【場所:公園】
懐かしい記憶。
そんなに昔の事じゃない。
近くの公園で綾とよく遊んでいた。
そういえば・・・よく「仮面ライターガブト」のまねしてたっけ。
いつも僕がやられ役だったけど。
綾はタガックが好きだったっけ。
怪人役の僕に歩いて近づいてくる綾。
「キャスト オフ」
チェェェンジスタックビトゥ
「とおる君、痛かったら言ってね」
痛くなってからじゃ遅いんじゃ・・・。
ワン ツー スリー
だんだんと距離が狭められてくる
「ライター・・・キック」
ゴン
【効果音:どーん】
そこで意識が覚醒した。
ぼんやりと目が覚める。
目の前が真っ白だ・・・。
えっと・・・。
たしか・・・。
そうだ、あの化け物に追われて。
そして、夢中になって情報を調べて・・・寝ちゃったんだっけ。
泥まみれの格好の僕に気づいたのだろう。
綾「徹君、大丈夫?」
綾の声が聞こえる。
僕の手を綾が強く握った、不安からだろうか、すこし手が震えている。。
徹「ああ、大丈夫」
僕はそんな綾の手を強く握り返した。
徹「ところで、何でおしぼりを顔面を覆うように置くんだ?」
視界が白いのはこのせいか。
綾「この方が顔全体も冷えていいかと思って」
相変わらずお茶目がすぎる、おまけにタオルはびしょびしょだ。
ふと、足の裏がヒリヒリと痛んだ。
昨日のことを思い出す。
時計は十二時半。
しかし、なんだってあんなところに行ってしまったんだろう。。
あの鬼の面をかぶった化け物におそわれて危うく命を落とすところだった。
ガチャリ、とドアが開く、入ってきたのは長野先輩だった。
【立ち絵:綾(不安)長野(不安)】
長野「徹、大丈夫か?」
あいかわらずの無表情だが心配してくれているのが読みとれた。
徹「死にました」
安心させるためにジョークを言う、ふうっとため息をつく長野先輩。
【立ち絵:長野(呆れ)】
そして、表情を戻す。
徹「綾、すこしはずしててくれ」
真剣な面もちに、何か話があるのだろうという事がわかった。。
綾はもう一度強く手を握ると部屋を去っていった。
【立ち絵:綾を消す】
長野先輩が口を開く。
長野「何で、外にでたんだ?」
徹「僕にも判りません、気がついたら廃墟にいて・・・夢遊病の気でもあるんですかね」
・・・。
少しの間、沈黙が訪れる、長野先輩は悩んでいるようだった。
長野「なあ、お前、夢を見なかったか」
夢?
夢、夢、ゆめ。
ああ、あの夢の事だろうか。
徹「見たかも、しれません」
長野「男と女の夢だ」
お兄さま、と泣く女の女性のすがたを思い出す。
すると、頭に、あの光景が、いつの時代かもわからない女性と男の人の姿。
徹「ええ、愛し合っている男女の夢を」
長野先輩が手を自分の頭に乗せた。
長野「そうか・・・畜生」
苦虫をかみつぶすような顔をする。
徹「何か、あるんですか?」
もごもごと、言いにくそうに長野先輩が口を開いた。
長野「去年、死んだ奴がいたと言ったろう、そいつも夢を見ていた」
ぎくりと、心臓が跳ねる音がした。
去年?死んだ、人?
