622 :広小路淳 ◆3AtYOpAcmY :2012/12/24(月) 21:11:32.16 ID:kZ6CYTce
※……この話は架空のものであり、実在する人物、団体、事件、国家などとは一切関係ありません。
また、作中において、現在施行されている実際の法制度とは違う点がありますので、ご注意ください。
今や中天に昇った太陽が、容赦なく顔を焼く。
「うううっ、眠……」
八雲清次(やくも せいじ)は半ばいびきでもかくかのように起きた。
「それだけ眠っていてか」
一部始終を隣にいて把握していた半川操(はんかわ みさお)は、あきれたように声をかけた。
それもそのはず、清次は1時間目ぎりぎりに教室に入ってきて、その上午前の授業はすべて眠っていたのだ。
「昨日は何杯飲んだんだ?」
「うるさいなあ。いいだろうよ、別にお上に逆らっているわけじゃなしさ」
そういって彼は再び机に突っ伏す。
未成年者の飲酒や喫煙を禁じていた、今や法律史でしか見られないような過去の法律に縛られることはない。清次はそう言いたいのである。
「しかしいつもはこんなべろべろにはならないだろう。何があった?」
「妹と弟がいちゃいちゃしているところをからかったら、妹に水を引っ掛けられた。
だから頭にきてカフェでギリギリまで飲み直してきた」
「あ、やけに酒臭いと思ったらやっぱり直で来たんだな」
そこに、彼らの共通の親友である酒井希一郎(さかい きいちろう)が来た。
「ソウ、キヨがどうしたの?」
「あ、キィ、お前もキヨに何か言ってやれよ。こいつ酒を飲んでそのまま来やがったんだぜ」
「静かにしてくれ……、無い頭が痛い……」
「ははは。まあキヨのことだし仕方ないんじゃない?」
「ったく、これで俺たちより勉強の出来がいいってんだから、神様は世の中を不平等に作ったもんだよな」
呆れ果てた操は肩をすくめると、話題を転じた。
「ところで、喋る内容の準備は大丈夫だろうな」
操に突かれ、熊のようにむくりと起き上がった清次が言葉を返してきた。
「翼さんの、だろ? ちゃんとできてるって」
「誕生パーティー?」
「そうだ、キィ、酒井家にも招待状が来ているはずだぞ」
「そっか。それで、大丈夫、というのは?」
「あー、言ってなかったな、こいつがスピーチをやるんだ」
「本当?」
「ああ。といっても政財界の重鎮の前座のような扱いだけどな。
和泉元首相やトミタの奥石会長が後ろに控えているんだから、俺なんて添え物みたいなもんだよ」
「ええっ、凄いじゃないか。そんな人たちと一緒に喋れるなんて」
羨望と憧憬の含まれた眼差しを向ける希一郎とは対照的に、操は清次の小賢しさを疎むかのような口ぶりで続けた。
「こいつは文章とか演説とか、憎たらしいけど政治家やお偉いさんに必要な能力は人一倍あるからな」
「そう言ってくれて光栄だよ。
……っと。電話だ」
清次のスマホが鳴りだした。
彼の秘書から彼の下にかかってくる電話の着メロは、ジョルジュ・ビゼーのオペラ「カルメン」の中で歌われるアリア「ハバネラ」である。
「あ、悪い。秘書から電話だ」
「うん、わかった」
「じゃ、また。忘れずに来いよ」
席を立ち、手刀を切って2人から離れる。
「清次だ。何かあったか?
