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幼稚園、小学校とずっと将来はケーキ屋さんに憧れた。
中学校は少し変わって自分に背伸びしてモデルも目指したけどココは田舎。スカウトもモデル事務所もない遠い夢だった。
高校は。。どうだったんだろう?将来の仕事への夢もなく部活に明け暮れた日々だった。でも大学で絶対上京してやるんだ!って思って自分なりに必死に勉強もした。

そして私は今、日本の首都Tokyoにいる。

ただ大学生ではない、フリーターでだ。
大学受験はことごとく失敗した。来年こそ入ってやる!と浪人を決意したものの、親に「田舎にいても競争のない予備校で勉強したって進歩ないじゃない。
とりあえず1年都会に住んでみて競争の激しい予備校で来年に備えてらっしゃい、ただあまり出せないからバイトするのよ。」と言われた。

田舎から数日前に新幹線で上京して、狭いながらも東京に住を得たのと予備校で学べることは私にとってこの上ないチャンスの1年だ。

っと、なにを呑気に自分のこと淡々と語ってるんだろう。オマエだれだ?って話ですね。
私の名前は恵麻(えま)、前の文章の通りさえない東京に住む予備校生という肩書でなんとか人格もっているフリーターです。
予備校に通うかたわらバイトもしなくてはいけないけど、私の好きなことってなんだ?昔の夢を追いかけるとケーキ?いやいや料理の心得のない私じゃ作るのは今からじゃ遅すぎる!
モデル。。う~ん渋谷行ったらスカウトされたりするかもしれないけどはっきり言ってコワい人もいるかもしれない。それに今の私は地味だ。暗い予備校生で1年間通さないといけないんだ。うん、絶対無理だ。
迷っても仕方ない、とりあえずまだ近所も行ったことないし散歩しよう。散歩しながら考えるんだ。そうだそれがいい。

と、いうことで自己紹介にはなっていませんが、散歩しながら私はバイトのことを考えることにしました。まさかこの後こんなバイトをさせられ、そしてこんなご褒美が待ってるなんて思いもよらず。

散歩は好きで、田舎にいるときもお気に入りのダボダボの大きなリュックサックにお菓子とお茶と少しの小銭を背負って1人で呑気に宛のない旅に出た。
自分の知らないところがどんどん開拓されていくことに1人で興奮した。そしてここはなんでもある大都会東京だ。どんな旅になるんだろう。
このあと夕飯も作らなきゃいけないしついでに近所でスーパー見つけながらくらいしか考えてないけどなんだか楽しくなってきた。
アパートを出て階段を下りてコンクリートジャングルの中を進んでいく。道行く人はどこから来てそしてどこに行くんだろう。そんなことを考えながらバイトのことも考えていく。私って何したいんだろう。。
そんな事を考えながら歩いていたら見事に迷った。ここドコじゃ!!とりあえず地図かなんかあればいい。スマホだスマホ!とリュックに手を入れたけど忘れてきたみたい。ヤバい完全に迷子になった。どうしよう。

泣くか?アナウンスか??迷子の恵麻ちゃんお連れ様がお探しです。ってお連れ様おらんし。。と自分にボケツッコミしながらもなんとか場所だけでも知りたいのでお店で聞くことに。ええっとコンビニ、コーヒーチェーン店。。
意外にこういう時に限ってないもので、とりあえず周辺をウロウロしてみる。すると小汚いながらも何かのお店があった。西洋風のお店で店先に「Voyageur」と読めない英語で店名が書いてある。とりあえず聞こう。

「すみませーん」

すると奥から20代後半くらいのボブヘアーの奉仕服の女性が出てきて「いらっしゃいませ」と笑顔で対応してくれた。

「道に迷ったみたいで、〇〇町はどのようにけばいいですか?」

「あぁ、○○町でしたらすぐそこの角を右に曲がって4本目の通りを左に曲がったところあるスーパーの一帯ですよ。」

なんだ、スーパー近くにあんじゃん。。というガッカリ感もあったが、自分がいる場所がなんとなくわかりとりあえず安心した。と同時にお腹もすいてきていて小さいながらもお腹もなりだした。
それを聞いた店員さんは少し笑いながらも「うち、商品は見えないけどケーキ屋なの。よかったらご注文どうぞ。」とメニューを差し出してきた。
照れ笑いしながらメニューを受け取った私は田舎では聞いたことない名前のケーキにわくわくしながら、ケーキと紅茶を頼むことにした。