推理の線が少しつながる。
徹「それじゃあ・・・はは、今年の生け贄は僕ですか?僕なんか食ってもうまくないですよ」
おもわず笑ってしまった。
追体験、とでも言うのだろうか。
長野「そんなことはない!俺が、何とかする」
長野先輩には珍しく感情的な言い方だった、それは僕にたいしてなのか、それとも去年助けられなかった事を悔やんでいるのか。。
本気で心配してくれているのだろう。
長野「とにかく、明日には船が来る、それまでおとなしくしていろ」
徹「そうですね、そうします」
僕は枕に頭を乗せた。
徹「あ、そういえば、去年の人は祠に触りませんでしたか?」
少し悩んだ顔をする長野先輩。
長野「そういえば、気分が悪くなったのは祠の前当たりだな」
線が、つながった。
こつこつと長野先輩がドアに近づく。
【立ち絵:長野を消し、綾】
ドアを開けようとしたところで綾がぴょこんとドアから顔を出す。
綾「お話、終わった?」
綾が静かに入ってくる
長野「ああ、綾もコイツを看てやってくれ」
そう言って、長野先輩はでていった。
綾「徹君、大丈夫?」
徹「うん、心配かけちゃってゴメンね」
綾「ううん、徹君は私が守るからね」
相変わらず顔の表情は暗い。
もしかしたら話を聞いてしまったのかもしれない。
綾には、少し酷だ。
徹「それは頼もしい事だな、ガキ大将の綾に言ってもらったら安心だ」
僕は、綾のそんな顔を見ていたくなく、おちゃらけた言い方で僕は言った。
綾「ふふ、その話はやめてよ、徹君こそ昔からボーっとしてたくせに」
【立ち絵:綾(笑顔)】
それから少しの間、昔話に花が咲いた。
しかし、頭の中ではさっきの話がずっと続いていた。
死ぬ?冗談じゃない、僕はきっと生き残ってみせる。これ以上綾に心配させたくはない。
綾「そう言えば、部長の探してた島の事でひとつ、詩があったわ」
徹「へえ、どんな?」
綾「たしか、
【背景:薊】
思え思うなづむ想い
されぞ消えゆく草の雪
とけどかわきど
あきず想う
だったかな?
この島とどう関係あるのか判らないけど、ロマンチックだわ」
徹「そうだねぇ、その想い、かなったのかな」
綾「どうかしらね?でもかなっていたら素敵だわ」
ふわぁとあくびをする。
綾「あ、ごめんね、疲れた?」
徹「うん、少し、眠たいよ」
綾「じゃあ、私は部屋に戻るけど、何かあったら言ってね」
徹「うん、ありがとう」
再び、枕に頭を預ける。
睡魔がゆっくりとおそってきた。
目の前には白い霧。
姿を現す、鬼。
あなたはだれなんだ。
あなたは何がしたいんだ。
「ゆるさず、人を恨み我が身を恨む」
どうすればいいんだ。
「根絶やしに、一人残らず」
どうしてだ。
「すべてを、引き裂いた、復讐」
化け物の雰囲気が少し変わった。
人間の温かみを感じる。
徹。
後ろから声が聞こえた。
長野先輩の声だ。
僕は鬼に背を向け、歩き出した。
長野「徹!」
がばっと起きる。
息がハァハァと止まらない。
寝汗がすごい。
喉がカラカラに乾いていた。
今の、夢は?
時間は寝たときから2時間経過していた。
前を見ると、長野先輩が心配そうにのぞいていた。
【立ち絵:長野(すごく不安)】
長野「起きたか、唸ってたぞ」
徹「ああ、すいません」
長野「また、あの夢か」
徹「それが、ちょっと違うっていうか・・・」
長野先輩が眉を動かす。
長野「違った?」
徹「よく、判りませんけど、般若のお面の奴が言ってました、ゆるさないって」
長野「ゆるさない?」
徹「まぁ、夢ですからね」
不思議そうな先輩に言う。
長野「とにかく、明日には帰るんだ、このあと明日の話がある、来れるか?」
徹「ええ」
喉も乾いているついでだ。
Tシャツを新しいものに換えると、長野先輩についていった。
と、階段のところで先輩が止まる。
危うくバランスを崩しそうになった。
長野「話すまいと思ってたんだけどな、やっぱり聞いてくれ」
やはり真剣な顔で長野先輩は続けた。
長野「去年、部員が死んでから一年、俺達はこの島について調べていた」
そういえば、やたらと資料もあったな。
部長もかなりめり込んでたみたいだし。
長野「この近くに廃墟があるだろ、あそこには村があった。
そこで禁断の恋があったらしい、これはわからん、昔の記録では禁句の行為だったようだ
愛しあっていた男女が引き裂かれた、男は殺され、女は身ごもって鬼と化した。
そして、村人を殺し回り、ついには鬼が哭く島、こうなったわけだ」
船の人に聞いた話とだいぶ異なっている内容だった。
「曖昧なんだが、俺はこの話が現実だと思う」
たしかに、あんなヤツがいるのだからきっと真実だろう。
徹「怨念・・・、怨恨ってやつですか」
長野「かもな、無関係の俺達に当たるほどつらいことだったんだろう」
徹「禁断の恋って、もしかして近親相姦ってやつかもしれませんよ」
長野「近親、相姦?」
長野先輩が不思議がる。
徹「夢で見たんです、お兄さまって言っている女の人が、子供を身ごもってました」
長野「くそっ!やっぱり本当の話だったか」
そういえば、昨日の鬼が言っていた言葉・・・「さまさまぁ」?
