459 名前:祥子とみゃー姉の部活日誌 ◆x/Dvsm4nBI [sage] 投稿日:2007/05/12(土) 10:04:55 ID:fDKWptgc
どこの学校にも文芸部というものは存在していると思う。
しかし、普通このような部活はまじめにやるとつまらないと相場は
決まっているのである。
私こと黒崎美弥子は文芸部の部長である。
元々点数稼ぎのために入った部活であり、本格的に活動するとなると、
私の格好よくて優しくて全人類の中で一番の男、私の生きがいでもある
最高の義弟と話す時間が削られるので固辞したのだが
それが慎ましいと評価されてしまい、部長に任命されてしまった。
あの腐れデブ眼鏡前部長め地獄に落ちろ。
ついでに顧問も下剤入りジュースを飲ませてのた打ち回るところを
写真に収めて校内新聞に投稿してやる。
こほんっ
しかし、部長に任命されたからには部を盛り上げる責任がある。
「美弥子先輩。ポストの設置とチラシの印刷、終わりました。」
盛り上げるには順序というものがある。私は人数集めれば盛り上がるとか
考えているような馬鹿ではない。
まずは自分の知名度を利用し、文芸部の活動を広め、アンケートなどを
通じて顧客の名簿を作る。新しい企画を提案する。
部員などそれを実行できるだけの人数がいれば十分である。
幸い新入生の中でも相沢祥子という後輩はなかなか有能だ。
ショートな髪、かわいらしい外見、平均以上の背と胸。
私に無いものを揃えており、義弟と同じクラスなのは気に食わないが
情報を集めるには使えるだろう。
さて、新しい企画。
ザ・文芸部ぷれぜんつっ!
恋愛相談ポスト、あなたの恋を文芸部が完全サポートします。
460 名前:祥子とみゃー姉の部活日誌 ◆x/Dvsm4nBI [sage] 投稿日:2007/05/12(土) 10:06:06 ID:fDKWptgc
「美弥子先輩…ほんとにほんとーにっ、これやるんですか?」
「ええ、面白いと思わないかしら?若者に文学なんて無理よ。
やっぱり興味があることでお客を集めないと。」
「文芸部の存在意義が…」
「祥子ちゃん、細かいこと気にしちゃだめよ。貴女だってこちらのほうが面白いと
思うでしょ?」
「だって、あたしも先輩も恋人いないじゃないですか~。大丈夫なんですか?」
「あらあら。私は365日毎日恋をしているし、恋の作戦を考えてるわ。
ついでに、他人の恋で学んでおけば自分のときにやりやすくなると思うし。」
「な、なるほど。流石先輩。あたしも頑張りますっ!」
三日後
「先輩先輩先輩!!!早速着てますよ着てますよ!!!」
部室で復習しているとショートの髪が飛び込んできた。
どうやら早速恋愛相談の手紙が着たみたい。
「初投稿です読んでみましょうか。どきどきしますねー。」
「そうね。私も楽しみです。さてなになに…?」
拝啓文芸部様
始めまして、私は一年の渡瀬美香と申します。
恥ずかしながら自分では告白できないので文芸部様のお力を
お借りしたいと思い、手紙を書かせていただきました。
私には三年に兄がいます。兄と私は相思相愛に間違いないのですが
最近兄の周りに私との仲を嫉妬する泥棒猫が近づいているようなのです。
その泥棒猫を追い払い、私と兄の仲を完全なものにするためにお力をお貸しください。
敬具
「…せ、先輩これは…まずくないですか?やな感じがしますよ。」
「早速凄いのが着たわね…。取り合えずお話を聞いてみましょう。
一年だし祥子ちゃんはこの人を呼んでください。」
「うう、関わりたくないよぉ~」
461 名前:祥子とみゃー姉の部活日誌 ◆x/Dvsm4nBI [sage] 投稿日:2007/05/12(土) 10:09:27 ID:fDKWptgc
次の日
部室で、三年の渡瀬雄一に関して集めた資料を読んでいると、いつも元気な
ショートヘアーの祥子ちゃんが入ってきた。後ろには大人しい感じの…
いかにも図書館にいますって感じの三つ編み少女を連れている。
「こんにちは、貴女が渡瀬美香さんね。お手紙ありがとう。」
「こ、こんにちは。お噂はかねがね。間近で見ると噂以上に綺麗…
やだ、すみません。何いってるんだろ私。」
「有難う。依頼の件だけどね。一応引き受ける方向で検討しているわ。」
「えええええ!美弥子先輩―っ!まぢですか!!」
騒いでいる後輩をとりあえず無視し、美香ちゃんに真剣な顔を向けた。
「まず、先に言っておくわね。私は心に決めた人がいるの。それは貴女の
お兄さんじゃない。だから、私が彼と話をしても安心して欲しいの。大丈夫?」
「はい。」
