「あ、あのね千歌音ちゃん…ひとつ聞いてもいいかな?」
「何かしら、姫子」
「あのね、千歌音ちゃんって…お馬さん好きだよね?」
「え?えぇ、サンジュストのような馬は好きよ」
「そっか、好きなんだね…よかったぁ」
「姫子?」
「あのね、今日は千歌音ちゃんにプレゼントしたいものがあるんだ…」
「プレゼント?私に?」
「うん…気に入ってもらえたらいいんだけど…」
「姫子からプレゼントをもらって気に入らないものなんてないわ」
「本当?じゃあ…はい、千歌音ちゃん」
「ありがとう姫子、嬉しいわ。それにしても、かなり大きいプレゼントね」
「…」
「開けてもいいかしら?」
「うん…」
包みをとってみてみると…
「ひ、姫子…これって…?」
「うん…三角木馬。」
「ね…じゃあ千歌音ちゃん、早速乗ってみてくれる?」
「えっ…の、乗るの?私が…?」
「だって、お馬さんだもん。それともやっぱり…」
悲しそうに瞳を潤ませる姫子に負けて、千歌音はその木製の玩具に跨った。
幸いに高さはそれほどなく、両足が床に着くから体重を支える事は出来る。
「そ、そんな事無いわ。ええ…姫子、こう…?」
「もっと体重かけてみて?」
「えっ…」
「ホントはもっと高いのが良かったんだけど…危ないし、持って帰れないと思ったから…」
「あく…っ」
姫子の言うとおり腰を落とすと、鋭角の馬の背が千歌音の秘所に食い込んだ。スカートと
ショーツの布二枚を隔ててさえ、あまりに強い刺激に千歌音は思わず息を呑んで腰を
上げてしまった。
「あっ、千歌音ちゃん、駄目だよ」
「あ、ああっ!」
それを姫子の手がすかさず押さえつける。ぐい、と千歌音の敏感な部分に食い込んだ
痛みで千歌音は全身を強張らせた。
ほんの少しの身動きでも、体重のほとんどをそこで支えている今は恐ろしいほどの刺激に
変わる。千歌音は必死で身体を動かさないように手で支えて、その痛みに耐えようとした。
けれど、いつまでたっても慣れることは出来なかった。
「どう?千歌音ちゃん」
姫子が千歌音の震える脚を撫でながら、嬉しそうに尋ねる。
「あっ…姫子、お願いやめて…」
「触られるのイヤ?」
「嫌じゃない…けど、今は」
「千歌音ちゃん、乗り心地はどう?」
「乗り心地…って、言っても……あ、うぅ…っ」
「あれ…千歌音ちゃん、これ。……濡れてる?」
「そ、そんな事あるはず…」
千歌音の其処はじんじんと痺れて痛み以外の感覚がないから分からないけれど、そんな
馬鹿な事があるはず無かった。
「だってほら…ちょっと腰上げてみて?」
姫子の指示に腰を上げ、痛みから解放されてほっと一息ついたのも束の間、千歌音は
それまで跨っていた部分を見て、消えてしまいたい気分になった。
「あ……」
てらてらと光るそれを指で掬って、姫子が口に運ぶ。千歌音はそれを呆然と見つめて、
何も出来ずにただ困惑していた。
痛いだけだったはずなのに、どうして――?
「良かった、千歌音ちゃん気に入ってくれたんだね」
木馬のその部分にキスをして千歌音を見上げる姫子の笑顔は、千歌音には天使のようにも
悪魔のようにも見えたのだった。
「あっ、ああ……っ!」
姫子に促されて、再度木馬に跨る。ぐちゅ、と濡れた音がして身体の芯が熱くなった。
「千歌音ちゃん、素敵。上もお洋服脱がすね。あは…スカート、お漏らししちゃったみたいになってるよ」
「あくっ…姫子、お願い…これ、痛いの…っ」
「そっか…こんなに尖がってるんだもんね。一応やすりかけて少しは丸くなってるけど」
言いながら千歌音の服を脱がしていく。シャツを取り払うために腕をとられると、体重が秘所にかかって、千歌音は歯を食いしばって耐えた。
「は……っ」
「千歌音ちゃん、泣いてるの…?そんなに痛かった?」
「痺れ、て…」
「ふぅん…でも、こっちはすごいびちょびちょだよ」
姫子の手が千歌音のショーツに触れてそのまま降りていく。
「いやあ…っ」
「太腿こんなに濡らして…靴下までいっちゃいそう。千歌音ちゃんって、痛いと感じちゃうんだ」
「そんな事、そんな事無い…っ」
痛みとは別の涙が千歌音の頬を流れる。頓着せずに姫子は千歌音の背中を撫でながら、
ホックを外す。そのまま隙間から侵入してきた指が、千歌音の両胸を優しく揉みほぐした。
「あっ…はぁ…っ。姫子…っ」
こんな状況に似つかわしくない優しい愛撫。恍惚に身を任せてしまいたいと思いつつも、
腕や足の力を少しでも抜けばすぐに強い刺激が千歌音の秘所を襲うから、油断はでき
なかった。
「千歌音ちゃん、普段そんな風に乗ったりしないでしょ?
