汚れある至福・母タブ視点

これはペンドラーの最初の犠牲になったタブンネ親子です。

私はヒヤリングポケモンのタブンネ、天使の羽のようなお耳にクリームのようなフワフワな尻尾とハートの形をした肉球がとってもかわいいピンクのポケモンさんなの。
私は今、二匹の子供と暮らす三人家族です。私の子供も私と一緒で、とってもフワフワモコモコしててポッコリ温かいお腹がかわいい天使のような存在です。
今日も「ママ~、だっこしてよ~」「あたまなでなでしてよ~」と甘えて私のお腹にお顔をうずめてきます。
ああ、なんてかわいい坊や達でしょう…。ママみたいに世界一かわいいわ♪
はやく大きくなって、ママみたいに立派な大人タブンネさんになってうんと幸せになるのよ。大丈夫!そのかわいいお耳と尻尾があれば妖精グループのみんなにモテモテになれるんだから!
そう言って私は坊や達を抱っこしてキュッと抱き締めました。モコモコのお腹がとってもかわいい♪
「チャアイ♪チィィ♪」と坊や達も喜んでるみたい。ウフフ、ママもうれしいわ♪


今日はとってもいいニュースがあるの!少し前に生んだ二つのタブンネの卵、そのうちの片方がもうすぐ生まれそうなの!
卵にお耳を当てると、中で赤ちゃんのコトコト動く音がします。早く生まれてこないかなぁ、そう思って私はギュ~ッと温かいお腹にその卵を抱き締めたの。
そしたら卵の動きがだんだん大きくなっていって、ピシ、ピシ、ってひびがはいったの!やったぁ!赤ちゃんが生まれてくるわ♪坊や達も興味津々で卵のことをみてるよ。
「チィ~、チィチィ♪」 パカッ
あ、赤ちゃんが生まれてきたよ!かわいい鳴き声をあげてママ~って私にちいちゃなおててを伸ばしてるわ。
私はすぐに生まれてきた赤ちゃんのことをペロペロなめて体の粘液をきれいにしてあげました。
それがくすぐったいのか、赤ちゃんは「チャィイ、チィィ♪」って鳴いて体をクニクニ動かします。そのあとはピンクのおけけを整えてあげて、私のお乳をたくさん飲ませてあげたの。
顔中まっ白にして私のおっぱいにお顔をうずめるかわいい赤ちゃん…よしよし、またお顔をなめてママがきれいきれいしてあげるからね♪
赤ちゃんが生まれて坊や達もとってもうれしいみたい、二匹そろってバンザイしてるよ。
新しい家族がふえて私もすっごくうれしわ!早くもう一つの卵からも生まれてこないかなぁ。
赤ちゃんはお乳をたくさん飲んだからお腹いっぱいになって私のお腹の上でねんねしちゃった。ウフフ、寝顔もとってもかわいいよ♪
坊や達も「ぼくもぼくも~」って赤ちゃんみたいに私のお腹の上にのぼってころころ寝転がってるよ。
もう、甘えんぼさんのお兄ちゃんなんだから♪
そのうち坊や達も私のお腹の上でスヤスヤ眠っちゃった、フワフワでポヨポヨの私のお腹の上が気持ちよかったのね。
今日はそのままみんなで眠ってしまいました。

「チャアイ♪」 「チィチィ~♪」 「チッチッ♪」
坊や達や赤ちゃんの楽しそうな鳴き声で私は目を覚ましました。
坊や達は赤ちゃんを交互に抱っこしてあげたり、ペロペロなめてあげたりして遊んであげていました。
偉いわ、さすがお兄ちゃんね♪ 私はみんなの頭をなでなでしてあげました。
「チィイ♪」 「チャァ~♪」 「チィチィ♪」
今日はね、赤ちゃんに初めてのお外の世界を見せてあげようと思うの。
お外にはね、キラキラのおひさまがあったり、きれいな小鳥さんの鳴き声もきこえたりするんだよ。あと赤ちゃんはまだ食べられないけど、おいしくて甘いタブンネの大好物の木の実もあるのよ。大きくなったら赤ちゃんも一緒に食べようね♪

赤ちゃんと卵を抱いて私は巣の外に出ました。おひさまの優しい光が私達をつつみます。
坊や達も一生懸命になって私の後ろをヨチヨチとついてきます。大丈夫よ、ママがペースを合わせてあげるから。
「チィィ?チィ、チィ!」
赤ちゃんには目に映るもの、耳にきこえるものは全部初めて、物珍しそうに周りをキョロキョロ見回しています。
あれがおひさまよ、あれが小鳥さんよ、って私は赤ちゃんに色々と教えてあげました。
坊や達も楽しそうに二匹じゃれあっています。

「チイィ!」
すると急に坊や達のうちの一匹がポテポテと走りだしました。
どうしたの?と後を追ってみると、大きな穴の前にたどりつきました。坊やはその前でぴょんぴょん跳ねて、「ママ、おおきなどうくつをみつけたよ!はいってみようよ!」と私の手を引きます。
ちょっと怖かったけど私達はその穴の中を覗いてみました。すると中にはポケモンさんの卵が五つ程置いてありました。
どうやらこれは洞窟ではなく、ほかのポケモンさんの巣だったようです。
勝手にほかのポケモンさんの巣の中に入ったりしたら危ないので、子供達を連れてそこを離れました。

