二人だけの世界に

211 名前:二人だけの世界に 1[sage] 投稿日:2012/06/26(火) 01:53:19.32 ID:YAa1DaU3
「ふう……やっと、仕上がった……」
ちょうど時計の針の日付が変わった頃、自室の机で作業を終えて、ペンタブを置いてふっと息をつき、軽く背伸びをする。
高校二年の中里愛奈は『aizato』というペンネームで月に8ページほど、女子高生のゆるい日常を描いた漫画を連載している、先日、デビューしたばかりの4コマ漫画家。
幼い頃から絵を描くのが好きで、漫画家になるのが夢であった愛奈は去年、新人賞に応募して佳作を受賞し、現役の女子高生ながらもプロデビューしたのであった。
ゆるい日常系の漫画のイメージに違わない可愛らしいキャラを描く画力と『現役の女子高生漫画家』という宣伝文句でかなり注目を集めており、編集からも将来有望な新人と一目置かれている。
「でも、まさかこんなに早く夢が実現しちゃうなんてね……」
机に置かれていた自身の漫画が掲載されている雑誌を手に取って、自作に目を通し感慨に耽る。
幼い頃からの夢とは言え、流石に高校生でデビューできるなど夢にも思わなかったので、愛奈も未だにこれが夢なのでは無いのかと思うときもある様だ。
しかし、これは紛れも無い現実なのだ。
「うーん……後はこの原稿を編集さんに送って……って、もうこんな時間か……明日も学校があるし、早く寝て……と、その前にちょっとジュースでも飲んでくるか」
漫画誌を置いて、台所に行き、軽く喉を潤してから明日に備えて寝ることにする。
だが、誰もが羨む様な順風満帆に見える彼女には一つ、大きな悩みがあった。
「あ……」
部屋を出た所で、愛奈は弟の拓巳とバッタリ会い、一瞬見つめあった後、拓巳はバツの悪そうな顔をして目を逸らし、逃げるように愛奈の向かい側にある自室に引っ込んでしまった。
「はあ……また遅くまでゲームかしら……」
溜息を付きながら、弟の部屋のドアを少し見つめ、階段を下りて台所に向かう。
中里拓巳は愛奈の一つ下の弟で同じ高校に通っている……のだが……。
「たっくん……いつまで、ああしてる気なのかな……」
愛奈は冷蔵庫から取り出したジュースを飲みながら、憂鬱な気分で拓巳の事を考える。
彼女の弟、拓巳は現在不登校中で、ほとんど家に引き篭もっている状態なのだ。
拓巳は第一志望の高校に落ち、二次募集で愛奈の通っている高校に入学してきた。
彼も最初の内は真面目に学校に通っていたのだが、愛奈の通っている学校は元の第一志望の高校より学力的に大きく見劣りしているので、
授業のレベルが彼にとってはレベルが低すぎたという事と全般的に無気力な雰囲気が漂っている為、拓巳も段々学校に行く気をなくしてしまい、更に気弱そうな外見が祟ったのか、
イジメにあった事もあり、6月頃から度々学校を休むようになり、7月に入ってから完全に不登校になってしまった。

既に夏休みも終わり、10月に入ろうとしているが、一向に学校に行く気配が無い。
愛奈も何度か説得しているが、既にやる気をなくしてしまっており、何を言っても聞く耳ももたず、ひたすら自室に篭ってネットやゲーム、漫画に耽る毎日を送り、完全に引き篭もってしまっていた。
「どうしよう……?このままだと、出席日数まずいよね?何とか明日からでも学校に行かせる様にしないと……」
また可愛い弟と一緒の学校に行けると喜んだのも束の間、すぐに不登校になってしまい、完全に無気力になってしまった拓巳の身を愛奈は誰よりも案じ、最近は夜も眠れないくらいに愛奈も思い詰めていた。
元々、この家は両親が仕事で不在がちなため、姉である愛奈が家の事も一手に引き受けているので、拓巳の面倒も全て彼女が見ている様な状態であった。
「……何とかしないと……」
最早、口癖になってしまった言葉をぽつりと呟き、コップを置いて自分の部屋に戻っていった。

「たっくん、ちょっと良い?」
「……」
翌日――学校から帰ってきた愛奈がノックをして部屋に入ると、拓巳は愛奈に返事どころか、見向きすらせず、ただ生気を失った目でパソコンに向かいながら、ネットゲームを漫然とプレイしていた。
弟のその様子を見て、愛奈も心がズキリと痛む。
元々、内向的な拓巳であったが、最近は自分とも殆ど会話すらしないので、彼女の心は押し潰されそうになるくらい傷ついていた。
何か、怒らせるような事をしただろうか?
どれだけ考えても思い当たる節が無く、自分との会話を拒否する拓巳に思い悩み、胃が痛くなるような思いをしていた。