さま・・・お兄、さま?
長野「このこと、綾にも話すか?」
徹「いえ、彼女には聞かせないであげてください、いずれ判るでしょう」
長野「わかった」
そう言って、長野先輩は階段を再び下りていく。
長野「そう言えば・・・、長谷川のヤツ、人骨なんか持っていたが話に関係あるか?」
これだ、キーが見つかった。
徹「それ!どこにあります!?」
長野先輩が足を止める。
長野「あいつが消えた日、無くなっていた」
くそ、長谷川部長が持っていただなんて。
それをどうにか探さないとならないだろう。
しかし、外には出られない。
それに、はき違えるな、僕。
あくまでねらいは島からの脱出で、鬼を成仏させるわけじゃない。
しかし・・・。
恋がみのってたらいいか・・・。
さっきの綾の言葉を思い出す。
長野「全員集まったな」
【一枚絵:四人がテーブルに着く】
【音楽:暗め】
すでに僕以外の全員が集まっていた。
綾は心配そうに、村野さんは相変わらず恐ろしげに頭をさげ、深町先輩は知らないような顔をしている。
長野「明日、明朝八時には船が到着する」
少し、安心というような空気が漂う。
長野「だが、問題がある、わかるな?」
そして、沈黙。
長野「俺は全員生き残りたいと思っている」
村野「そんなんむりやわ」
暗い表情のまま村野さんが言った。
恐怖で悲観的になってしまっているのだろう。
長野「村野、そんなことはない、今回は、俺がおとりになる」
みんなが目を開いた。
なぜだか、長野先輩が自暴自棄になっているように感じた」
村野「そんならうちがやるわ、去年、本とはうちがやるはずやったんから」
以外だった、一番断りそうなのに。
罪悪感がそうさせているのだろうか、村野さんは真剣だ。
深町「私はごめんね、まだ生きたいもの」
深町先輩は冷血にそう言い放った。
鼻で笑ったように言う。
昨日から深町先輩は少し、変だ。
普段からは決してみることのない邪気が見える。
長野「俺か、村野か」
手を挙げる。
徹「僕もやりたいんですが」
長野「馬鹿言うな!お前は自分の心配をしろ!」
綾「私もやりたいです!」
綾が手を挙げる。
長野「馬鹿野郎!一年にこんなことさせられるか!」
しかし、キリと長野先輩をにらむ。
綾の目には強い意志が見て取れた、こうなった綾はもう誰にも止められない。
・・・。
長野「わかった、こんなことやりたくないが、くじ引きだ」
先輩は紙を四本切ると一つに赤い印を付けた。
【画像:クジ】
まず、村野さんが引く。
くじは外れだった。
次に、長野先輩が引く、それもはずれだった。
僕と、綾か。
綾がくじを引く。
一瞬、赤い印が見え───。
徹「僕これがいいな!」
後ろから飛び出し、それを僕が無理矢理引く。
やはりそれは当たりだった。
綾「それは私が」
徹「いやー当たっちゃったよ」
あくまで明るく振る舞う。
綾に反論は許さない。
長野「徹か・・・変わってやっても良いんだぞ?」
徹「いや、それにはおよびませんよ」
綾「徹君・・・」
徹「いいかい、綾、絶対逃げるんだぞ」
優しく諭す。
綾だけだっていい、僕は、綾に助かってもらいたかった。
長野「じゃあ、徹、道筋は判るか?」
徹「廃墟と港くらいは」
長野「よし、じゃあ廃墟であいつが出るのを待て、そして現れたら俺に電話、
そして全員船に乗り込んでからお前が合流する」
徹「判りました」
長野「今日は食事をとってもう休もう、明日が肝心だ」
【画像:テーブル(料理でいっぱい)】
【音楽:合宿所】
そう言うと、テーブルの上にはたくさんの料理が並んだ。
最後の日だから材料を全部使ったのだろう、すごい量だ。
深町先輩は黙々と料理を皿に並べた。
どれもこれも美味しい、クールな深町先輩でもやはり料理の腕は最高だ。
しかし、この皮のついたジャガイモと卵の殻が入ったオムレツが僕に回ってくるのは何かの因果か?
