ラヴクラフト全集7
(S造っぽい口調で)
kendo-enter2006@wikiに来ています。
右を見て下さい。何にも(更新履歴に最近の更新情報が)見えない……。
ちょっと待って。
何だよ?とか、何で皆こんなに更新してねえんだ?とか、一時期は皆更新してたのに、ラジオページも作ったのに、とか思ってんじゃねーのかオイ。
自分で更新するんだよ、自分で。
まあそういう感じで、8ヶ月ぶりのラヴクラフト全集更新。
勘違いしてほしくないのは、まだ読んでいないから書けないのではない、ということ。つまり、実は、俺はラヴクラフト全集&怪奇小説傑作集は、もうほぼ全て読んでいるのだということ。
具体的に言えば、次回書く予定の別巻上、下、ならびに、まだ書いていない怪奇小説傑作集の4巻と5巻も、既に読み終えている状態。
要は、俺がその気になれば、こんなページ、いつでも完結させられるのだ。
それを、ちまちまとレビューを小出しにしていくことで時間を稼いでいたのさ。
何の為にだよ。
はい、じゃあ7巻のレビュー。
『サルナスの滅亡』
一万年ほど昔、ムナールという地に、不気味な姿をした水棲生物による、イブという都市が存在した。ムナールに到来した人間たちは、その生物と都市を気味悪く思い、その生物と都市を滅ぼして、サルナスという人間の都市を新たに建設して、英知に富んだ生活を送っていた。しかし、イブを滅ぼしてからちょうど千年目のある夜、かつての報復が起こることになる。
よく分からないけど、中二ノートってこういう感じになるんだろうか。
『イラノンの探求』
青年イラノンが、誰も知らない遥か遠い都市アイラを探す物語。しかし、実はその都市とは……なかなか面白いオチ。
どうでもいいんだけど、「遥か」って出そうとしたら「春香」が出てきた。のヮの。
『木』
タイトルがシンプルすぎる。
アルカディアのマエナルス山にある廃屋の庭には、一本の巨大なオリーブの木が生えているが、周辺の人々から、その木は恐れられている。それは、かつてその小屋に住んでいた、カロースとムーシデスというきわめて優秀な腕をもつ2人の彫刻家にまつわる物語によるものだった。
友情という同盟が対立に変化する。よくある話。
『北極星』
別名ポラリス。
散文詩的で、あまりストーリーみたいなものはない。とにかくファンタジックな雰囲気が素晴らしい。一度読んでみて頂きたい。
俺のメールアドレスに入っている「polaris」という単語は、この原題。
ちなみに「nyarlathotep」は、5巻収録の「ナイアルラトホテップ」の原題。
共通点としては、両方ともラヴクラフト師匠の夢を物語に起こしたものという点。カッコよすぎます。
『月の湿原』
主人公の友人、デニス・バリイは、キルデリイの湿原に近い、祖先のものだった古城を買い戻し、周辺の開発に勤しんでいた。しかし、呪われているという湿原に手をつけようとすると、雇っている地元民は、呪いを恐れて皆辞めてしまう。仕方なく北部の住民などを呼び寄せて、湿原の干拓作業を進める中、異変が起きるのだった。
『緑の草原』
1913年8月27日、アメリカ合衆国メイン州の海辺に落下した隕石の内部に存在した、未知の物質で作られた一冊の手帳に書かれていた古典ギリシア語の文章を、現代語訳した文章。こういうカオスっぷりがラヴクラフト先生の天才的なところ。
『眠りの神』
彫刻家の主人公は、とある駅で、彫像のような端正な顔容をした男性と知り合いになる。やがて友人となった2人は、ケント州に構えたスタジオで、様々な研究を行っていたが、夜、奇妙な夢を見るようになる。
2通りの解釈が可能なオチ。なかなか面白い。
『あの男』
