〔民裁・民弁〕
(要件事実)
- 司法研修所編『新問題研究要件事実』法曹会(2011年9月)……通称「問研」。「類型別」の導入に作成された,司研公式入門書。まずは
ここから。なお予備試験の要件事実問対策としては,サンプル問題・第1回とも民法・民訴以外に本書程度の知識があれば十分解答可能である。新版になり13
問となり、貸借型契約において返還時期(弁済期)の合意を契約の成立要件としない立場に改説している。
- 司法研修所編『紛争類型別の要件事実』法曹会(2006年9月・改訂)……通称「類型別」。「1巻,2巻」の導入に作成された。民裁教官室が修習
生に要求する水準を示す,要件事実のスタンダードテキスト。後掲の『要件事実ノート』と併用すれば独習も可能だが,普通の法科大学院であれば何らかの授業
で教科書指定される筈である。勉強が進んでから再読すれば,有益な発見も多いだろう。
- 司法研修所編『増補民事訴訟における要件事実 第1巻』法曹会(1986年10月),『民事訴訟における要件事実 第2巻』法曹会(1992年3
月)……通称「1巻,2巻」。1巻第1部総論部分(と2巻の「民裁教官室だより」)は要件事実のイロハのイであり必読。1巻は代理,条件,相殺,売買関係
の,2巻は賃貸借関係の要件事実を逐条解説。裁判官希望者は必読という噂もあるが,現在の民裁教官室見解と異なる部分があり,必読とはされていない。
-
加藤新太郎・細野敦『要件事実の考え方と実務』民事法研究会(2006年12月・2版)……司法書士向けの連載をロー生用に加筆したもの。問研と類型別の次は本書。
- 倉田卓次監修『要件事実の証明責任・債権総論』『同・契約法上下』西神田編集室(1986年7月,1993年12月,1998年7月)
-
伊藤滋夫『要件事実の基礎―裁判官による法的判断の構造』有斐閣(2000年12月)、『要件事実・事実認定入門―裁判官の判断の仕方を考える』有斐閣(2005年4月・補訂版)……著者は裁判官で要件事実の第一人者。
- 伊藤滋夫=山崎敏彦編著『ケースブック要件事実・事実認定』有斐閣(2005年12月・2版)……主張整理に加えて事実の摘示・評価を問う演習
書。司法試験の民法の論文問題と整合性が極めて高いとの意見もある。もちろん独習もできるが、解説なし・ヒントのみ掲載の練習問題も豊富にあるので、勉強
会を組むのも良い。
- 大江忠『要件事実ノート』商事法務(2007年7月)……類型別に完全準拠したQ&A本。いわば教科書ガイド。独習用に。
-
大江忠著(法教育支援センター編)『要件事実ノート2 重要判例と要件事実論』商事法務(2010年1月)……類型別に出てくる基本的判例を解説した本。
- 伊藤滋夫編著『要件事実講義』商事法務(2008年2月)……創価ローの要件事実講義を書籍化したもの。
- 大江忠『ゼミナール要件事実』『同2』第一法規(2003年6月,2004年10月)……「言い分形式」による要件事実問題集。1は典型的紛争類
型、2は司法試験の民法、民訴法問題からの出題。平成19年5月の増刷ではかなり手を加えられているので刷数には注意すべきである。
- 村田渉・山野目章夫編著『要件事実論30講』弘文堂(2009年1月・2版)……要マニュの岡口裁判官いわく「インプット用の演習書」であり,第
1部は要件事実論総論,第2部は設例形式の類型別解説,第3部に解答及び簡易解説の付された演習問題17問が収録されており,一冊で自己学習しやすい。た
だし説明が微妙な部分も(例えば293頁,もと占有説への批判部分)。
- 岡口基一『要件事実問題集』商事法務(2010年11月・2版)……著者いわく「アウトプット用の演習書」であり,(込み入っているという意味で
の)難しめの問題が20問収録されている。2回試験対策用に釈明や失当の設問も用意されている一方,最後の方の問題には,2回試験の出題可能性は低いとの
注がある。既存の問題の言い分が変更されていたり,間違った説明が直された(ただし旧版の説明を訂正する等とは明記されていない)ほか,新作1問(第11
問)が追加されている。また,なぜか問題の順番が補訂版から入れ替えられている。
