
 いろんな感情が渦巻いて、千歌音は堪らなくなって姫子を抱きしめた。
 胸が高鳴っている。姫子に申し訳ないくらいに。
「そんな事ないわ、姫子…。こんな事くらいで、私は姫子を嫌いになったりなんてしない。
それだけは絶対に断言できる。それに、姫子がどんなに嫌がっても、こんな理由じゃ私は
姫子を放したりしない」


「千歌音ちゃん…」
「ね…じゃあ、姫子はもし私に…その、こういうものが生えてきてしまったら、私を嫌いに
なる?」
「そんな、そんな事ない!千歌音ちゃんを嫌いになるなんてありえないよ…!」
「ありがとう。……ね?同じことよ、姫子」
「あ……。…っ千歌音ちゃん…!千歌音ちゃん、千歌音ちゃん…っ!」
 感極まって千歌音の胸にすがり泣く姫子を、千歌音は涙が止まるまでの間ただ優しく
抱きとめた。


「あぁ…なるほど」
 姫子の脚の間に生えたそれは、姫子が言うほどに醜悪ではない。千歌音の目にむしろ
可愛らしくさえ見えるのは、それが姫子のものだからだろうか。
「あぅ…、は、ぁ…っ」
 嫌悪感は無い。千歌音が柔らかいそれに白い指を添えると、姫子が熱い息を漏らして、
そんな場合ではないのに千歌音の背筋をぞくりとさせた。
 つぅ、と中ほどから付け根までをなぞる。すらりとした薄桃色のそれは確かに肌から直接
出ているようで、継ぎ目などは当然ながら見つからなかった。
 神経も通っているらしく、
「取れないものかしら…」
「あっ、痛っ!千歌音ちゃん…いたいよぅ…っ」
 軽く引っ張ってみたら姫子に泣かれてしまった。相当敏感な器官らしい。
 男性の物のように尿道は兼ねていないようだ。持ち上げて下を指で探ると、ちゃんとある
のが確認できた。そして、その下の蜜壺が熱く潤んできているのも。
「……」
「…っは、千歌音ちゃん…何か、分かった…?」
「あ、えっ?ええ、そうね…トイレはこれまで通りで良いみたい」
「そ、そう…。どっちにしても男子トイレには入れないと思うけど…」
「そうね。…これ、男性のそれとは、少し違うような気がする」
「えっ?」
「だって、綺麗な色をしているし、小さいし…。……そ、その、姫子の…よく感じるところが
あるでしょう?ぱっと見、そこが大きくなっただけのような、そんな感じで……他は何も
変わりないもの」
「千歌音ちゃん…男の人の、見たことあるの?」
 意外そうな姫子の声にハッと顔を上げると、姫子は少し唇を尖らせて頬を染めていた。
「そんなわけ…!書籍で、少し知識として知っているだけよ」
 千歌音も自分の頬が熱くなっているのを感じた。慌てて俯いて、千歌音は手元の姫子の
それに視線を戻した。
「え…」
 なんだか、先ほどと少し…。
 小さいと思っていたけれど、そうでもないかもしれない。もっとも標準的なサイズを千歌音は
知らないし、測るのも憚られるけれど。
 まじまじと見つめる。先端の穴のように見える部分は、何のためについているのだろう。
そう思って、先のほうを手で包みこんで顔を近づけると、姫子の身体がびくりと震えた。
「ごめんなさい、痛かった?」
「ん、ううん…痛くない…痛くない…けどっ」
 唇を噛み締めて、姫子は肩に頬を押し付けた。
「?」
 首を傾げた拍子に手が滑って、先端の穴をそっと指先が撫でた。
「あっ、ああ…っ!だっ、駄目、千歌音ちゃん!」
 後ろに手をついて身体を支えていた姫子が起き上がって、千歌音をそれから引き剥がした。
「ひ、姫子?ごめんなさい、やっぱり痛かった?」
 撫でてあげようとそれに伸ばしかけた手を、姫子が掴んで止めた。
「駄目…っ、なんか、駄目なの…っ!分からないけど、変なの…っ。これ以上触っちゃ駄目…」


「えっ?でも、まだ…」
「だめ…お願い、千歌音ちゃん――」
 俯いた姫子がびく、と身体を震わせる。千歌音も姫子を追って視線を下げて、
「えっ?」
 目を見開いた。
 すぐに姫子が両手でそれを押さえて、隠してしまったけれど。
 それでも、一瞬見えたそれは、確かに先ほどまでとは様子が違っていて。
「姫子…手をどけて頂戴」
「や、やぁ…っ、やだよぅ、千歌音ちゃん、見ないで…!」
「駄目…私、姫子のことをちゃんと知っていたいもの」
 姫子の手にそっと手を重ねて、どかしていく。抵抗はあったけれど、隠しきれないと半ば
諦めているのか姫子の手は弱々しかった。
「……あ」
 それは、角度と大きさを変えてそこに存在していた。風呂場で見たときより、先ほど見た
時より、更に触ったときよりも、大きく、高く。
 思えば、手で包み込んだとき妙に抵抗を感じはしなかったか。手の中で硬度を増しては
いなかったか。
「ひっく、……んっく、ん、ぅー……っ」
「あ…そう。そう、よね……」
 失念していた。姫子以外の人と交わる事なんて考えたことも無かったから、こんな基本
的なことを千歌音は失念してしまっていた。
「男性のこれは、交わる…為のものでもあるのだったわね…」
「ふぇ、…っん」
「ごめんなさい。私が触りすぎたのね?」
「だい、じょうぶ…、痛かったりする訳じゃないから」
「でも、困ったわね。こんなに敏感で刺激に弱いのだったら、下着が着けられない…。
男性用の下着なら大丈夫なのかしら?」
 千歌音が眉を寄せると、姫子はまだ涙をこぼしながら言った。
「ただ触っただけじゃこんなにならないよ…!自分で触っても、ほら…んっ、大したこと
無いもん…」
「えっ、じゃあ…?」
 とりあえず下着は普通に着けられると言うことだろうか。千歌音が胸を撫で下ろすと、
「千歌音ちゃんだからだよ…っ。千歌音ちゃんがあんなに見るから…っ、息を吹きかけ
たり、撫でたり、あんなに触るから…!……ひっく、千歌音ちゃんの意地悪…っ!
こんなこと……言わせないでよぅ……」
 姫子の言葉が千歌音の胸を打った。
「姫子…可愛いわ」
「そんなはず、無いじゃない…。こんなやらしいの、おっきくして…私が可愛いはず無いもん」
 両手で顔を覆っていやいやと首を振る姫子を、千歌音は本心から可愛いと思った。
 何を言っても姫子を辱めるだけで、申し訳ないのだけれど。
「ごめんなさい、姫子…。本当に可愛い」
「千歌音ちゃん…っ!――あっ」
 堪え切れなくて姫子を抱き寄せた。
 膝に、姫子のそれが当たっているのを感じて頬が熱くなった。
「姫子…これ、どうやったら元に戻るのかしら?」
「わかんない…私、どうしたらいいんだろう…。気が、変になりそう…っ」
「大丈夫?」
 身体を離して姫子の顔を覗き込むと、予想に反して姫子は泣いてはいなかった。
泣きそうではあったし、眉を寄せてすごく辛そうな顔をしていたけれど。
「姫子…やっぱり、痛むの?急に大きくなったから皮膚が傷んでいるのかも…」
 だとしたら大変なことだ。それこそ下着どころの話ではなくなる。
 けれど、この状態の姫子を医者に見せるのは躊躇われた。姫子はこれを人に見られる
事を望まないだろうし、千歌音も姫子のデリケートな処を人に見せて辱めるのは、姫子が
好奇の目で見られるのは、どうしようもなく嫌だった。
「うん……ちょ、と…だけ」
「……っ。やはり、医者を――」
 こだわっている場合ではない。姫子は嫌がるだろうが、それよりも姫子の身体のほうが
優先だから。千歌音が医者を呼びに立とうとすると、姫子の手がそれを押しとどめた。
「まって、千歌音ちゃん。大丈夫…そんなのじゃ、ないから。張り詰めてて、疼くだけ…だから」