詩人を志してニューヨークに来たものの、現在の街の様子に幻滅して自棄になっていた主人公は、ある夜、住宅街で「かつてのニューヨークの街の美しさを見たくはないか」と誘ってくる男に出会う。
原題は「He」。おそらく全作品中で一番短いタイトルだろう。
『忌み嫌われる家』
プロヴィデンスに、60年前から誰も住んでいない、荒れ果てた家が存在した。と言うのも、かつてその家に住んだ人々が、次々に衰弱死を繰り返したからなのだそうだ。家の中でも特に不気味なのが、地下室なのだという。その謎に興味を惹かれた主人公は、伯父と共に、その地下室の調査を行うことを決心する。
人々が原因不明の衰弱死をするっていう点が「宇宙からの色」に似てる気がしなくもない。
『霊廟』
精神病院に入院している男の一人称の語り口で語られる物語。男は裕福な家庭の息子で、幼少時より、家の近所にひそかに存在する謎の霊廟らしき洞窟に、強く興味を惹かれ続けていた。成人したある日のこと、男は遂に、その霊廟の中に侵入する方法を見出す。
オチには「壁の中の鼠」とか「イラノンの探求」とかと似たようなものを感じる。
『ファラオと共に幽閉されて』
主人公はとある有名マジシャンで、休暇中に、旅行で妻とともにエジプトのピラミッド付近を訪れる。そこで、怪しげな現地の観光ガイドと出会い、辺りを観光している内、主人公は巨大ピラミッドに興味を惹かれる。ちょうど野暮用もでき、これは都合が良いとピラミッドに赴いたところ、思いがけないトラブルに巻き込まれ、言語に尽くしがたい経験をすることに。
このマジシャンというのは、ハリー・フーディニらしい。彼の体験談を基に、ラヴクラフトが大幅にプロット変更を加えて完成させた物語だという。
『恐ろしい老人』
キングスポートの海辺の街に、財産をもつものの、年老いて衰弱した老人が一人住んでいる家があるのだという。その噂を聞きつけて、外の街からやってきた強盗3人組は、キングスポートの住民なら誰も近寄らないというその家に、強盗に押し入ろうと計画する。
この老人が郭海皇的な人物っていう可能性は無いですかね。無いですね。
『霧の高みの不思議な家』
キングスポートの北方にそびえる岩山の、もっとも高い崖に、一軒の家が孤立して建っている。夜になると灯りがつくその家を、地元の住民たちは皆、不気味がって近づこうともしないが、ある日、外の街から引っ越してきた哲学者が、その家に興味をもち、岩山を登攀して訪れようと試みる。
「恐ろしい老人」も脇役として登場。
『初期作品』
恐ろしいことに、ラヴクラフトわずか14歳の時の作品。信じられん。訳者の大瀧さんは「かろうじて鑑賞に堪えるものになっている」とおっしゃっているが、とんでもない、14歳でこれだけ書けるとは。後の才能を感じさせる作品だ。
確か、荒俣宏さんの訳した創土社の「ラヴクラフト全集1」には普通に載ってたなあ。
主人公は衰退した貴族の一族の末裔で、先祖代々受け継がれてきた古城に住んでいる。その一族には、600年前に、ある妖術師によって、「三十二歳までしか生きられない」という呪いが掛けられているということを知る。その年が近づくにつれ、古城の内部を探検するようになっていた主人公は、ある日、謎の地下室へ続く階段を発見する。まあ、若干読めなくもないオチ。
アメリカ合衆国のカクタス山脈にある金鉱、ノートン鉱山で、主人公は作業員としてはたらいていた。ある時から、ファン・ロメロという、人種の推定できない独特の人物も作業員に加わり、主人公は彼とわずかばかりの会話を交わす仲になった。ある日、鉱山の地下鉱脈を探り当てるため、ダイナマイトで地下を爆破させたところ、謎の大穴が発見されるが、その夜、ロメロの様子がおかしくなる。