しばらくして私がいるカウンターの横にある小さなイートインスペースにケーキと紅茶が運ばれてきた。名前と横に書いてあった鉛筆のイラストではピンとこなかったけど大量のクリームに包まれたチョコケーキだ。
上に小さい黄色いものも乗っている。これなんだろう?とマジマジと見ているとさっきの店員さんが笑いながら「冷たいうちに食べないとおいしさ逃げちゃうよ。それはあんずね。」
あんずか。。と納得しながら食べてみた。すごくおいしい、特にこの生クリーム、何これこんな食感はじめて!つくづく田舎者丸出しでほおばってしまう。
店員さんは私を見ながら「喜んで食べてもらえて作った甲斐あったわ。この店ね、主人と私の2人で最近やっとオープンしたの。建物は古いけどこれはパテシェの主人のこだわりで、
フランスなんかのハンドメイドのケーキを近所の人にご馳走している風に見せたいって。だからケーキは直接見えなくてさっき渡したメニューのイラストと名前で勝負しているの。
もちろんどのケーキもフランスで修業した主人の渾身の一品なんだから。」
フランス仕込みか。東京は本当に何でもあるな。と納得しながらフォークを刺そうとしたらケーキはなくなっていた。また来ようと思った。そしてここで我に返った。ここで働きたい、バイト募集してないかな?と

「実は私、数日前に田舎から出てきてバイト探してるんです。ここってバイト募集してないですよね?」

すると店員さん、いや奥さんは「う~ん、今は募集してないんだけど、、ええっと名前なんて言うの?、えまちゃん??主人と相談してみるわ。だってこんなにおいしそうに食べてくれるお客さんまた会いたいし、
その旅人のような着こなしっていうの。うちの店、フランス語で「旅人」っていう意味だから雰囲気に合ってて気に入ったの。あとで連絡するから連絡先教えて。」というちょっとうれしい回答。
連絡先を教えて今日はスーパーで夜食を買って帰宅。お風呂入って夜食食べて面白くもないテレビで無理やり笑って布団に入る。そして暗い中思う、合格できるんだろうか?私

気付いたら翌朝になっていた。寝ぼけ眼で目覚ましを止めようとすると天井には赤いテントウムシが引っ付いていた。テントウ虫ってフランス語でなんていうんだろ。。昨日の話がまるでさっきのことのように思い出される。
とりあえず予備校に行く、こっちが日中は本業だ。さすが都会の予備校は競争が激しいし速い。私大丈夫か?と何度となく言い聞かせながらなんとかその日の講義は終わった。帰りにまたケーキ屋寄って紅茶とケーキ食べていこう。
そう思って前まで来たけど今日はお休みらしい。残念。。帰ろうとすると、後から「あら、えまちゃん!今日も迷子??」と声をかける人が。そう、ケーキ屋の奥さんだ。隣には40代くらいの男性の姿も、旦那さんだろうか?

「今日は迷子じゃありませんっ!ケーキ食べたくて来たんですけど、休みだったんですね。」

「うん、今日は定休日でダーリンとデート、こんなに買っちゃった!」と、ファッションセンターの袋をみせられた。フランスどうこう言うからなんかもっと高いブティックとか行くのかと思ったら安上がりな奥さんだった。
「着こなしの問題だよ。高いもの買っても安い女にゃ似合わないって」奥さん、ズバッというな。。

「タエ、この子が昨日言ってた娘?」男性が奥さんに問い合わせる。奥さんタエさんっていうんだ。

「そうそう、あ、これうちの旦那。パテシェの。」

「恵麻です。昨日ケーキ食べました。すごくおいしくて奥さんもいい人でここで働きたいんです。お願いしますm(_ _)m」

「そっか、じゃ~例のヤツやってみるか?ただ恵麻ちゃんOKしれくれるかな。。」と旦那さん

「うん、かわいいしOKしてくれるよ。ただ大変だと思うけどね。」と奥さん

「恵麻ちゃん、また明日おいで。バイトの採用面接します。」と、旦那さんに言われ今日は帰ることに、
バイトの採用面接?なんだろ、接客とかそんな感じなのかな?でも例のヤツってなに?簡単にOKできないやつなの??
頭の中でグルグル想像が巡りながら帰る。

