<目次>
中川八洋『国民の憲法改正』(2004年刊) p.11以下
第一部 正統の日本国憲法(中川草案)
自由を、世襲の権利として正しく永続させ、また聖なるものとして保持するための道や方法として、世襲の王制以外のなにものも存在しないことは、これまでの経験が教えています。(E. バーク)
◆日本国憲法(中川草案)
日本国民は、祖先より相続した美徳ある自由の満ちる祖国が、未来悠久に存続するために、世襲の義務を果すことを決意して、主権を喪失した占領下に制定された「日本国憲法」を改正し、ここに新しく憲法を制定する。 |
第一章 |
天皇 |
(個々の条文案は省略) |
第ニ章 |
国防軍と国際法規 |
(個々の条文案は省略) |
第三章 |
国旗および国歌 |
(個々の条文案は省略) |
第四章 |
日本国民の義務および権利 |
(個々の条文案は省略) |
第五章 |
司法 |
(個々の条文案は省略) |
第六章 |
内閣 |
(個々の条文案は省略) |
第七章 |
国会 |
(個々の条文案は省略) |
第八章 |
政党 |
(個々の条文案は省略) |
第九章 |
財政 |
(個々の条文案は省略) |
第十章 |
地方自治 |
(個々の条文案は省略) |
第十一章 |
改正 |
(個々の条文案は省略) |
第十ニ章 |
補則 |
(個々の条文案は省略) |
◆解説
◇一. 憲法の二大目的
自由社会である国家の憲法は、次の二つの目的に奉仕するものでなくてはならない。
また、そうあるものをもって憲法という。
一、 |
過ぎし幾多の時代、幾多の世代を経て祖先より相続した、歴史と伝統と慣習の宿る誇りある国家を、未だ生まれていない未来の子々孫々に引き継ぐべく、国家に潜む永遠に“永続させ得る生命源”を守り弛むことなく再活性化を図るものであること。 |
二、 |
国民一人ひとりの“美徳ある自由”を擁護する、または国民一人ひとりを“美徳ある自由”に教導する、そのような働きを為すものであること。 |
憲法の最高目的が、この“国家永続の生命源”と“美徳ある自由”の擁護にあるとすれば、正統な憲法は、この二大目的に反する、もしくはこの二大目的を害する概念や思想から中立でなくてはならない。
それらを排撃するものでなくてはならない。
◇二. 憲法が排撃すべき四つの革命の教理
国民をギロチンその他で無制限に殺戮した、血塗られたフランス革命の、この大量殺戮(テロル)を推進し正当化したドグマが、「人間の権利(人権)」であり、「国民主権」であった。
「人権」と「国民主権」こそは、生命という自由の根幹すら尊重しない、憲法そのものに背反する「反・憲法」を極める狂気のドグマであった。
悪魔の思想であった。
また、フランス革命とは、唯物論と合体した無神論・理神論を背景にしたカルト宗教の権力争奪の内戦であった。
そのキリスト教撲滅のための野蛮かつ残虐なドグマが、言うまでもなく「政教分離」であった。
「政教分離」こそは、教会を破壊しその財産を没収し、国民の信教の自由を否認し弾圧した、反宗教の教理ではなかったか。
このキリスト教という既成宗教撲滅を推進した「政教分離」は、ロシア革命でもレーニンに継承され、あの残忍で陰惨な教会破壊と数十万人という大規模な殺人へと発展した。
現在もなお日本で、「政教分離」を旗印に、靖国神社に対する国民の信教の自由を奪うという暴挙が為されている。
「政教分離」は、自由社会にとって赦し難いもっとも野蛮な「反・憲法」の暴力破壊主義の教理である。
一方、宗教絶滅の、いかなるイデオロギーをも、憲法は排除しなければならない。
よって、「政教分離」は、現憲法から削除される。
宗教に関しては、それぞれの民族なり国家なりが数百年あるいは一千年以上の歳月をかけて試行錯誤した叡智において、国家との関係が定まっているのであって、この関係に、ある世代の浅薄な知力による人為的な手術(改革)を決して加えてはならない。