アメリカ合衆国の、とある通りに関する物語。
何か普通にいい話です。めでたしめでたし的な。ラヴクラフトらしくもない。
意味不明。ラヴクラフトが神話の神々のことを大好きなんだろうなあということしか俺には分かりません。
『夢書簡』
「北極星」や「ナイアルラトホテップ」、「ランドルフ・カーターの陳述」の元ネタになる、ラヴクラフトの夢日記集。じっくり読むのがいいと思います。
『断片』
ラヴクラフトが書きかけて、完成しなかった作品らしい。途中で突然終わっているため、「アザトース」とかはマジで意味不明なことになっている。
以上です。
次回は別巻上をお送りしましょう。
レビューを書くっていうのは、正直、意外と面倒臭い。好きなものでも面倒臭い。
特に、7巻は、短編集ばかり大量に収録されているから、書く量が多くなった。だから前回と今回に8ヶ月も間が空いてしまった。
いやー、このシリーズも何とか来年の3月、卒業前には完結させたい。
ラヴクラフト全集6
学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEADが超面白いです。
ということで6巻のレビュー。今巻は「未知なるカダスを夢に求めて」関連の作品がギッシリと集まっています。言ってみれば「SFファンタジー小説の巻」で、5巻とはうってかわってホラーの要素は薄く、人によっては最もつまらない巻とも言える。
しかし俺が最高傑作だと考える「ランドルフ・カーターの陳述」が収録されてるので一読の価値はある。
『白い帆船』
主人公バザル・エルトンはノース・ポイントの灯台守で、満月の夜に南方から現れる白い帆船に、ある夜乗り込み、歓楽の土地ソナ=ニルへ連れて行ってもらう。しかしバザルはそれに満足せず、神々の土地カトゥリアへ行きたいと願い、渋る船員に無理を言って出帆した。だが神々の土地はその姿を現してはくれず、船は無の深淵である大瀑布へ落下し、次にバザルが意識を取り戻すと、灯台のほとりに倒れており、日付は出発した日のその時刻に戻っていた。
あ、オチまで全部書いてしまった。
『ウルタールの猫』
スカイ河の彼方に位置するウルタールには、かつて猫殺しを好む夫婦がいた。ある時、村にキャラヴァンの一行が立ち寄ったところ、そのキャラヴァンの一人の少年が可愛がっているネコが姿を消した。村の人々から、猫殺しの夫婦の話を聞いた少年は、空に向って何事か呪詛を呟き、キャラヴァン一行と共に去っていった。その夜、村中の猫がどこかへと姿を消す。翌朝、全ての猫が戻ってくるが、奇妙なことにどの猫も満腹の様子で、食事を取ろうとしない。程無くして、夫婦の白骨死体が家から見つかったのだった。
あ、オチまで全部書いてしまった。まあ、ラヴクラフト先生は猫が大好きってことですね。僕は犬の方が好きです。
『蕃神』
賢人バルザイが神に接触しようとして死んだ。
あ、終わってしまった。いや、手抜きじゃないよ。正確に書くなら、神々が住まう山峰に登って神の姿を見ようとして、空に吹っ飛んで行ったんです。
余計に意味が分からなくなった。
『セレファイス』
世捨て人となった男が、夢の世界ではクラネスという名を名乗り、幼少時に夢の中で瞥見したセレファイスという輝ける都へ辿り着こうと奮闘するお話。
どう見てもラヴクラフト先生の願望です、本当にありがとうございました。
最後のブラッキーなオチもナイス。
『ランドルフ・カーターの陳述』
俺がラヴクラフトに傾倒するのは、中学生の時にこの物語を読んだからである。簡単に説明するなら、未知の世界を覗き込もうとする男2人を襲った恐怖。
