140 とある義理姉の悩み sage 2010/08/08(日) 19:02:33 ID:msL+zHBN
ああ、どうして私はあの子の姉なんだろう。
いや、違う。どうして私は、あの子の魂に私のことを「姉」と刻み付けてしまったのだろう。
十数年前の自分を引き裂いてやりたくなる。
私は養女だ。私がこの家に来てから生まれた弟とは当然、血がつながっていない。
だから法的にも弟と堂々と結婚できる。両親だって反対しないだろう…多分。
私たちに血縁がないこと、私が弟に向ける感情は女子の間では周知のことだから、私と争うことを覚悟で
名乗りを挙げるライバルもいない。互いの命を懸けて戦うような敵が出現することを思えば、ブラコン呼ばわりなど
安いものだ。
実在するのかも判らない同好の士と比べたら、実に理想的な環境だろう。
なのに…肝心の弟が、私のことを「姉」としか見てくれない。これでは理想の環境など無意味ではないか。
当たり前といえば当たり前だ。弟から見れば、生まれたときからいるのだから実姉と大差ない。
そして幼心に「本当の子でない」ことを気にしていた当時の私は弟に対し、私が「お姉ちゃん」であることを
必要以上に教え込んだ。その努力は見事すぎるほどに身を結び、立派な「姉弟」が出来上がってしまった。
ああ、弟にこんな思いを抱くことになるのなら、もっと別の仕込み方もあっただろうに。私の馬鹿、大馬鹿!!
……いや、諦めたらそこでゲームオーバー。必ず道はあるはず。
そうよ。考えてみれば「姉」を刻み込んだのは私。もう一度「女」を刻むことだってできるはず。
「姉」から「女」。どうすればこの「市」を削れるか。憎っくき「市」を抹殺するためにまずは…
「お父さん。都心(区)か田舎(町・村)に引っ越しましょう」
「おまえは突然、一体何を言ってるんだ?」
「……失言でした。忘れてください」
あっけにとられるお父さんの顔。恥ずかしい、なんて大ボケを。そういう問題じゃないでしょうが!
…でも、年頃の娘が私しかいないような田舎に引っ越すというのは、有効かもしれないわね…。
「親父。姉ちゃんの様子がおかしい…というか不気味だ。さっきから天井を見上げてクネクネしながら何やら独り言を」
「ああ、私も見た。暑さにやられたんだろう。そっとしておいてやれ。一番寝れば治る…多分」
---FIN---
最終更新:2010年08月30日 04:14