212 名前:二人だけの世界に 2[sage] 投稿日:2012/06/26(火) 01:54:26.38 ID:YAa1DaU3
あ、あのね。今日、たっくんの担任の先生からプリントを色々、預かっているから……これ。ちゃんと見といてね」
「……」
(はあ……)
パソコンに向かっている拓巳に歩み寄って、鞄からプリントを取り出して差し出すが、彼は相変わらず気づいていない振りをしているのか、無言でモニターに向かってネットゲームを行っているだけであった。
「ねえ、たっくん。そろそろ学校に行かないと駄目だよ。今なら出席日数もまだギリギリ何とかなると思うからさ……」
恐る恐る、愛奈は拓巳に声を掛けるが、拓巳は一向に見向きもしない。
「ほら、たっくんを虐めていた子達ももう学校に来ていないって。だから、もう大丈夫だよ。もうすぐ中間試験も始まるし、たっくんなら学年トップだって余裕でしょ」
「…………」
愛奈も出来るだけ、優しく拓巳に説得を試みるが、拓巳は相変わらず無言のままであった。
拓巳を虐めていた子達が学校に来ていないというのは嘘ではなく、既に学校を自主的に中退して実際にもう学校に来ることは無い。
愛奈と拓巳の通っている学校は地元でも偏差値が低い高校なせいか、不良っぽい生徒も多いが、そういう生徒はすぐに中退していなくなってしまう。
なので、拓巳の様に急に学校に来なくなってしまう生徒もさほど珍しくはないので、他に拓巳の事を気に留める者もいなかった。
悲しい現状だが、拓巳はもうイジメ以前に学校の雰囲気に馴染む事が出来ず、廃人の様な生活を続けていく内に登校する気力を既に失ってしまっていた。
「行くのが怖いなら、お姉ちゃんが一緒に学校に付いていくようにしてあげるから……ね、お願い……」
愛奈は拓巳の肩に手を置いて揺すり、おねだりする様な口調で
しかし、拓巳は何も言わず、マウスをクリックしているだけ。
「…………これ、置いていくからね」
流石に呆れたのか、愛奈は嘆息しながらプリントを机に置き、この部屋を出る事にした。

「あんな、動物園みたいな所、行きたくない……」
「えっ?」
愛奈がドアノブに手を掛けて、部屋を出ようとした所で、拓巳はモニターを見ながら消え入りそうな声でそう呟き、愛奈も振り向いて拓巳の背中を見つめる。
「……じゃあね」
何秒か見つめた後、何処か嬉しそうな声を出してドアを開き、部屋を出た。
「たっくん……」
何日、いや何週間ぶりだろうか?実に久しぶりに拓巳が自分に語りかけたので、愛奈も心から安堵し、ドアにもたれ掛かりながら、ホッと胸を撫で下ろす。
本当に嫌われてしまったのではないかと恐れていたが、自分の事が嫌いで学校に来たくない訳ではない様だという事――そして、何より拓巳の声が聞けた事が嬉しかった。
だが、拓巳が立ち直る為には自分が何とかしないと……。
「プロットでも考えるか……」
ここで考えても埒があかないので、愛奈は自室に戻り、気晴らしがてらに次の号で掲載する漫画のプロットを練り上げる事にした。

「……」
姉が出て、ドアが閉まった所で拓巳は無言で振り向き、愛奈が去った後のドアをじっと見つめる。
そして、愛奈への罪悪感で拓巳も胸が締め付けられ、吐き気がしそうになっていった。
愛奈は自分が引き篭もるようになってからも、決して自分をなじる様な事は言わず、今みたいに優しく学校に行くように説得してくれる。
だが、その姉の態度を見る度に、姉への罪悪感と劣等感で胸が痛み、却って彼女への心を閉ざす要因へとなってしまった。
自分が甘えているのはわかっている。このままではいけない事も十分、わかっている。
だけど、拓巳はどうしても家から出る気になれなかった。
(……もし、見捨てられたらどうしよう……)
今はまだこんな自分にも親身にお世話してくれるが、いつか愛想を尽かれて、出て行ってしまうかもしれない。
ましてや愛奈は既にプロの漫画家なのだ。こんな何の取り柄もない引き篭もりの弟をいつまでも面倒を見てくれるとは考えられない。
実は拓巳は彼女が連載している漫画を一度も見たことはないのだが、ネットでどの程度の評判かは調べていて、現役の女子高生という事でかなり話題になっていた上に、漫画自体の評判も良かった。
このまま売れっ子になってしまえば当然、卒業後は自立してこの家も出て行ってしまい、自分の事も見捨てられてしまうのは確実。
もし、そうなったら自分を庇ってくれる人も親身にお世話をしてくれる人もいなくなる。
両親は引き篭もりを続ける様なら、恐らく家から出て行けと言って、追い出されてしまうだろう。
そんな恐怖に怯えながらも、一歩踏み出す事が出来ず、再びモニターに目を向けて、気を紛らわすようにネットゲームに興じ始めたのであった。



213 名前:二人だけの世界に 3[sage] 投稿日:2012/06/26(火) 01:55:29.60 ID:YAa1DaU3
「えっと、あの資料集は……」
翌日の放課後、漫画の参考資料を探すため、愛奈は地元の図書館に出向いていった。
学校の図書室では蔵書数が少ないため、資料探しには良く市立図書館を利用するようになっていた。
「あった、あった。後は……」
お目当ての資料を見つけた後、他に参考になりそうな資料は無いかと、漫然と本棚を見つめながら歩いていく。
そして、一冊のある本が目に入った。
「……ん?何、なに……『私はこれでひきこもりを脱出しました』……」
ふと、目についた本を手に取り、その場でパラパラと捲って目を通していく。
愛奈が手に取った本は長期間、ニート、ひきこもりをしていた人達が、どの様にしてそれを脱出していったかの体験談を綴った物であった。
拓巳を立ち直らせるきっかけがあるかもしれない――
愛奈はどう思い立ち、藁にも縋る様な思いで、その本に目を通していった。

