537 ハロウィンもの ◆F2m7zMMHISUy sage 2010/10/31(日) 16:30:49 ID:CCsla9Lu
ピンポーン…
チャイムを押してしばらく経つと私の目の前の扉が開いた。
そして玄関から女の人の顔が見えた瞬間私達は叫んだ。
「「トリックオアトリート!」」
そう、今日はハロウィンの日である。だから私たち兄妹はこうして近所にある女子大生が住むアパートまで来ているのだ。
一瞬驚いたような顔をした女はすぐに状況を把握したようで、ちょっと待っててねと言うと部屋の奥へと戻っていった。
「はーい!おかしだよー」
戻ってきた女が私にコンビニで売られているようなチョコのお菓子を一個手渡し、すぐにお兄ちゃんの方を向くとこんなことを言い出した、
「ごめんね、お菓子これだけしかなくってー」
すると、なんということか!さっきまでどんなお菓子がもらえるのかとわくわくしていたお兄ちゃんの顔はみるみる曇っていった。
このクソ女はお兄ちゃんをこんなに悲しませやがって!メラ食らわして一生人に見せられないような顔にするぞ
私がそう思っていると女はさっきの申し訳なさそうな声音から一転、猫なで声でこうものたまった、
「だ、か、ら、お姉さんの体中に好きなだけいたずらして~」
そうして上着に手をかけた女は――
「アギダイン」
火だるまになっていた。
突然焼き豚になった女を見てオロオロするお兄ちゃん、かわいい。
「お姉さんが火に…それに、杖から…なんか…火の粉みたいのが今…」
やっぱり見られてたか、こういうところだけは鋭いお兄ちゃん。
「凄い手品でしょ!今日の私は魔女だからちょっと凝ってみたんだー」
そういってにっこりとお兄ちゃんに微笑む私。
「じゃあ次はお隣さんだね!」
お兄ちゃんはまだ焼き豚が気になっていたようだが、誰よりも信頼する妹の言葉を信じないはずもなく、
「そうだね!次に行こうか!」
今度こそは貰えるだろうと、期待に胸を膨らませた満面の笑みで返してくれた。
538 ハロウィンもの ◆F2m7zMMHISUy sage 2010/10/31(日) 16:31:24 ID:CCsla9Lu
そうして魔法使いの格好をした私たち二人は隣の部屋の前まで移動し、チャイムを鳴らした。
結果から言うとここでもまったく同じことをされた。だからお隣さんも炎の魔法で焼き豚さんにしてあげた。
お兄ちゃんを悲しませた上に色目を使ってくるんだ、当然の報いだよね!
さらに付け加えると、アパートの一階に住む女全員が同じ手を使ってきた。
そいつらもあらゆる炎の魔法を使って処分した。
私たちはアパートから少し離れると、私は今にも泣き出しそうなお兄ちゃんに言った、
「今日はもうおうちに帰ろ…」
首だけで返事をするお兄ちゃん。
まだ2階が残っているが部屋を回っていく元気はお兄ちゃんからは完全になくなってしまっていた。
昨日の夜、「今年は近くに女子大生のアパートが出来たからたくさんもらえるぞ」
「女の人は甘いものが好きだからきっといつもは食べられないようなおいしいお菓子を持ってるはずだよ!」
「それにあそこのお姉さんたちいつもぼくたちにやさしくしてくれるし」
と、楽しそうにしていたお兄ちゃんは見る影もない。
お兄ちゃんが踵を返して家に帰る道を向いたのを見計らって、
「メラゾーマ」
アパートごと燃やした。
お兄ちゃんを悲しませ、誑かそうとする女はまとめて処分しなきゃ…
539 ハロウィンもの ◆F2m7zMMHISUy sage 2010/10/31(日) 16:32:25 ID:CCsla9Lu
「お兄ちゃん、これあげる」
帰り道、そういってお兄ちゃんにさっき貰ったお菓子を手渡した。
間接的にもあの女達からもらったようなものをお兄ちゃんの口には入れたくはなかったけど、
私はお兄ちゃんの良きパートナーだ、今度ばかりは大目に見よう。
「え、でも…」
そういって遠慮しようとする優しいお兄ちゃん。
でも、こんな悲しそうな顔をするお兄ちゃんを放ってはおけない私は一つ提案した。
「じゃあこうしよ!お兄ちゃんが私にトリックオアトリートって言うの!」
すると、すぐさまぱあっ!っと私の大好きな笑顔がお兄ちゃんの顔に広がると、今日一番の元気な声でお兄ちゃんは言った、
「トリックオアトリート!!」
っっっっ~!!はうっ!だめだっ!これはまずい…!
今の私はなんと醜いのだろう!よりにもよってあの女達と同じことをしようという考えが頭の中に浮かんだ。
だめよ、私はお兄ちゃんの良きパートナー、あんなやつらとは違うのよ!
私はいつもの、いえ、いつも以上の笑顔をお兄ちゃんに向けて言ってお菓子を半分手渡した。
最終更新:2010年11月07日 18:21