キス 練習

神無月の巫女 エロ総合投下もの

キス 練習

 

「千歌音ちゃん」
「どうしたの、姫子」
 おずおずとした上目遣いの姫子に、千歌音は笑顔で応える。
「あのね、その、……ごめんなさい、やっぱりいい」
 言い淀んで、そのまま踵を返して千歌音の部屋を出て行こうとする姫子だったが、千
歌音はその手を取り、そして後ろからそっと肩を抱きしめると耳元で静かに囁いた。
「何か話があったんでしょう。私は姫子の言うことを決して否定したりしないわ。だか
ら話してみて」
「千歌音ちゃん……」
 肩にまわした千歌音の腕に触れて、暫く黙っていた姫子は、やがて振り向くと俯いて
小さく言った。
「変なこと言っても笑ったりしない? 軽蔑しない?」
「ええ、絶対にしないわ。約束する。だから言ってみて」
「うん、じゃあ言うね。あの、……ス……いの」
 俯いたまま、姫子の声はさらに声は小さくなる。
「ごめんなさい、姫子。よく聞こえなかったから、もう一度言ってもらえるかしら」
 千歌音に優しく促された姫子はぎゅっと目をつむり、意を決した様に今度はもう少し
大きな声で言った。
「ち、千歌音ちゃんと、その、キ、キスしたいの!」
「姫子」
 思ってもみなかった姫子の言葉に頬を染める千歌音だが、見れば姫子も耳まで真っ赤
に染まっている。
「女の子同士でなんて、やっぱり変だよね。ごめんね、今言ったこと忘れて」
「待って、姫子」
 振り返り、今度こそ本当に走り去ろうとする姫子の腕をすんでのところで捕まえて、
体ごと少し強引に引き寄せると千歌音は言った。
「そんなことないわ。だって私も姫子とキスしたかったんですもの」
 きっと予想だにしなかったのだろう。そんな千歌音の言葉に驚いた姫子は、大きく見
開いた目で千歌音を見つめてくる。
「姫子」
 頬を染めて自分を見つめる姫子に愛おしさがこみ上げ、千歌音は右手を姫子の頬に添
えた。そしてゆっくりと顔を姫子の顔に近づけると姫子は目を閉じて、少しだけ顔を上
に向ける。


 風が吹けば落ちてしまう花びらに触れるかのように、千歌音はそっと唇を押し当てる。
そして二人はしばらくの間、唇と唇がただふれ合うだけの、幼いキスを続けた。
 一度離れて、互いに潤んだ瞳で見つめ合うことしばし、今度はどちらからともなく顔
を寄せて再び口づける。
 二度目のキスはただ重ね合うだけではなく、相手の唇を啄んだり、舌の先でそっと唇
をなめたりした。やがて恐る恐る舌の先をふれ合わせ、絡め合い、そして遂には相手の
中に侵入して、まるで性感帯を探り当てるかのように相手の口中をくまなく刺激し合っ
た。
 呼吸を整えるために離れた後、三度目に口づける時にはもはや躊躇せず互いを求め合
い、与え合った。そしていつの間にか二人は互いの背中に腕を回して、強く強く抱きし
め合っていた。密着した体と体は服の上からでも互いの上昇した体温と、早鐘のような
鼓動を伝え合い、それが一層二人の心を燃え上がらせ、口づけの激しさを募らせていっ
た。
「ん、んん、んちゅ、千歌音、ちゃん、ん」
「はぁ、ん、ひめ、こ、ちゅ、くちゅ」


 長い長い口づけを終えてベッドの倒れ込んだ二人は、上気した互いの顔を飽きもせず
見つめ合い続けた。そして小さなキスを数回繰り返した後、千歌音は満ち足りた笑顔で
姫子に言った。
「とっても上手なのね、姫子」
「うん。寮にいたころ、マコちゃんと練習してたの」
 褒められたのがうれしかったのか、お日さまのような笑顔で姫子は応える。
「そうだったの」
 姫子の髪を優しく撫でて、千歌音はもう何度目かも分からなくなったキスをそっと落
とし、そして思った。
(早乙女真琴、明日があなたの命日よ)

最終更新:2007年04月22日 21:14
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。