しかも半生。
逆に、最後の晩餐のような感じで少し気分がわるくなった。
それでも箸が進む。
数分後にはもう皿の上に料理は無くなっていた。
推理をする。
恐らく、祠にはある人物の頭蓋骨が置かれるべきだとわかった。
きっと、鬼の言う、兄といわれる男の。
次に、去年の先輩は鬼を救おうとしたのだろう。
しかし、クビは見つからず、最終日に至った。
祠にクビを納めるか鬼に渡すかしないとあいつは消えない。
長谷川部長の持っていたクビが何処にあるか、それは判らない。
探すのも危険だろう、あいつはそれを求めて徘徊しているはずだ。
推理はつながったが、八方塞がりだ。
そういえば、明日またあの鬼の顔と対面しなきゃならないのか。
あまり実感がない、夢であっているからだろうか。
もしかして死んじゃったりして。
ははは。
一人で笑っていた。
こんこんとノックがされる。
徹「どうぞ」
綾だった。
綾「徹君、元気?」
【立ち絵:綾(心配)】
心配そうな顔だった。
徹「助けてくれ・・・わしが死んだらこの城が・・・」
ごほごほと咳をする。
綾「殿!お気を確かに!」
ノッてくる綾。
徹「もうこの城はおしまいじゃ、そちも速く逃げい」
はぁ~と長いため息をつく。
【立ち絵:綾(呆れ)】
綾「どうしてあのくじをえらんだの?」
話を本題に戻した、ちぇっ最後までのってくればいいのに。
徹「子供の頃から綾はくじの当たりがいいだろ、いつもアイスのもう一本当ててたから、それが当たりかなと思っただけだよ」
クスッと綾が笑う。
やはり、綾には笑顔が似合っている、この笑顔を守ってやりたい。
綾「実はくすねて来ちゃった」
酒瓶を二つ取り出す。
徹「はは、いいね」
二人だけの飲み会が始まった。
【音楽:明るめ】
僕も綾も少しづつ酔っぱらっていった。
綾「それで、そのラブレターにかいてあったのよ、徹がいても俺がいるよって、あいつは薄情なやつだって」
徹「うっわ、酷いな」
綾「頭に来ちゃって破って下駄箱に入れ替えしてやったわ」
徹「ナイス!」
はははと二人で笑う。
綾「それと、明日、私徹君に言いたいことがあるのよ」
徹「明日じゃないと駄目?」
綾「うん、駄目」
ああ、これは生き残らないとなと思った。
明日言いたいことか・・・、告白?