宗教は全て、脱会の自由と私有財産の尊重の二つの条件を満たしている限り、その活動に国家権力(政治)は介入してはならない。
「平等」についてもそうであって、英国においてはマグナ・カルタを始めとする中世ゲルマンの法思想から発展した憲法原理、「法の支配」から誕生した「法の前の平等」を例外として、憲法的基本文書のどこにも「平等」は存在しない。
米国憲法にもそのようなものは全く存在しない。
米国憲法に「平等」の二文字が例外的に挿入されたのは、憲法制定から約90年を経た修正第14条で1868年であった。
解放された黒人にもそれが米国籍であることにおいて法的保護の「平等」な適用を定めた「平等」であった。
黒人も白人と平等であるという平等主義の「平等」ではなかった。
「平等」のドグマは、ルソーの『人間不平等起源論』(1755年)において初めて提唱されたもので、それがフランス革命の教理となり、ついには階級間不平等、生まれによる不平等、財産の不平等、物質的生活の不平等、・・・・・・などの除去を国家権力の行使でもって実行することを正当化するドグマとなった。
かくして、その後の人類史はこの「平等」によって阿鼻叫喚の「世紀の蛮行」が歴史を汚すことになった。
例えば、このフランス革命をもう一度繰り返したロシア共産革命のレーニンは、「平等」をロシア国民に強制し、スターリンとともに、6,600万人を殺害した。
「平等」の強制は、ホロコーストに至る。
正統な憲法は、この故に「平等」を断固として排斥するのである。
米国の憲法にも、英国の憲法にも、「法の前の平等」はあっても、未だ平等主義の「平等」は皆無である。
要するに、次の四つの革命の教理は、とてつもない反憲法のイデオロギーである。
正統かつ正常であるべき、我が日本国憲法から完全に排除されねばならない。
A、 |
「人間の権利(人権)」 |
B、 |
「国民主権」 |
C、 |
「政教分離」 |
D、 |
「平等」(ただし、「法の前の平等」を除く) |
◇三. 憲法が危険視すべき、もう二つのイデオロギー
「民主主義」と「平和」という、二つの言葉は、日本ではイデオロギー化しており、憲法の用語としては、明らかに適さない。
そもそもデモクラシーとはデモス(民衆)のクラシー(制度)であるから、「民衆の政治参加制度」と正しく訳すべきものを、「民」が「主体」「主人」の意になる「民主」という字をつくり、あげくに「主義」をくっつけたからイデオロギー化してしまったのである。
また、ソ連も北朝鮮も人民抑圧というより“人民殺し”の体制であったが、それらの政治体制を「人民民主主義」と呼んでいたように、民主主義は単なる暴政以上に悪逆残忍な暴政の政治になり得る政治制度である。
米国憲法は、デモクラシーをいかに制限(抑制)するかに苦心して起草され制定された。
英国憲法もデモクラシーを政体の一部にとどめて、それを手放しで称賛するようなことは決してしなかった。
日本では、国会というものが国民一般の投票による代表(国会議員)によって構成される以上、デモクラシーは憲法上に認められた制度となっている。
だが、それは、政治の理念としてではない。
憲法の原理でもない。
デモクラシーに関わる憲法原理はあくまでも、自由や専制や全体主義に至らしめる危険なデモクラシーの暴走を如何に阻止するかである。
デモクラシーによって発生する国民の堕落と腐敗を如何に防止するかである。
憲法において、デモクラシーと関係する国会(立法府)が、中川草案では、司法と内閣(行政府)の三権のなかで最も低い地位に置かれている理由はこれである。
「平和」という概念には古来より、かつ世界広く普遍的に二つの対極的意味があるので、軽々に用いることが出来ない。
「奴隷の平和(自由と独立のない平和)」と「自由(独立)ある平和」である。
このため、「平和」がどちらを指しているかは「平和」だけでは分からない。
また「平和(peace)」は、「戦争(war)でない」という意味しかない。
