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観客の拍手に迎えられ、アシカショーが始まった。
アシカとトレーナーのお姉さんが登場。
ステージのセンターで、アシカが観客に向かって一礼。
お姉さんがアシカの紹介を始める。
『このアシカちゃんは、女の子で人間の歳でいうと20歳くらいです。
お名前はアヤちゃん、すごくがんばるので、みんな応援してね。』

それに対して子ども達が応える。
ショーは10分程で終わり、お姉さんとステージのセンターで一礼。
拍手の中、お姉さんの後をアシカもついてステージをあとにする。
アシカのその姿は疲れ切っているようにも見える。

ステージの裏でアシカはポリバケツに入れられて蓋をされる。
アシカは全く抵抗しない。
そして、台車に載せられてお姉さんが押して行く。
アシカ入りのポリバケツの行先は
ステージから離れた女子更衣室。
途中、お客さんが魚を鑑賞しているところも通る。
女子更衣室に入るとお姉さんはすぐに蓋をあける。
そしてポリバケツを倒してアシカを外へ出す。
外に出され横になったアシカの口を大きく開くとお姉さんは手を突っ込み何かを引張り出した。
引張り出されたその姿はまるで生レバーのような艶と色あいである。
口から内臓を取り出されたアシカは魂を抜かれたかのようにポリバケツによりかかっている。

その生レバーのような物体は呼吸をしている。
小さく速く同じ動きを繰り返している。
その物体をよく見ると頭があり、腕があり人間のようにも見える。
ただ足の部分は一つになっており、膝を曲げているのか厚みがあり短い。
その形はクリオネのような形をしているといった方がわかりやすいかもしれない。
そのクリオネのような形をした生レバーの胸には大きな膨らみが二つある。
お姉さんはその二つの膨らみが下になるようにする。
そして裏返した面、背中ところを触ってその部分を開け始めた。
すると、中から水着姿の女性が出てきた。
『綾香ちゃん、大丈夫?』トレーナーのお姉さんアキが声をかける。
『大丈夫です!なかなか慣れないですが。』水着にスイミングキャプを被り、汗だくになった綾香が応える。

アシカに入っていたのは、女子大生の青木綾香、二十歳。
生レバーのようなものを着ていたのはアシカの形を保つため。
アシカの着ぐるみはウエットスーツの素材で造られている。
内臓となる人間が動き易いように腕と尾ひれのところは薄く、その他は分厚い素材で造られていた。
当初、これでアシカに見えると思っていた。
しかし、綾香が入ってみるとブカブカでいかにも着ぐるみという感じだった。
そこで口を開けた状態で、中が見えても分からないように生レバーのような着ぐるみを着ることになった。
アシカの頭の部分はドライスーツなどに使われるよく伸びるゴム素材が使われた。
アシカの口を頭部分が変形するほど開いて着ぐるみに入る。
入ると言ったが、正確には自分では入ることができず、いつもアキに入れてもらう。
腕をアシカの着ぐるみの前足に通せば着用完了である。
アシカの口は柔らかいゴムの素材が使われているので頭を振ると、アシカが口をパクパクさせているように見える。

こうしてアシカになった綾香は、土日に11時と15時にショーに出ている。
そもそも何故こんなことになったかというと大学になってすぐに始めたバイトから始まり、不運が重なり今に至る。

最終更新:2016年04月04日 10:24