ママはミミロップ?!

孵化させすぎてこまったという友人から子タブンネ(♀)1匹を譲り受けた。
まだまだ生まれたばかりのその子タブンネは、
ミルクを与えれば「足りない!」と言わんばかりに飲み干し、
すりつぶした木の実も、これまたガツガツ喰うのでかなりのデブ。
他の手持ちポケモン5匹分と同じくらい食う日も近そうだ。

そして子タブンネを育てだして1週間がすぎた頃、子タブンネをよこした友人から小包が届いた。
「あると便利だから」というメモと一緒に入っていたのは『タブンネ心読機』。
ま、別にタブンネの思ってる事に興味はないけど、面白そうだし使ってみるか。
そう思い子タブンネの寝床にいってみると子タブンネ居ず、声のする方向へ行ってみると俺の一番お気に入りのミミロップにベッタリとなついていた。
ミミロップが別の部屋に行こうとすればあとをつけ、
ミミロップが他のポケモンと仲良くすると割って入ってあたまをなでてもらおうとする。
それはまるで母親に甘えるように。
俺はタブンネ心読機に子タブンネの触覚を当ててみた。
すると、

「ご主人さま、タブンネはいつになったらママみたくなれるの?
タブンネ、まだ色も白いし、からだもぷくぷくだけど、
おとなになったらママみたくなれるんだよね?
だってタブンネはママとおんなじくお耳もたれてるし、
ピンク色だもん、きっとなれるよね?」

こいつ、俺の大事な大事な「色違い」のミミロップをあろうことか、自分の母親だと思い込んでいやがった。

「糞豚の分際でミミロップになれるわけねぇだろ!!」
そう怒鳴りつけて二度と立ち上がれない程蹴り、ジャイアントホールにでも捨てに行きたかった。
だが、こんな糞豚でも友人からもらったタブンネである。
いくら友人は「ある程度育ったら逃がしてくれてかまわない」と言ってくれたとはいえ、それは出来ない。
それになにより、怒り狂った俺をみて他の手持ちポケモン達が怯えるかもしれない。
せっかく築いた信頼をこんな糞豚1匹のせいで失うわけにはいかなかった。
俺は苛立ちを察知されないように、
「ママみたくたくさん食べてたくさんバトルして強くなったらすぐになれるよ^^」
と心読機を通して伝えた。
すると調子にのってこの糞豚はミィミィ♪甘ったるい鳴き声をあげ、床が抜けそうな勢いで飛び跳ねだした。
なれるわけねぇってのに、おめでたい奴だ。
俺はこの、単純すぎるお花畑思考を利用して精神的に追いつめることに決めた。

まずはじめに部屋のあちこちに姿見を設置。
子タブンネに「かわいいタブンネの為だよ^^」と伝えるとミィミィ♪鳴いてドスドスと飛び跳ねた。
ミミロップとは似ても似つかぬ体系のくせに鏡を見てもまだ自分はミミロップの子どもと疑わないあたり、さすがお花畑思考なだけある。
そして食事は栄養満点の甘いポケモンフード(ポケモンフードの中でもバトル後のひどく体力が落ちてるときに適しているものらしい。
毎日は決して食べない超ハイカロリーなものだそうだ)とミックスオレを3食。プラス、朝の10時と夕方の3時に木の実を好きなだけ与えた。
幸いウチのミミロップは痩せの大食いでいくら食べても太らない体質なせいか同じ食事を与えても全く太る気配はない。
(ただしミミロップのポケモンフードは通常のものに変えているが)
それに習って子タブンネもミミロップと同じように遠慮することなく出した食事は残さずきっちり食べた。
ちなみに子タブンネは「さいせいりょく」の特性のためか、食った以上に太るようだ。
(厳密には少しの食事で十分生命を維持できるらしい)
まだウチに来て10日目なのに図鑑にのってるタブンネの写真より2まわりくらい太っている。
見た目だけは大人タブンネ以上の迫力と言えるだろう。

