549 名無しさん@ピンキー sage 2010/04/24(土) 21:13:28 ID:LirD6WJ0
ブラザーコンプレックス、俗に言うブラコンというのをご存じだろうか?
兄弟に対して恋愛じみた感情を抱く事らしい。正確には違うのかも知れないが、本筋ではないから
間違っていてもお許し願いたい。
ブラコンといっても読者の幸運なる99.9%にとっては、架空世界の出来事かせいぜいうわさ話、要するに
他人事だろう。だが残念なことに僕は、残り0.1%に属している。一つ下の妹が少々…いや、かなり病的な
レベルのブラコン故に。
小さい頃から、よく僕について歩く妹ではあった。女の子なのに一人称が僕なのも、僕の真似をしたのが
始まりかも知れない。しかし、長じてからの妹の行動は、そんな可愛いものでは済まなくなってきた。
姉妹のいる男性諸君。あなたの姉妹が自慰する姿を見たことはあるだろうか? ある人はごく少数だろうし、
あっても大抵は不幸な偶然の産物だろう。僕の妹は違う。僕の帰宅時間に僕の部屋、僕のベッドの上で、
全裸で僕の下着を抱えて悶えているのだから。帰宅した僕の面前で、絶頂する姿を見せつけたのだから。
僕が驚きのあまり硬直していると、妹はベッドから起き上がると、自らの愛液にまみれた腕で僕に抱きつき、
耳元で囁くように愛を告白した。
やりたい盛りの筈の僕だが、裸の女の子に抱きつかれても「その気」にはならなかった。本能は近親を避ける
というのは本当だったようだ…いや、反例が僕に抱きついているか。
かといって冷静を保てた訳じゃない。「ぼ、僕たちはきょうだいだよ…」と芸のないセリフを口にして
妹の体に毛布をかぶせ、自分の部屋に戻らせるのがやっとだった。
そして妹のリミッターは吹き飛んだ。
風呂やベッドに乱入してくるのは当たり前。僕の留守中には部屋に入り込んであちこち探し回ったり、僕のベッドで
……していたり。恋愛感情という次元を明らかに超えていた。兄妹という問題を除いても、これではストーカー
そのものだ。
そして限界点がやってきた。僕がクラスの女の子と付き合っていると誤解(ああ、幸か不幸か誤解だ)した妹が、
刃傷沙汰に及ぼうとしたのだ。何とか誤解を解いて未然に防げたが、妹が刃を収めたのは、「誤解」だと納得したから
でしかない。本当に僕に恋人が出来たら、そうでなくても事が起きる前に誤解を解くことが出来なければ…流血は必至だ。
事ここに至り、僕は両親に全てを話した。
驚愕した両親だが、僕の必死の訴えと、何より妹自身が実にあっさりと自らの異常な思慕を認めたため、事の次第を
信じるしかなかった。故に僕の提案を割合あっさりと受け容れてくれた。
提案とは、僕が妹の前から姿を消すという単純なものだ。僕は遠くにある全寮制の男子校に入学し、卒業まで
家には帰らない。両親は僕の居所を、絶対に妹には教えない。万一知られても、男子校に入ってはこれまい。
3年間の冷却期間を置けば、妹の心境も変わるだろう。
僕は親元を離れた。
そして…騒がしくも平穏な男子校での一年が過ぎ、春が訪れた。
入学式を終えた新入生が、列をなして寮に向かってくる。卒業した先輩に代わる、僕の新しいルームメイトも
あの中にいるはずだ。どんな奴かな? 先輩が僕にしてくれたように、出来るだけ親切に、そして仲良くやって
行きたいものだ。
などと思っていると、ドアがノックされた。ドアを開けると真新しい制服に身を包んだやけに華奢な一年生が
……いや、お前は……
ルームメイトは顔を上げると微笑んだ。
「探したよ…お兄ちゃん」
-----「妹・ルームメイト」 FIN-----
最終更新:2010年05月09日 22:12