「本当?」
 触るといけないかもしれない。千歌音は顔を近づけて、皮膚の様子を丹念に確認
して回った。そしてホッと安堵の息をつく。
「よかった…どこも裂けたり傷ついたりはしてないみたい」
「う…ん、あんまり見ないで、千歌音ちゃん…ッ、あ、くぅ…っ、私、余計に…っ」
 苦しげに目を閉じて唇を噛み締める姫子は、大丈夫という割に先ほどよりもずっと
辛そうで、見ていられない。
「大丈夫?姫子…その、男性は、こういうとき…」
 千歌音が口篭ると姫子が答えた。
「中身を出しちゃうんだと思う…けど…」
「でも、これは血液が集中してこうなっているのでしょう?」
「うん、確か…。でも、男の人じゃないから…その、楽になれないかも。やり方も知ら
ないし、触るの怖いし…」
「……」
「……」
 しばし沈黙する。二人ともそれぞれに考えてみるが解決策は思い浮かばなかった。
そうこうしている間にも可哀想な姫子は苦しげな息を吐き、浮き出た汗を拭っている。
頬は赤く染まっていて、その苦悶する表情は艶めかしい。

 それの昂ぶりはいっこうに収まる気配を見せなかった。もう少し時間を置けばあるいは
鎮まるのかもしれないが、それは達しかけた姫子を寸止めで放置するようなもので、
あまりに可哀想だった。
 ……。
 こくり、と喉を鳴らす。言おうとしていることが、恥ずかしかった。
 けれど姫子の様子を見て覚悟を決める。

「……ね、姫子。私と――」
「…えっ?」
 案の定、姫子には最初目を丸くして拒否されてしまったけれども。

白い裸体。穢れの無い千歌音の身体を前に、姫子のそれは恥ずかしいくらいに昂ぶりを
見せた。快楽を与えられると判った途端、こんなにも現金に反応を見せる自分の身体を、
姫子は心から厭わしいと思った。
「…っく、ぁ、……やっぱり、駄目だよ…千歌音ちゃん」
「どうして?」
 目の前で、白い乳房が豊かに揺れる。膝立ちになった千歌音は、姫子の腕を取って
背中に手を回し、パジャマを脱がそうとしてくれていた。
 なんて刺激的な光景だろう。いつも見ているのにとりわけ今そう感じるのは、判りやすく
反応する、この忌わしいモノのせいだ。
 どうしてだろう。手も、足も、胸も、髪も…昨日までと何も変わらないのに、ただそれだけ
が違う。明らかに姫子の身体の一部とは思えないのに、なんの違和感もなく神経が通じて
脚の間に存在している。
「千歌音ちゃんが汚れちゃう…!やっぱり、私だけでいいよ。怖いけど、一人で出来るよ…っ。
こんなので嫌な思いをするのは、私だけで十分だもん…」
「汚れたりなんか、しないわ」
 千歌音は優しく笑う。
「私は姫子に触れて汚れたりなんて、しない。姫子のなら、嫌でもない。姫子が一人で
苦しむほうが、ずっと嫌だわ」
「千歌音ちゃん…」
「それに、こんなにさせてしまったのは私でしょう?…私だから、こんなにも反応して
くれたんでしょう?」
 千歌音の手が、そっと上から押さえ込んで、撫でる。
「千歌音ちゃ…あ、ああっ…!」
 優しい、ただ子供を慈しむように撫でるその手の感触に、どうにかなってしまいそうだった。
「そう言ってくれて…私は、嬉しかったわ」
 千歌音は俯くと目を細めて微笑んだ。撫でながら姫子のそれを見る千歌音の目には、
嫌悪なんて、嘘なんて、いくら探しても見つけることが出来なかった。
 本当に、そう思ってくれているんだ…。
「千歌音ちゃん…っ」
「今日は泣き虫ね」
 流れた涙を、千歌音の唇が拭っていく。
「ね…だから、姫子」
「うん…っ、ありがとう、千歌音ちゃん」
 千歌音は微笑んで身体を離した。と、しばし目線を彷徨わせて、
「じゃあ…その、私…どうしたらいいのかしら?」
「えっ?どうしたら、って…」 
 姫子が聞き返すと、見る間に千歌音の頬が赤くなる。
「正直に言うわね。私、どうしたら楽になれるのか…分からないのよ。今から勉強したんじゃ
間に合わないし……」