少しすると、道で人間さんに会いました。人間さんは変なノズルを持って歩いていました。「さっちゅうざい」と書いてあります。
でも私にはそんなことはあまり気になりませんでした。だってそれより人間さんに会えたことがうれしいんだもん♪
私、人間さんのことがだぁいすきなの。だって人間さんはとってもタブンネ達に優しくしてくれて、かわいいかわいいっていつも頭をなでなでしてくれるんだよ。それでおいしい木の実もたぁくさんくれるの!
「ミッミッ♪」
私がかわいく鳴いたら人間さん、気付いてくれて「やぁタブンネちゃん、今日もかわいいね」って頭をなでなでしてくれたんだ。うれしいなぁ♪
坊や達も人間さんに「チィ~♪」って甘えてる。
赤ちゃんは最初は初めての人間さんにちょっと怖がってたけど、触覚を人間さんの胸に当ててあげたら、人間さんの優しくて温かい気持ちを感じとって安心したのか「チィチィ」甘えだします。
タブンネのくるくるの触覚は人の気持ちを感じとれる自慢の触覚なんだよ♪

「よしよし、赤ちゃんタブンネちゃんもお人形さんみたいでかわいいな」って人間さん、赤ちゃんを抱いてとっても癒されてる!
タブンネはみぃんなかわいいからいろんな人の癒しになるんだ♪得に人間さんは大好きだからいつも、坊や達と一緒にかわいく鳴いてうんと癒してあげてるんだ。

でも今日は人間さん、用事があってすぐにいかなきゃならないみたい…がっかり…
私達と別れる前に人間さんは「ちょっとタブンネちゃんにききたいことがあるんだけどいいかな?」って質問をしてきました。
人間さんのために役に立つことなら何でもしてあげたかったから私は大きく頷いたよ。
「じゃあ、タブンネちゃんこのへんでペンドラーとかフシデとか見かけたりしなかったかい?」すると、そう人間さんはきいてきました。
ペンドラーさんもフシデさんも見なかったから、私は首を横に振ったよ。
「そうかい、じゃあどこかでペンドラーの巣は見かけなかったかい?」
ペンドラーさんの巣?ペンドラーさんの巣かどうかはわからなかったけど、ポケモンさんの巣ならさっき見ました。それを人間さんに言うと、
「本当かい?じゃちょっとその場所に案内してくれないかい」と人間さんは言いました。
何で人間さんはペンドラーさんの巣の場所を知りたいんだろう?そう思いながらも私は人間さんをその巣のあった場所へと案内してあげました。
巣には相変わらず五つの卵が置いてあります。
巣の前にきた人間さんはその卵を持って「よし、これはフシデの卵だ。五つも生んでやがる…」と小さく呟きました。どういう意味だろう?
「ありがとうタブンネちゃん、おかげで害虫が生まれる前に退治できそうだよ」
ニッコリ笑った人間さんはそう言って私にお礼をいいました。
がいちゅう?たいじ?よくわからなかったけど、人間さんの役に立ててうれしかったから自然と笑顔になったよ♪
そのあと人間さんは私達にお礼だよって木の実をくれたんだ!わーい、やったぁ。
「チィチィ♪」って坊や達も大喜びしてるわ♪はやく巣に帰ってみんなで仲良く食べようね。あ、赤ちゃんにはうんとおいしいお乳をあげるからねっ♪
私達はそのまま自分達の巣に帰りました。
今日は人間さんの役に立てて本当にうれしかったな♪これでタブンネ達はおりこうさんだって人間さん達の間に広まるかな?みんなにほめてもらえるかな?ウフフ♪

それから三日が経ちました。
そしたらついにもう一つの卵も揺れて中から音が聞こえるようになりました。
もうすぐまた新しい家族が生まれてくるのね、これから大忙しね♪
私は卵にお耳を当ててみました。中から赤ちゃんの呼吸する音が聞こえるよ、それでたまに「はやくママにあいたいよぅ、だっこしてもらいたいよぅ」って小さな鳴き声も聞こえてくるの。ああ、早く生まれてこないかなぁ。
そう思いながら卵をギュ~って温めてたら坊や達や赤ちゃんが「ずるい~ぼくたちもだっこ~」って怒らせちゃった。
ごめんね、みんなもすぐにギュ~ってしてあげるからね、待ってる間に木の実でも食べててね♪
そう言って坊や達に木の実をあげようとしたら、あることに気が付きました。
いつも木の実を入れてある箱に、もう木の実が少ししか残っていなかったのです。最近坊や達は食べ盛りでおいちいおいちいってたくさん食べてたからなぁ。

でも大丈夫、また人間さんに貰えばすぐに解決よ。最近、近くに人間さんのお家がたくさんできてるから私達が会いにいけばすぐに会えるしね♪
ついでに私の新しく生まれた赤ちゃんと、もうすぐ生まれる卵も見せてあげようっと、きっとみんなかわいいってほめてくれるわ、もしかしたらいつもより多くの木の実がもらえるかもしれない♪
人間さんに木の実をもらうために私達は巣を出ました。
さて、人間さんはどこにいるのかな~。と私は耳を澄まします。
タブンネのかわいい天使のお耳はとってもよく音が聞こえるの、このお耳があればすぐに人間さんの居場所がわかるわ。
『アハハ、ハハハ』
…あ、聞こえてきた。人間さんの笑い声!この近くの広場からだわ。よーし、すぐにそこにいこう、坊や達もママについてきて!

広場につくと人間さんが三人、楽しそうに遊んでいました。あ、人間さん手にお菓子を持ってる!私達にくれるといいな♪
「ミィミィ♪」
私は卵と赤ちゃんを両手に抱いて人間さんに近付きました。坊や達もヨチヨチと私の後ろをついてきます。
「ミッミッ♪ミィイ~ン♪」
私の鳴き声に気が付くと、人間さんが集まってきました。みんな口々に私や赤ちゃん達のことをかわいいって言ってくれます。私の思った通り♪
次は人間さんにうんと甘えておいしい食べ物をもらわなくっちゃ。
「ミィ♪ミィミィ♪」 「チィチィ♪」 「チュィィ♪」
私達はみんなで人間さんにかわいく甘えました。お耳を揺らしたりフワフワな尻尾をふりふりさせたりしたら、人間さん達もみんな笑顔になって坊や達にお菓子をくれたよ、
「わ~い、おかち、おかち~」って坊や達、ぴょんぴょんはねて喜んでる♪
それで人間さんは私にも木の実をくれたの、やっぱり人間さんって優しくてだぁいすき!
私達はしばらくの間、人間さんと一緒に遊びました。赤ちゃんも、もうすっかり人間さんに慣れて高い高いをしてもらって「チャアー♪」ってとっても楽しそうだわ、私、今とっても幸せ!

