231 名前:聖のお兄様1 1/4[sage] 投稿日:2007/05/28(月) 22:24:48 ID:MpIATfqz
「おはようございます」
すれ違う全ての生徒が私たちの方を見て挨拶をくれる。
「あぁ。おはよう」
「おはようございます」
私もお兄様も挨拶を返す。
生徒会長のお兄様と書記の私。
なによりも礼節を重んじる学園が育てた、上品な生徒たち。
そして、学園で絶対と言っていいほどの権力を持つ生徒会長。
誰しもがお兄様を慕い、お兄様を尊敬し、お兄様を敬愛する。
あぁ、私も妹として、お兄様と一生を共にする所存です。
「おはようございます。冬也さん。聖さん」
「おはよう」
「おはようございます。如月先輩」
副会長の如月海先輩。
あぁ。如月先輩のは本当にお綺麗な方です。
お兄様と並んで歩いておられると、本当にお似合いですわ。
尊敬いたします。
「聖さん」
「はい、なんでしょう」
「冬也さんの、好きな食べ物を教えていただけないかしら」
「えぇ。よろしいですけど、理由をお聞きしてよろしいでしょうか」
「あの・・・冬也さんに、お弁当を」
・・・あぁ。この女もお兄様に発情したただのメス豚でしたか。
尊敬して損しましたわ
「お兄様のお弁当を作るのは私の楽しみの一つですわ。いくら如月先輩と言えどもこれは譲れませんわ」
誰が貴方が作った豚の餌のような弁当をお兄様に食べさせるものですか。
「あら、残念。でも、そう考えると聖さんが少しうらやましいですわ」
「でしたら、一つお教えしておいてあげます。お兄様の大好物はピーマンですわ」
「あら。そうですの?では、家庭科の時間に作ってみます。ありがとう、聖さん」
ははっ。お兄様がたった一つ、本当に唯一の弱点がピーマンだとも知らずに。
見るのも嫌で、匂いを嗅いだらぶち切れるってのに。それで、うちの女中も何人辞めさせられたことか。
お兄様がこのメス豚を突き放す瞬間、早く見てみたいものですわ。
232 名前:聖のお兄様1 2/4[sage] 投稿日:2007/05/28(月) 22:25:31 ID:MpIATfqz
「出て行け!!!」
生徒会室から如月・・・もとい、メス豚23号が飛び出してきて走って行ってしまった。
今朝の今でもう実行したんですの?
油断して決定的瞬間を見逃してしまいましたわ。
「お兄様。どうしました?」
生徒会室に入ると、お兄様は青い顔を私の方に向ける。
「どうもこうもない。如月が・・・ピ・・・言葉にするのもおこがましい緑色の物体をこの部屋に持ち込みやがったんだ」
「あら。お兄様。地が出てますわよ」
「・・・今はお前と二人だからいいんだよ」
優等生の生徒会長の仮面を脱ぎ捨てたお兄様は、年相応の男の子。
私にだけ見せてくれる特別な・・・ううん、本当のお兄様。
「では、このクッキーでお口直しでも」
「お。いただきます。ん・・・んぅ。うまい」
「ありがとうございます」
私は紅茶を淹れ、お兄様の前に差し出す。
「ふぅ。やっと落ち着いた。ありがとうな」
「いいえ。お兄様の笑顔が見れるなら、なんでもしますわ」
「ホント、俺の妹とは思えないくらい真面目でいい子だよな。お前は。あ、褒めてるんだぞ」
「えぇ。わかってます。お兄様、ありがとうございます」
他人を蹴落とし、お兄様に最高の賛辞を得る。
あぁ、この瞬間は何事にも変えがたい至福の一時ですわ。
「失礼します」
生徒会室のドアが開き、他の生徒会役員が入ってくる。
メス豚23号の姿は・・・さすがに無いですわね。
233 名前:聖のお兄様1 3/4[sage] 投稿日:2007/05/28(月) 22:26:16 ID:MpIATfqz
「如月先輩。何がご用ですか?」
ある日の放課後、私はメス豚23号から呼び出された。
場所は屋上。放課後は人が居なくなるため、色々なことをするには都合のいい場所。
「あなた・・・どうして、どうしてウソを言ったの!」
「ウソ?あの、それは」
「ピーマンのことです。冬也さんの好きなものはピーマンだと」
はぁ。この方本当に馬鹿ですわね。それくらい察しなさい。
・・・けど、頭まで豚レベルの女には無理な話ですわね。
「さぁ。何故です!言いなさい!!」
メス豚が私をフェンスに追いやる。
「ふふ」
「何がおかしいです?」
これから始まる、面白い事を考えると自然と笑みが浮かんでしまいました。
「聖さん・・・さぁ!!」
「ん?どうした?」
「え?」
屋上の扉が開き、校舎から誰かが出てくる。
お兄様だ。もちろん、私がちょっと仕掛けをして、お兄様がこの時間にこの場所に来るように仕向けましたのよ。
さぁ。ショータイムだぜ。
「如月さん・・・貴方何を」
「お兄様!!」
私は突然のことに呆気に取られているメス豚の腕を跳ね除けて、お兄様の胸の飛び込む。
「如月さんが、先日・・・あのピーマンを持って行ったのは私がウソを言ったって事にしろって」
「なに?」
「そうしないと、私のこと・・・あの・・・後輩を使って・・・お・・・犯す・・・って」
私がそこまで言って、メス豚はハッとなって、私を見る。
「な、何を!私は」
「如月さん・・・いや、如月海」
メス豚から守るように私を抱き締めてくれる。
あぁ、お兄様の温もり。気持ちがいい。
「本日付で生徒会副会長の席を降りてもらう。あと、この件は学長に報告しますので」
「そんな。冬也さん。私はそんな事は言ってませんわ。全部デタラメです」
「お兄様」
私とメス豚がお兄様を見る。
234 名前:聖のお兄様1 4/4[sage] 投稿日:2007/05/28(月) 22:27:04 ID:MpIATfqz
「如月。俺が温厚でいるうちに、俺の前から消えうせろ」
あら、お兄様ったら・・・完全に地ですわね。
「ひっ」
メス豚はその場に立ち竦んでしまう。
情け無い。
それにしても、たかだか2年ほど同じクラスだったメス豚が、長年一緒に生活してきた私よりも信じてもらえると思ってたのかしら。
滑稽ね。
「ふぅ。いくぞ、聖」
「はい。お兄様」
私はお兄様の腕に抱かれたまま、校舎内に入っていく。
ふふ。あぁ、面白かった。
お兄様。生徒会長のお兄様はみんなのお兄様。けど、本当のお兄様は私だけのもの。
だから、この線より先には誰も踏み込ませませんわ。
「聖」
「はい?」
「ごめんな。怖かったろ」
「いいえ。お兄様が助けに来てくださると信じてましたから」
「そうか」
お兄様が私に微笑みかけてくれる。
この心のこもった笑顔を見る事が出来るのも、仮面を脱ぎ捨てたお兄様を見る事が出来るのも、私だけ。
「そこまで信用されてると、ちょっとむずかゆいな」
「嫌ですか?」
「いいや。兄として嬉しい限りだ」
「ふふ。お兄様。頼りにしてますわ」
「おう」
ふふ。お兄様。
線の内側に入ろうとする輩はすべて私が消してご覧に入れますわ。
だから・・・お兄様は私だけを見ていてください。
-続く
最終更新:2007年11月01日 22:11