 真面目に言う千歌音がなんだかおかしかった。
 確かに、女の子同士だったら身体のつくりが同じだから、なんとなくどうしたらいいのか
分かる。自分が気持ちいいことを相手にもしてあげて、少しずつ様子を見ればいいから。
「千歌音ちゃんが触っただけで…もう、こんな…なんだよ」
「え、ええ…」
「きっと、千歌音ちゃんがしてくれたら、何だって気持ちいいよ…だから、お願い…っ」
 置かれたままの千歌音の手が触れている箇所が、じんじんと熱く痺れている。
 もう、我慢できなかった。姫子の懇願に千歌音は、
「優しくするわ、姫子……」
 恭しくそれに口付けた。
「あっ!や、やあ…ッ!」
 腰が浮いて千歌音の顔に押し付けてしまいそうになるのを必死に抑える。


「だ、だめだよ千歌音ちゃん…っ!」
「え?だって、いつも口でしているでしょう?」
「い、言わないでよぅ…。て…手で良いから…っ、お願い」
 千歌音の唇が触れる、なんて姫子には恥ずかしくて耐えられそうに無かった。
 もしかしたら、嫌な味とか匂いとかするかもしれない。それに、まだ自分の身体の一部
とは思えない男の形をしたそれを、千歌音が口に含むのはなんだか悔しかった。
 千歌音はおとなしく頷いて、姫子の反応を見ながら少しずつ張り詰めたそれに指を
這わせていく。すると、すぐに姫子はいつものように何も考えられなくなってしまった。
 ピアノを難なく弾きこなす千歌音の指は、器用で巧みだ。
 姫子とは違って両手のそれぞれの指を意思どおりに動かすことが出来るから、いつも
姫子は我を忘れるくらい千歌音に翻弄されて昇り詰めさせられてしまう。

「やだ、もっと…」
 もっと千歌音の指を感じていたいのに――
「いいのね…?姫子…」
 言葉に応じて張り切る千歌音の手に、姫子は今日もあっけなく気をやってしまった。


「あく…ふ、ぅう」
 意識が白んだのはほんの少しの時間だけらしい。姫子が目を開くと、
「少しは落ち着いた?姫子…」
 千歌音がほっとしたように微笑んだ。少し困惑気味に眉尻を下げている。
「千歌音ちゃん…」
「驚いた…精があるのね」
「えっ!?」
 姫子が身体を起こして見ると、姫子のそれが白く千歌音の手を汚していた。千歌音の
手の中に放ってしまったのだ。
「やだ…っ、うそ、どうして…っ?ごめんなさい、千歌音ちゃん。ごめんなさい!」
 慌ててティッシュを取ると、千歌音の手を拭う。
「良いのよ、姫子。はじめて見たし…少し驚いただけだから」
「千歌音ちゃんの手を…私…っ」
「良いって言ってるでしょう?可愛かったわ、姫子」
「え、えぇっ?」
「私の手の中で放って…。辛そうだけど本当に気持ちよさそうな顔をしていたもの」
 千歌音は言いながら姫子のそれを撫でて、手についたものを口に含んだ。
「やっ、やだ、駄目だよ千歌音ちゃん!汚いよ…!」
「ん…少し苦いかも…あまり美味しいとは思えないわね」
「う、うん……」
 なんだか申し訳ない気分になって首をすくめた姫子に、千歌音は微笑んだ。
「でも、嫌いじゃない。ちっともイヤじゃないわ、姫子」
「千歌音ちゃん…ッ!」
 抱きついて重ねた唇からは、確かにそのとおり少し苦い味がした。

「…絞り出さないと駄目かしら…」
 ややあって唇を離すと、千歌音はまた姫子のそれに手を這わせて頬を赤らめた。
「えっ?あ…や、やだっ…なにこれ、どうしてぇ…っ?」
 また涙が出そうになる。姫子のそれは先ほどまでよりずっと楽にはなっていたけれど、
依然として高く、硬く、その存在を脚の間で主張しているのだった。
「どうして…もう、出ちゃったのに…」
 絶望的な気分が姫子を襲う。
 千歌音は先ほど、『それ』が大きくなっていること以外は何も変わらない身体だと言った。
 でもそれは間違っているのではないか。女の身体の姫子には、そもそも溜めておける
はずも、精を作り出せるはずもないのだから。
 こんな身体、男でも、女でも、両性具有でもない。
 もしこのままこれが収まらなくて、それどころか逆にどんどん大きくなっていって
しまったらどうすればいいのだろう。とても普通に生活なんて出来ないし、千歌音も
きっと呆れてしまう。


「私…なんて生き物になっちゃったの…?こんな…もうやだ…っ」
「泣かないで、姫子…」
 千歌音が姫子を胸に抱いて、あやすように頭を撫でてくれる。
 顔を埋めた胸の感触に…ただ優しくて柔らかい胸に、姫子のそれは反応を示して震える
のだ。姫子の意思に反して。千歌音を穢せと。
 どうしてこんな浅ましい体になってしまったのだろう。
「もう千歌音ちゃんと普通にキスもできない…」
「私はしたいわ」
「千歌音ちゃんと一緒に寝られないよ…っ」
「私は、姫子と一緒に寝たいわ。これまで通り。…いけないの?」
「だって、私…千歌音ちゃんのそばに居るだけで、抱きしめてもらっただけで…こんな風に
なるんだよ」
 千歌音の手を取って、はしたなく千歌音を求めるそれに導いた。千歌音の手が触れた
瞬間、全身が震える。自分で触っても、大したことないのに。
「いっつもだって、千歌音ちゃんにドキドキしてるけど…」
 こんなものがついていては、あの穏やかな千歌音との触れ合いや時間は、もう望むべくも
無いことだった。
 昨日まで当たり前だった千歌音とのささやかな遣り取りさえ今の姫子は穢してしまう…
そう考えただけで、もう生きている価値なんてない生き物のような気がした。