たっくさん遊んだ後、私達は人間さんと別れました。
「タブンネちゃんまたあそぼうねーっ」って人間さんは手を振ってくれました。
まだ遊び足りなかったのか、名残惜しそうにして坊や達も手を振り返します。私は卵と赤ちゃんで両手が塞がってて手を振れなかったけど、かわりに赤ちゃんが「チュピィ~♪」って私の手の中で人間さんに向かってちいちゃな両手をいっぱいに振ってくれました。
さすが私の赤ちゃん、かわいくてとってもいい子だわ♪

今日は人間さんにたくさんお菓子や木の実がもらえたな、坊や達のフワフワの尻尾からは木の実やお菓子がはみ出してる。
今日はたくさんお菓子や木の実があるから今夜はみんなで新しい赤ちゃんが生まれてくることを記念してパーティーでもやろうか♪
私がそう提案したらもう坊や達は「パーティー♪パーティー♪」 「わーいわーい♪おかちパーティー♪」って大はしゃぎ!卵もうれしいのかコトコト揺れてるよ!きっと今夜には生まれてくるわ、楽しみ♪

…ん?
はしゃぎ回る坊や達を注意していると、私の自慢のお耳が何かの音を察知しました。
ズシ、ズシ…って何の音だろう? …ああ!これってもしかして大型ポケモンさんの足音! 私はすぐに後ろを振り返りました。

そこには怖い顔をした大きなペンドラーさんがいました。フーッフーッって荒い息遣いをしてて、触覚を当ててみなくてもすぐに危ないって気付きました。坊や達もすっごく怖がって震えちゃってる…
私は坊や達を自分の後ろにやってペンドラーさんを威嚇しました。かわいいタブンネだって坊や達を守るためなら威嚇だってします。
ペンドラーさんを睨み付けて歯をむき出しにして精一杯威嚇しました。坊や達や赤ちゃんにはママの怖い顔はあんまり見せたくなかったけど仕方がありません。
ところが、ペンドラーさんはニコニコして私の威嚇に全く動じていません。
…どうしよう、逃げようにも坊や達はまだヨチヨチ歩きだし、両手も卵と赤ちゃんで塞がってるし…
それにこのペンドラーさん、怖い顔だったと思ったら急にニコニコしたりして何を考えてるのかわからなくて恐いよぉ…私も涙が出そうになってきたよ…
そんなことを考えながらも「私達に近付かないでっ!」って威嚇を続けてると、ペンドラーさんがまた怖い顔になったと思ったらいきなり私のことを突き飛ばしたの!
きゃああ~! ドンッ
いたいよぉ…木に思い切り背中をぶつけちゃった…。ああっ、卵と赤ちゃんを落としちゃった!!
慌てて私は周りを見回しました。…よかった、卵はなんとか割れてなかったよ。でも赤ちゃんは怪我をして「いたいよ~」って泣いてる!
今すぐいやしのはどうをうってあげなきゃ!背中がズキズキ痛むけど私は赤ちゃんの元へと走りました。
でも、何かが足に引っかかって転んじゃったよ…、その時お顔を地面にぶつけて血が出てきてる…。人間さんがいつもかわいいねってほめてくれる大事なお顔なのにぃ…
それでも頑張って赤ちゃんの元へいこうとする私を、ペンドラーさんはまた木にたたきつけて何度も何度も私のお顔や体を大きな角で打ち付けてきました。
「いたぁい!」「いやっ!!」「やめてぇっ!!」とどんなに叫んでもペンドラーさんは止めてくれませんでした。
ああっ、私のかわいいピンクの体がボロボロになっちゃうよぉ!大切なお顔を傷付けないでぇ!!
少しして木が折れたと思ったら、ペンドラーさんはやっと攻撃をやめてくれました。
いたいよ…きれいなピンクの体が痣と血だらけになっちゃった…歯も何本か折れちゃってるし、これじゃあ大好きな木の実も食べられないよ…

何で私達何もしてないのにこんなことされるの…?
タブンネはみんなを癒してあげる優しくてかわいいポケモンさんなのに… ああ、坊や達はすっかり怯えちゃって二匹抱き合って泣いてる…赤ちゃんも「いたいよぅいたいよぅ、ママはやくだっこちてよぅ」って固い地面の上をコロコロ転がって泣いてるよ…今すぐ抱っこして私のフワフワのお腹の上でなでなでしてあげたいけど体が痛くて動けないよ…
ペンドラーさんは私のことを見下ろしてる…すごく怖い顔してるよ…

ペンドラーさん、どうして私達にこんなことするのかわからないけどもうやめて、これ以上攻撃されたら私、死んじゃうよ…
私にはかわいい子供とまだ生まれたばかりの赤ちゃんもいるの、ペンドラーさんにも家族がいるでしょ?
だからお願い、助けて、殺さないで…
私はサファイアの瞳をうるうるさせて胸におててを当てて必死にお願いしました。
いくら乱暴なペンドラーさんでも、私のうるうるおめめを見ればきっと癒されて落ち着くはずです。
あ、坊や達もペンドラーさんに私のことを傷付けないでって、かわいい天使のお耳とフワフワの尻尾を動かしてお願いしてる…
かわいい坊や達もお願いすれば、きっとペンドラーさんも見逃してくれるわ。もしかしたら私達にごめんなさいをしてくれるかも!