(うーん……どれもあまり参考になりそうにないな……)
だが、読み進めていったのは良い物の、まだ高校生の拓巳が参考になりそうな体験談は無くかった。そして、しばらく読み進めていくととあるサブタイトルが目に付いた。
『不登校からの脱出――友達の支え』
――!?これだっ!
本のタイトルを見た瞬間、食い入るようにその本を手に取り、読み進めていく。
この体験談は、本の主人公はやはり拓巳と同じ様に受験に失敗して、底辺の高校に入ってしまい、やさぐれて不登校になってしまったと書いてあった。
プライバシー保護の為に多少事実をぼかしていると注意書きが書いてあるとはいえ、実体験を基にしているのなら必ず何か糸口があるはずだ。
そんな彼が立ち直ったきっかけを作ったのが、幼馴染の女友達の存在。
同じ学校に通っていた彼女が、親身に彼の相談に乗り、まずは彼女が朝、彼に制服だけを着せて、そして一緒に校門まで強引に連れて行くなど徐々に慣れさせ、最後はめでたく不登校を脱出して、高校も卒業し、今はその幼馴染の女子と結婚して家庭まで持っていると言う。
「ふーん、何か漫画みたいな話……」
漫画家の自分がこんな感想を漏らすのも変な感じがしたが、この話自体は実際に漫画みたいに面白いとは思ったので、カウンターに行き、資料集と一緒にこの本も借りる事にした。

だが……。
「はあ……でも、この話は参考になりそうにないな……」
溜息を付きながら図書館を出て、先ほど借りた小説の表紙を見つめる。
不登校の子が治ったのは、幼馴染の彼女の支えがあっての事。
拓巳には支えてくる幼馴染や彼女など居ない。顔は童顔で姉の目から見ても悪くないとは思っているのだが、内向的な性格が祟って、女子の友達も皆無と言って良かった。
男の友達は勿論いたが、高校に入ってからは完全に疎遠になってしまい、今、行っている学校には仲の良い友達も居ない。
両親も仕事で不在がちなので、拓巳を献身的に支えてくれる人など誰も……
「いや……私がいるじゃない……」
そうだ。いつもそばにいる姉の自分がやらなくて、誰がやるというのだ。
と、愛奈は思ったが、今までだって、少なくとも自分なりには拓巳を立ち直らせようと頑張っていた。
だけど、拓巳の心を揺り動かす事は出来ず、却って自分が説得する度に、益々内に篭ってしまっている様な気もしていた。
今までのやり方では駄目だ……他に何か良い方法は無いかと悩みながら、重い足取りで家へと向かう。
(そうだ。たっくんもこの本に出てきた子みたいに、彼女でも出来れば……)
ふと、愛奈は思い立ったが、彼女を作らせると言っても、拓巳には親しい女子など居ないし、愛奈もこんな理由で友達を紹介するのも気が引けた。
「……それに、たっくんが彼女だなんて……」
拓巳が他の女と仲良くしている所を想像すると、何故か胸がずきりと痛みだす。
生まれてから、ずっと一緒にいた大切な弟。
そんな大事な拓巳を他の女に任すなど、出来るだろうか?
(嫌……だよ……)
絶対に出来ない。たっくんは私の……私だけの……他の誰よりもずっと、私が大事に思っている。


214 名前:二人だけの世界に 4[sage] 投稿日:2012/06/26(火) 01:57:25.39 ID:YAa1DaU3
でも、彼女でも作って拓巳に新たな生きがいを与えないと、すぐに立ち直るきっかけは作れないかもしれない。
出席日数は足りてるだろうか?確か、3分の1以上欠席したらアウトだと聞いた事があるので、今はまだ大丈夫だが、あまり猶予も無い。
でも、他に方法が思いつかない。たっくんに生涯を捧げる覚悟で親身に支えて立ち直らせる事の人物か。
今、拓巳に必要なのは一生を捧げる覚悟のある女性の存在なんだ。そんな人が何処に……。

「…………ふ、ふふ……そうだよ……ここに……」
そうだ、ここにいるじゃないか。拓巳をずっとそばで支えて、彼を導いてくる女性が。
彼が生まれてから、ずっとそばについて見ていた人が。
ぐるぐると目の回るような葛藤の中で、愛奈が導き出した答え――
通常なら、まず出しえない方法であったが、拓巳の事を考えていく間に様々な感情が彼女の胸の内に錯綜していき、そのやり方しかないと結論付けてしまった。
それは愛奈の心が壊れた瞬間でもあった――

「……たっくん、お風呂沸いたからそろそろ入ってー」
「……」
夕飯を食べ終わった後、自室のベッドで寝そべりながらテレビを見ている最中に愛奈に風呂に入る様に告げられたので、拓巳はむくっと起き上がり、部屋を出て浴室へと向かう。
いつも、夕飯の食器の片づけを終えた愛奈が先に風呂に入り、それからしばらく経った後に拓巳が入るので、入るのは少し夜遅くになる。
今日もいつもと同じ時間に、いつもと同じ様に愛奈に入浴を促されたので、言われるがまま、拓巳は風呂に入っていった。

(よし、入ったみたいね……)
愛奈はこっそりと浴室へと向かい、拓巳が風呂に入った事を確認する。
どうしよう……?いや、何を迷う必要があるのか。拓巳を立ち直らせる事が出来るのは自分しかいないじゃないか。
(そうだ……これはたっくんの為……たっくんの未来を守る為なんだ……)
彼女は改めて意を決し、浴室のドアの前に立って衣服を脱ぎ始めた。