「多分、まだきちんと出ていないからだと思うの。だから…一度姫子の、…が落ち着くまで
出せば、きっと大丈夫」
 言いながら、千歌音の両手はそれを優しく包み込んだ。
「あ…はぁ…っ」
「ね…姫子、私は姫子で穢れることは、絶対にない。だから…もし、このまま元に戻らなく
ても、私は姫子と一緒にいたい。抱きしめあいたい」
 千歌音の紅い唇が姫子のそれに軽く触れる。指と唇に刺激されて、先ほどまでの昂ぶり
が蘇ってくる。触れられているところが熱く、ズキズキと疼いた。
「千歌音ちゃん…だめ…っ」
 千歌音の肩に手を置いて引き剥がそうとするけれど、千歌音は従ってはくれなかった。
手に力が入らない。
「姫子は急なことで混乱しているのかもしれないけど…こんな事くらいで、私たちの関係は
何も変わったりなんてしないでしょう?」
「ん、っく、あぁ…っ!でも…でも…っ、こんな身体じゃ…」
「私は、好きよ。他の人のだったらイヤだけれど…姫子の、だもの。こんなの、何の問題も
ないわ。私は姫子と抱きしめあって、愛し合いたい」
「千歌音…ちゃ…んっ!」
 姫子の両目から涙がこぼれた。
 身体よりも、心が震える。
「ほんのちょっと、今までと勝手が違うだけだわ。私たちがすることは変わらない。違う?」
 言いながら、千歌音は姫子の女の子の部分に指を這わせた。
「あぅ…っ、や、は、あっ、ああ…んっ!」
 つぷ…と指が沈んでいく。姫子の中が千歌音で満たされていく。
「は、ふ…ぅ」
「これまで通り私は姫子を抱きたいし…姫子に愛して欲しい」
 千歌音の指が中を優しくかき回すのに合わせて、もう片方の手と唇は姫子のそれを愛撫する。
 なかとそれを同時に触れられると、これまで感じたことのないような快感が姫子を襲った。
「あっ、なか…駄目…っ千歌音ちゃ…私、気が狂っちゃう…ぅ!」
「狂ってしまいなさい、姫子。そしたら嫌なんて感じる余裕もないでしょう?」
 それの扱い方は知らなくとも、姫子の感じるやり方を千歌音は心得ている。中に潜り
こんだ千歌音の細い指は的確に姫子の弱いところをついて、姫子を昇り詰めさせていく。
 敏感だった突起のかわりに、大きくなったそれの先端を千歌音の唇が吸い上げた。
腰の奥がざわつくような感覚があって身体が浮いてしまいそうになる。
 我慢出来ない。姫子はとっさに肩を掴んで千歌音の顔をそれから引き離した。
「あ…ふぁ、や…――ああっ」
 びくん、と腰が跳ねて、姫子はまた千歌音の手の中に達した。


「さっきよりも沢山出たわ。頑張ったわね、姫子…」
 千歌音は微笑んで、手とそれについた白濁を拭った。
 飛び散らないように抑えてくれていたようで、飛沫のほとんどは千歌音の手と腕に
留まっていたけれど、それでも少し千歌音の腹や脚を汚してしまっていた。
「んっ、うぅ、く…ふ、…ひっく」
 嬉しいのと、申し訳ないのとで涙が止まらない。千歌音の綺麗な肌に汚れが残ら
ないように、ウェットティッシュを探して、それで拭った。
 姫子の、また元気を取り戻す気配を見せるそれを慈しむように撫でて、千歌音は
言葉を続けた。
「悪いことじゃないわ、姫子。だから自分を嫌いにならないで…私は、姫子を愛しているから。
姫子のこと、全部知りたいの。いつだって、姫子の全部を感じていたいの」
「千歌音…ちゃん…っ、ホントに…?こんな身体で、良いの…?」
「私が一番好きなのは、姫子の心だもの。それは、前の姫子の身体も綺麗で可愛くて、
好きだったけれど。でも今の姫子も私は…。本当は、少し嬉しいくらい」
「えっ!?」
「姫子は…これ、人に見られたくないんでしょう?温泉なんかにも行けなくなってしまう
けれど…そしたら、私が姫子を全部…ずっと独り占めしていられるのだもの。我儘ね、私は」
「こんなの無くったって、千歌音ちゃん以外のひとに裸を見られるのなんて、嫌だよ…。
千歌音ちゃんのを誰にも見せたくないのと同じくらい、嫌だよ…っ」
「良かった。じゃあ、何も問題ないわね?何も、変わらないわ、姫子」
 姫子は千歌音に抱きついて、首筋に顔を埋めて泣いた。
「千歌音ちゃん…っ!」
 千歌音の手は、いきなり抱きつかれて驚いたようだったけれど、それでも優しく姫子の
背中を撫でた。
「姫子…」
 千歌音は優しく微笑んで、唇を寄せてくれる。柔らかい千歌音に、姫子も唇を重ねて
確かめあう。しばらく見詰め合った後、千歌音は体重を少し後ろに掛けて姫子を引き寄せた。
「千歌音ちゃん」
「ね…姫子、今の姫子を…全部、私に刻んで」
 千歌音に促されるままに、姫子は千歌音の柔らかい身体をベッドに押し沈める。
「まくら…いる?」
 震える呼吸を抑えてそんなことをたずねると、千歌音がおかしそうに笑った。

 姫子の手が千歌音の身体を撫でるのに合わせて、千歌音の息が少しずつ荒くなっていく。
 いつも凛々しくて姫子を導いてくれる千歌音が、こういう時ばかりは可愛くなって姫子に
身体を任せる。それは今の姫子にとってとても嬉しいことだった。
 何度もキスを繰り返しながら、少しずつ千歌音の身体を柔らかくしていく。
 普段の反動だろうか、千歌音は羞恥心も人一倍で。何度夜を重ねても自分がされる側に
なると緊張して身体を硬くするから、いつも時間を掛けて愛していくのだけれど、今日は
とりわけゆっくり優しく刺激を加えていく。
 白くて、滑らかで、しなやかで。昼の光の中で見ても、やはり千歌音の身体は美しかった。
とっくにカーテンを閉めて薄暗い室内だが、それでもやはり夜よりは明るい。