ああっ!何するの!私の大事な卵に!!
信じられないことにペンドラーさんは、私の卵の上に足を乗せたの!
やめてぇ!!そんな大きな体で乗ったら私の大切な卵が潰れちゃうよっ!もうすぐその中から赤ちゃんが生まれてくるのにぃ!
坊や達も「たまごになにするの!?あしをどけて!!」って訴えてる…
ペンドラーさん!お願い、足をどけて!卵を返して!!
そしたら、ペンドラーさんは自分の棘を一本折って、これで坊や達のお耳を刺した後、尻尾を千切って差し出せって言ってきました。

できないよっ、そんなことできる訳ない!!タブンネのかわいいお耳も尻尾も大切なアピールポイントなんだよ!?
みんなにかわいいねって言ってもらえるタブンネの命の次に大切な部分なんだよ!?
坊や達は大きくなったら、そのお耳と尻尾を使って妖精グループのみんなにモテモテになるんだよ!?
それをみんな奪うような真似なんかできない!
私がそう言って首を振ったらペンドラーさんは卵に乗せた足に少しずつ体重をかけていきました。
ああっ!卵からミシミシ音が鳴ってる!潰れちゃうよっ!!私の卵がっ、潰れちゃうよっ!!
卵の中から赤ちゃんの「こわいよぉ、ママたちけてぇ」って声が聞こえるよっ、やめてっ!お願いだからっ!!
そしたら、ペンドラーさんはやるかやらないのかはっきりしろって言いました。

そんな…坊や達のかわいいお耳を傷付けるなんて…そんなこと…でも、このままじゃ卵が潰されちゃうよぉ…
私は坊や達の方を見ました。二匹ともお耳を押さえて怖くて泣いてる…
そうだよね、大切なお耳を傷付けられるなんていやだよね?
…でも大切な、坊や達と同じくらい大切な卵が…ペンドラーさんは相変わらず私達を鋭い目で睨んでるよ…

私は震える手で棘を拾いました。そして、抱き合って震える二匹の坊やのうちの一匹を抱き上げました。
私の手の中でプルプルと震えて泣いてる私の子…やっぱりこの子を傷付けるなんて…苦しいよ…

…ごめんね…ちょっと痛いかもしれないけど、卵を助けるために我慢してね…?
坊やはおめめをキュッとつぶってちいちゃなおててを握り締めてる……ごめんね!ごめんね!

「いだあああぁぁい!!」

棘がお耳に当たった瞬間、坊やは大絶叫しました。そして私の手を振りほどいてお耳を押さえて転げ回ります。
「いたぁい、いたいよぉ、おみみからちがでてるよぉ!」って坊や、すっごく痛がってる!まさかこんなに痛がるなんて…
ああっ、どうしよう、どうしよう!? あっ、そうだ、いやしのはどうをうってあげなきゃ!!
私がいやしのはどうをうってあげると、坊やのお耳の傷はすぐにふさがって痛みもなくなったみたいだけど、坊やすっかり怯えちゃってもう一匹の坊やの後ろに隠れちゃった…

坊や…すっごく怯えちゃってる…やっぱり…やっぱりできないよ!あんなに痛がってる坊やのお顔なんて、もうみれないよっ、
タブンネはみんなニコニコして幸せなお顔をしてるのがお似合いなの、なのにあんな痛がってるお顔…見てられないよっ!
もうこれ以上、私の坊やを傷付けるなんて絶対にできないよ!
私はペンドラーさんに土下座をして謝りました。私達は何も悪くないけど、卵を返してもらうためなら仕方がありません。
ごめんなさい!やっぱり私には坊や達のかわいいお耳を傷付けるなんてできないの!わかって!
あなたも私の坊やが痛がるところなんて見たくないでしょ?タブンネが苦しむところなんて見たくないでしょ?
こんなことしてもあなたの心がチクチクするだけだよ、だからもうこんなことやめて!!
私が土下座してる横で坊や達もおててを合わせてお願いお願いしています。私達がこんなに必死になってお願いしているんだからペンドラーさんもきっと…

ぐしゃっ 「チビャッ!!」

嫌な音が二つしました。一つは何かが割れる音…そしてもう一つは卵の中の赤ちゃんの悲鳴…

私は恐る恐るお顔を上げてみました。目の前には潰れた卵と赤と半透明な液体が飛び散っていました。

…そんな…ウソ、ウソウソ!イヤアアアアア!!私の卵がぁぁあ!!
私の…私の大切な新しい家族がああああっ!!
…そんな、そんな、もうすぐ赤ちゃんが生まれてくるはずだったのに…その中から、かわいい鳴き声をあげて生まれてくるはずだったのに…お耳を当てたら「はやくママにあいたいよぅ」って言ってたのに…ママのお顔も見れないで死んじゃうなんて…あんまりだよ!あんまりにもかわいそうだよ…ひどいよ!赤ちゃんにたくさんママのおいしいお乳を飲ませてあげたかったのに…