そして、子タブンネが我が家にきて2週間が経過した。
もう、十分ガタイの良くなった子タブンネに
「そろそろママみたくお外でバトルしてレベル上げしようか?^^」
と伝えると、キリっとした顔つきをして力強くミィ!と鳴いた。
「いっぱいバトルして早く強くなって、ママみたくなりたい!」といっているらしい。
その戦う気もいつまでもつか。
子タブンネはレベル1ではあるが体格がいいため「はたく」でミネズミ・ヨーテリーらを倒していき、
1日でレベル10まできた。
本来なら野生のタブンネと戦うのが手っ取り早いが、ミミロップの子どもと信じている子タブンネにまだタブンネを見せるわけにはいかない。
野生のタブンネに出会わないように慎重にバトルを重ねた。


子タブンネがきてから1ヶ月が経過。
与える食事はなんでも食い、バトルでのレベル上げも順調なせいか、子タブンネはすでに見た目も中身も子タブンネではなくなっていた。
相変わらず、ミミロップにはべったりなついている。
身長はミミロップのほうがあるものの体重は遥かに重く、時折タブンネが寄っかかったり、膝枕をしてきたりすると
ミミロップはちょっと迷惑そうな顔をするようになった。

そしてタブンネのほうはというと、さすがに姿見を見つめる時間が多くなってきた。
それも以前のように喜んでいるのではなくちょっと落ち込んだようなカオをしている。
1ヶ月も辛抱して世話をした甲斐があった。
俺はさも、心配しているような表情をして心読機を使い語りかける。
「タブンネ、元気ないけどどうしたんだ?」と。
するとタブンネは、
「すききらいしないでごはんも食べて、いっしょうけんめいバトルもがんばってるのに、ちっともママみたくならないの…。
タブンネ、はやくママみたくなりたい」となきだした。
まだ、ミミロップになれると信じていることにむしろ俺の心は晴れやかになった。
すかさずタブンネに語りかける。
「じゃあ、ひとまずご飯をちょっぴり工夫しようか?それとバトルのあとのオボンの実やミックスオレをやめてお水とお薬にしよう。
そしてバトルのあとにすこしだけ運動しよう!そうしたらすぐミミロップみたくなれるよ^^」と。
するとあれだけ落ち込んでいたのがウソのようにタブンネは泣き止み「がんばる!!!」と言ってミミロップの居る部屋は駆け出して行った。

俺は日が暮れないうちにホドモエシティの漢方薬屋に向かい、「ふっかつそう」や「ちからのねっこ」などを大量に買い込んだ。
明日からタブンネのバトル後のご褒美はにが~いにが~いちからのねっこ。
どんなカオするのか楽しみだな。


翌朝。
ちょっと早く起きてごはんの準備をしていると、モソモソと音がした。
またしてもタブンネは姿見を見つめている。
しかしその目つきは昨日までの落ち込んだカオではなく、ダイエットへ臨む強い眼差しだ。
そのタブンネをみていたらニヤケが止まらなくなった。
この瞬間の為に1ヶ月も我慢し、本来捨てるはずのタブンネに相当な金も費やしてきたのだから。
心読機で語りかける。
「今日からダイエットだよ!ちょっと大変だけどすぐママみたくなれるんだからがんばれるよね?」と。
タブンネはゆっくり頷いて、
「ママとね、いっしょにおしゃれしてライモンシティのミュージカルにでたいの!ママもいっしょにでようねっていってくれた。
タブンネがんばる!」と夢を語ってきたではないか!!