「あ……っ」
 姫子の唇が首筋に降りると千歌音がはじめて声を出して、姫子をいっそう煽った。
音を立てて胸元に吸い付く。
「ん…っ、跡が残ってしまう…」
 そういう千歌音の声は少しも嫌そうではなくて、くすぐったかった。
「千歌音ちゃん、大好き。愛してるよ、千歌音ちゃん……っ」
 軽く唇を重ねて目を開けると、千歌音は微笑んで頷いてくれた。
 愛してる、なんて言葉だけじゃ足りない。
 ありがとう。
 どうしてこんなに稚拙な言葉しか思い浮かばないのだろう。
 落胆なのか、興奮なのか、歓喜なのか。姫子は涙がこみ上げてくるのを感じていた。
「姫子…」
 千歌音が握った手の力をぎゅっと強めて眉をしならせるから、姫子は瞬きで涙を
堪えて、なんとか笑った。
 笑おうとする息さえ震える激情の渦中で、とにかく感謝したい気分だった。
 いきなり姫子をこんな目に合わせた神様にも、千歌音をこの世に送り出してくれた
姫宮のご両親にも。そして、何よりも千歌音自身に。
「ん…っ」
「んん……」
 両手を重ねあわせて、胸を密着させて、深く唇を交わす。千歌音は当たり前のように
唇を開いて姫子の舌に応えてくれた。

「千歌音ちゃん…っ」
 ひどい生き物になった、と思った。
 もう普通には暮らしていけないと、千歌音のそばには居られないと絶望した。
 なのに、千歌音は姫子を全肯定して、受けいれてくれる。
 愛してくれると、嫌いなるなんて馬鹿な事だと言って笑ってくれる。
 今日の千歌音はいつになく饒舌だった。姫子が根負けするまで優しい言葉を重ねて、
悲嘆に暮れる姫子をなだめてくれたのだ。

「ん……。…姫子…」
 口付けの合間に千歌音が姫子に応えてくれる。
「ありがと…千歌音ちゃん。私が生きていられるのは、千歌音ちゃんのおかげだよ…」
「大げさ…ね、姫子」
「ホントだよ。…大好き」
 また唇を塞いで、姫子は絡めていた手をほどいた。柔らかくて大きな胸に手を乗せると、
千歌音の鼓動が肌から伝わってきて、嬉しかった。
「千歌音ちゃんもドキドキしてるね…」
 首筋、鎖骨をなぞりながら、唇を下ろしていく。胸の頂を口に含むと、直接的な刺激に
千歌音の身体が震えた。
「ゃん…っ、あ、姫子…っ」
 唇で柔らかく啄ばんで、刺激を加えていく。同時に胸に当てた手で下から揉み上げると、
千歌音の唇から艶めかしい声が漏れた。
 心細くなったときに枕を掴む千歌音の癖。
 そんな姿も可愛くて、愛しくて、姫子の行為に拍車が掛かる。
 指を滑り込ませた其処は、すでに十分なくらいに熱く濡れていた。
「あっ」
「千歌音ちゃん…」
「言わないで…」
 千歌音が目を逸らす。


「ん…」
 両胸の先を唇と指先とで揉みながら、熱い蜜を指に絡めてそっと動かした。
「は…っ、あ」
 形に添って上下に優しく指を往復させながら、少しずつ探索の範囲を広げていく。
蜜にまみれた花弁、甘い蜜を湧き出させる入り口、震える鋭敏な蕾に指が触れると、
千歌音はか細い声で啼いて身体を大きく跳ねさせた。
 その反応が可愛らしくて、だんだんと高まっていく様子が手に取るように分かるのが
嬉しくて、胸に吸い付きながら、ゆっくりとその部分を指先で転がし始めた。
「あっ、あ…!姫子…っ、姫子」
 胸を反らして身悶える千歌音を安心させるように背中を撫でて、軽いキスを繰り返す。
熱い蜜を押し出しながら蜜壺にゆっくり指を沈めていくと、枕を掴んでいた千歌音の
両手が背中に回って、重いのに姫子を強く引き寄せた。
「大丈夫?千歌音ちゃん…」
「っ、あ…はぁっ、はふ……。…姫子…そんなに、我慢…しなくていいから」
「え?」
「その…私は大丈夫だから……」
 千歌音が恥ずかしそうに口篭る。ちら、と目を下げて、ぎゅっと瞑った。
「千歌音ちゃん…?」
「熱いの……さっきから、当たって…る」
「え…あっ」
 指摘されて、姫子は慌てて腰を上げた。顔が熱くなる。
 確かに硬くなった姫子のそれは、先ほどと同じように熱くなっていて、次第に疼きを
増してきている。
 千歌音に夢中になっていてそれほど意識しないで済んでいたのに、どうしてこんな
思い出させるようなことを言うのだろう。いったん認識してしまうと、それをなんとか
しなければどうにも収まりが付かなくなってしまう。
「…辛いんでしょう?」
 千歌音の中にそれを沈めるのは、とても魅力的なことに思えた。それを想像しただけで、
背中がゾクゾクして脚の間にあるものがいっそう期待に張り詰める。
 でも…。
 一度身体を引いて、千歌音の脚を広げる。緊張を解きほぐしたはずの身体は、しかし
ぎこちなく姫子の手に応えた。敏感な突起に触れて、柔らかい媚肉を揉んで、熱い入り
口に指を押し当てると、千歌音の身体が大きく弾んだ。
「……っ」
 唇を噛んでまで気丈に声を殺したけれど、千歌音が怯えているのは明らかだった。
「無理しないで、千歌音ちゃん」
 千歌音の胸の上に手を当てる。いつもよりずっと激しく姫子の手に伝わってくる心臓の
鼓動は怖いくらいだった。
「優しくするから…出来るだけ痛くないように、ちゃんと準備するから……」
「姫子…でも」
「私、千歌音ちゃんの嫌な事したくないよ…私だって、痛いの怖いもん」
 
「初めてだから仕方ないわ…」
「初めてだから…だよ、千歌音ちゃん。初めてだから優しくしたいの。
私の身体…怖いものだ、って思ってほしくない」
 せっかく受け入れてくれたのに。
 今でも、姫子は自分の身体が好きになれなかった。もともと身体に自身があるわけ
では無かったが、やはり、こんなのは嫌だと思う。出来ることなら元に戻って欲しいと
思っている。
 でも、他の誰でもない千歌音が受け入れて、それでも良いと笑ってくれたから、
ようやく姫子は自分を少し肯定できたのだ。
 自分が変わってしまったことよりも、それによって千歌音との関係が変わってしまう
ことの方が、姫子にはずっと恐ろしい事だったから。