私は泣きながら赤ちゃんになるはずだった卵の欠片を集めました。ごめんね、ごめんね、助けてあげられなくて…
坊や達と卵の欠片の前で泣いてたら、今度は「チュピ…ヂィィ…」って赤ちゃんの苦しそうな声がしたの!
ああっ、ペンドラーさん今度は赤ちゃんに足を乗せてるっ!!ダメッ!!赤ちゃんまでつぶさないで!!
赤ちゃんを取り返そうとしたけど、簡単に撥ね退けられちゃった…ううっ…赤ちゃん…
「…ママ…くるちい……よ…たちけて……」
赤ちゃんの声がどんどん苦しそうなものになっていきます。死んじゃうよっ!!赤ちゃんが死んじゃう!!
私が赤ちゃんの方に手を伸ばしてもちっともとどかないよぉ…、ペンドラーさんやめてぇぇ!!
私が泣きながら叫んだらいきなりペンドラーさんが なめてんじゃねぇっ!! って私達を怒鳴りつけました。
その声が私達のお耳に響いて思わずびっくりして固まっちゃった…タブンネのお耳はよく聞こえるからジンジンするよ…
坊や達も驚いて尻もちついちゃってる…
そのあとペンドラーさんは、私達の気持ち悪い媚なんか通用しない。って言い放ったの。それで、今度は赤ちゃんを踏みつぶすって…
私達の必死のお願いを気持ち悪いだなんてひどいよぉ…人間さんならかわいいって言って私達のお願いなら何でも聞いてくれるのに…
それに今度は赤ちゃんを踏みつぶすだなんて…そんな…そんな…


私は坊や達の方へ目を向けました。目の合った坊やは「いたいのやだーっ!」と逃げ出してしまいました。
ああっ、待って、坊や!!と私は逃げ出した坊やを捕まえました。
「いやだぁ~~、いたいのやぁ~~っ!やだよぅ!」
でも坊やは大暴れして泣いてるよ…やっぱり痛いのはいやだよね、痛い思いしたくないよね?でも赤ちゃんが…赤ちゃんが生まれてこれなかったあの子みたいに潰されちゃうよぉ…
お願い、坊や、これしか赤ちゃんを助ける方法がないの!痛いけど我慢してちょうだい!って必死に坊やに説得したけど、坊やは泣きながらイヤイヤ首を振るばかり…、ママだって坊やを傷付けるなんていやだよぉ…
でもペンドラーさんが、あと五秒でやらないと赤ちゃんを潰すっていったの!
そんな、あと五秒だなんて! ペンドラーさんに抗議しようとしたけど、あと五秒じゃそんな時間もないよ…

坊やごめんね!ごめんね!ママ、こうするしかないの!あとでうんといやしのはどうをしてあげるから我慢してね!!
私は目をつぶって棘を坊やのお耳につき刺しました。

「いだあいいいいぃ!!やめでママぁああ!!」
って坊やの悲鳴が刺すたびに聞こえてきます…、坊や達の悲鳴なんて聞きたくないのに…ママの心もズキズキするよ…誰か私達を助けて…!
私はサファイアの瞳から、大粒の涙を流しながら坊や達のお耳を刺していきました。

「いだい…よぉ……ママぁ……」 「…………」
私が手を止めて坊や達を見ると、坊やのかわいい声はガラガラに枯れてしまっていて、もう一匹の坊やは気絶していました。

ああ、お耳も穴だらけになってかわいそう!!ママが今すぐいやしのはどうをしてあげるからねっ!!
私は坊や達にいやしのはどうをしてあげました。
坊や達、よく頑張ったね、よく我慢したね、って呼びかけながらいやしのはどうをうってあげたら何とか傷も塞がって元気になったみたい…。良かった…ホッとしたらまた涙が溢れてきちゃった…

「ぼくのたいせつなおみみが……グスッ」 「うぇ~~ん…」
でもタブンネの大切な大切なアピールポイントのかわいいお耳が…
いやしのはどうで穴は塞がって血もとまったけど、お耳は変な形になってたの…
坊や達はそれがすっごく悲しいみたい…そうだよね、だってタブンネにとって天使のお耳は命の次に大切なものなんだから…
坊や達、変形したお耳をなでてポロポロ泣いてるよ…

「次、尻尾よ」
坊や達のお耳をペロペロなめてあげていた私にはペンドラーさんのその言葉が信じられませんでした。
何で!?かわいいお耳がこんな風になって泣いてる坊や達の悲痛な姿を見てどうしてまだそんなことが言えるの?
お願いだから尻尾だけでも見逃して!
タブンネにとってフワフワの尻尾は天使のお耳くらい大切なものなの、毎日欠かさずお手入れをしてきたまっ白で何の汚れもない大事な尻尾なの!
そう訴えるような目で私はペンドラーさんのことを見つめたけど、ペンドラーさんはわかってくれなかった…
坊や達の尻尾まで奪うなんて私には…坊や達は必死に尻尾だけはとられまいと手で庇ってるよ…
でも赤ちゃんの「たちけて…ママぁ…おもいよ……くるちいよ…」って声もきこえてくるの…
ああーーーっ!!坊やっ、ごめんなさい!!

私は坊や達の尻尾を思い切り引きちぎりました。目をつぶっていても、フワフワで温かい坊やの尻尾が、お尻からブチブチと音をたてて離れていくのがわかります。それと同時に坊やの達の悲痛な鳴き声も耳に入りました。
坊や、許して…

目を開けて自分の手の中を見てみたら、くしゃくしゃに潰れて血で少し赤くなった坊や達のかわいい尻尾が…
私はすぐにお尻を押さえて転がりまわる坊や達にいやしのはどうをしてあげました。
痛みが治まった坊や達は私に「ママぁ、ぼくのしっぽかえしてよぉ…」 「ぼくのフワフワのたからもの~っ」って手を伸ばして泣きながら訴えてきます。
うう…わかってるよぉ…尻尾はタブンネの宝物だもんね…でもこれはペンドラーさんに差し出さなきゃ…
「いやぁ~、ぼくのしっぽ~!」 「もっていかないでよぉ…」
ごめんね!あとでペンドラーさんに返してもらったらいやしのはどうでくっつけてあげるから、今は我慢してね!
そう坊や達をなだめて私はペンドラーさんに坊や達の尻尾を差し出しました。はやく返してね…