「あ、美香さん。あたしも大丈夫だから。美弥子先輩と同じ理由で。」
「では、調べたことから。三年、渡瀬雄一。三年生テニス部。
県大会準優勝経験あり。貴女のいうところの雌猫…女子テニス部の同じく
三年、庄野菊花とは三年生内では交際しているっていうことになっているわね。」
「違いますっ!!兄はあの女にきっと弱みを握られて騙されているんです!」
祥子ちゃんはうわーって顔をしている。私も同感であるので頷く。
全くあんな男のどこがいいのやら。私の義弟と比べれば月と塵芥である。
「落ち着きなさい。女は男を手の内で操って初めて一人前なの。貴女はまだ
修行が足りないから雌猫に遅れをとっているのよ。まずは、冷静になりなさい。」
「な、なるほど…、でもどうすればいいんでしょう。」
「よく聞きなさい。例え仮に本当に庄野さんが彼女だったとしても、渡瀬君が貴女の
方を好きになれば貴女の勝ち。これは分かる?」
「はい。」
「美弥子先輩…ノリノリですね…」
「まずは攻め。渡瀬君に一緒にいてもらう理由を作るの。そう…頼るのがいいわね。
頼られて嬉しくない男はいないわ。男に迫られて怖いとか方法はなんだっていいわ。
重いものを運ぶからとかもいいわね。勿論頼るときは、目を潤ませて上目遣い。
決して強要しちゃだめ。失敗したら可愛らしく引くこと。」
「メモメモ…」
「次に守り。渡瀬君と庄野さんの仲を引き裂くこと。この場合直接、彼女に攻撃しちゃ
だめよ。周囲の人に噂をばら撒くの。渡瀬君が浮気をしているっていう噂を。
これはうちの役立た…三年にやってもらうわ。勿論浮気相手は貴女。
一緒にいる貴女を恋人と勘違いしたって方向で流してもらう。」
「えげつないですね。美弥子先輩…」
「祥子ちゃん。恋愛は戦争なのよ。戦争に卑怯なんて言葉は存在しないわ。どう?
美香ちゃん。」
「分かりました。お兄ちゃんに悪い噂が立つのは辛いけど…」
「ここまでやれば大分ぐらつくと思うわ。最後の止めは…渡瀬君とキスをして
その写真と手紙を庄野さんに送るの。文面は私が考えてあげる。できる?」
「…はい、お兄ちゃんのためでしたら。」
「最後にひとつ約束して欲しいの。もしここまでやって二人が離れなかったら…
そのときは妹として二人の幸せを認めてあげて欲しいの。正直、これは人道的には
ちょっとだけ酷い作戦…」
「…いえ、美弥子先輩、大幅に踏み外してます…。」
「これを耐え抜ける二人なら、二人は本気。想いの強さも本当。これで崩せないなら
手はないしね。渡瀬君のことが本当に好きなら美香ちゃんも耐えれるわね?」
「…わかりました。先輩。そのときは…諦めます。」
私は微笑んで美香ちゃんの労るように優しく頭をなでた。
真っ赤な顔をしてる。可愛いわねー。うんうん。やっぱり、後輩はこうじゃないと。
「いい子ね。貴女の恋が成功することを私は祈っているわ。」
462 名前:祥子とみゃー姉の部活日誌 ◆x/Dvsm4nBI [sage] 投稿日:2007/05/12(土) 10:10:11 ID:fDKWptgc
二週間後
「美弥子せんぱーい。美香ちゃんから結果報告が来てますよ。
美香ちゃんてば、あんな暗かったのにすっかり明るくなってたなあ。
ファッションも変えて男の子にすごいもててるみたいですよ。」
「恋愛そのものは失敗したって聞いてるけどね。兄妹の恋愛は大変だわ。
ふっきれたんでしょ。早速。読んでみましょうか。どれどれ…?」
拝啓文芸部様
先日は、ご相談に乗っていただきありがとうございました。
作戦は残念なことに失敗に終わりました。私の初恋も…
ですが後悔はしていません。二人は本気で恋愛しているんだということも
わかりましたし、お兄ちゃんも庄野先輩もここまでした私を笑って許して
くれました。庄野先輩も落ち着いて話してみれば本当にいい方でお兄ちゃんを
安心して任せることができそうです。
今回の出来事を糧に、この先新しい恋を頑張っていこうと思います。
本当にありがとうございます。
敬具
追伸、文芸部に入部します。身も心も可愛がってください。
好きな人がいても恋は奪うものですよね。よろしくお願いします
お兄ちゃんと同じくらい大好きなお姉さま(はーと)
「………え?」
「み、美弥子先輩…ぷっくくくくく、お、お姉さま!あはははははははははは!!」
祥子ちゃんの笑い声を聞きながら私は背中に嫌な汗をかいていた。
全く笑えない。ま、まさか、こんな展開になるとは…あの偏執的な愛情が私に…
「祥子ちゃん!私は今日は早退っ!!後は任せ…」
そして、文芸部の扉が勢いよく開いた。無常にも。
最終更新:2007年11月01日 01:37