十六の兄嫁

678 名前:十六の兄嫁[sage] 投稿日:2007/06/11(月) 12:55:18 ID:8nOY01hY

妹野 舞華(まいの まいか)。
それがオレの妹の名前だ。
家事全般が得意で、その癖抜けている所があって。
運動が苦手で、でも何事にも全力で向かう奴で。
いつもお兄ちゃんお兄ちゃんと言いながらオレを引きずり回していた。
無邪気で、快活で、少しブラコンが過ぎるのが玉に瑕ながらも自慢の可愛い妹。

その妹を、夢の中で汚すようになったのは一年程も前のことだ。

始めの頃は気付かなかった。
ただ毎日の眠りが異常に深くなり、その間に何か夢を見たことだけを薄く憶えている。
そして、起きた時にはやけに持続する異様な眠気。
変化が起きたのは、奇妙な夜と朝の体調に気付いて一週間もした頃だった。
奇妙な表現だが、夢の中で少しだけ冴えてきた意識。
一夜毎に夢の中でオレを縛り付けるモノが弱くなり、本当に少しずつ少しずつ鮮明さが増していく。

完全に気付いたのは、一月も経った頃。
夢の中で息遣いが聞こえ、何者かがオレの腹の上で身を踊らせている。
正確には、下腹。
痛い程に張り詰め屹立したモノが包まれ、擦られる感覚と快楽。
すぐに訪れる極楽を終えた瞬間に夢の中で意識が遠くなり、朝は眠気に反してどこかすっきりした感じで目覚める。
もう少し経つと、それは更に鮮明になった。
息遣いに加えて声がするようになり、快感は身を焼かんばかりに強く、果てた時の自身の息遣いさえもはっきりと。
その頃には聞こえてくる声から、
オレは夢の中に満ちる闇のすぐ向こうに妹の顔を想像するようになり、そしてとうとう耐え切れなくなった。

淫夢の中で喘ぐ妹の顔。
現実で接する妹の姿。
元々、ただでさえ年下であるにも関わらずブラコンが過ぎてオレにべったりとくっ付く反面、
異性と認識していないせいでひどく無防備な妹に、紛れもない女を感じ始めていたというのに。

二ヶ月。
そこまでが限界だった。
妹を異性として意識し、果ては襲ってしまいかねないという馬鹿げた可能性を、
それでも切実に考えたオレは引越したのだ。
大学生にもなって家族と同居はどうかと思っていたオレと、
妹のブラコンを心配してオレと妹を引き離したがっていた両親の思惑が上手く合致した結果である。
決まってからは早かった。
全ての準備に十日程度。それだけで済んだ。

引っ越してからは淫夢もぱたりとなくなり、平穏な日々が戻る。
数ヶ月後に、まだ15歳の妹が妊娠していると親に告げられた時は心臓が停まるかと思ったが。
相手は不明。妹は口を割らない。しかも産む覚悟を決めている。
両親には想像の埒外だろうが、オレは何故か目の前が真っ暗になるような感覚を覚えた。
慌てて連絡を取った妹の態度が、
誰か心に決めた人間がいるように男女の線引きをしたものでなければ、
オレは妹の恋の結果だと思わずに淫夢の恐怖で病んでいたかもしれない。
兎にも角にも、自分以外の命を宿したせいか落ち着きを持った妹。
結構前に出産祝いの言葉を電話越しながらも贈り、
これでようやく安心して生活が送れると、オレは息を吐いたものだ。

679 名前:十六の兄嫁[sage] 投稿日:2007/06/11(月) 12:56:58 ID:8nOY01hY
なのに。

今のこの状況は、一体何なのだろうか。

「お互いの顔を見ながらお話するのは一年振りだね、お兄ちゃん。
 舞華は寂しかったよ。待ち遠しかったよ?」

それが誰なのか。判るまで時間がかかった。
場所はオレの上。
チャイムの音にドアを開けたオレを押し倒して、胸板に顔を摺り寄せて。
その顔が近付き、その顔だけが視界を埋めるようになるまで。
何故なら。

「・・・まい、か?」

一年振りに見る妹の装いは場違いに白く、白く。
薄さに反対側が見えるヴェールも、手を覆う布も、輝かしいドレスの末端までも完全な純白で。

「うん、舞華だよ。お兄ちゃんのたった一人の妹だよ?
 お兄ちゃんが好きな、お兄ちゃんを大好きな、
 お兄ちゃんだけを心の底から愛してる────────舞華だよ?」

ウェディングドレス。
婚礼の、花嫁の、愛を誓った男の隣でだけ着ることを許される衣装だった。

「お前、その格好は」

「これのことかな? 言わなくても分かるよね? 花嫁衣裳。
 今日は記念日だから、神聖な日だから。ちょっとだけ無理をして用意したの」

真っ白なスカートを摘んで持ち上げてみせる。

「似合うかな。ちゃんと似合ってるかな? お兄ちゃん。えへへ」

妹は笑った。
幸せそうに。
それこそ、生涯に一度だけ愛した男に見せるかという顔で。

「記念日・・・って。お前子供は? いやどうしてここに?」

オレには、理解が追いつかない。

「子供なら、赤ちゃんならいるよ? 愛し合う二人の、赤ちゃん。
 えへへ。そっかぁ、気になるんだ。じゃあお兄ちゃんに見せてあげる。当然だもんね」

完全にオレを置いてけぼりにして、ぱっと身を起こす妹。
とても出産して長く経ってない人間とは思えない素早さでドアの外に姿を消す。
戻って来ると、赤ん坊を抱き上げていた。