翌日も予備校の講義はあまり集中できないままケーキ屋へ
「今日は17時から18時は休憩します。」という張り紙がされていて私のこと待っててくれてるんだとうれしくなる。
入ると奥さんが出てきて「今日は18時からで、、あ、恵麻ちゃん!こっち座って。ダーリン、恵麻ちゃん来たよ。」
少しすると旦那さんもケーキとコーヒーを差し出しながら出てきてくれて私とケーキ屋夫婦は面談することに。

旦那さんが改まった声で
「実はバイトの件なんだけど、チラシ配りをしてほしいんだ。」

「チラシ配りですか?」思わず旦那さんに聞き返してしまう。

「うん、少し歩くと駅があってね、その広場でこのお店のお手製チラシを配ってほしいの。」奥さんも話し出す。

そんな簡単なことでよければお安い御用だ。さらに帰ってきたら作ったケーキが余ってたらまかないでくれるそうだ。
これはもう天職でしかない。「わかりました。チラシ配りさせてください。」と、即答。

夫婦は、え?あっさりOK??と驚きながらも話を進める。

「そっか、ありがとう。でね、チラシ配りの格好なんだけど、、ネコなんてどう?」と奥さん

「ね、ネコ?」思わず聞き返してしまう私。つまりこういうことらしい。

この店の名前はフランス語で「旅人」、なのでチラシ配りも旅に出る格好で行ってほしい。そこでその恰好のイメージにマッチしたのがこないだの私の大きなリュックサックで
まるでピエロのようなダボダボな着こなし。ただ人間がそのまま配っちゃうと印象に欠けるしケーキ屋の夢のあるイメージも織り込みたい。そこでネコの着ぐるみを着て
着こなしはこないだのような感じにしたいというもの。若干戸惑いはしたものの面白そうという好奇心でますますやりたいという気になる私。

「なんか面白そうですね。」というと

「うん、面白くなると思うよ。」とあっさり返してくる奥さん

「よし、決まり。タエ、あとで恵麻ちゃん採寸してね。」と旦那さん。
私の昼間は予備校生、夕方からネコになる生活がはじまった。

数日して奥さんから電話があり、ネコの採寸します。とのこと
猫の着ぐるみってスーパーなんかでよく風船配っている愛想もないやつを思い出すけど、デッサンをみると全然違って西洋の絵本に出てきそうな本格的なネコになる模様

奥さんは「この店のデザイン考えてくれた人が着ぐるみの制作にも携わってくれたの、ネコもこの家の風景の一部だからね。」と、かなりノリノリ
メジャーで私のいろんなとこを測り、この数値をもとにオーダーメイドで作るんだとか。「一週間後に衣装合わせするんでそれまでお店の雑用手伝って」と言われる。
衣装合わせまでは奥さんのようなかわいい奉仕服は着れないものの、メイド見習いとしてシンデレラの乞食のような服でせっせと荷物運びなんかを手伝った。
あっという間の一週間。夕方行くとそこには大きな段ボールがあった。

「恵麻ちゃん、こんばんは。ネコ来たよ。早速着てみる?」と、奥さん。

「はい、着てみます。」とお店の奥のスペースで段ボールを開けてみる。その中には三毛ネコの頭でっかちなマスクとネコの肉球までついた手袋、カワイイけどブカブカな衣装、そしてダボダボのリュックサックが入っていた。
衣装を着てマスクをかぶり手袋をはめて完成、少し前は見づらいけど慣れればどうってことない。その姿のまま奥さんのもとに戻る。
すると奥さんは私を鏡の前につれていき「似合うじゃない!もうアナタは人間じゃない。ネコなの。名前考えなきゃね。何にしようか?」と私にネコの姿をみせながら聞いてくる。