俺の知らない所でこんな希望まで抱いていたとは。
俺は心の底から笑顔になった。

今日からタブンネの食事は、あの夢のような食事から一転、すりつぶしたオボンの実に「ちからのこな」を混ぜたものと水だけになった。
これでも「さいせいりょく」タブンネにしたら十分な栄養である。
いつもは早食いでガツガツ食べるタブンネも不味そうな顔をしてチビチビ食べている。
あまりの不味さに水でながそうとするのであっという間にカラになった。
お水の入った器を手に取っておかわりを欲しそうな顔をするので俺は首を横に振り、
「お水をのみすぎると浮腫んじゃうんだよ!タブンネがポッチャリしてるのはお水をいっぱいのんでるからだよ!」
と伝えると弱々しくミィミィ鳴きながらごはんを押し流した。
オボンの実いりではあるものの「ちからのこな」の苦さは消えないようでいつまでもミィミィ鳴き続けるので、頭をなでながら
「よく、がんばったね^^」と語りかけた。
タブンネはこくこく頷きながら、ソファーで仲良くルカリオとおしゃべりしているミミロップを見つめていた。

口の苦みがまだ残るのだろう。
タブンネは目を潤ましたまま舌をだしてハァハァしていた。
そうでなくても太って締まりのない顔がよりいっそう間抜けな顔になった。
これから毎食、毎バトル後、この苦みが続くというのに。
さて、今日からバトル後の「運動」もしなくてはいけないので、技マシンを起動し、タブンネに「なみのり」を覚えさせた。
バトル後の疲れきった体でたくさん泳いだらさぞクタクタになるだろう。
とても楽しみだ♪

海が近くにある13番道路が今日からの特訓場所。
どんなポケモンがでてきても俺はいっさい「なみのり」は指示せず、「とっしん」と「すてみタックル」を出させ続けた。
HPを削りながらも倒していき、さいせいりょくで回復。
それでも回復しきらないときは「ちからのねっこ」を使った。
飲ませるたびにタブンネは「ミバァァァ~」と喚くので、すかさず心読機を出す。
すると、
「にがいよ~お水、お水ほちぃよぉ」
「お薬やんや~!オボンの実ちょうだいよぅ~」
「モーモーミルクがのみたいよぅ~ごしゅじんさまぁ、あまいものちょうだいよう」

ダイエットを決意して1日でこのザマだ。
ま、こうくるのが楽しみではあったけど。
俺は優しいのでタブンネにこう提案した、
「じゃ、モーモーミルクをあげる。けど、モーモーミルクは太っちゃうからこのあといっぱいいっぱい泳がないといけないよ?それでもいいかい?」と。
タブンネはブンブン首を縦に振り、
「いっぱい泳ぐから、モーモーミルクとオボンの実ちょうだい!!!」とミィミィ鳴いた。

はたしてこれで痩せられるのかな?
先が楽しみだ。

約束どおりモーモーミルクをタブンネに渡してやるとイッキに飲み干した。
それでも朝食&数回にわたる「ちからのねっこ」の投与で舌の苦みは完全には消えていないようだ。
このままではダイエットを止める、と言い出し兼ねないので俺はタブンネにこう伝えた、

「今日はタブンネすごくがんばってるから、泳ぎ終わったら、ライモンシティのミュージカルグッズをいっしょに買いに行こう^^」と。

すると、さっきまで弱々しく座り込んで、カラのモーモーミルクの瓶をいつまでも舐めていたタブンネの顔色がパァ~と明るくなった。
海に向かってミィミィ♪と叫びすタブンネ。
なんて扱いやすい奴だ。
勿論、ミュージカルグッズなんてタブンネに買ってやる気はない。
買ったとしてもミミロップかドレディアに着ける用だ。
ま、店が閉まる前にこいつがちゃんと泳ぎ終えればの話だが。

いちいちポケモンが出てくると面倒くさいので俺はゴールドスプレーをこまめに使いながらタブンネのなみのりを楽しんだ。
最初こそスイスイ泳いでいたタブンネも徐々にスローペースになっていき、しまいにはちょっと泳ぐと止まるを繰り返すようになった。
止まってる時間が長いせいか夕日が沈みだす。
それでも
「まだ半分しかおわってないよ!頑張らないとお店、しまっちゃうぞ」
と伝えるとちびりちびりと泳ぎだした。
なんで、タブンネに「なみのり」が覚えられるのかまったく不思議でしょうがない。