顔から火が出そうだった。
いやいや、綾に限って、そんなことは・・・。
僕は綾のことをどう思っているだろう。
嫌い?嫌いじゃない、好き?ああ、そうかも。
一番、近くにいてもらいたい。
それからすっかり酔ってしまって、二人で床に寝ころんでしまった。
綾の寝顔が見える、僕も、明日言いたいことがあるよ。
口には出さなかった。
───夢を見る。
【画像:祠前】
般若の面をずるりと落とした血塗れの女。
腹は膨らみ、手には血の付いた手斧。
生首に向かって何かをぼそぼそと呟いている。
「お兄さま、こんなに大きくなりました」
「お兄さま譲りの美男子になりましょう」
そう、言い続けていた。
ああ、気が触れているんだなと思った。
そして、斧を自分の頭に。
【効果音:ヒュウ ガッ】
ガッと音がした、ああ、頭が割れるとあんな音がするんだな、と冷静に聞いた。
そこで、フェードアウト。
綾「徹君、起きて」
うん・・・。
綾「朝よ」
ああ、起きよう。
体を起きあがらせる。
二日酔いもなく、意識がはっきりしている。
それは、緊張感のせいだろうか。
徹「おはよう」
【立ち絵:綾(笑顔)】
綾「おはよう」
とびきりの笑顔の綾がいた。
こんな状況だけに、すこし救われた。
そっか、今日、危ない目にあうんだっけな。
ぼんやりと思い出す。
そして、昨日の夢を思い出して、背筋を震わせる。
あいつと一対一か、どのくらい常識が通用するだろう。
長野「徹、綾、一階まで来い」
扉越しに長野先輩の声が聞こえる。
なんか勘違いされてなければいいけど。
僕たちはいそいそと一階へ下りた。
【効果音:階段を降りる音】
【画像:三人がテーブルに座っている】
ロビーに集まる。
長野「それじゃあ、三十分後に徹は出かけてくれ、俺達は展望台で周りを確認する」
淡々と説明を続ける長野先輩。
徹「判りました」
長野「ナイフはいるか?」
先輩がナイフをくるくると器用に回す。
徹「いえ、それより」
すこし錆びかけの鉄パイプをとった。
ちょうどいい長さ。
握りも滑らず、いい感じだ。
徹「これがいいですね」
長野「そうか、お前は剣道やってたんだっけな」
徹「綾にはかないませんけどね、それに道場式が通じるかも判りませんが」
ははは、と笑った。
ナイフをしまう。
肩を先輩にガシッと掴まれる。
真剣な面もちで先輩は言った。
【立ち絵:長野(真剣】
長野「絶対、生きることを考えろ」
徹「ええ、聞かなきゃならないことも出来たんで」
綾をちらりと見る、少し照れているようだ。
徹「それじゃあ、三十分後まで部屋にいます。
長野「ああ、わかった」
部屋で剣道式に鉄パイプで跳躍素振りをする。
少し細いが者を叩くにはいい大きさだろう。
竹刀を振る感覚で鉄パイプを振る。
まぁ、気休めなんだけどね。
───いつもの練習どおり二十分続ける。
そろそろ行くか。
【音楽:神秘的】
徹「それじゃ行って来ます」
四人に見送られて出ていく。
合流場所は港、まず、港を通り般若のお面がいないか調べる。
【場所:港】
(フラグ成立のみ)
ひとまず、ここは確認したあと、行かなければならない場所がある。
長谷川部長の死体の場所だ。
あの骨は部長が持っている可能性が大きい。
たしか、綾が悲鳴をあげた場所は・・・
たしか、こっちだ。
廃虚の途中の道、やはりそこに長谷川部長の死体があった。
部長には申し訳ないが気持ち悪い。
一度固まってまた溶けたような死体。
体をゴソゴソと調べるが、何も無かった。
そんな・・・。
アレがないと、アレは成仏しない。
こうなったら、本気で勝負か。
強い意志を持つ、そうでなければ僕は勝てない。
次に、廃墟に向かう。
【場所:廃虚】
僕はここでおとりをしなければならない。
どうすれば出てくるだろうか。
とりあえず大声を出す。
霧は薄く、遠くまで見渡せた。
あいつは、もっと濃い霧の時に現れるはずだ。
徹「出てこい!般若のお面野郎!」
しかし、何の反応もない。
少し、寂しかった。
ピッチを持つ。
徹「まだ、現れません」
長野「了解、続けてくれ」
徹「はーんにゃーのおーめーんー♪」
そこら辺を自作の歌を歌いながら歩く。
ここまで出てこないなら先に港行った方が早いんじゃないか。
ゾクン。
寒気がした。
周りの霧がだんだんとこくなっていく。
そして夜でもないのに赤い月があたりを照らす。
【効果:真っ赤に照らす】
【音楽:和風】
後ろを振り向くとさらに深い霧、白装束の般若面が立っていた。
再びピッチを取り出す。
徹「現れました」
長野「わかった!逃げろ!」
長野「わかった!逃げろ!」
長野先輩が大声で言った。
きっと徹君があれを見つけたのだろう。
あのおぞましい化け物を。
なぜか空には赤い月が爛々と輝いている。
重い道具はすべて置いて最小限の荷物だけ持つ。
長野「走れ!」
走って港を目指す。
徹君、どうか無事でいて。
港には船がぷかぷかと浮いていた。
運転手のおじさんは嫌そうな顔で私たちを迎えてくれた。
運転手「もう行ぐよ」
運転手さんは少しでもここにいたくないといった感じだった。
綾「まだ、一人来てないんです」
運転手「おめぇ、ここに霧がでるとバケモンがでるっつぅでねぇの」
綾「必ず来ます、来ますから」
───それから十五分、まだ徹君はこない。
どうしているんだろう。
まさか、いや、やめよう。
絶対、徹君は来る。
鬼の手斧が完全に殺す気で迫ってきている。
振り下ろされる斧を鉄パイプで流す。
そして無防備になった体を前に倒す。
すると、足場の悪さもあってか用容易に転ばすことが出来た。
長野「徹、こっちはのり終わった、お前もすぐ来い!」
つけっぱなしのピッチから声が聞こえる。
すぐ来いったってコイツがいたら!
