ここはタブンネハンター養成学校。一流のハンターを目指すものが遠い地方からもやってくる、大きい学校だ。
学校はこの辺りの樹海を敷地としていて、1haほどある。この中にはタブンネはもちろん、様々なポケモンが生きている。
今回は、実際のタブンネ狩りを想定した大規模な演習を行う。教官の指示のもと、訓練生達はそれぞれ「森」
「川辺」「山岳」のエリアに着く。手元には3匹のポケモンを自由に用意できる。今回は、山岳エリアに分担された訓練生A氏の目線で伝える。
朝8時、講堂に集められた訓練生は、緊張と興奮に胸がいっぱいだ。そこへ教官が入ってくると一気に辺りが静まる。教官は深呼吸をして、咳払いをした。
「諸君、今日はいよいよ演習実行日だ。これまでの多大なる訓練の成果を遺憾なく発揮し、気を引き締め、全力で臨むように。」
それだけ言うと、力強い眼差しで一同を見つめ、段を降りた。
いよいよ始まるのだ。この5ヶ月間に渡る訓練の成果が発揮される時が。
A氏の手持ちは、シュバルゴ、バクフーン、ドーブルの3体だ。規律上、ポケモンは3体までとされる。これは、沢山のポケモンを扱うより少数で戦う方がハンターの成長に繋がるためだ。
山岳エリアの入り口で、信号弾が打ち上げられる。現在時刻9:00。ついに、24時間にわたる演習が始まった。演習は、24時間で何体のタブンネを狩れるかで判断し、倒した個体からとった尻尾で数える。
「行くぞ、皆。」
A氏はボールから出した3匹と共に山を登り始めた。
ここの山は人の手がほぼ加えられていない。つまり、道なき道を行くことになる。
山を登り始めてからまもなく、木の陰にいるピンク色の塊を見つけたA氏は、バクフーンにでんこうせっかを指示する。突然の奇襲を受けたタブンネはミギャァ!といって吹っ飛ぶ。そこへニトロチャージを食らわすと、木にぶつかって動かなくなる。手から木の実がころり、と落ちた。そこに、子タブンネが走ってくる。ミィ、ミィ、と揺さぶられるタブンネはぴくりとも動かない。A氏はドーブルと協力して2ひきいた子タブを掴み上げ、尻尾を切り落とす。ミィギィイイと苦しそうに鳴く子タブを藪に投げ捨て、親ンネの尻尾もきる。ついでに肉も調達し、バクフーンにこんがりと焼いてもらった。
A氏が順調に狩を進める間に、養成学校について触れよう。この学校は70年ほど続く学校で、ここから多くの有力ハンターが輩出された。虐待愛好会会長もここを出ている。この学校は大きく分けて4つのランクに分けられている。下から、ジャック、クイーン、キング、エース。ジャックは入学したばかりの者や、経験の浅い者。
クイーンはそれなりの実力を得て、経験もある、アマチュアレベル。キングは豊富な経験と確かな腕前を持ったもの。A氏も今年これに昇格した。ここで2年間続ければ、晴れて卒業となる。そして、エース。これは、常軌を逸した腕前をもち、並々ならぬ素質を持った超人たち。会長はここのトップだった。現在のトップはF氏で、今回の演習の最有力候補。本人は、「私はまだまだ未熟者だ」と語っているが、タブンネの狩猟数は軽く3万を超える。タブンネを狩ってくらす一族の末裔で、「相棒」ことオノノクスとは絶対的な信頼を交わしている。
昼過ぎ、A氏は懐から焼いたタブ肉を出し、一口齧る。そしてすぐにしまって、辺りを見渡す。ミィ、ミィ、というかすかな声がこちらへ近づいている。草むらが揺れ動いたかと思うと、大量のタブンネが現れる。A氏を指差し、何か言っているようだ。数は増え続け、150匹ほどになった。あまりの数の上、いやしの波動で回復しあうため、厄介だ。
「くそッ数が異常だ・・・」
今年になって大量発生したというが、こんなにとはおもってもいず、バクフーンやシュバルゴのスタミナも切れてきた時、
「オノノクス、剣の舞。」
一角からこえがした。訓練生の誰もがあこがれる、F氏・・・フェイマス・アーサーだ。
「通り掛かったらこの様だ。オノノクス、剣の舞を積め。」
A氏は驚いて一瞬硬直したが、すぐにスキルスワップでさっきタブンネからスワップした特性「たんじゅん」をオノノクスにスワップした。これによってオノノクスの能力は短時間で飛躍的に上昇、再びスワップして元のかたやぶりに戻した。
「気が利くな。ありがとう。オノノクス、げきりんで奴らを討て。」
そこからはもう一瞬だった。あっという間にタブンネの屍は累々と積み上げられた。最後の一匹を片付けたオノノクスはキーの実を食べた。血で赤く染まった牙と爪をハンカチできれいにしたフェイマス・アーサーは何も言わずに立ち去った。
夜になった。何枚かのジャーキーにしたタブ肉を皆で頬張り、捕まえた子タブを生きたまま串焼きにした。その味は野性的で、1日中走り回った疲労を取ってくれた。ドーブルのがんせきふうじでバリケードを作り2時間ほどの仮眠を取った。
夜も更けて、月光が辺りを照らす。森に住むホーホーやヨルノズクの声が聞こえる。
タブンネや野生のポケモンに警戒して歩きつつ、A氏はこれまでのことを思い返していた。
タブンネ狩りに興味を持ち、知人に進められたこと、心臓が破裂しそうなほど緊張して面接を受けた日の事、そこで出来た仲間との日々、ときに厳しく指導されたこと、そしてキングランク昇格の喜び。
様々に思いを馳せていると、目の前にタブンネが一匹現れた。体毛は紫色。夜は普通の個体も紫に見えることがあるが、A氏は経験から、すぐに色違いであると分かった。
色違いは、捕獲すれば例外的に高得点になる。これは、色違いの遺伝子を取り出して利用するためである。
A氏は色違いに遭遇した時のことも考え、シュバルゴにみねうちを覚えさせていた。ボロボロになったタブンネの捕獲は容易だった。
そして、演習はおわった。
トップはやはりフェイマス・アーサーだった。尻尾の数は127本。2位は98本だった。A氏は63本。これでも高い記録であることから、いかにエースのトップは凄いかお分かりいただけただろう。
最後に、学校長からのメッセージを贈る。
「タブンネ狩りに少しでも興味を持っていただいたら、ぜひ本校に入って、本場の狩りを体感していただきたい。そして、自らを高めていってもらえたら何よりだ。」