762 名前:756[sage] 投稿日:2011/10/06(木) 07:11:17.44 ID:/qhlFKIW
「こちらが調査結果報告書で、こちらが諸経費と報酬の請求書です」
薄暗い事務所の応接スペースで、私は今回の依頼主である女性に、調査結果の報告と報酬の請求を済ませた。
報告を聞きおえた依頼主は、俯き何事か呟いている。
「やっぱり...、やっぱりあの売女がお兄ちゃんを......!!」
強く握りしめられた彼女の手からは血が滴っている。
私はその光景に、既視感を覚える。
今の彼女の姿は、かつての私そのものだから。
「お客様、貴女はお兄様がどこの馬の骨とも知れない女に誑かされて、さぞお嘆きのことと存じ上げます。私としてもこの様な結果は大変不本意でございます」
「......知ったような口をきかないでっ!」
彼女は鋭い目付きで、私を睨みつける。
「いいえ、解ります。私も同じ経験が御座いますから。ですから私に協力をさせていただけませんか?」
「協力...?」
「えぇ、あくまでも"私的"な協力ですので、依頼料などは結構です」
すると彼女は一瞬目を見開くと、おずおずといった様子で訪ねてきた。
「それは大変ありがたいのですが、どうしてそこまでして下さるんですか?」
763 名前:756[sage] 投稿日:2011/10/06(木) 07:26:18.18 ID:/qhlFKIW
「先ほど申し上げた通り、私も貴女と同じということです。こういう人様の物に手を出す意地汚い雌猫が大嫌いなんです。だから、お手伝いさせて下さい」
「よっ、よろしくお願いします」
言いながら頭を下げる彼女をなだめて、私たちは企てを始めた。
翌日、依頼主の兄に手を出した雌猫は、"偶然"破裂した消火栓の破片で頭を強打して亡くなった。
「おーい、メイ!飯が出来たから降りてこい」
「わかったよ!今行くから少し待っててね兄さん!」
愛しい兄が私を呼んでいる。
さて、お仕事はおしまい。
早く兄さんの作ったご飯を食べよう。
最終更新:2011年10月21日 22:45