私の想いが本当に叶うなんて 思いも しなかった
夜が明けたころ、姫宮千歌音は、隣で眠る陽だまりのような少女の寝顔を見ていた
いや、少女というのは少しおかしいのかもしれない
私たちはお互い大学生で、肉の絡みも識っているのに
彼女の華奢な体には、私の無数の痕が残されているのに
けれども、今の、いえ、何時も彼女は本当にあどけなく、
「女」とは呼べないほど、無垢であった
もっとも情事の際に私を舐る時ばかりは、完全に例外なのだけれども
私は、彼女とこうした関係になったときの事に、想いを馳せた━━━━━━
「千歌音ちゃん!本当に千歌音ちゃんだよね!ずっと会いたかった!会いたかった!
ほんとうに夢じゃないよね!?千歌音ちゃんっ・・・・」
「ああ、姫子!本当に貴方なのね!私の事を見つけ出してくれたのね!?
ずっと会いたかった、姫子っ・・・・」
私達は転生を越え、運命さえ乗り越えて、巫女としての宿命の無い此の世界で
ただ、互いへの愛しさだけを頼りに、再び巡り合った
後から考えれば、それは周りの人間には異様に映っていたことだろう
スクランブル交差点の中心で、涙を流して抱き合う女二人
けれども、其の時の私たちには、周りの事など認識できた筈が無かった
今、此の時が、全てだった
千年の記憶を越え、こうして、ただ抱き合える瞬間を
流石に何時までもこうしているわけにはいかない
とりあえず、私の今住んでいるマンションに場所を移す事にした
何時もなら大した距離でもない筈だったが、
其の日の私たちにとっては 気が狂いそうな距離だった
いや、確かに其の時、二人の気が、狂った
やっと玄関に辿り着き、扉を閉めた瞬間
二人の感情が 爆発した
互いにひたすら唇を押し付けて 舌を絡ませ 唾液を交換した
話したい事が たくさん たくさん
交わさなければならない言葉が たくさん たくさんあるはずなのに
私たちは 想いの濁流に 全てを押し流された
一人暮らしにしては広い部屋の中に、甘い、甘い狂喜が充満していた
ベットに押し倒し、引き倒され、服を脱がせ、引きちぎり
獣のように、いや、どんな発情期の獣さえも、彼女たちほどの熱は持ち得ない
ただ、互いへの想いだけ込め 絡み合った
・・・・あのあと、二人して暫く真っ赤になって、ロクに口をきけなかったわ
落ち着いた後、やっと想いを言葉にして、あんまりにも嬉しくて、
二人でぼろぼろと泣いてしまったわね
順番を二人して飛ばしすぎてしまったことに、笑いもしたのだったかしら
嗚呼、私は間違いなく太陽と月の間で、もっとも幸せな人間ね
もうすぐ、私の、私だけのお日様が目を覚ます
穏やかに眠る彼女に、そっと唇を重ねる
私の精神はどこまで持つのかしら? この、終わることない、幸せの中で
いえ、もう狂っているのでしょうね
ただ あなただけが いとしい