例えば、かつてのバルト三国の如くソ連の支配と収奪を忍耐している状況をも「平和」と言うのである。
つまり、日本国が「自由ある平和」を望んで、一方周辺の侵略国が日本の「奴隷の平和」を望んだ場合に、仮に「平和」の言葉だけであれば、後者は前者が同意したとして侵略を正当化するものとなる。
自由と独立にとって、このように「平和」は危険な言葉である。
このために、通常、「平和」を用いず、「自由と独立」などという言葉を用いるのである。
さらに、レーニンが「平和(ミール)」に「世界共産化(ミール)」というイデオロギーの意味を持たせたために、日本でも共産党は共産化運動のことを「平和運動」と称している。
よって、ロシアが北方領土を全面返還し、中共が対日核兵器戦力を全て撤去し、共産党の平和運動やナガサキ・ヒロシマの核廃絶という狂気が完全に消滅するまで、日本の憲法と全ての法律は、「平和」という二文字を使うことは出来ない。
◇四. “美徳ある自由”と国家永続の生命源 - 憲法上に聖別さるべき「五つの制度」
自由は「法の支配」のほか、階級などの「中間組織」の存在に最も擁護されるが、君主制の働きも極めて大きい。
天皇を戴くことによって、日本国民の享受する自由が“高雅なる自由”となるばかりではない。
自由がナショナルな「相続(世襲)」によって、ある特定な国民に享受されるものとなるのは、君主制における「世襲」の法理が援用されているからである。
自由と君主制の不可分性は、近代的自由が英国という君主制国に発生した世界史の常識においても明らかだろう。
「皇室(天皇)は、日本国民の自由の淵源である」といってよいのである。
美徳は、伝統と慣習の土壌に咲いた美しき人間の感性に基づく行為であるが、それが「自然成長的な制度(spontaneous order)」に高度に発達したのは、日本であれば武士階級という担い手によってであり、ヨーロッパでは貴族によってである。
そして、封建体制の終焉に伴う近代以降にあっては、軍隊が武士階級を、軍人がサムライを代替して倫理・道徳を顕現する新しい担い手となった。
すなわち、名誉や大義のために個人の生命を犠牲にするという美徳を担う国家的組織と職業が国防軍と軍人である。
国防軍と軍人なくして、一国における美徳は確実にに萎えて涸れていく。
美徳はまた、社会全体に伝統と慣習が共有されていなくては棲息していけないから、具体的には家族にその自覚がありそれを子弟に教育することがない限り、美徳もその感性が磨かれず開花することはない。
一般的にも、最も発展した伝統と慣習が世代を超えて民族全体に共有されるには、家族という世代間を繋ぐ臍帯(せいたい、パイプライン)が不可欠である。
要は、家族とは、国家全体の倫理・道徳にとって基盤的な土壌である。
いかなる国家も、憲法において、“家族”が重視され特段の保護を受けるものと定める理由の一つはこれである。
また未来の子々孫々にわたる国家の連綿たる連続は、祖先から子孫に至る家族の血統の連続においてしか維持できないから、墓石と仏壇に象徴される家族による祖先の祭祀こそは国家永続の最重要な生命源の一つである。
国家は、内的には精神や徳性の衰退を招かないようにすべきだが、外的にも国家を物理的危害から守り続けない限りその生存は危殆に瀕する。
国家防衛への自己犠牲の魂が民族全体に漲って初めて国家は最小限の安泰の状況を獲得する。
日本国を守らんとした勇者の祖霊が眠る神域である靖国神社の杜こそは、日本国民の最も高貴な精神と魂が凝集しているのであり、それこそ国家永続の生命源の一つでなくて何であろう。
すなわち、日本国として聖別すべき「制度」は五つ有る。
天皇、国防軍、家族、墓石、靖国神社である。
これらは憲法において、その旨と精神とが、条文にて闡明されていなくてはならない。
◆現憲法の削除条項と大幅修正条項、および中川草案の新条項
◇一. 削除条項とその理由
前文 |