ガラっ
「っ?なっ!」
拓巳が洗髪して頭を流し終わった直後、突然ドアが開いたので、振り向いてみると、そこには一糸纏わぬ姿で、少し頬を赤らめながら肌を晒して立っている姉の姿があった。
「……え?ど、どうしたの……?」
「えへ……ひ、久しぶりにさ……たっくんと一緒にお風呂に入りたいなって……思って」
「は、はああっ?ちょっと、何で急にそんな……」
あまりにも突然の事で困惑して固まっている拓巳を余所に、愛奈はドアを閉めて、拓巳の後ろに腰を落とし、風呂桶を手に持って自らの体に掛け湯をする。
(うっ……)
その様子があまりにも色っぽかったので、思わず見入ってしまう。
愛奈の肌は珠の様に白くて、見るからにスベスベとした美しい肌をしており、胸の膨らみも恐らく同じ年頃の女子高生よりもやや大きく、腰のくびれも
今まで愛奈のスタイルなど気にもしたこと無かったが、その姉の美しいばかりの裸体に拓巳は視線を逸らす事が出来なかった。
「……くす……ねえ、たっくん。お背中流してあげようか?」
「ふえっ!い、良いよ……」
「ふふ……遠慮なんかしないで……ほら」
「あっ、ちょっと……」
愛奈は半ば強引に拓巳の背中に
(うう……恥ずかしい……)
何とか追い出したいとは思ったものの、突然の事で頭がパニックになって何も言葉を出すことが出来ず、俯きながら、愛奈のされるがままにゴシゴシと丁寧に背中を擦られていく。
こうして姉弟で一緒にお風呂に入るのは何年ぶりだろうか?小さい頃は良く一緒に入っていた。だけど、何故急に……?
「……じゃあ、流すね?」
背中全体を丹念にスポンジで擦った後、愛奈は拓巳の背中を湯桶で流す。
「……もう良いでしょ、恥ずかしいから、いい加減に出てよ……」
「くす……えい♪」
「ちょっ!何だよ……!」
愛奈は拓巳の言う事を無視し、流し終わったばかりの背中に頬を預ける。
「たっくん、大きくなったね……この背中……前に見た時より、ずっと逞しくなってるよ……」
「い、一体なんなの?いい加減に離れて……」
ぎゅっ
流石に我慢できなくなった拓巳は愛奈を強引に引き剥がそうとするが、愛奈はそれを阻止するかの如く、拓巳の肩をぎゅっと掴み、更に乳房を背中に押し当てる。
(あ、愛奈お姉ちゃんの……お、お……)
巨乳という程ではないが、その背中からでも十分に感じとる事が出来る肌理細やかな肌触りとふくよかな感触に、拓巳に鼓動も自然に早まっていく。
愛奈の肌は手入れが行き届いているのか、本当にスベスベとしていて、触れているだけで頭がぽおっとなるぐらいに気持ち良く、その感触の虜になりかけていた。



215 名前:二人だけの世界に 5[sage] 投稿日:2012/06/26(火) 01:58:58.75 ID:YAa1DaU3
たっくん……今まで、本当にごめんね……」
「は?」
「私、今までたっくんとちゃんと向き合っていなかった……たっくんが悩んでいる時も気を遣ったつもりっだんだけど、何処か一歩引いた態度で接していた……だから、こうなったのも私のせいなんだって、気づいた……」
「なっ!?そんな事……!」
(違う!何で、愛奈お姉ちゃんがそんな……)
こうなったのは全部、僕のせいだ。僕が受験に失敗して、それで勝手にやさぐれて、学校に馴染もうともせずに、ふてくされて勝手に引きこもって……。

ただ、ただこんな自分が情けなくて自己嫌悪に悩まされ、それに苦しみ、しかも姉が高校生でありながら、漫画家デビューした事で、姉に対する劣等感や嫉妬も拭い難い程、
出てきてしまい、拓巳は愛奈にも心を閉ざすようになり、それが益々自己嫌悪を生み……といった具合で益々閉じこもってしまった。
「だから、どうしたんだよ……どうして、愛奈お姉ちゃんが……」
「私ね……もう、逃げないよ。たっくんともちゃんと真正面から向き合う事にした。だから……」
愛奈は拓巳から一旦、離れてすっと立ち上がり、
「これからはずっとたっくんのそばにいるよ……たっくんのそばにいて、ちゃんとお世話して、悩んでいることやして欲しい事があったら何でもしてあげる」
「あ、愛奈お姉ちゃん……?」
拓巳はふと、愛奈の方を振り向くと、愛奈は頬を赤らめて若干俯きながらも、自らの全裸を隠そうともせず、拓巳に見せ付ける。
元々、愛奈はおっとりとした目つきをしていたが、湯気に当てられているせいもあるのか、そのトロンとした目は立ち眩みがする程の色気を拓巳に感じさせていた。
「それが出来るのは……たっくんのそばにいてあげられるのは私だけだから……私しかいないから……」
拓巳が振り向いた所で、愛奈は拓巳の右手をすっと手に取り、そのまま左の乳房に押し当てる。