「タエさんと私の名前のえまの前後をとって、タマいいと思う」と提案すると「なんだ。私も入ってるのか!こりゃ~責任重いなぁ」と奥さんは苦笑いしていた。

「今日は練習で明日からチラシ配りね。あと人間の言葉はお店の中では使っていいけど明日から外に出たら猫語使ってね。タマ、わかったかニャ?」と奥さん

肉球の手袋をはめた手を大きく上げてハーイってしたら「それ、カワイすぎるよ。恵麻ちゃん。。じゃなかったタマ!」と、奥さんも私の姿に癒されているようだ。

翌日になり、またタマに着替えた私は奥さんからチラシをもらう
奥さんに「今日は100枚くらいかな?がんばっておいで!タマ♪」と激励をもらって出発
店から駅前の通りまでは人通りこそ少ないけど大体5分くらい歩く。しかも着ぐるみを着たそのままで
思わず振返ってしまう通行人や車の中の人たちに私はどう映っているんだろう?カワイイ?変わってる?なにかの罰ゲーム??いろんなことが想像をよぎる。
そんな中で駅前の広場に到着、早速チラシを配る。少し可愛く見せながらと必死で渡そうとするものの、私が余程危ない人だと思ったのか誰も受け取ろうとしない。
そんな中、

「えぇ?ナニこれ!カワイくない??」と女子高生2人が寄ってきた。
「インスタ載せようよ!ネコかわいいし!!」と何も断りもなくスマホで撮影をする2人
撮った後「ありがとうございます!!」というので、すかさずチラシを渡してみると受け取ってくれた。
「え、これなんて読むの?よめな~い!!」と二人で顔を合わせて笑い、「ネコちゃん、もうちょっと読める字書こうよ!」と言われてしまった。
読めないのはキミたちの語学力の問題だろうが!(私もフランス語読めないけど)
でもそれで周りも火がついたのか、撮影する人が急増。そしてチラシも受け取ってくれた。読めない人も多かったけど、「これ何屋さんだろう?ケーキのイラストとかあるしケーキ屋?このあたりにあったっけ?」
と興味を示してくれた。一見失敗したかと思ったけど女子高生に救われた。
そしてこれがSNSに複数アップされ、ネコがチラシを配るケーキ屋は少し有名になった。

数週間もするとチラシを見た人が興味本位で買いに来てくれて、私同様おいしいと思ってくれる人も多くリピーターも増えた。
奥さんに「もう買いに来てくれる人も多くなったしチラシはいいや。でね次の仕事はね。。」
「ネコのウェイトレス。奉仕服でね!前々からお客さんからリクエストあったのよ。テーブルまであのネコちゃんが持ってきてくれたらいいのに。って」
奉仕服でウェイトレス、さえない私はタマじゃなきゃこんなことさせてもらえないだろう。でもお客さんが私の演じるタマがカワイイ、こんなことしてほしいってリクエストをくれたのはすごくうれしいことなので、快くOKした。

奉仕服は奥さんのお下がりをもらった。スレンダーで少し長身の奥さんに比べ、チビな私には少し大きかったがブカブカ具合がまだ慣れてない子って感じでカワイさ増すんじゃないかという奥さんのお話の通り、鏡の前に立ってみるとネコがメイド服着た萌え死にそうなネコが私の前に立っていた。そしてそれを演じているのが私なんだから、中身の私は萌え死んで臓器提供したい遺体気な女の子なんだろうか。そしてもう1つ今回から加わったものが、それは目の部分だけ切り抜かれた三毛模様の全身タイツ。奉仕服だと肌の露出も増えるんということで今回から採用になった。ただ食品を扱う関係上毛並みなどは立てず図柄だけ。そしてケーキ自体も鉄のお盆に鉄の蓋で覆われたモノを持っていくので開けるまでマスクの毛並みなどは入らないようになっている。もちろん肉球がついたネコの手袋も今回から白いロング袋になった。

ネコが持ってくるケーキ屋は奥さんの読み通りかなり人気が出た。私のバイトの時間に合わせて平日の夕方だけだったけど、予約してネコウェイトレスと指名しないといけないほど私の演じるタマは需要があった。
着ぐるみだってわかっているだろうに、みんな人間扱いせず私のことをネコとして可愛がりそしてネコグッズをくれた。もう面白いの一言でしかなかった。しかなかった。。あの事件が起こるまでは

最終更新:2017年06月06日 10:12