718 埋め sage 2010/05/06(木) 22:05:19 ID:RZT46Rwx
今日から一人暮らし。
小綺麗なマンションのやや狭い一室で僕は一人ダンボール箱を開けていく。
「あっれ……?これはなんだっけ」
いくつかあるダンボール箱の中に、表面に何も書かれていないものが一つあった。
「ま、とりあえず開ければわかるか」
僕はダンボール箱に貼られたガムテープを一気にはがす、と。
「じゃじゃーーーん!お姉ちゃんでーす!」
中からは、何と姉が現れた。
「ね、姉ちゃん!?」
僕は驚きのあまり床に座り込んでしまう。
「えへへ、びっくりしたでしょ?」
ぺろりと舌を出して可愛らしく微笑む姉。
あぁ……、この表情は本物の姉だ。
「ゆーくんが一人暮らしなんてお姉ちゃん許さないんだからね!ぷんぷん!」
わざとらしくブリッコぶるのも、……まさしく僕の姉、その人だった。
「姉ちゃん……」
「ん?なぁーに?」
僕は姉の顔を見ないよう、床に視線を向けながら、言った――
「姉ちゃん。姉ちゃんは、もう、二年も前に……、死んでるんだ」
「え?」
姉の声は驚愕に震えていた。
「なんの……、冗談……」
「本当なんだよ!本当なんだ!」
姉が息をのんだ音が聞こえる。あぁ、顔を見ていなくて良かった。
きっとその顔は捨てられ腹を空かせた子犬のソレだろうから。
「姉ちゃんは、……僕が入った後の風呂の湯を、全部飲んで……、飲み尽くして……」
「死んだんだ……!」僕は絞り出すように言った。
「そっか……、私、あの後で死んじゃったんだ」
寂しげな姉の声。
「死因は……、弟萌え……、だね」
言いながら、姉は僕の頬に手のひらで触れた。
「でも良かった、これでもう死なないんだね、私」
両手を使い、僕の顔を上げさせる姉。その顔は愉悦に染まっていた。
「死んでもずうううううううううううううううううううううううううううううううううっと一緒だよ、ゆーくん」
僕の将来が確定した瞬間だ。
最終更新:2010年05月09日 22:34