当時から既に「物語に対する恐怖」という感覚が結構麻痺し始めていた俺に、「おお、これスゲーじゃん!」と思わせた作品だった。
と言っても、その鮮烈なオチだけしか覚えておらず、タイトルも作者名もすっかり忘れて時が経っていた。
ところが高校時代に小林泰三にハマったため、その参考のため、大学入学後に何気なくラヴクラフト全集を読んで、「ちょ、これはあの時の……」という運命の再会をしたワケだ。
そしてその後も、全集を読み進めれば読み進めるほど、小中学生の頃に読んで「この話面白いな」と思った作品が、ゴロゴロと出てくる。多分、何か相性がいいんだろうという結論に達した。
この話はランドルフ・カーターシリーズ第一弾。と言っても、中学生の頃はこの話がそういうシリーズ物だとは知らなかったけど。
『名状しがたいもの』
ランドルフ・カーターシリーズ第二弾。
アーカムの古びた埋葬地で、カーターと友人マントンは、その近所の廃屋に関する言い伝えに関して議論を交わしていた。その言い伝えに寄れば、約100年前、その家に一人で住む老人が、得体の知れない一体の怪物を屋根裏部屋に飼っていたという。しかし、老人が死んで世話をする人間がいなくなったため、怪物も死んだと思われていたが、なぜかそれ以降も怪奇現象が絶えない。その真相とは……という話。
まあ、これも普通に面白いね。
『銀の鍵』
ランドルフ・カーターシリーズ第三弾。
カーターの晩年のお話。もはやランドルフ・カーター≒ラヴクラフトとしか思えなくなる。
五十歳になって、現実世界に幻滅した夢想家ランドルフ・カーターは、世間を断絶して過去を回想している内に、ある夜の夢の中で、死んだ祖父によって、銀の鍵という、先祖たちの妖術の結晶である存在のことを知らされる。夢の中の指示通りにその鍵を見つけ出したカーターは、その後、突然行方不明となるのだった。
カーターさん、異世界への旅行の始まりです。Have a nice fright。
『銀の鍵の門を越えて』
ランドルフ・カーターシリーズ第四弾。
『銀の鍵』の後日、行方不明になったカーターの遺産分配のために集まった人の場の中に、チャンドゥラプトゥラという怪しげなターバン姿の男がおり、その男は、カーターが行方不明になったことの真相を、全て語り始めたのだった。
かなりSFチック。ラヴクラフト先生にはこういう才能もある。嫌になりますね。
『未知なるカダスを夢に求めて』
ランドルフ・カーターシリーズ最終章。
何と言うかね、とにかく、長い。
あらすじも……わざわざ書く程のことですらない気が。カーターさんが三十路の頃、夢の世界を旅行しました。というお話。
しかも、最終的に言いたいのは「故郷は凄くイイよ」という結論。何じゃそれは。
まあ、強いて言うなら、他の数々のラヴクラフト作品に登場した皆さんが勢揃い、オールスターゲーム風味なので、時間があったら読んでみる、程度でいいんじゃないか。
そう言えば、来週、試験あるんだよね、俺。
ラヴクラフト全集5
信号処理論第二の単位来るのかねぇ。無茶苦茶微妙。気になって寝付けないので超久しぶりの更新。
5巻は、クトゥルフ神話の基礎となる話が収録されている。
収録された物語のおどろおどろしさの平均値では、全7巻中トップに位置すると思われる。「クトゥルフとか別にいいから、とりあえず雰囲気が怖い話を読みたいんだけど」と言うなら、5巻を推奨したい。
『神殿』
サブタイトルが「ユカタン半島沿岸で発見された手記」。言わずと知れたラヴクラフトの伝家の宝刀、遺された手記という形式での物語。