また斧が振り下ろされる。
また、鉄パイプでなんとか流す。
徹「僕は、あんた達の恋を実らせることは出来ない」
つばずりあいの体制になる。
徹「あんたがどれだけ人を恨んだのかも判らない」
鉄パイプを前に倒し体制を崩させる。
徹「でも、あんたの恋をみのったらいいなって思う女の子だっているんだ!」
倒れた鬼の顔面に鉄パイプをぶつける。
仮面からは涙で目を腫らした目がぎょろりと見えた。
徹「あんた達の恋の話を残した人だっているんだ!」
手斧がおろされて頭をかち割られる瞬間、回避する。
手斧は木に食い込んだ。
そして、思い切り鉄パイプで後頭部を叩く!
ごきり、と嫌な感触が手に残る。
これでは即死だろう。
しかし、般若面は斧を抜くことをやめない。
駄目だ、何も、気持ちが通じていない。
逃げようとしたとき、足下に激痛が走る。
それは斧が足を鋭く切り裂いていた。
徹「あ、あああ」
痛い、逃げなくちゃ、逃げなくちゃ。
鉄パイプを杖に、よろよろと歩く。
般若面は後頭部を押さえ、立ち上がろうともがいている。
足を引きずるように港へと向かった。
痛い、くそ、痛い。
徹「畜生」
これじゃ港につく前に追いつかれるじゃないか。
痛みで気が遠くなりそうだ。
おまけにもうパイプを振れない。
すると、目の前に一人の女性が立っていた。
【立ち絵:高橋】
同い年くらいだろうか、ショートカットで鋭い一重。
その女性は道を指さした、そっちへ行けと言うことだろうか。
こうなりゃわらにもすがる。
般若面がこちらに走ってくる。
しかし僕ではなくてその女性に向かって斬りかかった。
頭がかち割られる!
一瞬目を閉じた、しかし、斧は地面に突き刺さるだけだった。
スカスカと斧が空を切る。
般若面は何度も何度も斬りかかる、しかし、それは地面を耕すだけだった。
女性は再び道を示す。
右手に持っているのは頭蓋骨。
アレはきっと長谷川先輩が持っていた物だろう。
それを受け取る。
僕は足を引きずりながら祠へと向かう。
痛い、畜生。
鬼は相変わらず女性に釘付けでこちら向かっては来なかった。
なんて長い距離なんだ。
走れれば・・・。
祠が見えてきた、もうすこしだ。
去年の出来事も昔の出来事も全部、終わりにしてやる!
走る音が聞こえる、どうやら鬼が近づいてきたようだ。
もうすこしだってのに・・・。
すると、そっと頭蓋骨が受け取られる。
誰だ・・・?
そこには、綾が立っていた。
「綾!何してるんだ!」
「これをここに入れればいいの!?」
鬼が迫ってくる。
「そうだ、そこに入ってるのと交換しろ!」
僕に覆い被さってくる鬼。
祠に頭蓋骨が入れられた。
これで、何か変化が・・・。
しかし、鬼は斧を振り上げた。
畜生!だめか
綾「思え思うなづむ想い
されぞ消えゆく草の雪
とけどかわきど
あきず想う」
綾が言い放つ。
鬼の動きがぴたりと止まる。
仮面から見える目から涙があふれた。
「おお、おおお」
泣いて、いるのだろうか。
目を見開いて震えている。
綾「早く」
綾はそう言って、道を指さす。
徹「ありがとう、だけどこの人に言わなくちゃいけないことがあったんだ」
少女は不思議そうな顔をする。
徹「元気な赤ちゃんを産んでやってくれ」
おお、おおおおおおおおおおおおおおおおおお!