タブンネがノルマを達成する頃には辺りはまっ暗になっていた。
ライモンシティに寄るどころかいつもだったらおいしいご飯をたべて、お風呂に入っている時間だ。
海からあがったタブンネは寒いのか、腹が減ってるのか、プルプル震えながらフィ~フィィ~と鳴いていた。

俺は「明日は海底遺跡巡りでもしようかな~」なんて思いながら家路についた。


家につくとタブンネは夕飯も食べずにベッドでグーグー眠りだした。
よほど疲れたのだろう。

朝になると、俺が起きるより先にタブンネが起きていた。
腹が減ってんだろうな。
いつもミミロップとルカリオが座っているリビングのソファーに寄っかかりながらミィミィ鳴いていた。
「すぐにごはん用意してやるから」
と伝えると、俺のパジャマのズボンの裾をつかんでミィミィ鳴いた。
「にがいごはんはやんやだよぅ~。少しだけでいいからあまいごはんがほしいよぅ~~」
と言っている。
おいおい、まだダイエット2日目だぜ?!
意志薄弱にもほどがあるっつうの!
「あまいごはんはお預けってきめただろ!?それにこれはタブンネの為なんだぞ!タブンネがママみたくなりたい!
ママといっしょにミュージカルにでたいって言うからはじめたことなんだから!」といつもよりも強めの口調で伝えた。
さすがのタブンネも「ママ」という言葉には弱いのかしぶしぶ諦めた。

いつもより早めの朝食。
タブンネはすりつぶしたオボンの実と「ちからのこな」を混ぜたごはんをいっきにかきこみ、
お水で流した。
食卓には美味しそうなごはんや木の実、甘い飲み物がたくさん並んでいて、美味しそうにミミロップやルカリオ達が食べている。
タブンネが上目づかいでミィミ!と鳴きながらこっちを見てきた。
おそらく「ひとくちちょうだい?」と言っているのだろう。
心読機がなくてもわかる。
俺は「ダメダ!」睨みつけ首を振った。

今日はこいつの特訓以外に行く所もあるので食事が終わるとさっさと片付けしたくした。
ミミロップとルカリオにも今日はいっしょに行くぞ合図した。

3番道路に到着。
ルカリオとミミロップをモンスターボールからだし、それぞれの頭を撫でてから2匹を預けた。
育て屋のおじいさんが言うには、二人の仲はとてもいいので卵はすぐにできるとのこと。
俺はおじいさんとおばあさんに、卵は1個でいい事と二人を迎えにくるのは明日になる事を伝え、
育て屋をあとにした。
かわいいママ似の子が生まれる事を祈りながら‥‥。

さてさて、今度は本日のメインイベント(?)タブンネのダイエット特訓だ。
と思ったら俺としたことが「ちからのねっこ」を忘れてきてしまった。
しかたない。
今日は瀕死になるまで頑張って、「ふっかつそう」で回復するしかなさそうだ。

俺は昨日の要領で「とっしん」と「すてみタックル」をメインにバトルさせた。
HPを削ってはさいせいりょくで復活。
幾度かバトルをしていくうちにどちらのPPもついに消耗した。
しょうがないので「なみのり」もつかい、「いやしのはどう」で相手ポケモンの回復を繰り返し、最終的にタブンネは出せる技がなくなった。
焦ったカオをするタブンネ。俺の方をキョロキョロみてくるので、ここですかさず心読機の出番!

「ごしゅじんさま!タブンネもうなにもできないよ?わざ、だせなくなっちゃったよ!こわいよぅ!こわいよぅ~!
タブンネ、バトルやんやだよぅ!たすけて!たすけてごしゅじんさま;;」


ミィーーーーーーーーーーーン!
ミィーーーーーーーーーーーン!!