手綱は無いけど…代わりにお馬さんの首につかまると良いんじゃないかな」
体重の一部を支えている腕を外せ、という事だろう。出来るだけ身体を動かしたくない、
少しの刺激も避けたい千歌音だったが姫子のまっすぐな瞳に負けて結局頷いた。
少しずつ身体を前倒しにして馬の首に両腕でしがみつく。
「あっ、く……つうっ…!んっ、んん…っ!」
敏感な突起の周辺が、腹部が、次に胸が…と馬の背に順に乗っていくと、それまでより
体重が分散されていくらか楽になった。肌に食い込んで痛いが、それでも敏感な秘所で
身体を支えるよりずっと良い。
「千歌音ちゃんったら、こんなにお尻突き出して……」
「あっ…!」
姫子の手が半ば浮いた千歌音の腰に置かれる。
「やらしいね、千歌音ちゃん」
「だって…、いや…そんな事…っ」
「素敵…」
左右に首を振る千歌音の耳に、姫子の楽しげな声が響く。と同時に、下着を押しのけて
指が一本千歌音の中に侵入してきた。
「…っ!は…、姫…子…っ」
千歌音の反応を楽しむかのように姫子の指は千歌音の中をゆっくりと弄っていく。
水音を高く、わざと千歌音に聞かせるように響かせて。
身体の中からいやらしく作り変えられるような感覚に全身が震えた。
「は…っ。――んっ、んん…っ!」
「あっ…千歌音ちゃん軽くいっちゃった?きゅう、ってなったよ」
それでも姫子は指を休めようとはしなかった。どころか、さらに指が追加されてより
本格的になる。
「あ…ぁ…っ、姫…もうやめ…っ!」
内壁をいじられるのと同時に腰を小刻みに揺すられて、その度に木馬の角に当る
敏感な部分から痛みと共に快感が沸きあがってくる。
「千歌音ちゃん分かる…?やらしいの、大きくなって擦れてるよ。興奮してるんだ……」
「違う…、違う…っ!」
「こんなに溢れさせて言っても、説得力ないよ…。でも、良いんだよ、千歌音ちゃん。
私こういう千歌音ちゃんも大好き」
「っ…あ、姫子…!姫子…っ」
また、と思ったところで唐突に指が引き抜かれた。
「あ…っ?」
「抜いちゃ嫌だった?」
「姫子……どうして、こんな…っ」
背後の姫子を振り向く余裕もなく、千歌音は馬の首に頭を寄せて涙を流した。
「千歌音ちゃんに夢中だからだよ」
「っく…、う…」
「好きだから、もっと可愛い千歌音ちゃんを見せて欲しいの。誰も知らない、やらしい
ところも全部…。ね、憧れの宮様がこんな風にされてるなんて、誰も想像した事も無いよね」
濡れた指で千歌音の胸の先端を転がしながら、姫子は千歌音のうなじ、肩、背中、
腰…と唇を滑らせて吸い上げていく。いつの間にか後ろから横に移動して来ていた。
「あっ…姫子…ぉっ!」
もう片方の手は再び千歌音の秘所に。
耐えられなくて千歌音が身体を跳ねさせてしまう度、敏感な突起が擦れて快楽に
拍車をかけた。
「ん…私だけ、だよ…きっと。こんなお馬さんの上でやらしい格好する千歌音ちゃんを
想像したり、見たり、させたりできるのって」
「は…あ…っ、そんなの、当たり前…っ」
荒い息を繰り返す口の端から、みっともなく唾液が伝う。拭う余裕は無かったが、せめて
口は閉じた。
と、姫子の唇が強引に上向かせた千歌音の顎を吸う。雫を伝って唇の端まで来ると、
そのまま離れていってしまった。
「あ……」
「なぁに?千歌音ちゃん…」
目を開けると、頬を赤く染めて極上の微笑を浮かべた姫子の顔がすぐ側にある。
「姫子……キス、して」
「良いよ、千歌音ちゃん…。千歌音ちゃんがもっと素敵になってくれたら、なんだって
してあげる」
「姫子…っ」
「ね…千歌音ちゃん、起きて後ろに体重かけてみて」
言われたとおり千歌音は慎重に身体を起こして、後ろに手を付いて身体を支えた。
「お尻浮いてる。だめだよ千歌音ちゃん…ちゃんと座ってくれないと」
「あ、痛っ…!」
