朝10時前、多くのパチンコ店が隣接する中、一際長い行列のできている店がある。
お目当てはパチンコではなく、着ぐるみ。
玉お君とメダルちゃんと握手をすること。
パチンコの人は玉お君に、パチスロの人はメダルちゃんと握手すると勝てるという。
実際、握手して勝ったという人は数知れず。
メダルちゃんは全身がゴールドで、頭と体の部分がメダルのように丸く平たくなっている。
体の部分のメダルからは腕と足が飛び出ている。
メダルの厚みを足の太さに合わせているため、体の凹凸がメダルから浮き出ている。
特に胸とお尻が印象的だ。
頭の部分も顔が浮き出ているのだが、中の人の顔の凹凸はなく、玉子のようになっている。
そんなメダルちゃんの肌はゴムでできている。
手には肘まであるゴールドのエナメルグローブ。
足は膝上まであるこれもゴールドのエナメルニーハイブーツ。
メダルちゃんのメダルから浮き出た体は作り物だと分かっていても触りたくなるほど、セクシーであった。
メダルちゃんについては動きからも中身は女の子であることはすぐにわかる。
気になってしょうがないのは、玉お君。
少し大きめのビーチボールから腕だけが出ている。
転がらない様に、玉お君の下には平たい円筒があるだけ。
下に体や足はない、人が入っているとは到底思えない。
初めて見たときはただの人形かロボットかと思ったが、握手をすると両手で優しく勝てるよう思いを込めて握手してくれた。
自分の番が終わり、横で見ていたがたまに握手をした相手に手を振ったりもしていた。
それは相手が見えているかのような動きだった。
握手会は20分程で終了。
その後、パチンコをするが玉お君が気になり集中できない割には負けることはなかった。
ある時いつもは握手した後、この店では打たず別の店へと行っていたが、いつも勝たせてもらっているので、感謝も込めてこの店で打つことにした。
(好きな台がないので今まで打ったことがなかった)
いつものように握手をし、玉お君のことが頭から離れないまま、打っていた。
通常、周りなどは見ないで、台しか見てないのだが、この日は1人の女子店員が目に入った。
一際、小柄だったせいなのか。
彼女は自分と視線が合うと笑顔になった。
そして近づいてきて、「いつもありがとうございます」と言ってそのまま行ってしまった。
「いつも?」この言葉が頭から離れず、握手したのに初めて負けてしまった。
それからしばらくして、握手するとパチンコが勝てるという噂が広がり
テレビで特集された。
たまたま、テレビをつけたとき偶然にもやっていた。
玉お君とメダルちゃんの握手シーンや握手をして勝った人のインタビューで終わるのかと思いきや、裏側も公開の文字がテレビ画面右上に。
CMがあけて、女性レポーターの横にメダルちゃん、そして足元に玉お君の姿が。
女性レポーターがメダルちゃんと握手をしたあと、頭部の玉子のように浮き出た顔とおぼしき部分にマイクを当て、インタビューを始める。
レポーター「私が見えますか?」
メダルちゃんが篭もった声で「はっきりとは見えていませんが、ある程度見えています」
その声は女性だった。
レポーターが覗き込む。
「こちらからは顔は見えませんねぇ。」
メダルちゃんが「表面のゴムは薄くて透けてるんですが、玉子のような部分がミラーになっているので、中は見えません」
「それに私自身、黒いゴムの全身タイツを着ているので、顔は全く見えなくなっているんです」
レポーターが続ける「苦しくないんですか?」
メダルちゃん「少し苦しいです」
「頭のてっぺんのファスナーの隙間が大きめに作られていて、その隙間から呼吸しているんです」
メダルちゃんがお辞儀をするようにカメラに頭のてっぺんを見せる。
言われてみれば隙間が大きいように見える。
しかし、ファスナーのツマミは見当たらなかった。
レポーターはメダルちゃんに「玉お君はロボットか何かですか?」と質問。
するとメダルちゃんの足元で、じっとしていた玉お君が手をバタバタさせ、玉お君の中から篭もった声で「私にもインタビューして下さい」
