556 :506 [sage] :2012/01/08(日) 14:17:47.24 ID:qSXgTL1a (2/4)
「にいちゃん、今年の初もお出には行きたい神社があるんだ」
新年1月1日、家族でお節料理を食べてる時に、妹がそんな事を言い出した。
「別に何時もの神社でいいだろ?」
「だめだよ!初もお出だよ、一年の始まりだよ?何時も行ってるからとか、そんな理由で行くのはだめなの!ちゃんと夢に合わせた神様を選ばないとだめなの!」
否定した俺に対して、妹が熱弁する。
コイツがこんなにも初詣に思い入れがあるとは知らなかったが、それならちゃんと初詣と言えるようになって欲しいのだが。
「そこまでして行きたいってのは、どこの神社だ?」
「イザナミ様っていう女性の神様のところ!」
イザナミ、古い日本の神様な事は知ってるが、詳しくは知らない。
女の神様って事は弁財天みたいなもんだろう。なら、カップルで行く訳にはいかないが、兄妹で行くには問題なさそうだ。
そう考えた俺は思わず、「その神社、近くにあるのか?」と言ってしまった。
「大丈夫!何時もの神社より近いくらいだよ!」
笑顔で答える妹、その顔を見たら断れる訳なく、
「分かったよ、今年はそこに行こう」
「ほんと?!やったあ!」
満面の笑顔で喜ぶ妹、これ位の事で喜んでくれるなら、もう少し妹の願いを聞いても、
「初もお出の後はひめはじめだよ、にいちゃん!」
前言撤回、こいつの願いは一切聞くべきではない。
「お前は意味が分かってんのか?」
「えっ?ひめはじめじゃないならふでおろし?」
「どっちにしろ、兄妹で使う言葉じゃねえだろ!」
「ハイハイ、二人ともあまりふざけすぎないの」
そう言って俺と妹の間に入ってきたのは、母さんだ。
母さんは優しい眼差しで俺ら二人を見つめながら、
「あまりふざけすぎると、ゴムするの忘れちゃうわよ」
とほざきやがった。
「母さん!なにバカな事言ってんだ!」
「イヤね、冗談よ、冗談」
朗らかに笑いながら母さんが言う。
全く、言って良い冗談と悪い冗談が、
「母さんだって早く、二人の子供の顔を見たいもの」
冗談じゃねえ!
妹よ、赤面しながら「がんばろうね」と俺の顔を見るな。
何処の世界に子供に近親相姦を勧める親がいるのだ。
「あら、恋愛に差別はダメよ」
今、知った。妹が少し変なのは、この母親が原因だ。
557 :506 [sage] :2012/01/08(日) 14:18:30.17 ID:qSXgTL1a (3/4)
今、俺はイザナミ神社とやらにいる。
朝の出来事で疲れ果てていた俺は、初詣なんぞどうでも良くなっていたのだが、約束した以上、守らなければいけない。
「にいちゃん、はやくはやく!」
俺の手を引っ張るようにして急かす妹、元気なことだ。
ちなみにここには俺と妹の二人で来ている、
母さんは父さんを連れてヘラだかなんだかの神殿に行った。
妹もだが、母さんはどこでそんなもん見つけたんだ?
このイザナミ神社には調べるヒマなく連れてこられたのだが、一体どんな神様なのだろう。
参拝客は多いのだが、男の方が年上のカップルばかりなのは何故だ?
取り合えず、売ってる御守りを見る。
猫避け、意味が分からん。
兄妹円満、普通に家内円満にしてくれ。
恋愛成就(妹限定 姉よ、てめえは駄目だ)、突っ込む言葉すらない。
妹よ、ここの恋愛成就の御守りは買うな。
こんな所、とっとと参拝して帰るに限る。
賽銭箱に小銭を投げ込むと、妹と二人、並んで手を合わす。
さて、何を願うか・・
「にいちゃんと恋人に、にいちゃんと婚約、にいちゃんと結婚、にいちゃんと子作り、にいちゃんと共白髪、にいちゃんと同じ墓、にいちゃんと生まれ変わり」
贅沢は言わない。こいつの願いを聞かないでくれれば、それでいい。
俺は生まれて始めて本気で神に祈った。
そして祈れば祈るほど、俺の望みは叶わない、そんな気分にさせられた。
来てはいけない神社は存在するようだ。
最終更新:2012年01月21日 17:05