愛し方が分からない

396 名前:愛し方が分からない[sage] 投稿日:2012/09/20(木) 19:31:52.07 ID:GdTiWiUO [2/4]
昨日の続きが今日、今日の続きが明日、
どれだけ願おうとも、何をしようとも変わらない事実。

それが分かっていても、願わずにはいられない、
今日の続きの明日でない事を、
劇的に変わる明日が来る事を。



緒方祐樹はクラスで友達と呼べる存在がいない。
青白く骸骨のような見た目に、頭部には隠しきれない円形脱毛症があり、その口元を見れば歯が何本もないのがすぐに分かる。
殆ど肉の付いていない体に季節関係なく長袖を着ており、その下から時折見えるのは、皮が抉れている細すぎる腕や足。

ある程度の経験を積んだものならば、緒方祐樹のそれに気づけるかもしれない。
が、祐樹の周りにいるのは、当たり前だが彼と同い年の10歳になっているさどうかという子供達、
ただ思うのは、祐樹が気味の悪い存在であると言う事、
それだけ。

だから、クラスメートの誰も祐樹に近寄ろうとしない。
イジメはないが、誰も一切の関わりを持とうとしない。

それでも祐樹にとって学校は唯一、安息出来る場所だ。
誰からも無視されていようとも、
クラスメート全員が自分を見ないようにしていると分かっていても。

ここだけが誰も自分を苦しめない、
ゆっくりと休める唯一の場所だから、だ。

家にそんな場所はない。
あるのは、ただ怯えるだけ、苦しむだけの空間・・・。

そこにしか帰る場所はない、だが、そこは最も存在していたくない場所。


下校のチャイムが鳴ると祐樹は帰らなければいけない事は理解している。
帰りたくはない、
帰らなかった事もある、が、その時は強制的に家に帰らされた。
そういう時ほど、家に戻された後の恐怖が辛い。


もし、祐樹を虐待しているのが両親のどちらかであるならば、担任も行動がとれたのかもしれない。

だが、そうではない。

祐樹を虐待し、苦しめているのは、実姉の理香なのだ。

397 名前:愛し方が分からない[sage] 投稿日:2012/09/20(木) 19:33:16.87 ID:GdTiWiUO [3/4]
緒方理香は文武両道を体現しているような女の子だ。
公立の中学生だが、IHに出れば様々な記録を塗り替え、学業でも全国模試では常にトップに位置している。
その見た目も、幾度かTVに出ただけなのに既に全国規模のFCが出来ているので分かるように、飛び抜けている。
その上で、老若男女分け隔てのないその優しさは誰もが知る所であり、少なくても理香の住んでいる地区では、理香を愛さない人はいない。

理想の女性、それを体現しているような理香だが、一つだけ欠点がある。
それが実の弟、祐樹に対してだ。

最初は無視から始まった。
それは、ずっと一人っ子だった子供によくある行動に思えた。
だが、理香はそれをエスカレートされていく。
平手打ちや蹴り飛ばすような直接的な打撃、熱湯をかけたり逆さ吊りにしてみたり、窓のない物置で炎天下に放置したこともある。
それをする事で、理香には理香にしか分からない、何とも言えない快楽を味わっていた。

他人、では駄目なのだ。
祐樹に対してだけ、祐樹を対象とした時だけ、理香はその快楽を得る事が出来る。

だから、理香の祐樹に対する虐待は終わりがない。

そんな理香に対して二人の両親は、
母親は自分の分身たる娘が、完璧な女性に育っているのだし、その些細な傷を咎め立てして、苦しめる気はない。
父親にしても息子より娘が可愛いのは当たり前の気持ちであり、更に言えば男は耐えるべきだと言う思想もある為、特に口出しする事はない。

近所の人間は、理香の日頃の行いを知っているので、理香が祐樹を虐待していると聞いても誰も信じないだろう。


家に帰る、
祐樹にとってそれは死刑宣告にも、それ以上にも思える事だ。

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最終更新:2025年04月08日 03:25
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