ああっ!!坊や達の尻尾に何をするの!?
何とペンドラーさんは坊や達の尻尾を地面に放ってぐりぐり踏みつけたの!!
やめてよ!坊や達の大切な尻尾がっ…土でドロドロになってバラバラになっちゃった…これじゃあいやしのはどうでもくっつけられないよ…
「ぼくのたいせつなフワフワの尻尾がーーーっ!」って坊や達、大泣きしてる…大きくなったらお耳と尻尾を使って妖精グループのみんなにモテモテになるはずだったのに…お耳だけじゃなくて尻尾まで失うなんて…
もう坊や達のフワフワでモフモフの尻尾を整えてあげられないんだ…って思ったら悲しくて涙が溢れてきちゃったよぉ…

でも、ずっと泣いていられないよ、赤ちゃんを返してもらわないと!
ペンドラーさん、いう通りにしたんだからその足をどけて赤ちゃんを返して!って私はペンドラーさんに手を伸ばしました。
そしたらペンドラーさんはいきなり赤ちゃんを空高く放り投げたの!
大変!!受け取ってあげないと赤ちゃんがっ!!
赤ちゃんを受け止めるために走ろうとしたら、また何かが足に引っかかって大事なお顔を地面にぶつけちゃった。
痛みが顔中に走ったと思ったら、ぐちゃって何か柔らかいものが潰れる音が…それで私のピンクの体にも何か赤い物がべったりくっついたの。
あ…あ…これは赤ちゃんの体の一部…そんな…やだっ、あああああっ!!赤ぢゃああああん!!

赤ちゃんはまるで木の実のように潰れてしまっていたのです。そして潰れた赤ちゃんからはまっ赤な血が飛び散って…
あがちゃん!!あがぢゃん!!目を覚ましてよぉ!さっきまで人間さんに高い高いしてもらって楽しそうに鳴いてたのに…赤ぢゃああん!!
どうして!?どうして赤ちゃんを…、いう通りにしたのに!!
私は赤ちゃんの亡骸を抱いてペンドラーさんに抗議しました。
そしたらペンドラーさんは受け取れなかった私が悪いって言ったの、そんな!私が転んだのはペンドラーさんのせいだよ!!

…そしたらペンドラーさん、さっきも転ばせたのに何の学習もしないで転んだ私が悪いって…
それを人のせいにする私は母親失格だって言ったの…
そんな…私はただ赤ちゃんを助けようと必死だっただけなのに…
私のせいなんて…

う…、うわあああああん!私のせいで赤ぢゃんがぁ!!ごめんね!!ごめんね赤ぢゃぁん!!
私は赤ちゃんを抱き締めて号泣しました。赤ちゃんとの思い出がこうしてると溢れてきます…
かわいいお顔をおっぱいにうずめてまっ白になる赤ちゃん…私の指をちいちゃなおててでにぎにぎする赤ちゃん…
一緒に木の実を食べたかったよ…もっと抱っこしてギュ~ッとしてあげたかったよ……ううっ…
私が泣いてるとペンドラーさんが「オイ」って呼びかけてきました。これ以上私達に何をするっていうの?怖いよ…
何をされるのかわからなくて、赤ちゃんの亡骸を抱き締めておめめをつぶって縮まっているとペンドラーさんは坊や達が大変なことになってるって言ったの!
びっくりして坊や達の方を見たら、坊や達は毒状態になって苦しんでる!!
なんで!!一体いつ毒をあびたの!?
突然のことに私はパニックになったけど、すぐに毒を治してあげなきゃって思ってまずは坊や達にいやしのはどうをしました。
毒を治すのに必要な木の実はモモンの実…たしかさっき人間さんにもらった木の実の中にあったのを思い出して必死に自分のフワフワの尻尾の中を探しました。
あっ、見付けた、モモンの実だ! 私は人間さんに何度も何度も感謝しました。これで坊や達の毒を…

ああっ、ペンドラーさんが私の手からモモンの実を!!返して!返してよう!それがないと坊やの毒が治せないのよぅ!!
でもペンドラーさんは全然相手にしてくれない…ジャンプしてペンドラーさんの角の先に刺さったモモンの実を取り返そうとしたけど全然とどかないよぉ…
どうしよう…このままじゃ坊や達が毒で死んじゃう!考えなきゃ…考えなくっちゃ…

あ、そういえばたしか特性が「いやしのこころ」の坊やがいるのを思い出したわ!まずはその坊やに、もう片方の坊やの毒を治してもらわなきゃ、早くしないと!
私はすぐに「いやしのこころ」の坊やにもう片方の坊やを治してってお願いしました。
まずは治せる方の毒を治して楽にしてあげなくちゃ、「いやしのこころ」の坊やのことも後で治してあげなきゃいけないけど、今は「さいせいりょく」の坊やの方を…
「いやしのこころ」の坊やもわかってくれたみたいで、兄弟を助けるためにフラフラしながらも立ち上がったよ。頑張って!あなたのことも絶対に助けてあげるからねっ!!

でも、またペンドラーさんが恐ろしいことを「いやしのこころ」の坊やに言ったの。
いやしのこころを使わなければ奪ったモモンの実をお前に食べさせてやるって…
いやしのこころを使わなきゃ「さいせいりょく」の坊やが死んじゃう、でもモモンの実がないと「いやしのこころ」の坊やが…
そんな…あんな小さな坊やにそんな究極すぎる選択を突きつけるなんて!!
ペンドラーさん、いじわるなこと言わないでモモンの実を返してよう!
私達があなたになにをしたっていうの!?タブンネはみんなのことを癒してあげてるだけなのに…人間さん、助けてよぉーーっ!!
どんなに叫んでも状況は何もかわりませんでした。
涙を流してお願いしてもペンドラーさんは無視するばかり…何でかわいいタブンネがこんな目にあうの…

大変!そうしてる間にも坊や達の毒が…今すぐいやしのはどうをしてあげるからね!
いやしのはどうをあびせてあげたけど、すぐに毒で坊や達の元気が無くなっちゃうよ…
それにだんだんダメージを受けるスピードも速くなってるみたい、いくらいやしのはどうをしてもおいつくのがやっとになってきたよぉ…でも続けなきゃ…!

