埋めネタ:兄に埋められるキモウト

709 埋めネタ:兄に埋められるキモウト sage 2010/05/06(木) 16:34:03 ID:g4YvLk8H
「はぁ……、はぁ」

男の喘ぎが夜の静寂に響く。ここは彼の家の庭である。
深夜に大の男がハアハアいいながらスコップを手に仁王立ちしている姿は、自宅であれどあまりにも奇異である。
だが、彼には為さねばならない使命があった。例えご近所さんから奇異の目で見られようともやり遂げなければならないことが。

「俺を襲おうとしたのはこれで何度目だ?」

彼の前方、地面から顔だけ出している少女がいる。美しい顔立ちをしているが、埋められている状態では酷く不気味である。
その少女は彼の妹で、兄である彼に狂信的なまでの愛情を示し、隙あらば兄の貞操を奪おうする、俗に言うキモウトである。
もう数十回を数えた妹の襲撃についに彼の堪忍袋の緒がついに切れたのだった。

初めのうち、本当に幼少の頃は妹に好かれることが嬉しくてたまらなかった。
兄妹仲良く笑いあって、その微笑ましい姿に両親が笑って、彼の家は笑いが絶えなかった。
そんな幸せだったときに思いを馳せて、彼は必死で涙を堪えていた。
もう戻れない幸せな日々。失って初めて気づくその大切さ。
その後悔の念も相まって、とうとう妹に体罰をすべきだと確信したのだった

「もうやらないと誓約書にも書いたよな。もしも俺に危害を加えるならどんな罰も受けるって言ったよな」
「…………はい」
「俺がお前のことを気遣って何もしないと思ったか?生憎、もう容赦をする気はない」
「おにいちゃん、ごめんなさい……」
「今日は一晩このままでいてもらう。明日の朝、反省してるようなら出してやる」

妹の瞳には涙がたまっていた。今にも泣き崩れそうな顔をしている彼女に、以前の彼ならば簡単に絆されていただろう。
だが、これは妹の常套手段である泣き落としであることを彼は既に経験から看過していた。
何度も何度もこの手に騙されてきた彼にとって、その涙は決して快いものではなく、心が冷えていくのを感じた。
ーー朝も同じように俺を騙そうとするなら昼まで延長してやる。
そう心に誓って彼は庭を後にした。

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最終更新:2010年05月09日 22:31
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