「ひっ……!」
初めて触る姉の胸。湯気で火照っているからかマシュマロの様に柔らかかった。
「ふふ……私の胸……良いよ……ううん、私の体、たっくんの好きにして良い……これから、私の全てはたっくんの……拓巳の物だから……」
愛奈は乳房に当てられている拓巳の手をぎゅっと握り、強引に掴ませる。
拓巳も自然に愛奈に添えられている乳房を揉み始め、姉の均整の取れた白く美しい裸体に目を奪われていた。
自分の姉の裸がこんなにも美しいとは想像すらしていなかったので、呆然と見惚けていたのだ。
「ふんっ……あっ……たっくん、もっと強くしても良いよ……ほら、もう一つの手も……」
「ね、ねえ、冗談はいい加減にしてよ!僕はもう出るから……」
愛奈がもう片方の手を握ろうとした所で拓巳も正気に戻り、慌てて手を離して立ち上がる。
そして、愛奈の元を横切ろうとした瞬間――
「うわっ!うっ……!」
(えっ?な、何……?)
拓巳は愛奈に強引に壁に押し当てられ、気がついた時には愛奈の顔が拓巳の眼前にくっついており、そして唇には柔らかい物が接触していた。
「んっ……うっ、んん……」
(こ、これって……)
「ん、ちゅっ、んく……ちゅっ、ぷちゅっ、ん、ちゅっ……ちゅっ、んちゅ……」
愛奈は拓巳の肩に手を添えながら顎をくいっと上げて、ぎゅうぎゅうと拓巳の口を貪っていく。
拓巳もだが、愛奈に取っても初めてのキス――
当然、愛奈も慣れている訳ではないので、ぎこちない舌使いであったが、それでも拓巳の体内に自分の愛を流し込むかの様に必死で舌を駆使し、唾液を絡めながら拓巳の口に吸いついていった。


216 名前:二人だけの世界に 6[sage] 投稿日:2012/06/26(火) 01:59:50.85 ID:YAa1DaU3
ん、んちゅっ、んっ……ん、くう……ちゅっ、ちゅぷっ……ん、んく……」
「ん、んく…………」
あれから、数十秒は経っただろうか?ようやく、愛奈は拓巳から唇を離し、うっとりとした細目で彼を見つめる。
拓巳は呆然とした表情をして、自分を惚けた表情で見つめている愛奈を見ながら、固まっていた。
「……冗談じゃないよ……私、たっくんの事、好きだよ……多分、生まれたときからずっと……今日、やっと自分の気持ちに気づいた……」
「な、何だよ……どうしたんだよ、おかしいよ……」
「くす……うん、おかしいかもね。弟に対して、こんな事をするなんて……でも、良いの。私がたっくんのお嫁さんになって……たっくんを元気にしてあげるって、決めたから……私しかいないってわかったから……」
「……」
何処か焦点の合わない目をしながら、信じられない様な言葉を次々と口にしていく愛奈を唖然と見つめる事しか出来ない拓巳。
本当に狂っているのではないか?不登校の自分がそう思うのも少しおかしな気がしたが、今の愛奈が正気ではない事は誰の目にも明らかであった。
何故、こんな事に?自分のせいでおかしくなったのか?と、心で思って絶望的な気分が胸を支配しようとした所で、すかさず愛奈が、
「たっくんのココ……大きくなっているね……」
「ひっ……!」
姉の肌と今の濃厚な接吻で、いきり立っていた拓巳の肉棒を右手で優しくなぞると、拓巳も思わず体をビクつかせて、声を上げる。
「本気だよ……だからね……こんな事だってしてあげるんだから……」
愛奈はゆっくりとしゃがみ込み、拓巳の肉竿を手で握り、擦っていく。
「……ん、んん……どんどん、元気になっていくね」
「あう……ちょっと、もう……」

姉の柔らかい手で握られ、摩られている肉棒には、自分でするのとは比べ物にならないぐらいの心地良く、姉にされているという背徳感も混ざり合ってどんどん膨張し、先走り液が早くも滲み出てきた。
「ん、ん……はむっ……」
自分の手で気持ち良くなっている拓巳の一物が堪らなく愛おしく感じたのか、嬉しそうな目で見つめながら、パクッと口に含む。
「ん……ん、ちゅるっ……ん、ぶちゅっ……ちゅっ……」
(ああ……これがたっくんの……弟のおち○ちん……)
実の弟の肉竿を口で奉仕している事に、愛奈の心はゾクゾクする様な背徳感と興奮に見舞われ、手で押さえながら、本やネットなどで得た知識を元に口内で唾液と舌で竿を絡めながら無我夢中で擦っていく。
「ん、ちゅっ、んふう……じゅっ、じゅるっ、んちゅ……ん、むふう……じゅるっ、んちゅ、じゅる……」
「あ、ああ……」
口内で竿を嬲られ、途方も無い快楽に襲われながら、愛奈が自分の一物に口で奉仕している姿を、何が起きてるのかわからないといった顔で眺める拓巳。
ほんの昨日まで、愛奈が自分にこんな事をする素振りなど全くと言って良い位、見せていなかった。
(ああ、そうだ……これは夢なんだ……)
愛奈お姉ちゃんがこんな事をする筈がない。悪い夢でも見てるんだと、思った瞬間、
「ん、じゅるっ、じゅるっ、ちゅっ、んふう……ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ、んふうっ……へへへ……たっくんのおち○ぽ、美味しいよ……ん、はむ……」
愛奈はそんな拓巳の気持ちを察したのか、肉棒を一旦口から出し、先端にキスの雨を降らせながら、ウラスジをゆっくりと舌で嘗め回していく。
これは夢ではない。いや、夢では味わえないくらいの気持ち良さを与えてあげる。今の愛奈はその一心でフェラチオを行ったいた。
「じゅっ、ちゅぷ……ん、ちゅるっ……ん、じゅっ、じゅる……」
初めてとは思えない舌使いヌルヌルとした口壁に絡みつかれ、拓巳の肉棒は瞬く間に射精に追い込まれていく。
「じゅっ、ちゅるっ……ん、ちゅぷ……ん、じゅるっ、んちゅ……ふふ……好きな時に出して良いからね……ちゅっ、はふ……じゅっ、じゅる……」
「あ、あぐう……」
悪戯っぽい笑みを浮かべながら、竿を軽く握り、先端部分から滲み出ていたカウパーを舌で舐めとった後、再び口に咥え、先程以上の勢いでスロートを開始する。