大東亜戦争に関する戦勝国への謝罪文。1952年4月のサンフランシスコ講和条約の発効をもって死文。自由社会の憲法にあってはならない「国民主権」などの不適切な用語がある。 |
第11条 |
「人権」は反憲法の概念。本書第五章参照のこと。 |
第13条第1項 |
「個人の尊重」とは「人間の個(アトム)化」を前提としており、アナーキズム若しくは全体主義に至る危険思想。「個人の尊厳」は伝統と慣習の宿る「中間組織」の存在と他者の支えが不可欠。「中間組織」の擁護が憲法原理であって、「個人の尊厳」は憲法としては排除すべきもの。 |
第13条第2項 |
生命・自由・幸福追求という「国民の権利」の一つは、中川草案第16条に統合。 |
第14条第1項後段 |
「法の前の平等」の重複説明部分は不要。 |
第14条第2項 |
華族は一部復活する。 |
第17条 |
国家賠償法に規定されている。 |
第18条 |
アメリカ黒人解法の定めは日本に不要。 |
第25条 |
不要。 |
第27/28条 |
「労働」の聖化は社会主義イデオロギーだから、自由社会の憲法に不適。「勤労の義務」化は、強制重労働収容所に直結する。その他は、法律で充分に定められている。 |
第35/36/37/38/39/40条 |
刑事訴訟法など法律で規定されている。 |
第89条 |
正しい憲法に違反する宗教絶滅運動「政教分離」に悪用されるので、削除。 |
第97条 |
自由社会の憲法にあってはならない「人権」の定め。 |
第98条第1項 |
自明にて不要。 |
第99条 |
不要。 |
第101/102/103条 |
経過措置の定めであり、現在では不要。 |
◇ニ. 大幅修正条項とその理由
第1条 |
元首である天皇を元首と明記する。「国民主権」は存在させてはならない。本書第一章参照のこと。 |
第3条 |
「内閣の助言と承認」は不敬用語で不適切。「奏請」が正しい言葉。 |
第8条 |
皇室財産については、旧制に戻す。第88条と統合する。 |
第9条 |
敗戦国の占領者への武装解除誓約の定めをいつまで残すのか。国防軍の創設を定める。本書第ニ章参照のこと。 |
第20条 |
日本に特有な宗教絶滅運動である「政教分離」は“正しい憲法”の拒絶するもの。本書第七章を参照のこと。第89条はここに統合。 |
第24条 |
「家族重視」は憲法の根本的規定の一つ。本書第三章を参照のこと。 |
第31/32/33条 |
中川草案第29条の一つにまとめる。 |
第88条 |
皇室財産は皇室に属する。第8条とともに、中川草案第10条にまとめる。 |
※三権の順序 |
現在の「国会→内閣→裁判所」の順序を、「裁判所→内閣→国会」とする。デモクラシーの政治機関たる国会はそのデモクラシー性の故に制限されるべきものということと、司法は自由社会にとって最も重視されるべきものであることの二点を、国民が日々、拳拳服膺するため。 |
◇三. 中川草案の主な新条項とその趣旨
中川草案 |
第2条第2項 |
皇室典範の非法律化。「改正は皇室の発議による」は、昭和天皇のご遺志。 |
中川草案 |
第10条 |
皇室財産の皇室への帰属。 |
中川草案 |
第11条第2項 |
「国防」のなかに「固有の領土防衛」を含む旨の定め。 |
中川草案 |
第13条 |
君が代と日の丸の定め。 |
中川草案 |
第17条第3項 |
英霊を祀る靖国神社を守る国民の義務の規定。 |
中川草案 |
第22条第3項 |
無神論者の反宗教活動の禁止。 |
中川草案 |
第48条第2項 |
立法における伝統と慣習の重視。 |
中川草案 |
第50条第2項 |
華族制度の部分的復活。 |
中川草案 |
第66条第6項 |
民法と刑法の改正等にかかわる審議における、参議院先議権の定め。 |
中川草案 |
第72条第2項 |
全体主義や無国家主義を指向する政党の禁止。 |
最終更新:2019年07月26日 18:51