「愛華(あいか)だよ、お兄ちゃん」

小さいその体を、まるで宝物のような慎重さでオレに抱かせる妹。
半ば放心状態のままで受け取ると、妹の娘は笑ったような気がした。
頼りないほど小さな手を動かし、まるでオレに向けて伸ばすようにしている。
生まれたての命は布越しなのに温かで、柔らかで。
オレはいつの間にか顔を綻ばせそうになり。

680 名前:十六の兄嫁[sage] 投稿日:2007/06/11(月) 12:58:17 ID:8nOY01hY

「お兄ちゃん、どう? 自分の娘の抱き心地は」

一瞬で氷点下まで突き落とされた。

「は・・・? 何を」

「気付いてなかった筈はないよね、お兄ちゃん?」

罅割れそうなこっちとは逆に。
妹の声はあくまでも温かく、幸せに満ちている。

「目・・・覚ましてたでしょ? 舞華がお兄ちゃんを犯してた時。
 お兄ちゃんの上で腰を振って、お兄ちゃんの上で喘いで、
 処女を捧げたお兄ちゃんのモノを咥え込んで悦んでいた時。
 目を覚ましても、果てたらまたすぐに眠ってたけど驚いたよ。
 結構強力な睡眠薬を使ったのに、人間の体って一月もあれば慣れて来ちゃうんだね。
 意識は朦朧としたままだとしても途中で目を覚ますなんて。
 あ。
 ちなみに、愛花のDNA鑑定は済んでるよ?
 お兄ちゃんの髪の毛や体液には事欠かなかったし、お父さん達を納得させるのにも必要だったから」

だと言うのに、耳朶を打つ言葉は粘りつくように離れず、冷水のように染み渡る。

「体液・・・え? だってアレは、夢で。お前は好きな男と子供を」

体が震えだした。肌が泡立つ。

「えへへ。あれは現実だよ、お兄ちゃん。それと、好きな人との子供なのも本当だね。
 だから愛華は舞華とお兄ちゃんの子供なんだよ」

夢の中の光景を思い出す。
蕩けそうな程に淫靡な声と、焼けそうな程に熱い快感と。
想像のモノであったはずの、怖い程に幸せそうな妹の表情。

「けど、お前。それは・・・・・・近親」

あり得ない。
あれが夢じゃないなんて、そんな悪夢はあり得ない。
だって、オレと妹は、舞華は実の兄妹なのに。
異性として愛するなんて。それも、子供まで。

「ごめんなさい、お兄ちゃん。でも、我慢できなかったの。
 今日が何の日かは・・・・・・憶えてるよね?」

痺れるように思考が停止した頭の中で、反射的に答えが出た。

「舞華の、誕生日・・・?」

「うん」

オレは、出産とそこに至るまでの大変な経験をした妹に、少しでも何かをしてやりたくて。
つい先日、プレゼントは何がいいのか、何でもいいぞと電話をした。
答えは、後で言うから待っていて、で。

681 名前:十六の兄嫁[sage] 投稿日:2007/06/11(月) 12:59:08 ID:8nOY01hY

「誕生日。舞華の十六歳の誕生日。結婚が出来る年齢になる────────誕生日。
 だから舞華は一年前まで我慢したし、それ以上は我慢できなかったの。
 十月十日と、確実にするための誤差で一年。長かったなぁ。
 ねえ、お兄ちゃん。
 舞華はお兄ちゃんが好き。大好き。愛してる。
 誰よりも何よりも何時までも何処までも、お兄ちゃんを愛してるの。
 お兄ちゃんを抱きたい。抱かれたい。お兄ちゃんを離したくない、離れたくない。
 邪魔者は殺して、お兄ちゃんと、半分はお兄ちゃんで出来た子供達とずっと暮らしたい。
 だから舞華はお兄ちゃんとずっと一緒に居られる方法を考えたし────実行したの。
 ・・・・・・ところで、お兄ちゃん」

誕生日プレゼント、何でもいいって言ったの憶えてる?
そう聞かれる。
多分、首は縦に動いていた。

「あはっ、良かった。じゃあね。舞華、お兄ちゃんに一つだけお願いがあるの。
 子供は、順番が逆になっちゃったけど。
 お父さん達から保け・・・お金も貰えるし、帰る家ももうないし。あとはたった一つだけ。
 誕生日に、記念日に、今日と言う神聖な日に、
 このウェディングドレスの誓いと一緒に必要な、欲しいものがあるの。
 お役所に出したりはしないし、宝物として仕舞っておくつもりだけど」

そう言って。
妹は一枚の紙を取り出した。
それがどういう物なのかはよく知っているし、よく目に耳にしている。
既に社会で働いている友人から。或いは漫画や小説やドラマかで。
そして、かつて夢見るような口調で語っていた妹自身から。
それは。

「だからね、お兄ちゃん。舞華への誕生日プレゼントに」

既に片方の欄が埋められた、婚姻届。

「これに────────サイン、ちょうだい?」

絶叫。
それが自分のものなのか、手から滑り落ちた赤ん坊のものなのかも分からないまま。

「そうすればようやく舞華は妹で、お兄ちゃんはお兄ちゃんでなくなるから。
 そして、二人で幸せになろうね? あ・な・た」

オレは、せめて夢では妹に会わないことを祈りながら意識を失った。

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最終更新:2007年11月03日 04:41
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