行方不明になったドイツ帝国の海軍のとある潜水艦の、艦長さんの手記。その潜水艦はイギリスの貨物船を撃沈するという任務を果たしたのだが、その貨物船の一人の乗員の死体の遺品である象牙細工をくすねたところ、潜水艦の故障を始め、次々に怪異が起こり始める、というストーリー。
や、まあ何も言うことはないです。普通に面白い。ラヴクラフト先生の真骨頂を味わおう。
『ナイアルラトホテップ』
ラヴクラフト先生が見た夢をそのまま書いたら小説になりました。以上。
何つーかもう天才だよね。天稟があるって言うのか。サラッとこういうことが出来ちゃう辺りが一般人と一線を画してる。
7巻収録の『ポラリス』と、この作品は、俺にとってはバイブルだね。もう。読んでると恍惚としてくる。
『魔犬』
オカルトに没頭しすぎて、数々の墓地を暴いては、ミイラや禍々しい品を収集していた主人公とその友人は、ある時、オランダの教会墓地で、最悪の品物を手に入れてしまう。その直後から、数々の恐怖が2人を襲う。という話。
確か中学生頃に読んだかな。「この雰囲気いいなー」と感心していたが、ラヴクラフト先生だったワケだ。
まあ、ラヴクラフト先生とは、そんな感じで子供の頃に邂逅していたワケだけれど、そのエピソードは次巻で書こう。
『魔宴』
自分の父祖の一族が住んでいた町にクリスマスに招かれた主人公は、その町の教会で古から続いている、とある儀式に参加させられることになるのだが。
うーん、まあ普通かな。面白いけど、5巻の他のインパクトある作品たちと一緒に読んでしまうと少し地味目な印象を受ける。
『死体蘇生者ハーバート・ウェスト』
何だかラヴクラフトっぽくない雰囲気の作品。何でも、雑誌の編集者に連載依頼をされて書いたもので、自分の意思で書こうと思ったものではないらしい。何となく分かる。だってタイトルからしてラヴクラフトっぽくないもんな。シンプルに「ハーバード・ウェスト」とかにしそうなもんだけど。
ミスカトニック大学医学部の外科医、ハーバート・ウェストは、死者を蘇らせる技術の確立に注力していた。死者に対して冒涜的な行為に没頭し続けるハーバートは、死体を求めて軍医として戦場へ赴くと、遂にそこで一体の死体の蘇生に成功する。しかしそれは恐怖の始まりだった。
大瀧さん曰く、「明らかに「フランケンシュタイン」を意識している」ということ。まあ、嫌々ながら書いてもこんな完成度の作品が書けるってのは十分ですよねぇ。
『レッド・フックの恐怖』
ニューヨーク市警のマロウン警官は、崩れそうな煉瓦製の建築物や、色浅黒い外国人の顔に恐怖を覚える心的外傷を負って療養中だった。それは、嘗てこの町で起こった、幼児大量誘拐事件、並びに廃屋倒壊事件の、明るみには出ない真実と関連があった。
教会地下の怪物たちの饗宴の空間の描写が素晴らしい。
『魔女の家の夢』
ミスカトニック大学数学科の学生ウォルター・ギルマンは、大学で数学を研究する内に、異次元の世界へ侵入する方法が発見できそうだと分かった。そこで、ある魔女が潜んでいたとされる、不可解な設計で建てられている家に下宿していたのだが、その家で、ある時から奇妙な夢を見始める。
ラヴクラフト本人は拙作と言っていたらしいが、こういう科学とオカルトを結び付けるような話は個人的に好み。
『ダニッチの怪』
怪奇小説傑作集3で登場しましたね。ので特には触れません。まあこの巻では訳者が大瀧さんになっており、微妙に細部の言い回しが違うというところか。傑作の一つでしょう。
なお、怪奇小説傑作集も、いよいよ残すところ5巻のロシア編最後の2話「黒衣の僧」「カリオストロ」のみ。去年の4月に一気に5巻全部衝動買いしてから1年弱、いやそもそもラヴクラフト全集にハマり始めたのは1年半ほど前。随分と時が経ったもんだ。
ラヴクラフト全集4
