(ザ・ビーンズvol8より抜粋)

 

Q.念願の小説家デビューとなったわけですが、当時は就職もなさっていたとか?
.私は小説家一本でデビューしようと思っていたんですけど、それを察した叔母に「そんな甘い考えじゃダメだ、ちゃんと仕事して家にお金を入れなさい」と叱られたんです。賞をいただいたことで浮かれて現実から目を背けていた、という自覚もあったので、反省して二足のわらじを履いてまっとうな仕事もしていました。そのときのことはとてもいい経験になりました。
 実際に就職していたときのことは、社会人としてとても勉強になりましたし、会社のおじさんたちのかっこよさも目の当たりにして、現在も『彩雲国物語』にいかされています。小説だけで食べていけると浮かれ半分で思っていたのは最初だけで、最終的に両立は無理になり、悩んだ末に物書きを選んだとき、「これで自分は崖っぷちだ」と心底思いました。「小説を書く」ことは「好きな事」でなく「仕事」になる。ポシャったら後はない。それをまざまざと感じて、書く姿勢も変わったような気がします。

 

Q.受賞をしてからデビューするまでの間は、原稿のほうはどうでしたか?
.発売日が曖昧だったので、結構のんびりと直していました。ただ、選考委員の先生からのコメントでは「優等生的なお話」といわれて、どなたもおもしろいとはおっしゃらなかったんです。それで「おもしろい」と言ってもらうにはどうしたらいいんだろう、と考えてました。
 最初は劉輝はダメダメなキャラクターだったんですけど、担当さんに「もっとかっこよくしましょう」と言われたんです。担当さんからは、思ってもいなかった注文をたくさんいただいて、自分でも「もとおもしろくなるかもしれない」と、思うようになりました。とにかくよりおもしろく、というのを追求していましたね。自分の中で限界までハードルを引き上げて書いたという満足感もあり、これだけやれば売れなくてもいいや、と・・・本当はよくないんですけど(笑)。その後、由羅カイリ先生のイラストを見せていただいて、燃え尽きました。
 一冊目を書き終えたときは、完結したと思っていたので、本当に続編のことは考えていませんでした。そんな余裕もありませんでしたし。でも「売れたら続きを書けるかもしれない」と言われて、逆に驚きました。自分では終わったと思った作品でも、本になった作品は読者の方々のもので、編集部や読者に続きを読みたいと言われたら、それに応えなければいけないのがプロなんだな、と・・・。そこでまた意識が変わりましたね。

最終更新:2007年11月03日 14:06