副葬

副葬という文化をご存知でしょうか?
古代では死者はいずれ復活すると信じられていました。復活した後不自由しないようにと食物や生活用品、財宝、さらには奴隷を墓に入れ埋葬していました
もちろん、古来よりタブンネを家畜として栄えてきたネンブータ族も例外ではありません

これはネンブータ族の王、キッヨチコンチ五世のお墓でのお話です


「ミッミィ?」
「チィチィ」

食糧兼奴隷として副葬されたタブンネ達、ようやく目を覚ましたようですね。成体12匹に子供が5匹。あそこにいるのは親子でしょうか?

一筋の光さえ通さない墓の中、タブンネ達は利かない視力のかわりに自慢の聴覚を使って集まりはじめました。不安げにミィミィとないていますね

半日ほどたったころ、一匹の子タブンネが集団から飛び出してきました。少し遅れて母親らしいタブンネが

「ミグッ!」

足音で子供の位置はわかっても、動かないものの位置はわからないのでしょう。ママンネは箱にぶつかって倒れてしまいました。
その間にも子供は遠くへ行ってしまいます

「ミィ?!ミッミッミ!」
おや?子タブンネが何か見つけたようです。ママンネを呼んでいます。

「ミィミ?ミ?」クンクン

子タブンネが見つけた箱からは、甘ったるい匂いが漂ってきます。
箱の中には瑞々しくて大きなきのみがたくさん。この地方では見ない珍しいきのみもあります。きっと王様への供物でしょうね

「ミィィ~♪」クチャクチャ
「ミフィ~ン」ペロペロ

タブンネ親子は図々しくもきのみを食べはじめました。
このタブンネは元奴隷ですから、食べ物と言えば人間や他のポケモンが食べずに残したもの、言わば生ゴミです。いつも見るだけで決して口に入ることがなかったごちそうに目を輝かしています。

二匹の声を聞いて固まっていた他のタブンネ達も動き出しました。
親子のもとに向かっていくもの、匂いを頼りに別の食物を探すもの、様々ですが皆初めて食べるきのみの味に感激しています

墓の中のタブンネ達には知るよしもありませんが、外の世界では一日が経ちました。

タブンネ達はお供え物を食べたり、どこからひっぱってきたのやら、上等な毛布(もちろん材料はタブンネ)にくるまって寝ていたり。

「ミー♪ミー♪ミー♪」ヒック

お酒を飲んで酔っぱらってるタブンネまでいますね。御機嫌に歌まで歌っています。
お墓はすっかり荒らされてしまいました。



タブンネ達が副葬されて三日目、新しいカップルが誕生しました。新婦ネのお腹はぽっこりと膨れています

メスンネ達は供物の花で新婦ネを着飾り、オスンネ達は酒を飲んで笑いあい、子供達は拙い歌でカップルネを祝います
大きなダイヤのあしらわれた指輪も用意して、結婚式の真似事をはじめました。

おいしいごはんに柔らかなベッド。ムチを持った人間もいません。
真っ暗なのを除けばここはさながらタブンネ達の天国のようでした



しかしそんな幸せな生活も長くは続きません。
ここに来てから一週間で食べ物が底をついたのです。

真っ暗で何も見えないのでタブンネ達は食糧を把握出来ていなかったのです。
きのみが無限にあるものと思い込んでいたのでしょう。

「ミィ!ミィィ!」ガシャーン
「ミミ!………ミ」グスッ

タブンネ達は手当たり次第箱をひっくり返しています。が、どれも空っぽ。数日前自分たちで食べてしまったのだから当然ですよね。
今更後悔しても遅すぎます。



あれから2日、つまり9日目。
新しい仲間が一匹増えました。しかし命の誕生を祝福する者はいません。
タブンネ達は体力を温存するためにじっとしているか、往生際悪く箱をひっくり返してるかのどちらかで、赤ん坊には見向きもしませんでした

誰もが空腹に苦しむ中ベビンネだけがお腹いっぱいミルクを飲み、満足そうに眠りにつきました。

タブンネ達は相当参っているようで、虚ろな目をして横になっています。

「ミッ!」ダッ

おや?一匹のオスタブンネが突然走りだしました。どうしたのでしょう?

向かった先は……なるほど、ここはお墓ですから、あると考えるのが自然ですね
それでも普通は食べようとなんて考えないはずですが……

戻ってきたオスンネは最後の食糧---つまり遺体を抱えていました

キッヨチコンチ王の遺体はミイラ加工が成されていて、腐ってはいないものの可食部はとても少ないです
オスンネは遺体を細切れにして他のタブンネに配っています
罰当たりな行為ですが独り占めしないところは評価出来ますね

こうしてタブンネ達は数日ぶりの食事にありつくことが出来ました。

「ミイッミッ!」
「ミミ?ミィ~ン♪」

新郎ネは新婦ネに自分の分をわけてあげています。出産と授乳で消耗している新婦ネを気遣っているのですね。美しい夫婦愛です

「ミィヤァァア!!ミィー!ミィー!」ジタバタ

一方こちらでは揉めているようです。駄々を捏ねている子タブンネをママンネが宥めています。
少し前の子タブンネなら喜んで食べていたんでしょうが、ここ数日できのみの味を覚えてしまったせいでしょう。こんなもの食べたくない、きのみがいいと言っています。

「ミィー!ミギィャアア!!」ジタバタ
「ミギー!!ミィィィ!!」
「ミッ……」ビクッ

いつまでも駄々をこね続ける子タブンネにとうとう先程のオスンネが怒りだしました。せっかく分けてあげたのに無下にされたら怒るのも無理ないですね
子タブンネの分の肉をとりあげて食べてしまいました

11日目。
昨日のお肉でお腹は膨れたものの、問題が解決したわけではありません。タブンネ達は沈痛な表情をしています
新郎ネだけがお乳を飲んでいるベビンネを幸せそうに眺めています。

「ミィィ……」

それを指を加えながら見ているのは昨日食いっぱぐれた(自業自得ですが)子タブンネ。おいしそうにお乳を飲むベビンネを羨ましそうに見ています。
しばらくするとカップルネ達に近づいていきました。

「ミィ~ン♪ミィミィ♪」

図々しくもミルクをねだってるようですね。
ただでさえよその子に自分のおっぱいをあげるなんて嫌なのに、こんないつ次の食事にありつけるかもわからない状況でわけてあげるだなんて冗談じゃありません。
新婦ネはシッシッと子タブンネを追い払いました
しかしこれで諦める子タブンネじゃありません。媚びて媚びて媚びまくります。

「ミィィィ、ミッミッミッ♪」
「………」
「ミー♪ミィ?ミッミッ♪」
「………」
「ミフィ…「ミギャーー!!ミッミッミィ!」バチンッバチンッ

ついに新婦ネを怒らせてしまいましたね。往復ビンタで頬を張られてしまいました。

(続く)

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最終更新:2012年02月25日 18:04
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