ほう、川中教授のノーベル賞受賞が今日発表されるんだな。
なら清洛大学に適当な金額をぶち込めるようにしとけ。
播州大学と難波市立大学は、……まあ、とりあえずは何もしなくていい。
それとだな……」
その様を傍で見ていた希一郎が操に語りかけた。
「忙しいみたいだね」
「ああ、そっとしといてやるか」
そのようにして、彼らはその場を離れた。
623 :広小路淳 ◆3AtYOpAcmY :2012/12/24(月) 21:16:47.64 ID:kZ6CYTce
「ああっ!」
操は、ベッドの縁に座り、自らの彼女である篠崎亜由美(しのざき あゆみ)を乗せた状態で、股を大きく広げさせ、下から突き上げていた。所謂乱れ牡丹である。
片手を亜由美の腹に宛がいつつ、セミショートの髪を――激しく揺らしている下半身とは対照的に――優しく撫ぜる。
普通、この体位だと胸を揉んだり、クリトリスを弄ったり、はたまた首筋を啄んだりするのが常であるが、操はこうすることが好きだった。
一通り髪を弄んだ彼は、抱いている恋人の耳元に囁いた。
「どうだ、咥えこんでいるのが、よくわかるだろう」
彼らの目の前には大きな鏡があった。そこには、突き、突かれて乱れる二人の赤身が余すところなく映し出されている。
「やだぁ、恥ずかしいよぉ!」
「じゃあ」
と、操はベッドに素早く押し倒し、彼女を仰向けにさせると、そのまま再びクレヴァスに分け入った。
「ん、ん、あ、あっ」
「そろそろ、限界だっ……」
「あ、あ、あたしも、もうイくから、一緒に」
そう聞いて、彼は最後の追い込みとばかりにスパートをかける。今、彼は亜由美の恥丘に全精力を集中させていた。
「あっ、あっ、あっ、亜由美、亜由美!」
「ん、ん、ミ、ミィくん、ミィくん!」
「「イクゥッッッッッッッッッッッ!!!!!!」」
叫ぶとともに、彼は、恋人の中に自分の中のものを全て吐き出した。
624 :広小路淳 ◆3AtYOpAcmY :2012/12/24(月) 21:19:03.87 ID:kZ6CYTce
「しかし、参ったよ」
そう言って、操は横になったまま首だけを動かし、少なくない時間を共に過ごしてきた恋人の方を向いた。
「どうかしたの?」
「いや、姉貴のことさ。
姉貴が18の誕生日を迎えるんだ。成人になるからかは知らないけど、いつにもまして盛大にパーティーを催すみたいでさ。
で、俺にも来いって言うから、亜由美も連れてきていいか訊いたら、同伴は家族以外認めないって言うんだ」
「でも、仕方ないんじゃないかな。やっぱり家族で過ごす時間って大切だと思うし」
「そんなアットホームなパーティーじゃないって。政財界の魑魅魍魎が一堂に会するおどろおどろしい虚栄心に満ち溢れたものになるのは目に見えきっているんだから。
流石にボイコットしてやろうかと思ったよ」
「駄目だよ」
と彼女は、諭すように自分の彼氏に語りかける。
「家族に祝ってほしい気持ちは誰だって同じなんだから」
「そりゃ、そうだろうが……」
「だから、ちゃんと祝ってあげてね」
「……ああ」
「そして、ミィくんも、楽しんできてね」
「楽しいわけないだろう」
操の言葉に不満げな調子が込められる。
「俺が楽しいって思うのはお前がそばにいるときだけだから。
だから、ずっと一緒にいてくれ」
「うん、一緒にいようね」
そう誓い合いながらも、操はなぜとはなしに不安をかきたてられた。
「しかし、ちょっと汗を掻いたな」
「うん、そうだね」
「シャワー浴びてきたらどう?」
と、操はベッドルームに続いている浴室を指差す。
「ミィくんは?」
「俺は亜由美が浴びている途中で乱入する」
「もう!」
亜由美は彼の手の甲を軽く抓る。だが、貌を見る限り、彼女も満更ではないようだ。
「じゃあ、先に入るね」
断りを入れ、彼女はシャワーを浴び始めた。
それをガラス越しに、満足気に彼は眺めていた。
見られていることが分かっているからなのか、水滴の他にも、股間を、そこに生える芝生を、淫水が濡らしていった。
操は操で、これまた次第にむくむくと鎌首をもたげ始めてきた。
(この分だと、第2ラウンドもいけるかも…)
その時、携帯が鳴りだした。
「はい、半川操です。
……え、はい、わかりました。すぐに向かいます」
通話を終え、彼はシャワールームに向かう。その中にいる恋人と戯れあうため、ではない。
「亜由美、行かなきゃいけない」
「え、うん……」
寂しげな顔に、居た堪れなくなった彼が言葉を繋ぐ。
「今度は、またゆっくりしよう」
「約束だよ」
「もちろんだ」
と、残して、急いで服を着、その場を後にした。
だが、操は大きな後悔をすることになる。
たとえ家族からどれほど叱責を食らおうとも、どれほど家族親族や友人知人らに対する義理を欠こうとも、あの時一緒にいればよかった、と。
最終更新:2013年02月02日 04:58