だけど坊や、「くるしいよぉ…たすけてよ…モモン…モモン…」って苦しんでる…
ママの優しい波動を浴びせてもやっぱり苦しいみたい…根本的に毒を何とかしてあげなきゃならないのに、こうしていやしのはどうをしてあげることしかできないママを許して…私が「さいせいりょく」なばっかりに…
「いやしのこころ」の坊やは毒だけじゃなくて突きつけられた選択にも苦しんでるみたいだよ…

本当は今、確実にいやしのこころで助けられる「さいせいりょく」の方の坊やの毒をなんとかしてあげたいんだけど、でももう言えないよう…。今の状況で、あなたのいやしのこころで兄弟を治してあげてなんて…
だってそんなことを言ったら「いやしのこころ」の坊やに「死んで」って言っているのとおんなじ意味になっちゃうもん…
そんな残酷なこと…優しいタブンネには言えないよ…でもこのままじゃ坊や達が…どうすればいいの…


…あれっ、あれっ、あれっ?何で…何でよ!!
私のおてての先からは急にいやしのはどうが出なくなりました。
何で?どうして私のおててから優しい波動が出てこないの!?
どんなに力を込めても、どんなに頑張っても、私のおてての先からはシンプルビームしか出ません…
(それを最初にペンドラーに使っておけばこんなことにはならなかったのに…)

もうPPが無くなったってことはわかってたけど、おてての先に力を込めることを止められませんでした。
うわぁぁ~~っ、私がいやしのはどうをうってあげないと坊やがああ!!
ペンドラーさんは私達のことを黙ってみてるだけ…何で助けてくれないの!?

ああっ、坊や達がほとんど動かなくなっちゃった!舌をたらして痙攣してるよっ!
私はペンドラーさんにもう一度、モモンの実を返してってお願いしようとしました。
お願い、ペンドラーさん!もう時間が…

「ヂガ…ハッ…」

…そんな…坊やの声がして後ろを見てみたら…「いやしのこころ」の坊やが「さいせいりょく」の坊やに抱き着いて……

「さいせいりょく」の坊やは助かったけど…「いやしのこころ」の坊やが…
坊や…いやだよ、起きてよ…起きて……
ママが…ママが「いやしのこころ」じゃなかったから…
メロメロの方が、かわいいタブンネにはお似合いだからってリフレッシュを忘れさせちゃってたから…
あ…あ…坊やーーーっ!!イヤアアアァ!!いやだよう!!ぞんなぁ!!
私の大切な物がどんどん無くなっていくよぉ……
赤ちゃん…坊や…みんなみんな、無邪気にママに甘えてくるかわいくて、フワフワで、ポッコリ温かい私の大切な子供達…あああああん!!
私は大声で泣きました。…私達はちっとも悪いことしてないのに何で…?神様…ひどいよぉ…、タブンネは幸せになるポケモンさんなのに…うう…


「あんたのせいで死んだのよ!」
私が泣いてたら、ペンドラーさんが残った坊やにそう言っているのが聞こえました。
…坊や、罪悪感で「ごめんね!ごめんね!」って死んじゃった坊やに頭を何度も下げて泣いてるよ…
あんな小さな子にあんなひどいことが言えるなんて!そもそもみんな悪いのはペンドラーさんなのに!!
そうだよっ、みんなみんな悪いのはペンドラーさんよ!!赤ちゃんが死んじゃったのも、坊やが死んじゃったのも!ぜぇーーんぶペンドラーさんのせいよっ、許せないっ!!絶対に!!
そう叫んで私はペンドラーさんに突っ込みました。
タブンネは優しいポケモンさんだけど、悪い奴には攻撃してやっつけてやるんだからっ!!
やっつけてやるーーーっ!!

ドンッ

やったぁ、私の怒りの攻撃が当たったよ!きっと今の私、ペンドラーさんがよけられないほどのスピードが出てるんだ!!
この調子でやっつけてやるっ!!今頃ごめんなさいしても許してあげないんだからっ!!
タブンネの力を見せてや…

うっ、

もう一度ペンドラーさんに攻撃しようとしたらなぜか急に苦しくなって私は地面に倒れました。
ううっ…何で…どうなって…る…の? …私…が毒を…?
私が訳も分からず苦しんでいると、ペンドラーさんは私にアホだと言ってきました。
ぐ…っ、許せな…いよ!ぜったい…に…!!
なんとか気力を振り絞って立ち上がったけど、さっきみたいに速く走るどころか、歩くことさえつらくて…ちっともペンドラーさんに攻撃できません。
…どうしてこんな時に…毒なんか……ぐぅ…ぅ…治さな…きゃ…
私はリフレッシュを遠の昔に忘れて今は覚えていませんでした。さらに「いやしのこころ」の坊やも死んでしまい、人間さんにもらったモモンの実も、ペンドラーさんに奪われてしまったので、今自分の毒を治す手段がありません…
私…は…ぺ…ンドラーさん…を…やっつけ…なきゃ…ならないのに…力が…入ら…
何とか頑張って一歩踏み出したけど、そのままバランスを崩して倒れてしまいました。
苦し…いよ…痛いよ…ううっ…坊や…赤ちゃん……
そんな私にペンドラーさんは近付いてきました。


あ、…あれはモモンの実…!
ペンドラーさんはさっき私から奪ったモモンの実を、見せ付けるようにしてだしました。
モモ…ン!あれがあれば…毒を…モモン……!

