(ザ・ビーンズvol8より抜粋 前編)

Q.小説を書き始めたのはいつ頃ですか
.小学4年生だったと思います。演劇クラブに入って指人形劇の脚本を書きました。それまでにもちょこちょこ書いてはいましたが、物語を完結させたのはその脚本が最初です。小説家になりたいという気持ちは、その頃からありました。最初のうちは、それまで読んでいた小説やまんがのキャラクターを動かして、勝手に物語を作って楽しんでいたんです。登下校の15分くらいの間、お話を考えながら歩くのが楽しくて・・・・・・。借り物のキャラクターでも楽しい時間を過ごしてきましたが、自分だけの、もっと自分好みのキャラクターを書いてみたいと思ったのが、オリジナルの小説を書いたきっかけで、小学校の行き帰りの中で生まれた気持ちだと思います。

 

Q.どんな物語を書いていたんですか
.小6のときに書いた、原稿用紙に何百枚分とある初長編小説を、『彩雲国物語』で賞をいただいた後、恐る恐る読んでみたんです。そうしたら『彩雲国』の主要な要素が全部詰まっていたんです(笑)。方向音痴のキャラクターはいるし、ラスボスは朔洵みたいなキャラクターだし、いつも仕事を探しているがんばり屋さんな女の子がいるし・・・でもこの子は秀麗とは違って役に立たないタイプだったんですけど(笑)。一番最初に書いたものから逃れられていないんだなぁ、と思いました。
 内容は忘れていましたが、それを書いたときの感覚は今でも覚えていて、書いている最中にも背筋がぞくぞくするくらい楽しかったし、家に帰ったらすぐに書きたくて机に向かっていたんです。書き終えたときの満足感も忘れられなくて・・・。10年ちょっと生きてきた中でおもしろいと思ったものを、全部詰め込んで。あの快感を味わいたい、物書きになったら味わえるかな、という気持ちがずっとありました。その一方で、長女なので自分が実家を継ぐんだろうなぁという気持ちもあって、小学6年生のときの文集には「作家になりたいと思うけど、家も継がなければならないと思います。これからがんばって未来を考えていきたいと思います」と書いていました(笑)。

 

Q.そんな幼い頃から小説家を目指していたんですね
.はい。6年生のときに、投稿するために小説を書こうと思ったのを覚えています。でも中学生の頃、家族に「小説家になりたいんだ」とほのめかしたときに「ムリに決まってるでしょ」と言われて・・・。うむを言わせず作家になるには「なりたい」じゃダメで、新人賞を受賞して、それを報告するしかない、と思ったんです。それから一切その話はしなくなりました。とはいえ学生時代は年に1作くらいしか投稿しなくて、良くても一次選考通過、という結果でした。そのうち真面目に人生を考えなくちゃならない岐路にぶつかって。のんびり気分を捨てて、本気で賞を目指して書いたのはそれからですね。

 

Q.受賞の知らせを受けたときは、どんなお気持ちでしたか?
.「ようやく」という気持ちですね。10年越しの夢でしたから(笑)。でも不思議なことに、『彩雲国物語』だけは、送ったときに「もしかしたらなんとかなるかな」とちょっとだけ思いました。もっと私好みの物語を別の賞に送っていたんですけど、『彩雲国物語』だけは生まれて初めて狙って応募したものなんです。ビーンズ小説大賞が第1回めの募集だったので、年々力作が増えるというなら、1回目ならなんとかなるかも、と(笑)。あと、それまでは自分でもちょっと矛盾しているなとか、おかしいなと思った設定も、まあいいかと送っていたんです。でも、選考してくださる先生方や編集さんは、目が肥えていらっしゃるじゃないですか。その中で、私自身が矛盾していると思うところを先生方が気づかないはずがないんですよね。『彩雲国物語』については、自分で気づいた矛盾点や欠点を極力排したものだったので、「やるだけやった」という気持ちがありました。受賞できるとまでは思っていなかったんですけど、今までとは違う感覚がありました。

最終更新:2007年11月03日 14:07