これまでよりは少し後ろの割れ目に角が食い込む。角に骨があたって、それも痛かった。
中途半端な角度で身体を支え続けたため、疲れてだんだん力の入らなくなってきた
両脚が震える。
「千歌音ちゃん、素敵。下着も脱ぐ?」
「いや…これ以上痛いのは…っ」
「こんな薄い布一枚くらい、変わらないと思うけどなぁ…」
くす、と笑って姫子は千歌音のショーツ、ぬれた部分に指を這わせた。身体を後ろに
傾けているため、腰は前に突き出される体勢になっている。
ぴったりとはり付いた布越しに、姫子の指先が千歌音の一番感じるところを揉み始めた。
「あ…っ、ああっ!…姫子…お願い、やめてっ…!」
「熱くてぐちょぐちょ…私がちゃんとお洗濯してあげるからね、千歌音ちゃん」
ゆっくりと転がす。
「またいっちゃいそう?震えてる……。とろとろしたのも出てきちゃったし…すごい」
「言わないで…もう、私……姫子っ…!」
「今楽にしてあげるから」
いやらしい音をたてながら姫子の指が中に潜り込む。敏感なところを揉みながら中を
かきまわして、唇は千歌音の身体に付いた赤い線をなぞって這い上がってきた。
「はっ…、あ…あぁっ」
秘所から鎖骨まで一直線に伸びた跡をなめて、そのまま胸の膨らみをのぼっていく。
頂を吸い上げられて千歌音は身体をこわばらせた。
「千歌音ちゃんすごい敏感になってない?今ね、なかがきゅっ、って締めたよ。
胸が感じるの?ね…分かる?」
指を増やして中を圧迫して、姫子が胸の先端を唇で愛撫していく。胸に刺激を受ける
たびに千歌音の中が姫子の指を締めるのが否応無しに分かってしまう。
「あ…やぁっ……」
「あっ、いま…」
「お願い姫子…お願いだから、もう…っ」
下腹から這い上がってくる快感が全身に伝わる。身体を支える腕さえ震えてしまって
心許なかった。
「ん…じゃあ、とりあえず…いって良いよ、千歌音ちゃん」
姫子の指の動きが加速していく。
「あ…、っあぁ…!――んんっ!」
腰を逸らして腰と胸を前に突き出しすと千歌音はそのまま果てて、馬の背から転がり
落ちるところを姫子に支えられたのを感じながら目を閉じた。
「姫子の馬鹿…意地悪…もう、今夜はなしですからね」
千歌音はシーツに包まって姫子に背を向けた。姫子がなだめるように肩を抱きしめてくる
けれど、振り向かなかった。
「えー。だって…千歌音ちゃん、良かったでしょ?私は凄く良かったよ…千歌音ちゃん
激しかったぁ…」
恍惚と姫子が言う。先ほどの情事を思い出して千歌音は恥じ入った。最初の痛いくらい
激しい刺激のせいか、ベッドに移されてからもたがが外れたように乱れて姫子を求めて
しまった…気がする。
「…っ良くないわ、姫子…あちこち痛いし、まだじんじんしてるし…足なんてきっと明日は
筋肉痛よ」
「そしたら揉み解してあげるよ。今からお風呂ででもいいけど…」
「ん…あっ、やん…っ、姫子!」
姫子が後ろから手を回して、千歌音の胸を揉んだ。
身をよじっても放す様子はなく、また全体をやわらかく揉むだけのそれが気持ちいいことも
あって、千歌音は姫子に身体を任せてしまった。
すると、調子付いた姫子が背中に唇を這わせてくる。
「ん…っ、姫子…もう…。ね、どうしてあんなの買ってきたの…?」
「千歌音ちゃんお馬さんに乗るの好きでしょ?」
「え、ええ…まぁ」
「私も好き。千歌音ちゃんがお馬さんに乗ってるのって、凄く格好よくて……特に今日
なんかとっても可愛くて」
「…っ」
「だから、もっと見せて欲しいの。どうしても、あれ嫌だった?」
「姫子……そこまで嫌じゃない、けど…」
千歌音が小さな声で言って、枕に顔を埋める。
すると、
「良かった!ね、千歌音ちゃん…これで、雨の日も大丈夫だね」
姫子はこんな事を言って、嬉しげに笑ったのだった。
(おわり)