鬼の泣く声がこだまする。
港につく。
【画像:港】
徹「すまんね、綾」
綾「まったく、お節介がすぎるわよ」
みんなの顔が明るくなる。
長野先輩が肩を担いでくれた。
長野「よくやった」
痛みで声も出せなかった。
長野先輩に手を貸してもらうと。
僕は船の上で倒れた。
傷、深くなきゃいいけど。
綾「徹君───」
ああ、聞かなきゃならないことがあるんだっけか。
そう考えながらも僕は目を閉じた。
エピローグ
【場所:図書館】
綾「これこれ、見てみて」
クーラーの利いた図書館だった。
鬼哭島まだ、名前の変えられていない頃の古い新聞だ。
茶色が時間を感じさせる。
そこには『村人三十人死亡』との事だった。
細かくは語られないが、一人の女性が村人を惨殺し、自殺を遂げたと書いてある。
綾「きっと港の人は詳しく知ってるわ」
すっかり彼氏彼女になった僕達は鬼哭島について調べていた。
徹「そういえばさ、僕に言いたいことって何だったの?」
綾「ああ、ちゃんと言ったわよ、徹君寝てたけど」
徹「ずるいなあ、でもさ、僕も言おうと思ってたんだけど」
綾「へえ、なに?」
徹「好きだよ」
綾「ば、バカ、よくそんなクサイ台詞言えるわね」
照れてる照れてる。
でもまんざらでも無さそうだった。
【場所:港(人気のある】
【立ち絵:おじさん】
おっさん「あそこはなぁばっちゃがすんでたころのだげど、近親相姦があっだんだど
そこは村の掟でだめなごとだっだがらぁ、酷くせめられたんだってなぁ
そんで互いに愛し合ってた兄弟がいて、女が身ごもったんだと
鬼っごだおにっごだと攻められてとうとう兄の方が打ち首になってなぁ
おんなっごも気が触れて村の人間ころしまわったんだど、ああ、おっがねぇなぁや」
【場所:オカ研部室】
オカルト研究部室、残暑の残る中で、一つの写真を見つけた。
去年のキャンプの写真だろう。
【画像:写真】
みんな笑顔で映っている。
あれ?この顔・・・。
徹「長野部長、この人・・・」
部長になった長野先輩にたずねる。
長野「ああ、高橋だ、去年、死んだ、ここだけの話俺は彼女が好きだったんだ」
去年?
それは、僕を助けてくれたあの女性だった。
間違いない、この顔だ。
じゃあ、僕は幽霊に助けられた?
はは、もう笑うしかないな。
一生分の不思議は体験しただろう。
だけど、僕と綾はまだこの部活にいる。
あの鬼は消えただろうか、それとも、見つかるはずのない仇を捜しているのだろうか。
それは、わからない。
もう二度とあの島には近づきたくないというのが本音だった。
僕の傷は靱帯まではいかず、針を数本縫うだけでよかった。
そして、僕を助けてくれた彼女。
彼女は成仏?したのだろうか。
「長谷川と一緒にあの島に暮らしてたりしてな」
「最後まで長谷川君をとっていったのね、あの女」
長野先輩と深町先輩の言葉を思い出す。
物語はハッピーエンドの方がいい。
僕もそう思うことにした。
綾「徹君、あの般若の人、どうしたのかな?」
徹「恋がみのったんじゃないかな、だいぶ遅れたかもしれないけど」
そうハッピーエンド、それがいい。
僕は綾のおでこにキスをした。
素材
【立ち絵:綾(笑顔)】
【効果音:階段を降りる音】
【画像:三人がテーブルに座っている】
【立ち絵:長野(真剣】
【音楽:神秘的】
【場所:港】
【音楽:和風】
【立ち絵:高橋】
【場所:オカ研部室】
【画像:写真】
【場所:港(人気のある】
最終更新:2006年09月17日 20:38