優しいポケモン

「タブンネってポケモン知ってる?歩いているとき時々見つかる、揺れる草むらから飛びでてくるポケモンなんだけどね、 たっくさん経験値がもらえるの!」
ある日私は、ポケモンセンターでこんな話を聞いた。
丁度クチートの育成をしているところだった私は、このタブンネとやらと戦わせてまだ戦闘経験の少ないクチート鍛え上げることにする。
タブンネの話をしていた女の子から、タブンネは優しいポケモンだとも聞いた。ならば、たとえレベル差があってもむざむざ倒されることはないだろう。
私はいい話を聞いたと、ポケモンセンターを出て、手頃な草むらに入り、タブンネが飛び出してくるのを待つ。
他の手持ちポケモンを使いタブンネ以外のポケモンからまだ幼いクチートを庇いつつ、揺れる草むらを探した。
10分ほど草むらをうろついた頃だろうか。
「ミッ」
ガサガサと草むらが揺れ、茂みからピンク色のぽってりとした可愛いポケモンが飛び出てきた。
「あれがタブンネか・・・よし、出番だクチート!」
「クチャ!」
背後に控えていたクチートが元気よく飛び出していく。実際レベル差はかなりあったが、まあ大丈夫だろう。なんて言ったって相手は優しいポケモンだからな。
クチートがタブンネに噛み付こうと顎をいっぱいに開いた。その時だ。
「!?!?!」
突然タブンネがクチートに突進してきたのだ。私の可愛いクチートは大きく跳ね飛ばされ、後ろの木に叩きつけられてしまった。
「クチート!大丈夫か?!」
「きゅう・・・」
いくら物理攻撃には耐性があるとはいえ、クチートはまだ卵から生まれて間もないのだ。耐えられるはずがない。
タブンネは勝ち誇った顔をしてこちらの様子を伺っていた。
「どうして・・・優しいポケモンの筈じゃなかったのか?ちくしょう!」
頭に血が上った私は、相棒のモジャンボをボールから出し、タブンネを捕らえさせる。
タブンネは抵抗して喧しく喚いたが、今度はレベルで言えばこちらの方が遥かに上だ。
モジャンボはタブンネの全身を拘束したまま、ツルで執拗に叩きつけた。
「いい子だモジャンボ。そのまま放すんじゃないぞ。今日はお前たちに久しぶりに肉を食わせてやるぞ」

一旦ポケモンセンターに戻ってクチートを回復してやってから、改めてタブンネへのお仕置きを再開する。
とりあえず、手と足とを背中側に回しそれをツルで縛り、天日干しの柿の実のように木にぶら下げておいた。
タブンネは気絶していた。恐らく先ほどのモジャンボの攻撃を後頭部に食らったようだ。ぐったりとした様子で吊るされている。
顔を間近で見てみる。こんなポケモンにクチートを倒されたと思うと腹が立つが、これから此奴の身に起こるであろうことを想像すると苛立ちは消えて行った。
「ミッ、ミィ……」
お目覚めのようだった。
「ミ・・・ミィ・・・?ミィィィッ!?!?」
自分の身体の様子に、意外と早く気づいた。そして、あのとき聞いたキャンキャンとした喧しい声を出す。
逃れようと必死に身体を捩るが、到底逃げられない。箱縛りではどうすることもできないだろう。
「ミ、ミゥ・・・むぐっ!?」
首を掴んで背中のほうへ呷ってやる。縄の結び目にくっ付くほどにしてやると、タブンネは苦悶の表情を浮かべる。
「さっきはうちのクチートを可愛がってくれてどうもありがとう」
言いながら頭の先を縄の結び目にぐりぐりと押し付けてやると、さらに苦しそうにあえぐ。
首を開放してやるとタブンネは、肩で息をした。なんとか息を正すと、丸い瞳をこちらに向ける。
「いやね。今日は久しぶりにうちの可愛い手持ちポケモンたちにおいしい肉を食べさせてやろうと思ってさ、タブンネちゃん」
満面の笑みを浮かべてそう言ってやると、タブンネの顔はあっという間に真っ青になっていく。
不安と恐怖に染められていくその姿は、私の想像したとおりであり、あまりにも愉快だ。
「ミッ! ミィミィ!!」
タブンネは、急に必死になって騒ぎ出した。
「うるさいな……」
「ミィ! ミッ! ミィっ、ミギィギャアアアアアアアアアア!!!」
耳の下に付いている長い触角を一気にもぎ取った。断末魔が響き渡る。
これ以上のものがこの先控えているというのに、早いうちからこんなに叫んでいては喉が潰れてしまうではないか。
案外と容易くもぎ取れた。その間喧しく叫んでいたので、そこらへんにあった石を口に含ませる。おかげで此れ以降は静かな作業だった。

