回復の薬と自身のさいせいりょくで回復したタブンネは癒えない心の傷を感じつつも辺りを見回した。するとさっきまで三種類あったタブンネへの視線は二種類に減っていた。
タブンネへの明らかな軽蔑の視線を向けるものとタブンネ等興味がないと言わんばかりに無関心なものの二種類だ。
自己紹介が終わって解散し、各自思いのままに過ごしているがタブンネは誰にも話しかけられなかった。タブンネが近付こうとするとまるで汚物でも見るかのような目で見られるか、タブンネ等そこに存在しないかのように全く気にも留められないかの二種類しかない。
どうすれば良いのか分からないタブンネにボーマンダが話しかけてきた「(イリュージョンすら警戒しない軽率な判断、悪の波動一撃で沈められる貧弱な肉体、下級のドラゴンすら落とせそうに無いひ弱な技・・・よくもまあ今まで生きていけたものだ。その天運に感謝するがいい)」
そう言うだけ言ってボーマンダは去っていった。タブンネは悔しく思った。ボーマンダに冷凍ビームの一撃でも放ってやりたいと。
だがそれが出来ない事はタブンネ自身がわかっていた。自分が冷凍ビームを撃とうとするよりも早くボーマンダの逆鱗がタブンネを引き裂であろうと。タブンネから視線を外してはいても、殺気は常に向けられているのだ。
タブンネが立ちすくんでいるとトレーナーが全員集合するように呼びかけた。これから試合があるのでメンバー3名を指名するとの事だ。
どうせ自分は選ばれないだろうと考えていたタブンネだが、どう言う訳かメンバーに選ばれてしまった。後の2名はあのバンギラスとガブリアスで、タブンネは先鋒で可能な限り敵を消耗させると言う役割らしい。トレーナーが気合の襷を渡してタブンネにそう言説明した。
周りのポケモン達は意外にも反対する気配が無い。タブンネにはそれが何故なのか分からなかった。自分が弱くても後の2名でカバーできると言う事なのだろうか?何れにせよ断る事は出来ない。タブンネは何にせよ自分の役割を果そうと意気込むのだった。
目的地までの移動中ははモンスターボールの中で過ごす。しばらくすると、どうやら目的地に着いたらしく、双方同意の下、試合が始まったようだ。タブンネは予告どおり先鋒として呼び出される。
相手方のポケモンは頭部から炎を燃やし、腰には金の装飾品のような物を付けている猿のようなポケモン、ゴウカザルだった。俊敏性に優れ、物理特殊問わず高い攻撃力且つ豊富な技のレパートリーを誇り、その器用万能さから多くのポケモンの立場を失わせている罪作りな存在でもある。
ゴウカザルの手札は豊富で何をやって来るのか分かり難い、そしてそれが強みでもある。だがタブンネは大方ゴウカザルの手を予測出来ていた。格闘タイプ最高峰の技であるインファイトが来るだろうと。
ポケモンの技にはタイプ一致と言うものがある。餅は餅屋と言う言葉があるように、ポケモンと技のタイプが同じなら威力が上がる仕組みだ。タブンネは耐久力には優れているが、流石にタイプ一致の弱点を受けるとひとたまりも無い。故にゴウカザルはタブンネにインファイトを撃って来るだろうと言うのがタブンネの予想だ。
そこでタブンネは電磁波を使う事にした、自分は気合の襷を持っているので一発は耐えれるだろう、そこで相手を麻痺させてゴウカザルの利点の一つである機動力を低下させておこうと言う判断だ。
素早さが勝るゴウカザルは当然の如くタブンネの先手を取る。そして拳には凄まじい勢いが付いていた。予想通りのインファイトだった。
タブンネは思わず目をつぶりそうになるが、引かなかった。自分には気合の襷がある。大ダメージを受けようとも倒れる事は無いだろう。一発耐えてせめて電磁波だけでも叩き込もう。そう思い、タブンネは攻撃を受ける。
次の瞬間ゴウカザルの拳がタブンネの腹部を直撃、ふっくらした肉に拳がめり込み、タブンネに激しい痛みが襲う。だがタブンネは必至に踏み止まろうとする。「(きあいのタスキがあるのよ。一発は耐えれる筈)」
そう信じていたタブンネだがどう言う訳か踏み止まる事が出来ない。「(え・・・なん・・・で・・・?)」自身の状況が理解できないタブンネ。きあいのタスキを持っている筈なのに、耐える事が出来ず、意識が遠のいていく。
錐揉み回転しながら吹き飛ばされるタブンネにトレーナーの顔が視界に入る。その顔は笑いを堪えるのに必死だった。
タブンネはようやく理解した。気合の襷と言うのは、ポケモンが攻撃を耐えると、破壊されてしまう物だ。だがこの襷は破壊される気配が無い。タブンネは偽者を掴まされていたのだった。
タブンネが意識を取り戻すと、既にトレーナーの家だった。試合はトレーナー曰くタブンネが倒れた後、バンギラスが砂を起こしつつゴウカザルを麻痺させ、その後ガブリアスが相手のポケモン全員を倒してしまったのだとか。
目が覚めたタブンネは自分に偽者の気合の襷を掴ませたトレーナーへの怒りなどよりも、サポートすら出来なかった事への激しい罪悪感に襲われ、思わずバンギラスとガブリアスの元へ急ぎ、謝罪する事に決めた。幸いにも二人はまだ寝ておらず、戦利品なのか木の実を食べていた。「ミィ・・・ミィミィ(ごめんなさい・・・私何の役にも立てませんでした。)」そう言って頭を下げるタブンネ。試合に勝ったとは言え、自分は明らかに足を引っ張ってしまった。また袋叩きにされても文句は言えないだろう。
そう思っていたタブンネだが、意外にもバンギラス達が攻撃してくる気配は無い。タブンネが顔を見上げるとバンギラスは今にも吹き出しそうな顔をしていた。「(いやw・・・別にお前になんか期待していなかったしw・・・なあ相棒?)」そう言ってガブリアスの方を向く。
「(・・・・・・)」ガブリアスは黙ったままタブンネを見つめている。そしてふとタブンネに詰め寄ってこう言った。「(・・・気にするなこれがプロとアマの差だ。)」
そう言ってガブリアスは去っていった。その後にバンギラスも続く。タブンネは最早戦闘用ポケモンとすら見られていなかったのだった。
最終更新:2011年08月31日 09:49