他の野生ポケモンを呼び寄せんばかりの鳴き声をあげ2度ほどわるあがきをしたのち、タブンネは倒れた。
俺は手持ちのウルガモス(Lv.100)をだして野生ポケモンを倒させ、瀕死のタブンネに「ふっかつそう」を与えた。
漢方薬店の方の話によると、ふっかつそうは『瀕死のポケモンの体力が全回復する』だけあってかなり苦く、そしてしびれるらしい。
瀕死のタブンネは目を覚ますと同時に、口中に広がる強烈な苦みと、ビークインの「攻撃指令」の如く
無数の針がささり続けるようないたみにミギィーーーー!ミギィーーーー!!と悶絶した。
これなら、昨日から「ふっかつそう」を使えば良かったかなとちょっと後悔↓
いつまでもミィミィしつこく泣くタブンネの気持ちを聞いてみると、

「ぃたぃょぅ‥‥‥おくちのなか、ぴりぴりするょぅ‥‥‥どうして!
どうしてごしゅじんさまはタブンネにこんなひどいことしゅるの‥‥‥?タブンネ、なんにもわるいことしてないよ???」

なんでもひとのせいにし、自分はかわいそうと思いたがる糞豚の本性がじわじわと出てきたな。
それに加え漢方薬&瀕死の効果で俺への不信感もあらわになってきたようだ。
俺は「タブンネが痩せたがっていたからお手伝いしただけだよ?タブンネのために協力してるんだぞ!」と伝えた。
タブンネはわかってる!わかってる!わかってるケド…!!と言ったようにじたばたと駄々をこねる。
ママみたくやせたい思いには変わりないがこんなツライのはどうやら「やんや」なようだ。
俺は聞かなかったことにして再び、HP満タン・PP切れのタブンネを戦闘にだし、
瀕死と「ふっかつそう」のコンボを続けた。

バトルが終わるとタブンネは、

「ごしゅじんさま…きらいきらいきらい!だいっきらい!タブンネにいじわるばっかりしゅる、ごしゅじんさまだいっきらい!ママに、ママにあいたいよぅぅぅ…ママにいいこいいこしてほしいよぅ……」

と、泣きわめいた。
泣いて叫んで俺をきらいだと言ったところで俺は痛くも痒くもないし、今日はおうちに帰ったってオマエの好きなママは居ないんだからなw

俺は最高に爽快な気持ちで晴れ渡った空の下、タブンネのなみのりを堪能した。

今日はあまい飲み物を与えなかったし、それになにより「家に帰ったら大好きなママがいない!」
という状況のタブンネが早く見たかったので日が暮れだす前になみのりレッスンを終了した。
1分1秒でも早くお家に帰りたがるタブンネをよそにおれはヒウンシティへにむかう。
毎バトルの最後、タブンネが瀕死になったあと尻拭いをさせられたウルガモスにお疲れさまのマッサージをする為だ。
マッサージにご機嫌なウルガモスをにらむ膨れっ面(元から?)のタブンネ。
コッソリ心読機をあててみると思った通りの反応だった!!
「タブンネのほうがつかれてるのに!タブンネのマッサージのほうがさきなのに!
なんでウルガモスさんばっかりごしゅじんさまは大事にするの!ウルガモスさんもごしゅじんさまもきらいきらい!」
ウルガモスのマッサージが終了し帰ろうとするとすかさずタブンネはマッサージ椅子にどっかり座り、
甘えた声でマッサージ師さんに「ミィミ♪ミィミ♪」と鳴いた。
「早く♪タブンネの番だよ!」といったところだろう。
マッサージ師さんに「ごめんね、つかれちゃったからまた明日ね」とあっさり断わられていたw
俺は「本当、無礼なヤツですいません!」と謝り、ヒウンシティをあとにした。
勿論、タブンネの機嫌の悪さはMAXである。
タブンネが思う唯一の味方のママに会えば、少しは機嫌もなおるんだろうけど。

俺と距離をとり、ミ!ミ!と怒りながらのしのし歩くタブンネ。
オマエ、そんな離れたら野生のタブンネとまちがわれるぜ?と思いニヤニヤしながら、これから起こるであろう事に胸を躍らせ俺は家路を急いだ。
タブンネもママに会いたいという気持ちが動力となってか必死に歩く。
そして、角を曲がり家が見えてくると一目散に駆け出すタブンネ!といっても、俺がふつうに歩く速度より遅いのだが…。

