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直樹はゲームが好きで、ゲームのイベントがあるといつも足を運んでいたが、
恵美が仕事を辞めてからは店が忙しいわ店長は機嫌が悪いわで休みが欲しいと言い出せず。今週、ようやく新しいバイトも決まり店長も落ち着いてきて休みがもらえた。
イベントは土日はキャンペンガールもいて賑やかだが、今日は平日金曜の夕方前
ということもあり客もまだ少なくブースを見てまわるにはちょうどよかった。
最近進出してきた新しいゲーム会社に興味があり、ブースへ行くと誰もおらず、
ただ黒く光沢のあるマネキンがあるだけだった。
そのマネキンはキャンペンガールのような衣裳を纏っていた。
平日なので手抜きなのかと思いながら商品デモ画面を見ていた。
ギシギシと軋むような音をさせながら直樹に近づいている黒い影があった。
直樹はそれには気付かず商品に夢中になっていた。
突然後ろから「いかがですか?」と声を掛けられた。
振り返るとそこには先程のマネキンが立っていた。
そう、マネキンに見えたが、中には人がそれも女の子が入っていたのだ。
気になる商品について説明をしてもらったが、マネキンの女の子が気になって仕方がない。説明してくれているが頭に入ってこない。
彼女の方が気になり近すぎるくらいの距離で彼女のことをみていた。
すると、黒いマネキンの子は自分が見られていることに気が付き
「直樹くん、説明しているんだから、ちゃんと聞いてよね。」と少し怒り気味に言われた。ずっと見ていたことよりも自分の名前を呼ばれたことにかなり驚いた。
黒いマネキンの女の子は恵美だった。

ゲームのことはそっちのけで、物産店のこと、店長のことを話した。
恵美は急に辞めてしい、迷惑をかけたことを反省しているようだった。
そして、もうすぐ休憩で代わりの女の子(高見真由)が来るのでそれまで説明を受け、
そのあとバックヤードでゆっくり話そうということになった。
しばらくして、代わりの女の子が来たが恵美と体型が変わらず分身のようだった。
恵美について、バックヤードへ。
バックヤードでは仕事帰りでイベントへ来る人が多く、
それの対応をするため大学生のアルバイトらしき女の子が、
ゲームのキャラクターの着ぐるみに入ったり、
キャンペンガールの衣裳を纏ったりと慌しく準備をしていた。
その準備の光景を見ていたいと思いながらも直樹は恵美の後ろを付いていく。
中には着ぐるみを着せるのがもったいないくらい可愛い女の子もいる。
恵美は自分のブースの控えエリアに着くとファスナーを開けた。
ようやく直樹が知っている恵美の顔が出てきた。
物産店を辞めてから、仕事のことを彼氏の健二に相談したところ自分の
仕事の手伝いをしてほしいとのことだった。
健二はこのゲーム会社の社長だった。
小さな会社の社長なので、社長自ら各地のイベントに赴き、説明もしているとのこと。
イベント用に女の子を雇うと費用がかかる、時には準備できないこともある。
その点、彼女の恵美ならば間違いなくやってもらえる。
しかも一緒に旅行気分も味わえる。恵美と久しぶりに会い、会話が弾んでいたが外がえらくざわめいているので時計を見ると1時間以上経っている。

今日はゲームもさることながら最近気になっている番組のイベントも目的の1つだった。そのイベントは「巨大昆虫観察2」のDVDの発売記念イベント。
イベントには女優の崎田桃子とスーツアクトレスとして名前は知っているが
顔は公開されていない織田香代子の出演が決まっていた。
直樹も続編からファンになり、初回作品のDVDも買い揃えたほどであった。
そして、もしかすると織田さんの素顔が見られるかもしれないという期待もあった。
バックヤードまで入れているのに話をしていてすっかり忘れていた。
イベント会場に戻る途中に昆虫の着ぐるみに今から入ろうとしている女の子を見つけた。その近くには崎田桃子の姿もあり、巨大昆虫観察だと確信した。
しかし、着ぐるみに入ろうとしている女の子は全身タイツを着ていて向こうを向いている。心の中でこっちを向けと念じる。
すでに下半身は着ぐるみを着ている、その女の子はなにかの拍子にこちらを向いた、
一瞬喜んだが顔まで全身タイツに覆われていて見ることができなかった。                            
イベントを見るために会場に戻ったが人がいっぱいでほとんど見ることができなかった。
イベントの終了を狙ってみようと思い恵美に無理を言ってバックヤードへ入れてもらったが、すでに昆虫の着ぐるみは壁にかけられて、女の子の姿はなかった。
恵美に偶然再会して、すごいチャンスがあったのに顔を見ることができなくて
がっかりしながら、会場を出た。

すごく期待していただけにショックは大きかった、
外のベンチでうな垂れるようにして座っていると、
隣に座った人が心配して声を掛けてくれた。
直樹は体調が悪いわけではないことを伝えた。
そして、巨大昆虫観察の大ファンで健気に着ぐるみの中で演じている女性に惹かれ、
一度でいいから顔が見てみたかったことを話した。
その話を聞いた彼女は、「そういう人多いみたいですね」と微笑んで、
「実はうちの主人もなんですよ。
だから着ぐるみの中の人のことを教えてあげたら喜んで涙目になったんですよ」
と笑顔で話した。
この人は巨大昆虫観察の関係者なのかと思い直樹は顔を上げた。
彼女は満面の笑顔で「着ぐるみの中はこんな顔」といって、直樹を見ていた。
急なことで直樹は固まってしまった。
彼女は「じゃね、がんばるからこれからも応援してね。」と言ってそのまま帰ってしまった。直樹はしばらくそのまま固まっていた、かわいかった織田香代子の余韻に浸りながら。
最終更新:2014年11月11日 22:50