217 名前:二人だけの世界に 7[sage] 投稿日:2012/06/26(火) 02:00:36.92 ID:YAa1DaU3
既に限界まで膨張していた肉棒は愛奈の口内の舌と口の粘壁との摩擦で、追い討ちを掛けるような猛烈な快感が全身をほとばしり、拓巳は立ちくらみを起こしそうになった。
「ん、じゅっ、じゅる……ん、ちゅっ、ちゅるっ、じゅるっ、ん、ん、じゅるっ……ちゅっ、んちゅっ、ん、んふう……」
(うっ……!もう……)
「ん、じゅっ、ん、ちゅぷ……ん、んふうっ……!」
愛奈が上目遣いで拓巳を見上げ、その可愛らしい視線にドキッとした瞬間、遂に愛奈の口内に精液が解き放たれた。
(ん、くう……これがたっくんの……ん……)
口内に何か妙な味の液体が放出されたのを感じて、すかさず顔を前に出して口の奥まで竿を飲み込み、放たれた拓巳の子種を一心不乱に飲み込んでいく。
そんな姉の様子を見て、益々胸が熱くなったのか、放たれる精の勢いは留まる所を知らず、どんどん愛奈の口内に吸収されていった。

「じゅっ、ん、んちゅう……ん、んんう……ん、んふ……」
「はあ……はあ……」
ようやく、射精が収まった後も愛奈はしばらく拓巳の肉竿をじっと手で掴み、口に含んだまま余韻に浸っており、愛する人の精の味を堪能していた。
「ん、んく……はあ……いっぱい、出してくれたね……嬉しいよ……ちゅ……」
ようやく、愛奈は肉棒を開放して満足気な顔で亀頭にキスし、その柔らかい唇が触れた触れた瞬間、体に電流の様な物が流れ出て体がビクっと震える。
「……ふふ、まだ満足できない?」
「は……?」
「遠慮なんかしなくても良いよ……私の全てはたっくんの物なんだから……」
と、俯きながら呟くと愛奈はすっと立ち上がって、浴室のドアの縁に手をついて、お尻を突き出す。

「な、何……?」
「わかってるんでしょ……?早く、たっくんのおち○ちん、私の膣中に挿れてえ……本当の意味で思いっきり愛し合おう、ね?」
「……」
愛奈は拓巳にお尻を突き上げながら、手で既に濡れそぼった秘書を指で開き、艶かしい視線と声で拓巳に一線を超えるように誘ってくる。
既に弟と関係を持つ事に何の躊躇いもなかった愛奈は、早く早くと餌をおねだりする犬の様な心境でお尻を振りながら、拓巳と性交する事を待ち望んでいた。
そんな変わり果てた愛奈の様子を呆然と、見ている拓巳。
「ねえ、早くう……お姉ちゃんのエッチなおまんこにたっくんのちょうだい……」
「あい……な……お姉ちゃん……」
愛奈が蕩ける様な声でおねだりをしているのを見て、拓巳の中で何かが弾けた。
「ねえ……きゃっ♪」
遂に我慢しきれなくなったのか、切れてしまったのか、拓巳は愛奈の腰を手で思いっきり掴んで、手で竿を掴み、愛奈の秘所へと突き当てた。
「はは……やっと、その気になったんだねたっくん……嬉しい……あふっ……」
もう完全に何かが壊れてしまったのか、無我夢中で先端を膣穴に突き当てて、一気に挿入しようと試みる。
夢か現実かというのもどうでも良い。とにかく目の前にいる盛った雌を犯すことで拓巳の頭は一杯であった。
「うっ、ああん……もっと優しく……あっ、やん……はっ、はぐああああああぁぁぁぁっっっ!」
愛奈がお尻をくいっと上げた瞬間、遂に拓巳の男根が愛奈の膣中に挿入され、処女膜を貫通する。
初めての証である破瓜の血が滴り落ちていき、遂に姉弟は超えてはいけない線を超えてしまった。
「ひぐううっっ!あっ、いたあああっっ……あっ、うぐあ……」
初めてであるにも関わらず乱暴に挿入されたので、予想していた以上の激痛に見舞われ、流石に苦悶の声を上げる。
だが、今の拓巳にはそんな愛奈の心境は知ったことではなかった。
「はぐっ……あっ、やああっ!そんないきなり、あっっ!はあああっっ!」
挿入してすかさず、本能の赴くままに腰を突き動かしていく拓巳。