- 岡口基一『要件事実マニュアル(1)-(5)』ぎょうせい(2010年7月-10月・3版)……現役裁判官による要件事実の辞書本。ロー生にとっ
ては、(1),(2)巻だけで十分。行政訴訟や選択科目についてはどのような紛争類型が問題となるのかを知るため、目次をコピーすれば十分と思われる。
-
大江忠『図解要件事実 民法総則・物権』『同債権』『同親族・相続』第一法規(2007年9月,2007年11月,2007年12月)……民法の条文ごとに要件事実をブロック・ダイアグラムで図解。同著者の要件事実民法の簡略版。辞書。
- 大島眞一『<完全講義>民事裁判実務の基礎─訴訟物・要件事実・事実認定─』民事法研究会(2009年3月)……元神戸ロー派遣裁判官による、タ
イトル通りの要件事実、事実認定1冊本。単なるマニュアル本とは一線を画した、思考過程を丁寧に追う記述が分かりやすく、情報量も充分。教科書としての配
慮が行き届いており、類型別より格段に頭に入りやすく、なおかつ残りやすい。本番までに是非とも読んでおきたい一冊。なお、本文の内容はあくまでも司法研
修所の見解に忠実であるが、コラムではちょくちょく反対説を唱えているのも面白い。
- 並木茂『要件事実論概説』信山社(2009年4月)……(元)裁判官による要件事実総論と契約法分野の要件事実解説。
-
伊藤滋夫総括編集『民事要件事実講座(3)(4)』青林書院(2005年12月、2007年3月)……全6巻のシリーズ中、(3)、(4)巻は民法(財産法)の要件事実を解説している。辞書。
- ☆新堂幸司監修・高橋宏志・加藤新太郎編『実務民事訴訟法講座(第3期)第5巻・証明責任・要件事実論』日本評論社(2012年12月)……不動
産関係訴訟、動産関係訴訟、不動産登記訴訟、売買、貸借契約関係訴訟、債務不履行関係訴訟、不法行為訴訟、安全配慮義務違反関係訴訟、医療過誤訴訟、国家
賠償関係訴訟、執行関係訴訟の証明責任・要件事実について解説。ただし、冒頭の「民事訴訟の現在と展望」と題する鼎談においては、過度の要件事実思考に苦
言を呈する内容となっているのは興味深い。
(民事事実認定)
- 土屋文昭・林道晴編『ステップアップ民事事実認定』有斐閣(2010年12月)……ロー生,修習生,駆け出し実務家向けの事実認定入門
書。第1部解説編もコンパクトで分かりやすいが,特筆すべきは第2部演習問題編で,解説付きの事実認定演習問題はおそらく類書で初である。ただし完結した
記録の体裁ではなく,手続が進むごとに現れるであろう主張や証拠をどう捉えていくかという,読み物のような形式になっている。問題のレベルは研修所の導入
起案未満で簡単めであり,動かし難い事実,経験則,ストーリーの合理性といった基本軸を明らかにする解説であり,事実認定手法の具体的イメージが掴みやす
い。いわば事実認定版の「問研」だろう。また,下記司法研究「民事訴訟における事実認定」の「副読本的な存在となることも意図している」(はしがき)とい
うように,ちょくちょく引用されており,合わせて読むとなお有用。なお,予備試験対策としてはサンプル問題・第1回とも要件事実問以外に関しては民訴以外
に本書程度の知識で十分解答可能である。
-
田中豊『事実認定の考え方と実務』民事法研究会(2008年3月)……司法書士向けの連載をロー生向けに加筆。初学者向けの記述は薄いが、要件事実と事実認定の入門レベルをマスターしてから読むと勉強になる。
- 伊藤滋夫『事実認定の基礎―裁判官による事実判断の構造』有斐閣(2000年6月・補訂)
-
司法研修所編『民事訴訟における事実認定』法曹会(2007年11月)……司法研究報告書が書籍化されたもの。修習生は大体読む。巻末の高裁裁判官へのインタビューが参考になる。
- 伊藤眞・加藤新太郎編『判例から学ぶ民事事実認定』有斐閣(2006年12月)……百選の事実認定ヴァージョン。新司法試験には不要。
- 田尾桃二・加藤新太郎編『民事事実認定』判例タイムズ社(1999年4月)……民事裁判官による講演録と座談会。
-
後藤勇『民事裁判における経験則』『続・民事裁判における経験則』判例タイムズ社(1990年11月,2003年4月)……元裁判官。経験則違反として破棄された最高裁の判例を素材として経験則をまとめた著書。絶版。
