「チィー!チィー!」 
ゴミ回収所の側に置かれた段ボール箱。中に2匹の子タブンネがいます。 
飼い主に捨てられたのです。 
1匹は助けを求めてチィチィ鳴いていますが、もう1匹は痩せ細ってぐったりしています。 
果たして誰か拾ってくれる人はいるのでしょうか。 
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        | + | ハッピーエンド | 
「わぁ、タブンネだ。かわいいなあ!」 
ランドセルを背負った女の子が、しゃがみこんで箱を覗き込みました。
 「チィチィ…」
 お願いだから拾ってと訴える子タブンネと、衰弱しているもう1匹を女の子は見つめます。
 「よしっ、あたしが飼ってあげる!」
 女の子は段ボール箱を抱えると、自分の家まで小走りで帰りました。
 
 
 
「ママ、タブンネが捨てられてたの!小さいのにかわいそうだよ、飼ってもいいでしょ?」 
「あらあら、パパが何て言うかしらね」
 「パパにはお願いするよ!ちゃんと面倒見るから、ね、いいでしょ!」
 「ふふっ、困った子ね。じゃあミルクでも飲ませてあげなさい」
 ママからお古の哺乳瓶を出してもらった女の子は、子タブンネにミルクを飲ませます。
 「チィチィ♪」
 うれしそうな顔でちゅうちゅうとミルクを飲み干す子タブンネ。
 女の子はもう1匹の衰弱していた方にもミルクを与えました。
 「チィ…チィ……♪」
 生気が戻って来たらしく、こちらも弱々しいながら笑顔を見せました。
 「うふふっ、よかったね!元気になったら一緒に遊ぼうね!」
 
 
 
捨てる神あれば拾う神あり。子タブンネは女の子と幸せに暮らしたのでした。 
 
 
 
(ハッピーエンド・完) 
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        | + | バッドエンド | 
「おっ、タブンネか。ちょうどよかった」 
ダンボール箱を覗き込んだのは、貧乏学生風の若者でした。
 「チィチィ…」
 子タブンネはちょっと嫌な予感がしましたが、もう1匹がどんどん弱っているので、
 とにかく一刻も早く助けが必要です。「拾って」と手を伸ばしました。
 「よーしよしよし」
 若者は段ボール箱を抱えると、いそいそと学生寮に帰りました。
 
 
 
「おーい、いいもん拾ってきたぞ」「おっ、ナイス」 
寮の食堂には学生達が集まっていました。鍋パーティーが開かれるため、
 皆それぞれに具材を持ち寄っていたのです。
 「毛だけ剃っておくか?」「面倒だ、そのまま入れちまえ」
 先に野菜と調味料が入れられた鍋は、既にぐつぐつと煮えたぎっています。
 段ボール箱を拾った若者が、子タブンネを鍋に放り込みました。
 
 
 
「チギャァァァァァァァァ!!!!」「ほーら、往生しろや」 
絶叫を上げて暴れる子タブンネですが、菜箸で押さえつけられて鍋に沈められます。
 「チビィ……チビィィ……」
 だんだん小さくなっていく悲鳴を聞きながら、段ボール箱の中の衰弱している子タブンネは
 プルプル震えることしかできません。逃げ出す体力もなく、料理されるのを待つのみです。
 「おーい、もう1匹も入れようぜ」という学生の声が聞こえてきました………
 
 
 
捨てる神はあっても拾う者は神とは限りません。こうなるのが2匹の運命だったのです。 
 
 
 
(バッドエンド・完) 
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        | + | ワーストエンド | 
「何だよ、生きてるじゃねえか。全くルールを守らねえ奴ばっかりだな」 
子タブンネを見つけた清掃業者がぶつくさ文句を言います。
 「チィチィ…」
 何と言われようと、子タブンネは必死です。弱っていく子を助けてと、
 小さなお手手を清掃業者に伸ばしました。
 「いいよ、面倒くせぇ。このくらいの大きさなら生ゴミ扱いでいいだろ」
 そう言いながらもう一人の清掃業者が段ボール箱の蓋を閉め、ゴミ収集車に投げ込みます。
 「チッ!?」「チヒィ…」
 閉じ込められた子タブンネ達は真っ暗な中でうろたえますが、その耳に機械音が聞こえてきました。
 ゴミ収集車の回転板が作動し、ゴミ袋をプレスしていくのです。
 「ヂギャァーッ!!」「チヒィィィィ!!」
 バキバキと段ボール箱が潰されていき、子タブンネ達は気を失いました。
 
 
 
どれくらい時間が経ったのか、子タブンネが目を覚ますと、段ボール箱は破けて外が見えていました。 
「チ……チィチィ!?」
 横を見ると、衰弱子タブンネの死体が横たわっていました。全身グシャグシャの無残な有り様です。
 「チィ……チィィ……」
 泣きながら子タブンネは外に出ようとしますが、全身に激痛が走ります。
 辛うじて生き残ったものの、ゴミ収集車に砕かれた体は思うように動いてくれません。
 それでも必死の思いで、這いずりながら箱の外に出た子タブンネは愕然としました。
 そこはゴミ廃棄場の埋め立て地の中でした。地平線までゴミだらけです。
 「チィチィ…!」
 呼べど叫べど誰も答える者はいません。このままゴミの中で飢えと苦痛に苛まれながら朽ち果てるしかないのです。
 「チィ…!チィィーーー!!」
 悲痛な声は、空しく北風に吹き消されていくのでした。
 
 
 
捨てる神あればもっとひどいところに捨てる神あり。「地獄に底はない」というお話でした。 
 
 
 
(ワーストエンド・完) 
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-  もっと底無しの地獄でもよし!   --  (名無しさん)  2022-12-13 22:34:11 
最終更新:2013年11月09日 00:28