誰か……更新しようぜ……
4巻では、ラヴクラフトの作品の中で、科学に比重の置かれた作品が集められている。
ふう、一人寂しくレビューに移るとしよう。
『宇宙からの色』
アーカムの西、鬱蒼とした木々が繁る谷間に、「邪悪な場所」と呼ばれる、焼け野原となった空間がある。
貯水池製造の為の調査員としてその場所を訪れた主人公は、その近所に唯一住んでいる老人から、調査の過程で、「なぜその空間が邪悪な場所として避けられているのか」という理由となる、実に奇妙な話を聞いた。
ラヴクラフト作品の中でも、かなりの傑作。ラヴクラフト本人も、「自分の最高傑作」と言う程の代物。
『眠りの壁の彼方』
主人公がインターンとして精神病院に勤めていた頃、実に奇妙な夢を見る患者がそこに入院していた。
とりとめのない曖昧な夢ではなく、どこか他の世界のようなリアルな空間で過ごす夢だという。やがて、夢が進行するにつれ、患者は弱っていくのだが。
なかなか面白い。確かに「時間からの影」の廉価版って感じがする。
『故アーサー・ジャーミンとその家系に関する事実』
アーサー・ジャーミン卿は、突然荒地で焼身自殺を行ったが、その原因は、アフリカから送られてきた棺の内部にあった。
「お前、そんなのオチ見え見えじゃん」という話を、非常にもったいぶった口調で書くラヴクラフトの真骨頂が見られる。
『冷気』
ニューヨークで雑誌の仕事をしていた主人公が住んでいた下宿の部屋の上の階には、とある医師が住んでいた。その医師の部屋は、常に冷房が激しくかかっていたが、その理由は衝撃的なものだった。
これも……うーん、何となくオチが見えなくもないか?
『彼方より』
友人、ティリンギャーストが、長い研究の果てに完成させたその機械は、人間の未知の器官に作用し、人類が今までに見たことも無い、世界の真の姿を目にすることが出来るようになるのだという。主人公は、ティリンギャーストの部屋に招かれ、その機械の実験に付き合うことになり、衝撃的な体験をする。
俺は面白いと思うんだけど、大瀧氏曰く「ものたらなさを感じざるをえない」らしい。シビア。
『ピックマンのモデル』
主人公は、とある絵を見たために、画家の友人ピックマンと絶縁した。
確かにピックマンが描いたその絵は非常にショッキングなものだったが、最も恐ろしいのは、そのモデルだった。
ピックマン君は第6巻で再び登場します。乞うご期待。
『狂気の山脈にて』
出たよ。超大作。
南極探検隊の隊員2名が見た恐怖。以上。
もうね、読むのに疲れた。
ラヴクラフトの冗長な文体が悪い方向に作用する例だと思う。
確かに、スケールのデカさはスゲェんだけど。
「俺も南極って何か怖いと思うんだよね」という人は是非とも読んでみてほしい。
嗚呼、学校も始まってしまって憂鬱だよ、僕は。
安西先生、留年は……したくないです。
ラヴクラフト全集3
うーむ、誰か何か更新しようぜ。淋しいじゃないか。
しかし考えてみれば、初心者指導もいつの間にか終わって(中断か?)しまって、芸も無いし、やがて審判もしなくなるし、いよいよこのページもお役御免って感じか。こうして最上級生になっていくのだろうな。そして俺の実業団大会へのトラウマは克服されることが無いのだろうな。
さてこの3巻からは、ラヴクラフト愛好家、大瀧啓裕氏が訳を手がける。
1、2巻は、大西氏、宇野氏の個人的セレクションによるもので、年代、ジャンルなどがバラバラであった。この3巻で、大瀧氏もその手法を一度は踏襲するが、4巻以降からは、ラヴクラフトの作品を細かくジャンル分けして収録するという誠実さが伺える。
何より、大瀧氏は、所蔵の目録の質・量が半端じゃない。