- 加藤新太郎編『民事事実認定と立証活動(全2巻)』判例タイムズ社(2009年10月)……ベテラン裁判官・弁護士が実際の事件(エピソード)を
題材に心証形成や訴訟(立証)活動のノウハウについて座談会形式で語った著作。いずれもこれまで実務家が実務経験を通じて習得してきた実践的なノウハウで
あり、これが書籍化されたことの意義は大きい(はしがきには「暗黙知を形式知に」とある。)。修習生ならば必読。全2巻で分量は多いものの座談会形式なの
で気軽に読める。
(民訴法実務書)
- 加藤新太郎編著『民事訴訟実務の基礎』弘文堂(2007年3月・2版)…資料編と解説編の2分冊。具体的な資料を通して民事訴訟手続きを平易に解説。
- 藤田耕三・小川英明編『不動産訴訟の実務』新日本法規(2010年10月・7訂版)、小川英明編『貸金訴訟の実務』新日本法規(2008年1月・
5訂版)……新日本法規の『実務』シリーズ。実務家向けの書籍であり、改訂頻繁。ロー生や司法修習生が買う必要は全くないが、司法修習生は民裁修習中に図
書館で参照すると便利。
-
裁判所書記官研修所監修『書記官事務を中心とした和解条項に関する実証的研究』法曹会(2010年2月・補訂版)……実務家必携の和解条項例集。法曹会のHPには在庫表示がないが同会から直販できるので電話すべし。
- 星野雅紀編『和解・調停モデル文例集』新日本法規(2011年2月・改訂増補3版)……和解・調停条項例集。
- 新保義隆・栗原由紀子『訴訟上の和解モデル文例100』三協法規(2008年10月)……和解条項例集。
- 法曹会編『民事判決書集』法曹会(1981年11月)……民事判決書の記載例集。
- 塚原朋一編『事例と解説民事裁判の主文』新日本法規(2006年3月)……裁判主文例集。
- 神崎満治郎『判決による登記の実務と理論』テイハン(2001年4月・改訂)……不動産登記関連の主文例掲載。
- 青山正明編著『民事訴訟と不動産登記一問一答』テイハン(2008年12月・新訂)……不動産登記関連の主文例掲載。新不動産登記法に対応。
-
井上繁規『民事控訴審の判決と審理』第一法規(2011年2月・補正版)……現役裁判官による民事控訴審の判決書作成マニュアル。弁護士志望者にとっても上告(受理)理由を発見するための手がかりになるだろう。
- 瀬木比呂志『民事訴訟実務と制度の焦点』判例タイムズ社(2006年6月)、『民事訴訟実務入門』判例タイムズ社(2010年12月)……ベテラ
ン裁判官による民事訴訟実務の指南書。著者曰く「実務の技術やノウハウ」の体系書。どのように訴訟運営すべきか、どのような文書が説得力があるか、など民
事訴訟理論ではなく民事訴訟実務の指南書。このような類書はほとんどないため、任官希望者のみならず弁護士志望者にとっても参考になるだろう。本書『焦
点』は、民事訴訟実務パートと民事訴訟制度についての提言パートの2部からなり、前半パートの概説書が上記『入門』であり、後半パートの概説書が後記『法
曹制度・法曹倫理入門』である。後記『ケースブック』は上記2冊の実践編といえる。
- 瀬木比呂志『ケースブック民事訴訟活動・事実認定と判断─心証形成・法的判断の過程とその解説』判例タイムズ社(2010年11月)……同名の判
タ連載を書籍化したもの。著者(裁判官)が担当した事例の判決書を中心に設例、解説を付すスタイル。直ちに司法試験・二回試験に役立つものではないが,筆
者のこだわりが滾々と語られる等,名物部長に捕まったときの民裁修習を疑似体験できるといっても過言でない。
- 現代民事法研究会『民事訴訟のスキルとマインド』判例タイムズ社(2010年9月)……実務家と研究者が新民事訴訟法下でのあるべきプラクティス
について研究した論文集。判例タイムズ誌に長期連載(1996-2005年)されたものなので、現在の実務慣行からするといささか内容が陳腐化した論文も
ないではないが(最新の民訴法実務については上記、瀬木『民事訴訟実務入門』などを参照)、新民訴法の理念(近年本試験においてもたびたび問われてい
る。)を理解するためには今なお有用。修習生が民訴法実務をより深く理解するためにも使えるだろう。
最終更新:2013年02月24日 20:22