ひときわ大きな鳴き声で「ミィー!ミーーーーーン♪」(おそらく、「ママーーー!ママ聞いてちょうだい!」といったとこかな。
心読機がなくてもわかるようになってきてしまったw)と鳴きながら部屋に入った。
が、居るはずのママはどの部屋をみてもいない。
しつこく「ミーーーー!」「ミーーー!」(「ママー!タブンネ帰ってきたよ!」かな?多分ねw)と鳴き続ける。
しかし、どんなに呼んでも家にいるのは本を読みながら留守番をしていたドレディアひとりきりだった。
バタバタドスドス走り回り部屋を行ったり来たりして五月蝿いので心読機をあてる。
「ママーーー!ママーーーー!ママどこにいるの!!!タブンネ、かえってきたのになんでママいないの!?
ごしゅじんさま!!タブンネのママをかえして!!」

おお!!!今日は始終いい反応するね~、俺は嬉しいよ。
俺はタブンネにこう伝えた。
「ママはね、ルカリオと楽しくおでかけしてるんだよ♪今日はかえってこないんだ^^」と。
タブンネはぷるぷる首を振って涙目で俺を睨みつける。
「ママがタブンネをおいてルカリオさんと出かけるはずない!
ママそんないじわるしない!きっとルカリオさんに無理矢理つれていかれたんだ!!
ママかわいそう!ルカリオさんのばかぁ、いじわる、ごしゅじんさまもルカリオさんもだいきらい!!」

本当にお花畑思考の糞豚なんだなコイツ、と俺はあらためて感じた。
ちなみにミミロップとルカリオはミミロル・リオルの頃からいっしょに育ち、共にジム戦を戦い、兄妹のような関係なのだ。
1ヶ月前にきて娘ヅラしたって二人の絆を断ち切るなんて不可能だというのに。
さらにタブンネはこう続けた、
「ルカリオさん、いつもタブンネのことにらんでたもん!ママとタブンネが仲良くしてるとフン!てしてくるもん!
タブンネ、いつもルカリオさんこわかった、きっとママもいまこわいおもいしてるんだ…ママ……」

逆だろ、オマエが二人の間に割ってはいってルカリオの居場所を土足でズカズカ踏み込むようなことしたんだろうがw
ルカリオは困惑するミミロップに迷惑かけまいと自ら席をはずしてくれたのに。
こんなんじゃ、明日ミミロップがたまごを持ってきた時どうなることやら。
俺は被害妄想の塊を放置してドレディアとご飯の用意をした。

夕食の時間になってもダイニングにママの姿はない。
出されたメシは相変わらずすりつぶしたオボンの実にちからのこなを混ぜたものと水。
舌もいたいし、バトルとなみのりでクタクタで、なんでタブンネはこんなひどいことされなくちゃいけないの?といったカオをしている。
だが、そもそもタブンネたっての希望ではじめたダイエットだ。
俺はタブンネに無理強いしたことは1度もない。
お薬に替える提案だってバトル後の運動だってタブンネの了解は得ている。
ドレディアもウルガモスも俺が親身になってダイエットを手伝っている事がわかるようで、主への不信感を抱くどころか、
むしろポケモンに愛情を注いでくれる優しいトレーナーという感じでなついてくれている。

食事が終わり、後片付けをしているとけたたましい物音がした。
行ってみると、タブンネがあちこちにある姿見を壊していた。
きっと、頑張ってるのに相変わらず「タブンネ体系」のままの自分に苛立ったのだろう。
慌ててドレディアとウルガモスをさがすと、どちらも割れた鏡の破片で怪我をしていた。
俺の不注意でこんなことになるとは…。
とくにドレディアはなだめようとしたせいで大きな破片が刺さってしまっていた。
けがをしながらも「アロマセラピー」をして、ウルガモスや苛立つタブンネを癒すドレディア。
俺はキズぐすりを塗ってウルガモスとドレディアをモンスターボールに戻した。