「姫子…」
「だから、優しくするね…」
 千歌音が眉を寄せて嬉しいような困ったような顔をする。唇を重ねながら、姫子は
千歌音の熱い蜜壺に指をそっと沈めた。
「んぅ…っ!んん…」
 入り口を広げるように浅く差し入れた指でゆっくりとかき回しながら、時折上壁をぐいと
押し上げる。それに合わせて敏感な蕾に蜜を絡めて優しく転がしていく。
「んゃっ、あ、ああ…っ!」
 唇を離すと途端に大きい声が漏れて、千歌音がずるいとでも言いたげに姫子を睨んだ。
「声…気にしないで、出してね千歌音ちゃん」
「ん、あっ、やぁ…っ、そんな…」
「千歌音ちゃんの反応が分からないと、私も怖いもん」
 言う間にも姫子の指は千歌音の中をだんだんと解していく。こころなしかいつもより狭い
ように感じられる中は、指で触れてさえゾクゾクするほど気持ちよかった。
 千歌音は口に当てようとしていた手を下げて、ぎゅっと枕を握り締めると頷いた。
「ん…っ」
 可愛い。
 などと言って余計に恥ずかしがらせるのは今は可哀想だろう。
「あ…はぁっ、んっ…!く…ぅん」
 キスをして、胸を愛撫して、気をそらしながら頃合を見計らって指の数を増やす。根元
まで埋まった指をそれぞれ角度を変えて動かすと千歌音の反応がいっそう激しくなった。
瞳が潤んで、声が高くなって、手はいつの間にか姫子の背を強く抱き寄せる。
「だめぇ…っ、ひめこ…このままじゃ私…っ!もう…」
 震える腰と締め付けはじめる中の様子で、千歌音が昇り詰めようとしているのが分かる。
「良いんだよ、千歌音ちゃん…それで」
 千歌音が懇願するように姫子を見つめるけれど、指の動きは緩めない。より速めて敏感な
ところばかりを集中的に愛撫すると、
「ひめ…っあ、は…っ、あ…――んんっ!」
 指を痛いくらいに締め付けて、千歌音は達した。


「ん…ふぅ…っ、はぁ…っ。は…」
「千歌音ちゃん…落ち着いた?」
 そっと髪を撫でながらたずねると、千歌音はとろんとした瞳で姫子を見て、小さく頷いた。
力の無い腕で姫子を引き寄せて、唇を求めてくる。
「ん……。もう…触っても大丈夫かな…?」
 達してすぐに抜いていた指を敏感な部分に軽く触れさせると、千歌音の身体がびくりと
震えた。
「ん…っ、もうちょっと、待って…」
 しばらく待つと千歌音が呼吸を整えて小さく頷いた。キスをして身体を離す。ふにゃふにゃ
になって力の入らない脚は、今度は何の抵抗もなく姫子の手に開かれていった。
 それに手を添えて千歌音の入り口に当てると、くちゅ…と水音がして、中から溢れてきた
蜜が姫子のそれを濡らした。
「ん、あつ…っ」
「あっ……」
 そのまま滑らせて、出来るだけ全体に千歌音の蜜を絡ませる。姫子の女の子の部分から
も滴っていたから、さして苦もなく姫子のそれは蜜にまみれた。
「ん…あぁ…、姫子…ひめこ…っ」
 測ったわけではないが、どう見ても姫子のそれは指二本よりも太さがある。
 今まで千歌音の中に入れるときに無理矢理した事はなかったから、きっと初めての其処
はきついだろう。小さな窪みを見ていると、こんな処にこんなものが入ったり赤ん坊が出て
きたりするなんて何かの冗談のような気がした。
「…縮まないかなぁ…」
 しかし、自在にそんなことが出来るなら最初から苦労していなかった。
「え…何…?姫子…っ」
「あっ、ううん、なんでもないよ」


 千歌音の首筋に唇を這わせながら、姫子のそれを千歌音の熱い部分に擦り付けていく。
先端が入り口に触れて抵抗を感じる度、えも言われぬ快感が姫子の背中を這い上がった。
「あく…っ、う、ん、んんっ…!」
「っは…、姫子…熱い…っ!姫子…」
 くちくちと淫靡な水音が二人の間から漏れていて、鋭敏な部分同士の触れ合いに、
だんだんと高まってくるのが分かった。堪らなくなって抱きしめあう。
「千歌音ちゃん…っ、いい?」
「あ……」
「……やっぱり――」
 今日は止めておいたほうが、と姫子が腰を引きかけると千歌音の腕が姫子の背中を
引き寄せて、それを押しとどめた。

「千歌音ちゃん…っ」
 そんなに無理しなくてもいい。もしかしたらすぐに原因が分かって元に戻れるかも
しれないのだし、そしたら千歌音はずっと痛い思いなんてしないで済む。
 姫子のそれは千歌音への気遣いとは裏腹に張り詰めていて我慢が出来そうになかった
けれど、なにも中に入れなくとも処理することは出来るだろう。そう思った。
「大丈夫…だから。今の姫子を、私に全部頂戴」
 瞳を潤ませて、千歌音が微笑む。汗ばんだ額と頬に艶々の黒髪が張り付いていて、
それを払ってやると、姫子の手に唇を寄せた。
「っでも…」
「いつだって…んっ、…く、姫子を全部知っていたいの…」
 千歌音が手を伸ばして姫子のそれに触れた。張り詰めたそれは痛いほどに疼いて、
期待に熱を上げている。
「あく…っ、つぅ…っ、あ…千歌音ちゃん」
 姫子が眉を寄せると千歌音が姫子を抱きしめてくれた。
「熱い…。ね…このままじゃ二人とも辛いままだわ。だから…」
「……良いの?私、もうとめられる自信…ないよ…?」
「あんまり、言わせないで」
 姫子が欲しい、と目を閉じて恥ずかしげに俯く千歌音の額に口付けて、姫子は千歌音の
濡れた蜜壺にそれをあてがった。
「ありがとう、千歌音ちゃん」
 嬉しくて胸が一杯になる。千歌音がこんなに恥ずかしがるのでなければ、何度でも繰り
返し言ってもらいたい言葉だった。
 身体を起こして千歌音の下の唇を押し開く。
「あっ、姫子…」
 羞恥に顔を真っ赤にして眉を寄せる千歌音の気を逸らすように腰を撫でながら、姫子は
それの先端をゆっくりと千歌音の中に沈めた。
「…!」
「っあ…!」
 入り口はきつくて、敏感な先端が痛かった。柔らかくほぐしても、初めてである以上
どうしようもない抵抗を感じる。
 先ほど達したばかりでそんなに力は入らないようだったけれど、それでも少し緊張を
増した千歌音の下腹部を撫でながら、少しずつ腰を進めていく。
「ん…っ、んん…っ!あ…くっ」
「千歌音ちゃん、力抜いて…」
 頷く千歌音の目の端には涙が浮かんでいる。けれど気丈にも弱音は吐かなかった。
 なんとか先のほうが少し収まって一度動きを止めると、千歌音が安堵の息を吐く。
怖くて、繋がっている部分が見られない。
「姫子…頑張って」
「う、うん」
 ――どうして私が励まされてるんだろう。
 姫子が複雑な気分になりながら頷くと、千歌音の手が伸びてきて姫子の額を拭った。