巻末の「訳者あとがき」が、大瀧氏の場合アツすぎる。超細かい。丁寧。
色々な裏設定が明かされたりして、正直、本編を読むより、訳者あとがきを読む方が楽しかったりする。
さて、では3巻のレビューに移ろう。
『ダゴン』
自分が船荷監督として乗っていた定期船がドイツの商船隊襲撃艇に拿捕されたため、非常用ボートに食料を積み込んで逃げ出した主人公は、広い海原で怪事に出くわしたが、それはその場限りの恐怖に留まらなかった。
「窓に!窓に!」は名言。
『家のなかの絵』
イングランドの森林地帯、突然の雨に困った主人公が飛び込んだのは、古びた廃墟のような農家だった。その家主の怪老爺が主人公に取り出して見せたのは、一冊のぶ厚い書物だった。
確か小学生か中学生の頃に読んだ記憶がある。
爺さんの方言がところどころ広島弁っぽいと思うのは俺の気の所為だろうか。
『無名都市』
アラビアの砂漠の果て、堆積した砂塵の下に存在すると言われる無名都市。アラブ人たちは恐れ近寄らないその領域に、敢然と足を踏み入れた主人公が目にする、驚愕の真実。
コズミックホラーの観念の下地が見える一作。
『潜み棲む恐怖』
テンペスト山に住む集落で、ある嵐の夜、住民七十五名が全員惨殺されるという怪事件が発生した。近所の部落民たちは、3マイルほど離れた場所に位置する、廃墟となっている「マーテンス館」に棲んでいる悪魔の仕業だと言う。半信半疑の主人公は、その館の調査に乗り出すが、そこで恐るべき事態に陥り、そして恐るべき真実を知る。
オチは、あー成程、と言った感じ。
『アウトサイダー』
すみません、俺の稚き頭ではラヴクラフト大家が何をおっしゃりたいのか分かりません。
『戸口にあらわれたもの』
主人公は、精神病院に入院していた親友の頭に6発の銃弾を撃ち込んで殺害した。しかしそれは表面的な事実であり、真実はとんでもなく驚異的なものだった。
個人的にはかなり好き。やっぱ黒魔術ってのはこういう凶悪なものであるべきだよな。
『時間からの影』
長編。
ミスカトニック大学政治経済学教授である主人公は、5年4ヶ月の間の記憶を失っていた。周囲の人間の言によると、その間、自分は実に不可思議な言動・行動を取っていたのだという。そしてその後、主人公は奇妙な夢を見るようになる。その果てに辿り着いたのは、かつて地球上に存在した謎の種族に関する驚愕の事実だった。
普通に面白かった。流石はラヴクラフトと誉めてやりたいところだ(ブロリーP)。まあ若干長ったらしい感は否めないものの、「狂気の山脈にて」ほどじゃないからマシ。
もう怪奇小説傑作集4も読み終わって、怪奇小説傑作集5のドイツ編が終わろうとしている。うーん、レビューのペースを上げなくてはならんか。
ラヴクラフト全集2
合宿所のあの穏やかな気候と豊かな食事が懐かしい。
あと数日ほどで気温もそろそろ下り坂になる筈。
俺を苦しめるこの季節も折り返し地点だと思えばまだ乗り切れそうだ。
ラヴクラフト全集2。この巻はある意味一番アツい巻かもしれない。
『クトゥルフの呼び声』
来たよ、コール・オブ・クトゥルフ。クトゥルフ神話入門とでも言うべき、簡潔にして豊富な内容の話。クトゥルフ神話、コズミックホラーに興味を持ったら、まずはここから。最初は無知だった主人公が徐々に核心に迫っていく後半盛り上げ型の展開は、ラヴクラフトお得意のもの。素晴らしい。名作。
『エーリッヒ・ツァンの音楽』
確か小学生か中学生の時に読んだ。
主人公はかつて、とある寂れた町のアパートに下宿していたことがあった。そのアパートで起きた奇妙な出来事の話。結局真相は何だったのか語られないままだが、それよりも物語全編を通じて漂う、この荒廃・退廃したムードが何とも言えない。子供の頃の俺もその雰囲気に魅入られたもんだ。名作。