その声も女性の声で、メダルちゃんよりも高い声だった。
玉お君を置き物程度にしか思っていなかったレポーターはかなり驚いていた。
しかし、すぐに切り替えて腰を低くし玉お君と握手をした。
そしてインタビューへ。
丸い玉に腕が突き出ただけの玉お君。
レポーターも視聴者も聞きたいことは一つ。
「どうやって中に入ってるんですか?」
篭もった声で玉お君が答える。
「私、体が柔らかいので足を頭の後ろで組んで体を丸めて、玉お君になってるんです」
その説明を聞いて一堂納得したのだろう。
「あぁぁぁ」という声と共に、カメラも縦に揺れていた。
しかし、いまいち納得していないレポーターが玉お君をこの場で脱いで欲しいと交渉を始める。
誰もがレポーターにいいぞと声援を送っただろう。
玉お君の中の女性は、悩んでいるようでなかなか返事をしなかったが、レポーターの押しに負けてついには承諾、脱ぐことになった。
玉お君はゴールドのエナメルグローブを脱ぐと、その腕を玉の中へ収める。
補助の男性スタッフが玉お君を覆っている表面のゴムを外すと、半球がミラーになった玉が現れた。
間もなくカチッ、カチッという音がして玉が半分に割れる。
そして玉の中には黒いゴムの塊。
よく見ると手前にお尻、奥に顔らしきものが見えるが、全身タイツに覆われているために顔は分からない。
恥ずかしいポーズから足を外して出てくるが、長時間にわたり玉お君の中に収まっていたので、足が痺れているようですぐには立てないでいた。
ようやく立ち上がった彼女はかなり小柄だった。
もしかして、あの子?
レポーターが「顔を見せて頂けますか?」というと、彼女は背中のファスナーを自分で開けて顔出した。
玉お君の中に入っていた女の子の名前は美優。
出てきた美優の笑顔は、あの時自分に向けられたものと同じであった。
顔を出した美優にレポーターがインタビューする。
「あの態勢はキツくないですか?」
彼女は「キツいので、よく入れて30分くらいです」と。
それで握手会は20分でいつも打ち切られていたのかと納得した。
立っているのも辛そうな美優を座らせて「今度はメダルちゃんにも脱いでもらいましょう」とレポーターの振りに脱がざるを得なくなったメダルちゃん。
1人では脱ぐことのできないメダルちゃんの補助にスタッフが再び登場。
スタッフがメダルちゃんの頭のてっぺんのファスナーを開ける。
メダルちゃん自身もエナメルのグローブを脱ぎ、続いてニーハイブーツも脱ぐ。
ゴールドのゴムタイツに覆われた全身が露わになる。
頭のてっぺんの開いたところへスタッフが手を入れて大きく開く。
そして頭部と胴体部分の区切りのところまで脱がせると、前面がミラーになっている頭部が現れた。
胴体部分を脱ぐにはメダルちゃん自身の協力も得て、ようやく脱ぐことができた。
ここまでの作業でスタッフは結構な汗をかいていた。
足の部分はメダルちゃん自身で脱ぐ。
ゴールドの足のゴムの皮を脱ぐと、黒いゴムの足が現れる。
スタッフは汗だくになりながら、中の人をメダルちゃんで挟むように止めている金具を外していく。
こうして外れたメダルちゃんの中からは黒いゴム人間が現れた。
レポーターが「顔を見せて頂けますか」とお願いする。
メダルちゃんの中の人は、躊躇するような仕草をみせるが、スタッフが彼女の後ろにまわりファスナーを開ける。
そして、渋々といった感じで顔出した。
彼女は普段、フロアーリーダーをしている真由美。
髪はまとめ、スーツ姿のスタッフ。
一度見たことはあったが近寄り難いオーラを放っていた。
レポーターがインタビューをする。
「脱着は玉お君よりたいへんですね」
「そ、そ、そうですね」
いつものビシッとした感じではなく、顔を赤らめ恥ずかしそうに対応する。
続けて「私の発案なので」と自信なさ気に語尾の声が小さくなっている。
あまり話してもらえなさそうな雰囲気を感じ取ったレポーターがまとめて終了となった。
次の日から玉お君とメダルちゃんとの握手の行列が長くなったのは、ゆうまでもない。
おわり
最終更新:2016年08月11日 11:20