「ね…私あまり長く痛いのは…辛いから」
「うん…わかった」
 頬が熱くなる。
 一度に、ということだろう。確かにじわじわと痛みが増していくより、そちらのほうが
ましなようにも思える。
 我慢強い千歌音がそう言うからには、余程痛いのだろうと思う。
 なのに額にびっしりと汗の珠を浮かべながらも、笑おうとしてくれる千歌音が愛しくて
胸が痛かった。
 こんなものが無ければ…と思うけれど、それを言って謝ると頑張って姫子を受け入れ
ようとしてくれている千歌音の気持ちに対して不誠実な気がした。
 だから、千歌音の手を首に回させて、出来るだけ安心できるように千歌音の身体を抱き
しめる。
「姫子…っ」
「千歌音ちゃん…」
 千歌音のくびれた腰に手を掛けて。姫子は一気に腰を進めた。
「――っ!あ…」
 びく、と千歌音の身体が大きく跳ねて、首に回された腕に力が篭った。
 目を上げても白い喉が反っているのが見えるだけで、表情は窺い知れない。
「千歌音ちゃんっ」
 声さえ上げないでただ身体を震わせるのが恐ろしかった。どれほど痛かったのか
経験の無い姫子には分からない。
 様子を見るために身体を離そうとすると、千歌音の手が姫子を引き寄せて阻んだ。
「駄目…っ、まだ動かないで」
「あ…ごめんね、千歌音ちゃん」
 ようやく見せてくれた千歌音の額には汗が浮かんでいて、表情は苦痛を押し隠そうと
して歪んでいた。
 動きを止めて、肩で息をしている千歌音の髪を払う。頬を撫でて、髪を梳いて、頬に額を
寄せて、大きく息をついた。
 千歌音の中に根元まで潜り込んだそれは、ぴっちりと内壁に包まれていて、千歌音に
抱きしめられている時のような安心感と充足感がある。
 中は、熱いというより温かいと感じた。多分姫子のそれと温度が近いからだ。
「気持ち良い…」
 口に出してしまってから、痛がっている千歌音に申し訳ないと思った。
 なんて独り善がりな行為なのだろう。
「良かった…」
 千歌音の優しい声に顔を上げる。
「千歌音ちゃん、大丈夫?」
「ん…だいぶ慣れてきたから、そんな顔しないで」
 姫子がホッと安堵の息をつくと、千歌音がぎこちなく笑って姫子を胸に抱きしめた。
「姫子の…中で震えてる」
 恥ずかしくてまともに顔を見られなかったから、千歌音の胸の谷間に顔を埋めて頷いた。
「千歌音ちゃんのおなかの中も…その、すごく締め付けてきてる」
 脈打つように千歌音の膣内は姫子のそれを圧迫して、まだ動いてもいないのに達して
しまいそうだった。
「ね…もう、痛くない?」
「少し。でも、大丈夫だから…」
「うん」
 姫子は精一杯身体を伸ばして千歌音の唇に唇を寄せると、そっと腰を動かした。
 思っていたよりも痛がる様子も無く千歌音はそれを受け入れているけれど、それでも
時折痛みが走るのか目を閉じたまま眉を寄せて唇を噛む。
 あまり出し入れするのは酷だろうと思ったから、姫子は深さはほとんどそのままに腰の
角度だけを変えて、千歌音の中を擦りあげていく。ぴったりと吸い付くように触れ合って
いる中で動かすと、いろんなところが刺激されて堪らない快感だった。
 千歌音も少しでもそれを感じてくれていると嬉しいのだけれど。


「はぁ…っ、千歌音ちゃん…っ!」
「んっ、ん…!あ、姫子…っ姫子」
 奥に、届いている。
 それが、なんだか妙に嬉しかった。これも独り善がりと言ってしまえばそれまでだが、
これまでずっと指が短くて千歌音の奥までを気持ちよくさせてあげられない事を悔しく
思っていたのだ。
 千歌音はいつも姫子の指に感じてくれるけれど、それでも姫子が千歌音にして貰って
いるほど上手に出来ているとは思えないから。
 気を抜けば放ってしまいそうなくらいに感じているそれを最奥に押し付けて動きを止めた。
せめて千歌音が達するまでは我慢しないと、と思う。でも、あまり動かすとすぐにでも限界
が来そうだった。
「はっ、あ…」
「んぁ…っ、姫子?どうして…っ」
 少し非難がましく姫子を見る千歌音の視線に、胸がざわついた。
「千歌音ちゃん…少しは…その、いい?」
 その表情を見てしまえば聞く必要の無い事だったけれど、それでも言葉が欲しかった。
「……っ」
 顔を腕で隠して、小さく頷く。
「良かった…。いつも、こんな触れないから不安だったの。千歌音ちゃん奥のほうも
大丈夫なんだね」
「恥ずかしいこと…言わないで」
「ごめんね、でも本当に嬉しいんだよ、千歌音ちゃん」
 軽く唇を重ねてから、首筋、鎖骨をなぞっていく。
「ん、あ…っ、姫子…?」
「あのね、ずっと…指がもっと長かったら良いのに、って思ってたから。そしたら、
千歌音ちゃんほど器用じゃなくても、もう少し千歌音ちゃんを気持ちよくさせて
あげられるかも知れないのに、って…」
「いつも、私が立てなくなるまで離してくれないくせに…。あっ」
 ちゅ、と胸の先を口に含む。
「こんな事をお願いしたわけじゃなかったし、随分意地悪だけど…もしかしたら、神様が
私のお願い聞いてくれたのかも」
「さっきまで……っ、ないて…、ぃあ、ああっ」
 軽く甘噛みすると、千歌音は声を震わせて背に回した腕に力を込めた。
「んむ…、ん、ふ…」
「姫子…っ、あ…!ああっ」
 唇で揉んで舌先で先端をくすぐるのに合わせて、空いた胸の先も指で挟んで扱いていく。
 と、それに反応してか千歌音の中がきゅうきゅうに締め付けてきて、姫子のそれも昂ぶりを
増していった。

