兄愛日記(けいあいにっき)

453 名前:兄愛日記(けいあいにっき)[sage] 投稿日:2007/06/05(火) 01:30:46 ID:hHRYltAq

5月26日

今日。
兄さんが家に泥棒猫を連れてきた。
いや、泥棒猫が兄さんについて来た。
兄さんが泥棒猫のことを『彼女だ』と言う。
いやですね、兄さん。
幾ら兄さんが優しいからって、
憐れみの余り泥棒猫を人間扱いしてはいけませんよ?
ましてや動物────それも何処のものとも知れない野良猫如きに。
動物はちゃんと躾けないと幾らでも付け上がりますからね?

怒りの余り、泥棒猫の頭の後ろで左右に揺れる尻尾を引き千切った。
茶色に染められた薄汚い毛の束が手から落ちる。
喧しい絶叫の後に泥棒猫は『ポニーテール』がどうこうと喚いた。猫なのに。
自分が何なのかも理解出来ていない程の低脳のようだ。

吐き気がする。



5月27日

泥棒猫を呼び出した。
自分が猫であり人間と、
ましてや兄さんと結ばれるなんて絶対にあり得ないことだと理解させるためだ。
が、これ以上ないほどの徒労に終わる。
『私は○○の彼女なの。お互いが望んで付き合っているの。
 それを、何で妹のアンタに文句言われないといけないわけ? 訳分かんない』
訳を分かっていないのはそっちだ。
やはり動物との対話など人間である私には不可能。
ぎゃあぎゃあと鳴く泥棒猫を追い返して終わる。

が、収穫はあった。
私はここで一つの確信に至る。
この泥棒猫は『病気』なのだ。
自分が何ものか理解できない、自分を人間だと勘違いする『病気』。
『病気』ならば治せばいい。

私は、『雄猫』に連絡を取った。

454 名前:兄愛日記(けいあいにっき)[sage] 投稿日:2007/06/05(火) 01:33:14 ID:hHRYltAq
5月28日

約束の場所に来た泥棒猫は驚いていた。
それはそうだろう。
私の横には立派な『雄猫』がいたからだ。
雄猫の背は私や泥棒猫よりずっと大きい。
加えて、体は筋骨隆々として申し分ない。
泥棒猫と同じ動物並の知能である以上は私にとっては唯の愚物だが、
野性味と強さが評価の基準である動物ならば最高の相手だろう。

泥棒猫の『病気』を治す第一段階。
相応しい雄を宛がって自分が何ものなのかを教えてやる。

本能で感じるものがあったのだろう。
泥棒猫は雄猫を見て、歓喜の余り体をガタガタと震わせていた。



5月29日

さて。
泥棒猫の治療の第二段階を始める。
雄猫は昨日から泥棒猫と盛っていたようだが、
やはり泥棒猫が『病気』のせいで上手く行かないらしい。

そこで、私は用意した『薬』を雄猫に渡してやる。

薬。
それは泥棒猫に自分が一匹の雌猫に過ぎないのだと自覚させるための特効薬だ。
私は人間なので当然試したことはないが、とても気持ち良くなれる薬らしい。
確かに、同じ薬なら苦痛の少ない物の方がいいだろう。

ああ。
こんな泥棒猫にまで気を回してやれるなんて、私は何と慈悲深いのだろう。
まだ全く兄さんの優しさには遠く及ばないけれど、
それでもほんの少しだけ兄さんに近付けた気がする。
嬉しい。

薬を打たれた泥棒猫が雌猫になった。
病気が治った途端に雄猫の魅力に中てられ、『発情期』に入ってしまったらしい。
いやらしい鳴き声を上げながら腰を振っている。
実にお似合いの姿だ。そして正しい姿。
雄猫も気合を入れて動き出す。
良く効く薬だと言う話だったから、
おそらく明日には番(つがい)になっているに違いない。

動物の営みに人間は邪魔だ。
私は早々に立ち去った。

455 名前:兄愛日記(けいあいにっき)[sage] 投稿日:2007/06/05(火) 01:34:01 ID:hHRYltAq
6月1日

雄猫と泥棒猫の経過は順調らしい。
雄猫からの連絡では雌猫の首に首輪を、胸には鈴をつけて調教中だとのこと。
色々と芸達者にもなったらしい。
別に私にとってはどうでもいいことだが、気になることが一つ。

あのクソ猫は、未だに兄さんを求めているらしいのだ。

汚らわしい。何と言うおぞましさだ。
動物の身で、それを自覚してなお兄さんと結ばれようなどと。
いや。或いは、体だけかと私は思い直す。
もしやあの雄猫だけでは満足出来ず、
たまたま記憶にある『雄』として兄さんを求めたのか。
だとしたら度し難い。
呆れ果てた愚かさと救い難い罪深さだ。
だがいいだろう。
雄猫だけで足りないと言うなら、せいぜい満たされるようにしてやる。

だが、今すぐには無理だ。
差し当たり、躾けのために雄猫へ調教用の『鞭』を渡してやる。
雄猫は鼻息を荒くして受け取った。
明日までの雌猫の体がどうなっているか楽しみだ。



6月5日

やった!
とうとうあの雌猫に身の程を教えてやることに成功した。
あの雌猫は、発情期の体を満足させてやることを条件に兄さんに別れを告げた。
まあ所詮は動物。
それも気紛れで自分勝手な猫なら当然だろう。
もとより別れるも何もないのだ。
兄さんはどうも落ち込んでいるようだが、私が癒してあげればいい。
何も問題はない。
全ては今まで通り。そして私が兄さんと結ばれるのはこれからだ。
雌猫と雄猫の交わりを見て色々と勉強もした。
手本が手本だけに不安は残るが、そこは私が兄さんに合わせればいい。
兄さんの好きなように、好きなだけ、好きにしてもらえばいいのだ。
どんなに特殊なプレイでも、兄さんへの愛がそれを可能にする。
ああ。
幸せな想像が止まらない。
今もシャーペンを握るこの手が震え、椅子との間に濡れた感触がある。
急ごう。
幸福な時間は少しでも早く迎え、僅かでも多く貪らねば。
兄さん。兄さん。兄さん兄さん兄さん兄さん。
待っていて下さいね。直ぐにイキますから。
直ぐに直ぐに直ぐに行きますから。
ふふ。ふふふ。
うふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ。
あはははははははははははははははははははははははははははははははははは。

456 名前:兄愛日記(けいあいにっき)[sage] 投稿日:2007/06/05(火) 01:37:01 ID:hHRYltAq

・・・ああ。そう言えば。
あの雌猫は今頃どうしているだろうか。
発情期の体を満足させてやるという条件のために、
私の知る限りの『雄猫』に声をかけておいたけれど。
その準備に三日もかかったのは計算外だったが、まあその分の働きはしてくれるはずだ。
『薬』も、餞別代わりにありったけ用意してやった。
もしかしたら壊れるかもしれない。いいや、死ぬかも。
別にどちらでもいいけど、どちらになるのかは興味がなくもない。

そうだ。
気が向いたら見に行ってみよう。
沢山兄さんと交わって、溢れるほどの愛を私の中に注いでもらってから。
その姿で見に行ってみよう。
そうしたら、あの雌猫はどんな顔をするだろうか。
兄さんの匂いを纏った私を見て、一体どんな顔をするのだろうか?
考えたら楽しくなってきた。
ふふ。
よし。
雄猫の白濁に溺れたあの雌猫に見せ付けてやることにしよう。
踏みつけて。匂いをかがせて。
たっぷりと思い知らせてやろう。

私の兄さんへの愛を。

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最終更新:2007年11月01日 22:17
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