218 名前:二人だけの世界に 8[sage] 投稿日:2012/06/26(火) 02:01:31.61 ID:YAa1DaU3
まだ痛みが残る膣内で激しくいきり立った肉棒が激しく蹂躙していき、愛奈は快感とも苦痛とも取れない声を浴室内で張り上げていった。
「うがああっっ!はんっ!いや、そんな慌てないで……あっ、はんっ!あっ、はっ、はんっ……もっと優しくう……はっ、いたっ、はああああっっ!」
あからさまに苦しそうな顔をしている愛奈の髪の毛を拓巳は思いっきり掴んで、持ち上げながら子宮を思いっきりついていく。
愛奈のほうから誘ってきたんだ。だから、勝手な事を言うなと言わんばかりに子宮を男根で思いっきり突きまくった。
「ふはっ!あっ、ああーーっ!そうよっ!それで良いんだよっ!私の体はたっくんの……私の全部、あなたの物だからああっ!あっ、はあああっっ!」
まだ痛みはあるものの、拓巳が自分と体を重ね合わせてくれている事が何よりも嬉しく、愛奈は拓巳とセックスしていると言うこと自体に異様な興奮を覚え、ヨガリ狂う。
「はふんっ!あっ、はあああっっ!う、んああっっ!あっ、ああああっっ!」
(これが……これが愛奈お姉ちゃんの……)
次第に愛奈の体も出来上がってきたのか、拓巳の男根を包んでいる膣肉が徐々に締め上げられ、その柔らかい肉に締め付けられる快楽でますます、肉棒の摩擦が激しさを増していく。
「ふああっっ!たっくんの良いっ!良いよ……弟のち○ぽ……お姉ちゃんを犯しているうううっっ……はっ、うはあああっっー!」
更に愛奈はお尻を突き上げ、結合部から淫らな水を噴出しながら、腰を振りまくって実弟に淫らな様子をこれでもかというくらい見せ付ける。

もう、愛奈も拓巳も目先の快楽に完全に囚われ、繋がったまま果てる事しか考えていない。
「はふうう……あっ、ひゃんっ!あっ、うぐああっっ!あっ、はあああっっ!あっ、イク……そろそろ、イっちゃ……あっ、あああっっ!」
「くっ……」
愛奈の膣中の締め付けは益々厳しくなり、愛液とも絡み合って、拓巳の肉棒は二度目の絶頂を迎えようとしていた。
「うふっ……出すんだね……良いよっ!早く、私の……エッチな愛奈お姉ちゃんのおまんこに……いっぱい、いっぱい……はっ、うがあああーーっっ!」
「う……うわああああああああああっっーー!!」
「はぐっ、はっ、あっ、イクウウウウっっ!あっ、んはああああああぁぁぁーーーっっ!!」
拓巳は愛奈のお尻を掴んで絶叫しながらラストスパートを掛け、それからまもなく愛奈も嬌声を張り上げてお尻を突き上げ、ほぼ同時に達する。
「んああっっ!はっ、やあああああぁぁぁぁっっ……」
愛奈の子宮に先端を思いっきり突き当てて、精液をガンガン流し込み、愛奈も息を切らしながら、拓巳の精が胎内に溢れてくる感触を味わう。
膣壁で優しく包まれた肉棒から湧き出た精液は先程以上に愛奈の中に飲み込まれていった。
「はあ……はあ……たっくんの……私の中にいっぱい……はあ……」
「はあ……はあ……」
ようやく収まった後、拓巳も愛奈も繋がったままがっくりと腰を落とし、そのままの状態で息を切らして余韻に浸る。
男女の仲になれた事に愛奈は今まで感じたことの無い至福感で一杯になっていた。

「くす……たっくん……本当に良かったよ……」
「はあ……んっ……っ!!」
愛奈がドアの縁に手を付きながら、後ろで息を切らしている拓巳に優しく声を掛けると拓巳もハッと我に帰った。
「ふふ……どうする、たっくん?もう一回やろうか?たっくんの好きな様にして……」
「あっ……あ……」
「たっくん?」
拓巳は青ざめた顔をしながら体を震わせ、自分と愛奈が繋がっている部分にじっと目を向け固まっている。
「ねえ、どうしたの……顔色が……きゃっ!」
「……っっ!」
バタンっっ!
拓巳はすぐに肉棒を引き抜いて、目の前にいる愛奈を突き飛ばし、走って風呂から逃げ出す。
そして、そのまま部屋に駆け込み、拓巳はベッドに蹲ってしまった。
「あーあ……くす……たっくんたら、恥ずかしがり屋さん」
(でも、そんな所もとっても可愛い)
愛奈は慌てふため拓巳を見て、心底穏やかな顔をして微笑む。
あんな姿も今の愛奈には堪らなく愛おしく感じていたのであった。



219 名前:二人だけの世界に 9[sage] 投稿日:2012/06/26(火) 02:02:44.58 ID:YAa1DaU3
「起きて、たっくん……朝だよ……」
「ん……」
ゆさゆさと体を揺すられ、目を開けると、愛奈が穏やかな笑顔を浮かべながら、拓巳の事を見下ろしていた。
「くす……やっと、起きたね」
「…………っ!」
しばらくボーっとし、目が覚めた後、すぐに飛び起きてベッドから後ずさる。
「あっ、あ……あ……」
「?どうしたの、たっくん?そんなに青い顔をして……」
「え……?あ、いや……」
きょとんとした表情を見せ、首を傾げている愛奈を見て、ハッと落ち着きを取り戻す。