 千歌音は甘い声で啼きながら、姫子の腰に脚を絡ませている。
 千歌音の脚と背中に回された腕に身体を固定してもらいながら、姫子は少しずつ腰を
動かして千歌音の中をかき回していった。
 唇と片手で両胸を愛撫する。空いた手で千歌音の敏感な蕾を探り当てて、軽く転がす。
 いつもと違ってなかを一杯に満たせることと、千歌音の感じるところ全部を一度に愛する
ことが出来るのが嬉しかった。
「ふぁ…あっ、あ、んっ、はぁ…っ!」
「ん…っ、ん、千歌音ちゃ…ん」
 高まっていく。ずっと昂ぶっていた姫子のそれが、千歌音に締め付けられる度に少し
ずつ限界に近づいていく。腰の奥がざわついて、先に二度ほど経験した妙な感覚が波の
ように襲って来た。
 まずい、と思うけれど腰を止めることが出来ない。


「どうしてぇ…っ、わたし…っ!あ、んんっ」
「姫子…私、もう…っ、んっく、いぁ…ッ」
 幸いなことに千歌音の限界も近いようだった。だんだんと締め付けが厳しくなってきて、
収縮する感覚が短くなっていく。
 しかし、いけない、と姫子は焦った。今の今まで失念していたが、このままでは千歌音の
中に直接放つことになってしまう。

「千歌音ちゃ、ん…どうしよう、わたし……私…っ!」
 気持ちよくなればなるほどに焦る。下腹部の妙な感覚が限界を告げている。
「出ちゃう…千歌音ちゃん、…っ!もう駄目だから、脚、放してぇ…っ!」
「あっ、んん…っ!良いから、姫子…大丈夫だから…っ」
 言って、千歌音は姫子の腰を引き寄せる脚に力を込めた。
 何が大丈夫なのか考える余裕もなく、ぶるり、と腰が震えて波のように全身に伝わっていく。
「千歌音ちゃん…!んっ、あ、ああっ……――っ!」
「姫子…っ、は、あ……っ!」
 心細くなって精一杯奥に押し込むと、身体を伸ばして千歌音の上に覆いかぶさった。
 背中に手を回して抱きしめあって、姫子と千歌音は身体を震わせて達して。

 どちらが先に限界を迎えたのかさえ分からないまま、意識を手放した。


「夢…だったのかしら」

 翌朝、千歌音の第一声はそれだった。
 千歌音は目を瞬かせて、隣で眠っていた姫子をそう言って揺り起こしたのだ。姫子も
自分の脚の間を見て、手で触って確認して、困惑していた。
「そんなはず、無いよ…!だって、昨日あの後確認したら…小さくなってたけどあったし、
お風呂だって一緒に入って、夜だって…」
 そこで言うのを憚られて口篭る。思い出して頬が熱くなった。
 昨日の夜、姫子は千歌音の言葉に甘えて、何度も千歌音を抱いたのだ。
 千歌音は『最後まで抱きしめあっていられるのは気持ち良い』と言ってくれて、姫子も
そう思っていたからそれが嬉しかったのを覚えている。なかの具合も、千歌音の感じた
顔も、気が変になりそうな快感も…全てリアルに思い出せるのに、夢だったはずが無い。
「そう…。――そう、よね」
 千歌音は下腹をさすってなんだか呆けたような顔をしていた。
「そうだよ!…千歌音ちゃん、ちょっと良い?」
 千歌音の脚を割って、そっと其処に指を差し込む。千歌音が頬を紅く染めて姫子を咎めた。
「あっ、やんっ…!姫子、朝っぱらから…」
「やっぱり…」
「えっ?」
「やっぱり、夢じゃないよ」
「あ……ええ」
 姫子が何を確認したのか分かったのか、千歌音は顔を真っ赤にして頷くと目をそらした。
 あれが、夢だったはずが無い。
 そうだ。それに洗濯籠を見れば昨日のシーツが、痛ましい千歌音の破瓜の徴が残って
いるはずだった。

「そうね、夢ではないわね…」
 裏腹に、夢を見ているような浮ついた声で千歌音が言って、姫子は首をかしげた。
「千歌音ちゃん…?どうしたの?もしかしておなか痛い?」
「姫子…。その……いいえ、なんでもないわ。秘密」
 嫣然と千歌音が笑む。
「ええ?……。…うー…それにしても、なんだったんだろう…あれ。
結局、何が原因だったのかな」
 姫子には何もかも分からないことだらけだった。
 あんなに泣いて、辛くて、千歌音にも無理をさせてしまったのに。一日経てば何事も
無かったかのように元の身体に戻っているだなんて、なんだか釈然としなかった。
 そのおかげで、千歌音に嬉しいことを言ってもらえたりも、したのだけれど。

 姫子ががっくりと肩を落としてベッドを出ようとすると、千歌音がくすくすと上機嫌に笑った。
「そうね…案外、神様の贈り物だったのかも」
「だとしたら、すごく意地悪な神様だよ」
 一瞬、天叢雲の姿が浮かんで、すぐに頭を振ってかき消した。
「そんな事無いわ。…ひょっとしたら、私の願い事も叶えてくれたかも知れないのだもの」
「?」
 不思議な言い様だった。下腹をそっと手で押さえて微笑む千歌音に、何を言っている
のか分からない姫子は首を傾げる。しかし、千歌音は笑うばかりで答えてはくれない。

 二人に福音が訪れたのは、それからしばらく後の事だった。

最終更新:2007年04月22日 21:13
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。