明日、たまごが割られなきゃいいけど・・・。


翌朝、食事が終わると俺はタブンネに悲しい顔を無理矢理つくって、
「今日は用事があるからバトルもトレーニングもお休みなんだ。タブンネ、ひとりでお留守番していてくれないか?」と伝えた。
するとタブンネは、アノ地獄のレッスンが無いとわかってか嬉しそうに「ミィミィ♪」鳴いてドスドスはしゃいでいた。
今日ほどコイツが単細胞で良かった、と思ったことはない!
俺は急いで支度をしてボールにいれたままのウルガモスをつれ育て屋まで自転車を漕いだ。
育て屋に預けたときはミミロップのたまごをタブンネに見せつけてどんな反応するか楽しもうかと思ったが、
昨日のタブンネの荒れようをみたら気が変わった。
今日中に孵化をさせ、ミミロルをつれて帰ることに決めた。
育て屋さんに入るとミミロップが大事そうにたまごを抱え、不安げな表情で俺を見た。
ルカリオもやはり家に待機してるアイツのことが気がかりなんだろう。
俺は育て屋さんにお礼をして、二人をひとまずボールに戻し、自転車を必死に漕いだ。
ウルガモスも頑張ってくれたおかげであっというまに卵にひびが!
急いでミミロップとルカリオ、そして一緒にふたりを見守ってきたドレディアもボールからだし、
全員でミミロルが孵る瞬間を見つめた。

生まれたばかりのミミロルは色こそママと違えど、かわいさはママそっくりだった。

ミミロップもいつの間にか母親の表情をしている。
誕生した我が子をルカリオと交互に抱っこし、
ドレディアも小さな花冠を作ってミミロルの耳につけてあげていた。

ルカリオは家が近づくにつれ厳しい表情をしてしっかりミミロルを抱きしめた。

もうすぐ家にさしかかるところでタブンネがでてきた。
忘れていたがコイツ聴力いいんだったw
ミミロップの声をききつけてこっちへ向かってきた。
昨夜の一件以来ドレディアとウルガモスはタブンネに対して苦手意識が芽生えたようだ。
ルカリオもタブンネをキッと睨む。
ミミロップもルカリオ同様、自分の愛情がミミロルに100%向けられることでタブンネが暴れだす事を案じてビクビクしていた。

タブンネは完全に孤立した。

タブンネはいのいちばんにミミロップに抱きついた。
ミィーーーーーーン!!
「ママ、タブンネさみしかったよぅ…さびしくてさびしくてしんじゃいそうだった!
タブンネのことあいしてくれるのママしかいないんだもん!ママ…!?」
ひとしきりないたあと、ミミロルに気付く。
俺の方をみてタブンネがミィ!と鳴くので
「ミミロップとルカリオの子どもだよ、かわいいだろ^^」と伝えた。
するとミミロルを凝視し、俺に、
「お耳もたれてないし、ピンクいろじゃないし、全然ママとにてないよ!
ご主人様の嘘つき!ママの子どもじゃないもん!!」
といい、ミミロルにとっしんしようとした。
ここでルカリオが技をかけるか、とおもいきやすばやさの勝るミミロップが先にでた。
ミミロップのとびげりだ。
タブンネは「ミヒィィィィ~~~~ン」と鳴いてふっとんだ。
母親になったミミロップは我が子を守る為なら容赦しなかった。
唯一愛してくれるミミロップの渾身の蹴りはさすがに効いたようだ。
俺は心配してるふりをしながらタブンネに駆け寄り砂埃を払いながら心読機を当てた。
「ママひどい!あんな子守ってタブンネを蹴るなんて!ママどうしちゃったの?
ルカリオさんにありもしないタブンネのわるぐちきかされて信じちゃったの?それにあの子許せない!ぜったいに…」

