最近、若者層の野菜嫌いが広まっている。
野菜農家の俺として、この問題を何とか解決せねば・・・。 そう考えていると、下の階から友人の声が聞こえてくる。 「おーい、飯だぜ。今日は奮発してタブンネハンバーグだ。」
俺はキッチンで作りたてのハンバーグを頬張る。 「タブ肉は本当に旨いな。野菜もタブ肉の味なら人気かもなwww」
友人のその何気ない冗談を聞いた時、俺の脳に電気ショックのようなものが走る。
野菜・・・・・タブ肉・・・・・ 俺はハッとしていう。
「そうだ!タブ肉味の野菜を作ればいいんだ!!」 友人は?という顔で俺を見る。 「ハァ?そんなん無理だろ!」 「いや、やってみないとわからない!」 俺は一気にハンバーグを口の中に放り込むと、研究室に走った。
翌日の研究室には、様々な野菜と草ポケモンが集められた。 そして、一匹のタブンネ。
俺は相棒フーディンの力でタブンネを固定し、そこへ草エネルギーを送る。 特殊なフィルターで性質を変換したエネルギーがタブンネに送られる。
すると、タブンネの腕がキュウリのように変化していく! 「ミ、ミィ、、、、」 タブンネは自身の腕がなぜこんな姿になっていくのか、と困惑している。
それ以上の変化はなかったが、それでも大きい成果だ。
俺はその日から研究に研究を重ね、3ヶ月後、ついに誰も想像しなかった装置、 「ベジタリアン・ミィ」を開発した。
使用法は簡単。まず野菜をセット、次にタブンネをセット、後はレバーを引くだけ。 緑の閃光がほとばしり、ミィィィィヤァァァァァァという悲鳴がすると・・・
タブンネちゃんがお野菜に。
今回はトマトでやってみた。タブンネがトマトの被り物をしたような見た目だ。 ためしに切ってみる。
ザクッミギャァッ
おお、中までトマトだ。食べてみると、タブ肉とトマトの味が絶妙なバランスでマッチしている。
しかし、これでは野菜嫌いはあまり解決しないのでは、と思う人もいるだろう。 だが、このタブ肉味トマト・・・もとい「トマトンネ」で野菜も美味しいことに気づいてもらい、普通の野菜も気兼ねなく食べてもらうことが狙いだ。
俺はこれをスーパーなどで売ってもらうことにした。
発売から一週間。 「ベジタリアン・ミィ」は飛ぶように売れ、ネット上には様々な野菜化したタブンネや、レシピが公開された。 「ダイコンネ」「タマネギンネ」「セロリンネ」「キャベツンネ」などの野菜ンネが誕生し、 一家に一台と呼ばれるほど売れた。 イラスト投稿サイトには野菜ンネのイラストが多く投稿され、ミィミィ動画には「野菜ンネ」のタグが出来、 ついには流行語大賞を受賞した。
あれから2年が経った。 以前は店頭に並んでいたそれの姿はない。 だが、いまのイッシュ地方の食卓では、野菜が好んで食べられている。
(おしまい)