ペンドラーさんはそんな私を見て、土下座をすれば木の実をくれるといいました。
何を言ってる…の!!ふざけないで!!誰があなた…なんかに!!
そう叫んだらペンドラーさんは、さっきは簡単に土下座したじゃないって言ってきました。
さっきとは…わけが…ちがうっ!!
…私の…かわいい…子供…殺した…、タブンネとしての…幸せ…奪った…あなた…に、死んでも土下座なんか…!!
そう私は叫びました。タブンネにだってプライドがあります。これが私があの悪魔に対して、最後にできる抵抗でした。

じゃあ残った子供はどうするんでしょうね?

でもその言葉で私はハッとなって、私に縋り付いている坊やのことを見ました。
「いやだぁ~!ママまでしんじゃいやだ~!!ボクひとりぽっちになっちゃうよー!!」
坊やはそう言って大泣きしています。

…そうだ…私の命は…私だけの…ものじゃないんだ…私が死んじゃったら…この子が一人ぼっちになっちゃう…
まだ、ヨチヨチ歩きで…ママ、ママって甘えんぼさんの…あの子を残して…死ぬなんて…できないよ…!
あの子…だけでも…死んじゃった赤ちゃんや…坊やの分まで…幸せに…してあげなくちゃ…!

でも、そのためには卵を割って赤ちゃんと坊やを殺したあの悪魔に頭を下げなくてはいけません…
ううっ…そんなのいやだよぉ…何でなんにも悪くない私が…でも…坊やを一人にするわけには……
涙が出てきたよぉ…坊やのためにできることがこれしかないなんて…悔しいよ…ううっ…

私はペンドラーさんに土下座をしました。自分の無力さが悔しくって悔しくって震えが止まりません…
本当は子供達の仇をとらなきゃならないのに…
赤ちゃ…ん、坊や…ごめん…ね…こんな情けないママで…許して…ね…
ペンドラーさんは私のことを見下して笑っています。
…耐えなきゃ…耐えなくちゃ…モモンの実で…毒を治したら…坊やを連れて逃げて…
うっーんと…幸せに…暮らすんだ…お耳や…尻尾が…なくっても…坊やはかわいいもん…きっと幸せに…
私のぼやける視界に、ピンク色の物が転がってくるのが見えました。
やったぁ…モモンの実…だ!!
もう…少しで…手がとどく…よ、もう少し…

うぐいっあ!?

モモンの実に触れた瞬間、私の全身に大きな衝撃が走りました。
がぁ……ひぃ…いた…いたい……ょ……ぁ……
最早、激しい痛み、苦しみに声すらまともに出すこともできません、血の気が引いていくのを感じます。
が………ぁ………
「ママぁ、ママぁっ、やだっ!!しんじゃいやだっ!!」
坊やの声がどんどん遠くなって…いくよ…坊や……



温かい巣の中で、坊や達とたくさんのお菓子や木の実を囲んで、みんなでパーティーをしています。
「おかちおかち~~!」って坊や達は二匹共大はしゃぎ、巣の中をぴょんぴょん跳ねて走りまわっています。
あ、お菓子や木の実を並べおわるのがまちきれなくて坊や達がつまみ食いしちゃった、
「おいちい、おいちい!」 「あまくておいちいよぅ!」
坊や達、かわいいお耳と尻尾をパタパタ揺らしてほっぺにおててを当ててとってもかわいい!
もう、くいしんぼうさん♪
「マンマ、おちちほちいよぅ」
赤ちゃんも坊や達がおいしそうにお菓子を食べてるのを見てお腹がすいちゃったみたい、よしよし、赤ちゃんにはたっぷりママの栄養満点のお乳をあげるからねっ♪
ちゅぱちゅぱ私のお乳に吸い付く赤ちゃん…ウフフ、早く坊や達みたいにすくすく大きくなってね♪
さぁ坊や達、人間さんにもらった木の実も食べよう、何と今日は特別な日にしか食べられないタブンネの大好物、オボンの実もたぁくさんあるのよ、みんなで一緒に食べようか♪オボンの実を見て、坊や達のブルーのおめめがキラキラと光りだしたよ、坊や達も大好きだもんね♪
あっ、みんなでシャクシャクオボンの実を食べてたら卵が大きく揺れだしたよ!もうすぐ赤ちゃんが生まれてくるよ!
坊や達や赤ちゃんと一緒にその卵を見守ります。みんなで、もう少し!頑張れっ!って卵の中の赤ちゃんに応援してあげてると、ついに卵の中から赤ちゃんのお顔がポコッって出てきたよ!やったぁ、生まれて…

ぐちゃっ
えっ、卵が潰れちゃったよ!どうして!?
「チギャアア!!」 「チビィイイ!!」 「チュピイイイ!!」
ああっ今度は赤ちゃんの内臓が飛び出して坊や達のお耳と尻尾がグシャグシャになって千切れちゃったよ!!いやっ!!いやああああ!!



あ……夢だったんだ…一瞬の…今日やるはずだった…パーティー…の…
…卵も…赤ちゃんも…坊やも…みんな…みんな…いなくなっちゃったんだ…
それで…私も…ああ…最後…の坊や…残して…死ねな…い……ぼ…う…や……


縁というものは不思議な物…このタブンネ親子は結局最後まで気付くことはありませんでした。これが因果応報だったということに…そしてペンドラーの方も、それに気が付くこともなく、自責の念にかられているのでした。

おわり

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最終更新:2014年06月03日 22:30
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