水木さんちの朝寝坊

859 名前:水木さんちの朝寝坊 ◆lnx8.6adM2 [sage] 投稿日:2007/05/22(火) 23:08:08 ID:1G2Nv8vw

朝。

「ん・・・んん、、んんんんんっ! ぐ────────ぶはぁっ!?」

オレこと水木 大地(みずき だいち)は酸欠で目が覚めた。
頭が回るより早く上体を起こし、布団を跳ね飛ばして呼吸する。

「きゃっ!?」

布団のついでに何かを腹の上からどかしたような気もするが、
今はそれより何より酸素が欲しい。

「はぁっ・・・はぁ・・・はぁ・・・はあ。っすぅぅぅうううう~~~~~~」

心臓がバクバクいってる。
おまけに全身汗だくで、酸素不足も手伝って思考がはっきりしない。

「はああぁぁ~~~・・・」

しばらく短い間隔で呼吸を繰り返し、最後に深呼吸を一つして漸く落ち着いた。
朝の爽やかな空気の中で、汗の臭いと濡れた服が肌に張り付く感触がひどく不快に感じる。
随分と最悪な目覚めだ。

「ふみぃ・・・痛いよぅお兄ちゃーん」

横からの声に目をやると、
そこにはどうやら朝っぱらからオレにデンジャラスな一時をプレゼントしてくれたらしい物体Xが転がっていた。
ぺたんと床に尻餅をつき、両手を頭に当てて痛そうに涙を浮べている。
栗色のツインテールに、くりくりとした茶色の瞳。
学校の制服に包まれた体は子供の背伸びを疑いたくなるほど小さく、
落ちた時にめくれたらしいスカートからはいかにもガキ臭い下着の端が除いている。
水木 火風(ひかぜ)、オレの妹だ。

「痛いじゃねぇっ!
 ったく、朝一番にオレを殺しかけやがって。
 危うく別の意味で眠ってしまうところだったわ! ・・・うぅっ」

落ち着いたばかりか寝起きだからか、怒鳴ると気が遠くなる。
汗で濡れた額に手をやると、かなり冷たくなっていた。

「殺そうとなんてしてないよー。
 ただお兄ちゃんがお寝坊さんで、お兄ちゃんが寝てる顔は可愛いからずっと見ていたいけどぉ、
 でもでもこのままじゃ朝ご飯の時間がなくなっちゃうから仕方なく起こしただけだよー」

馬鹿にしたように甘ったるく間延びした声が怒りを助長してくれる。
文句の一つも言いたくなるが、頭が痛くなってくるので止めた。

「ったく。お前どんな起こし方したんだよ?」

しかし、起きた瞬間に酸欠で視界が遠くなっていたとは穏やかじゃない。
鼻と口を塞いで呼吸でも止めたのか。
それにしても加減をしろと言いたくなるが、
実年齢を二桁近く引き下げたようなぽけぽけぼけぼけの我が妹なら、
間違って息の根くらいは止めそうで恐ろしい。
実際に生死が関わったので、怒声の代わりに睨みつけてやる。


860 名前:水木さんちの朝寝坊 ◆lnx8.6adM2 [sage] 投稿日:2007/05/22(火) 23:08:51 ID:1G2Nv8vw
「それはねぇ? えへへー」

が、妹は堪えた様子もなく、そこだけは可愛らしく笑って見せた後ベッドへと上がってくる。
もどかしいトロさでのそのそやってからスプリングを軋ませると、
上目でオレを見詰めながらはにかんで見せた。
ちょいちょいとオレを手招いて、更に近寄ったオレの耳に口を寄せて囁く。

「べろちゅー」

ぱっと身を戻した我が妹は、出した舌をれろれろと動かして見せる。
オレが慌てて口元を拭った袖は、汗だけにしてはやけに濡れていた。
加えて、起き抜けにしては奇妙に湿った口内と喉。はっとして硬直する。

「でねー。今度はぁ、おはようのちゅー!」

そしてこんな時だけ機敏な妹は、いきなりで反応が遅れたオレの唇をあっさりと奪ってみせやがった。
そんな、休み明けの月曜日。
百年の眠りからも叩き起こされるような悪夢。



二度目の舌の侵入だけでも防いだのは、正直褒められてもいいと思う。


次回 水木さんちの朝御飯へ続く・・・?

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最終更新:2007年11月01日 21:13
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