ドレディアの「ねむりごな」で怒り狂ったタブンネを眠らせボールに戻した。
疲労の見えるミミロップとドレディアを家に帰らせミミロルとルカリオもボールに戻し、
ウルガモスに頼んで俺らはフキヨセのわすれおやじさんのところへ行った。
おやじさんに頼んで眠っているタブンネの「いやしのはどう」以外の技を忘れさせてもらった。
その間、俺はミミロルにちいちゃなポシェットを下げさせた。
昨日こっそり準備したものである。
おやじさんの家をでて近くにある草むらにつくとタブンネとミミロルを出した。
俺はタブンネに「ミミロルと勝負してごらん^^」と伝えると、奴は得意げに笑い「ミィ!」と手をかざす。
が、手からでたのは「いやしのはどう」。
タブンネは慌てた!「なんで?!なんで?!いやしのはどうしかでないの?!」と
モタついてるタブンネの隙をみて俺はルカリオにチェンジ。得意技「はどうだん」が炸裂し、あっさりとタブンネは倒れた。
ミミロルは「パパつよい♪」と言ってるのかキャッキャと喜んでいる。
レベル60のタブンネを倒した事と、ポシェットにしのばせた「しあわせたまご」の効果でミミロルの経験値はぐんぐん積まれ、
そしてあっという間にミミロルはミミロップへと進化を遂げた。
タブンネは薄れゆく意識の中、チビミミがいとも簡単にママそっくりに変わった事にショックを受け泡を吐いてその場で失神した。

「なんで!?努力もなんもしてないあの子がママそっくりになれちゃうの!?タブンネはあんなにツライ思いして、
みんなにいじわるされてがまんしてもまだなれないのに!!ずるい‥ひどい・・・」

「いやしのはどう」しかうてなくなったタブンネはチビミミのいい玩具になった。
噂通りの最高のサンドバックだ。
チビミミは「とびげり」と「ピヨピヨパンチ」を繰り出しタブンネが倒れると「ふっかつそう」を与えて「どくどく」を放ったりするのが日課となった。
時折、チビミミを睨みつけたりするが、そんなときはすかさず、

「そういうカオするなら、いますぐパパにいいつけちゃうんだから!」

と言うと、何処で覚えたのか許しを請うように土下座をするようになった。

 ***

その後の話。
俺は「あっというまにポケモンのレベル上げをしてくれ、さらに預けたポケモンの性格も良くなる、ポケモン育成の名人」としてちょっと有名になった。
チビミミが飽きてつかわなくなったサンドバックの二次利用で、育て屋さんのようなことをしたのである。
預かったポケモンたちはすきなだけタブンネに技をかけ、レベル上げと共にいいストレス発散にもなり一石二鳥。
トレーニング後のドレディアによるアロマセラピーも好評だ。
受付をしてるミミロップ親子の可愛さも相乗効果でかなり遠方のトレーナーさんも、努力値をふり終えたポケモンを連れにやってくるようになった。

タブンネは日々のサンドバックによりアザだらけになり、ようやく念願のママとおんなじ「色違い」になれたとさ。



  • オチがすごくよかったです! -- (名無しさん) 2012-09-29 16:20:31
  • ママと一緒になれて良かったね、タブンネちゃん! -- (名無しさん) 2012-12-16 11:24:08
  • 糞豚がミミロップみたいになれるわけないだろwww身の程を知れ糞豚wwwwww -- (名無しさん) 2013-12-13 22:20:54
  • ミミロルの進化条件はなつき進化ですよ。 -- (名無しさん) 2014-01-02 14:53:35
  • 確かレベルアップでもなつき度は上がるんじゃなかったかな、記憶違いならすまん。 -- (名無しさん) 2014-01-04 00:19:18
  • トゲピーをタブンネボムでレベルを上げたらトゲチックに進化するよね。それと同じようにレベルアップで懐き度も上がるんだよ。 -- (名無しさん) 2014-01-06 03:43:14
  • タブンネ、反対の意味で色違いになれてよかったなw -- (名無しさん) 2014-11-11 19:59:11
  • これはいいなw -- (名無しさん) 2017-07-06 00:30:56
  • 途中から自分のこと -- (ツツジは後輩) 2024-02-15 22:48:44
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最終更新:2011年05月12日 10:26
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