調理はクチートに手伝って貰うことにした。
雁字搦めのタブンネを木から下ろし、調理台の上へと移す。石は口から取り出しておいた。えぐえぐと唸っているだけで、静かなものなのでそうした。
「そうだね、まずは腕をお願いしようかな・・・うん、鮮度を保てるようにそのまま左腕を挽いてしまおう」
クチートは、私が器具を取り出している間に、巧いこと左手だけを開放した。見事なものだ。
タブンネの顔面を左手で押さえて、右手ではタブンネの左手を握ってみる。ぎゅっと握らせた上から包み込むように圧力を掛けて行くと、タブンネはだんだん涙目になっていった。
「骨ごと磨り潰せるかな?」
「クチッ!クチッ!」
クチートは大丈夫、早くやれと言っているようだ。選びぬかれた血統の親から生まれたエリートだっただけに、レベル差があったとはいえ簡単に倒されたことが苦痛だったのだろう。
「むぐ!」
途端、左手に痛みが走った。見れば顔を押さえていた私の左手をタブンネが噛んでいる。必死の形相で私の手に噛み付いている。あきらめてほしい、逃がしてほしい。そう言いたいのだろうか。
私は鼻で笑った。
「……クチート。首の辺り、背骨に添って切れ目を入れてくれないかな?」
クチートは返事もなく、一気に鋭利な牙を立てた。
「ミヒィ! ミグっ!!」
痛みに耐えられず、口を開いた。そこにすかさず握りこぶしを差し入れる。
「何しているのかな? タブンネちゃん」
「クチッ?!」
「問題ないよ、ありがとうね。……それで、何かなその態度は」
深く差し入れてやると、タブンネは次第に涙目になっていく。吐き気を催しそうになっているのだろう。
とりあえず、切り口から鮮度の低下が起きると、せっかくの肉が痛んでしまう。私は調味料を取り出した。

タブンネの上にはクチートに乗ってもらっている間に、七味唐辛子と、何やら丸だの棒だのを組み合わせたような文字が書かれている赤い瓶に入った唐辛子を混ぜ合わせたペーストを作った。
味見してみると、恐ろしくしびれる。これを、さきほどクチートに斬ってもらったところに塗りこむ。
「ミギャああああぁぁぁ!!! ミィ、ミいいぃぃぃ!!!」
暴れようとするが、クチートが肩を押さえ込んでいるため動けない。かなりの量のため、タブンネの口の中にも突っ込んでみた。
「っ~~~~~~~~!!!!」
涙と唾液を垂らしながら悶えている。嬉しそうにしているように見える辺り、人間の神経とはすごいものだと痛感した。
「それにしてもこのポケモンの口はよくない口だね。塞いでしまうか……」
眼から大量の涙を流しながら、いやいや、と首を小刻みに振る。その態度、嗚呼腹が立つ。
息苦しさに喘いでいるタブンネの額に膝蹴りを叩き込んだ。押さえ込んでもらっているので、タブンネの頭は思い切り後ろに反った瞬間に調理台に伏せた。ゴガンと気持ちのいい音が響く。
顔面は頬肉ほどしか使えそうなものがないので問題はないだろう。タブンネの脳味噌なんかは食べるとバカになるという評判である。
私は、そろそろクチートをいじめてくれたお礼をしてあげなくてはいけないと思い、タブンネの耳を引っつかんで何度も何度も私が飽きるまで調理台に叩き付けてあげた。
三十回は打ち付けた。ぐっと顔を持ち上げてみる。目の焦点は全く合ってなかった。
「そうだ、歯を抜こうか。耳もうざったいしちぎったほうがいいよね。そうだ、そうしよう! ね、タブンネちゃん」
タブンネの返答は無かった。

結局、春巻に使わなかったのは頭の部分だけであった。全身を使うとこれがどうして中々の分量であり、胴体などはむしろ余すところがなかった。面倒だったのと腹が立ったので、頭部は適当な方向に蹴り飛ばしておいた。
そして、肉の味は大好評であった。サーナイトは最初複雑そうな表情だったが、食事が進む頃にはすっかりご機嫌であったし、
モジャンボは御代わりを求めた。中でもクチートは非常に満足そうに持分を平らげていた。
臭いにつられて集まってきた野生のポケモン達にも些細な裾分けをした。どのポケモンも大変満足していたようだ。




「うう……。こわい、こわいよぅ……。どうして、みんな、私を襲うの……?」
ピンクの毛皮はすっかり汚れてしまっており、すっかり泥だらけだ。身体にも傷がついている。
――みんなの傷を癒したいだけなのに。
――なのに、みんな、どうして包丁とか鍋とかをもって追いかけてくるの……?
森の中、ぽつりと咲く一本の桜の下でぐずるタブンネ。
その周囲は、既に、狩猟の輩に囲まれており、後は料理長の合図を待つばかりである。
それは、タブンネ狩りの新しい日常――。



某所のいぢめSSを改変しただけです・・・
おそまつさまでした。


  • タブ春巻きか、旨そうだぜ -- (名無しさん) 2011-12-20 18:09:56
  • まだタブ肉が出回ってない頃かな?まぁそう遠くない内に色々な料理やフードの材料として捕獲される事だろうw -- (名無しさん) 2012-12-20 02:45:04
  • 人に噛みつくとか、とんだ害獣だわ -- (名無しさん) 2016-06-12 22:41:19
  • Lv1に負けるほど -- (ツツジは後輩) 2024-02-15 00:24:43
名前:
コメント:

すべてのコメントを見る

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2011年05月08日 10:57
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。