(夢……だったのかな……?)
まじまじと制服姿に着替えている愛奈を見つめる。見た所、愛奈にいつもと変わった様子は無い。
毎朝、このぐらいの時間になると起こして学校に行くよう促し、拓巳がベッドに蹲ったまま無視していると、溜息を付きながらすぐに諦めて学校に行く。
これがここ最近のパターンであった。
「もう……急に慌ててびっくりしたじゃない……」
「ご、ごめん……」
少し呆れた様子の愛奈を見て、思わず謝罪して顔を逸らす。
(何だ夢だったのか……)
その愛奈の顔を見てそう思い、ホッと一息つく。
良かった……あんな事、実際に有り得る訳無いじゃないか。と、必死で言い聞かせ、いつもの様にベッドに蹲ろうとした所、
「さ、そろそろ朝御飯にしようか」
拓巳の肩を手で掴み、朝食に誘おうとしたが、拓巳は無言でそれを払いのけ、また掛け布団に潜り込もうとする。
「くす……台所まで行くのが面倒なんだよね?だから、今日はここまで二人分の朝食を持ってきてから……」
(え?持ってきた……?)
いつもとは違うパターンの言葉を聞いて、一瞬振り返る。
普段は朝食に限らず、夕食も愛奈が食べ終わって、しばらくしてから台所に行き、ラップに掛かっている食事を一人で食べている。

それなのに、今日になって何故……と、不審に思った瞬間――
「……んっ!んんっ……!」
拓巳が自分に顔を向けた所ですかさず愛奈は拓巳の肩に手を添え、拓巳の唇に柔らかい物が接触してきた。
「ん……ん、んふっ!……っ!な、何を!?」
すぐに拓巳は愛奈を引き離すと、愛奈はもじもじと照れくさそうな顔をしながら、
「えへへ……私とたっくんはもう恋人同士なんだから、このくらい普通でしょ?」
「は……?」
その言葉を聞いて、再び全身から脂汗が滲み出て、呼吸が荒くなっていく。
「夕べ、お風呂場で……あんなに愛し合ったんだもん……あは……弟とこんな関係になっちゃうなんて、バレたら私も学校に行けなくなって連載も中止になっちゃうかも。でも、たっくんと一緒なら別に構わないかな……」
愛奈は拓巳の体に擦り寄り、指で胸の辺りをなぞりながら、甘える様な口調で呟いていく。
「昨日の事……もしかして、まさか……」
「うふふ……ちゅ……さ、早く朝御飯食べよ。今まで気が利かなくてごめんね。こうやって、私がこの部屋まで持ってきて食べさせてあげれば良かったんだよね」
頬に軽くキスした後、愛奈はテーブルに並べてあったスープの入れてある皿を取り出し、蓮華ですくって、
「はい、あーん。お姉ちゃんがたっくんに全部食べさせてあげるからね」
無邪気な笑みで拓巳の口に持っていくと、拓巳はガタガタ震えながら、その愛奈の異様な様子を見つめる。
「ねえ、どうしたの……?昨日からずっとおかしいよ……何があったのか教えてくれよ」
震えながら、哀願するように訊ねると、愛奈はニコリと微笑み、
「私、ずっとたっくんのそばにいてお世話するって決めたの。今まで本当にごめんね。不安だったんだよね?私が何処かに行っちゃうんじゃないかと思って。
でも、もう大丈夫だよ。私はたっくんの伴侶になって死ぬまで支えてあげるって、決めたから……」


220 名前:二人だけの世界に 10[sage] 投稿日:2012/06/26(火) 02:04:17.81 ID:YAa1DaU3
「違うっ!そんな事思って……」
いや、思っていた。愛奈に見捨てられたら、自分はどうなるんだろうと?死ぬしか無いんじゃないかと思い詰めていた。
だけど、そんなのは勝手な甘えだと自分でもわかっていた。
ましてや、こんな関係になりたいと望んだ事は……。
「これからはたっくんの好きな事、何でもしてあげるよ。学校に行きたくないって言うなら行かなくて良い。もちろん、一緒に行きたいけど、私はたっくんの嫌がる事はもう無理にはしないからさ……」
「違う!違う!そんな事、思ってない!僕は……そんなこと……」

「……」
愛奈から出る異常な雰囲気を肌で感じ、目に涙を浮かべながら必死で否定する拓巳を見て、愛奈は蓮華を一旦、スープの入っている皿に置き、
「大好きだよたっくん……怖かったんだよね……だから、ずっとお姉ちゃんがそばにいてあげるからね……」
拓巳を優しく抱きしめて、頭を撫で赤ん坊をあやす様な声で拓巳を包みこむ。

「ち……違う……」
その愛奈の異常なまでの優しさは今の拓巳には恐怖の対象でしかなかった。
何で、こんなおかしくなったのか?自分が学校に行かなくなってしまったからか?
愛奈を邪険に扱ってきたからか?考えれば考えるほど、思い当たる節が出てきて、罪の意識で狂いそうになっていく。
「もう、止めてくれっ!」
拓巳は遂に耐え切れなくなり、愛奈を思いっきり突き飛ばして、引き離す。
「…………ふふ……じゃあ、そろそろ行くね。食器は台所に置いておけば良いよ。帰ったら私が片付けるから」
愛奈はすっと立ち上がり、制服のリボンを整えて、鞄を手に持つ。
「あ、今日は放課後、編集さんと打ち合わせがあるからちょっと遅くなるんだ。本当にごめんね。それじゃ、行ってきます」
愛奈はそう告げて軽く拓巳にキスした後、軽く手を振って退室し、拓巳を一人残し学校へと向かった。
バタン
「…………うっ……う、う……」
閉められた部屋の扉をしばらく呆然と見つめた後、拓巳はベッドに崩れ落ち、そのまま涙を流す。
自分のせいで姉がおかしくなってしまった。その罪の意識に押し潰されそうになり、ベッドから動くことが出来なかった。

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最終更新:2012年07月15日 22:50
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