『チャールズ・ウォードの奇妙な事件』
全5編からなる大作である。
正直、ラヴクラフトの長編と言えば、大抵読んでいる途中で飽きてしまうものがほとんどだ。狂気の山脈にてとか。時間からの影とか。
しかしながら、この長編だけは違った。常に物語が展開し続けるスリリングな雰囲気が読者を飽きさせず、特に途中のウィレット医師の地下探検はかなり手に汗を握る描写だ。おそらく、ホラーフリーゲーム「1999 Christmas Eve」の中盤の地下探検も、これを参考にしたものと思われる。
最後に明かされる真相も実に面白い。コズミックホラーともリンクしており、ラヴクラフトの作品の中でバランスが取れた作品というべきではないだろうか。
傑作。
さて次巻からは大瀧さんの訳が始まる。
激アツだ。
ラヴクラフト全集1
暑い。おかしい。狂ってやがる。岐阜終了のお知らせ。
暑さを吹き飛ばしましょうぜ、ラヴクラフト先生。
ということでここからは暫くラヴクラフト全集シリーズのレビューを進める。
怪奇小説傑作集のレビューは一旦停止。
この第1巻には、編者兼訳者の大西尹明さんのオリジナルチョイスの4作品が収録されている。
大西さんの感性で選んだ4作品ということで、特に年代や作品の傾向などに統一性は無い。
これは宇野利泰さんが編者兼訳者を務めた第2巻にも言えることである。
これらを統一しようという動きが見られるのは、キング・オブ・ラヴクラフティスト、大瀧さんの登場を第3巻まで待たなければならない。
前置きはそんなところで、1巻のレビュー。
『インスマウスの影』
周囲の人間は決して近寄りたがらないという漁村に、何の気なく足を踏み入れた主人公。
村にはおかしな雰囲気が漂い、住民の容姿にはどことなく違和感がある。
やがて、一人の老人と接触するところから、話は一気に展開していく。
「あ、そうなんすか。まあ、行ってらっしゃい」と言いたくなるナイスなオチ。
確かに名作っちゃ名作なんだろうけど、俺としてはイマイチ。
途中のインパクトが今ひとつだったかなと思う。要は、結局、ラヴクラフト先生、あなたが魚介類が苦手なだけでしょって感じ。もっとガンガン怪奇現象とか起こしてほしかった。良作。
『壁のなかの鼠』
それですよ、あなたはこういうのが素敵なんですよ、ラヴクラフト先生。
主人公はとある特殊な血筋の貴族さん、その持ち物の古城が舞台。
こう、発狂して人肉食べちゃうみたいな、頭狂っちゃってる系のお話を書くとイケイケでノリノリな人だと思うんだよ。
穏やかな始まりからは想像できないような凄絶なバッドエンディング。傑作。
『死体安置所にて』
ブラックジョークっつーのかね、これは。
とある葬儀屋が仕事を変えた。ある恐怖体験がその原因だったというのだが、その体験とは一体。みたいな話。
確かに異色な作品。ラヴクラフトっぽくないと言うか。
作品自体は間違いなく面白いけど、ラヴクラフトっぽさを求めると些か物足りない。
良作。
『闇に囁くもの』
この一冊中でのMVPはおそらくこれ。
コズミックホラーをとくと味わうがよい、って感じのラヴクラフト先生の本気が見える。
とある田舎町で洪水が起こった際に、水際に不気味な姿形をした生物が打ち上げられた。こりゃ一体何なんだ、と捜査を始めた主人公は、徐々にその真相に巻き込まれていく。
俺から言えることは、さようなら、ヘンリー・エイクリー!宇宙でもお元気で!ってところ。
傑作。
ラヴクラフト先生の本気はまだまだ続くぜ。
夏もまだまだ続くぜ。
もう勘弁してほしい。
最終更新:2009年12月31日 20:24