鬼子母神4

782 名前:鬼子母神4 ◆ZNCm/4s0Dc [sage] 投稿日:2013/03/02(土) 16:32:34.20 ID:InjY4tMk [2/8]
―――――――
小泉姉弟の父は登山を趣味にしていた。
土日や、長期連休になるとよく二人をほっぽり出して山に行っていた。
流石に二人が幼い頃は、家にいて世話をしていたが…。

そんなある日…。
―――――――

「はぁっ?!」

コン太は不意に目を覚ます。
見えるのは自室の天井。

「…くそ!またこの夢か…」

――――――――
ある日、いつものように父親は登山に出掛け…、遭難し変わり果てた姿で戻ってきた。
姉弟は二人して泣いた。
ただ姉の方は…。
――――――――



「おはよう、コン太君」
「おはよう、コン」
「おはようございます。おはよう、アサ姉」

起きてリビングに行くと、叔母とアサネが台所にて、朝食を作っていた。
アサネは自身とコン太の弁当も作っているようだ。

「(まいったな…、でも言わなきゃ…)」

この日、コン太はユキから弁当を貰う約束をしてしまっていた。
なのでこのタイミングでいらないと言わないと…、二人分の弁当を食べなければならなくなる…。

「あ、あのさ…、アサ姉。今日の弁当って―――」
「今日はコンの大好きな唐揚げを入れてあげるわ」
「(―――駄目だ、言えない)」

振り向いたアサネの眩しい笑顔にコン太は心が折れてしまった。

783 名前:鬼子母神4 ◆ZNCm/4s0Dc [sage] 投稿日:2013/03/02(土) 16:33:45.49 ID:InjY4tMk [3/8]
「おはよう、コン君。ちゃんとお弁当作って来たから。お昼を楽しみにしておいて」
「ああ、ありがとう…」

教室に入ってきて一番最初に聞いた言葉。
ユキもまた弁当を作ってきていた。当然だが。
これで、コン太は完全に追い詰められた。
どちらかを、選び、捨てるのか…。

…いや、コン太にはどちらも捨てることは出来なかった。
彼が採った策とは―――


「(ここなら誰もいないだろう…)」

コン太は囲碁将棋部の部室前に来ていた。
手には、アサネ手製の弁当が握られている。

「(早弁とは言っても、始業前にすることになるとは…)」

ガラガラ―――

「ん?どうしたの、コン太君」
「(げっ!!?)」

部室内にはキオナがいた。

「えぇっと…大久那さんこそなんで?」
「暇つぶし…かな?」

キオナの前にはトランプで積み上げられたピラミッドがあった。

784 名前:鬼子母神4 ◆ZNCm/4s0Dc [sage] 投稿日:2013/03/02(土) 16:35:21.98 ID:InjY4tMk [4/8]
パタパタパタ―――

「あぁ~!!あと一段だったのに崩れた!!コン太君のせいだよ!!」
「何で?!」
「はぁ~、もういい!!…で、コン太君はどうしたの?」
「あ、んーと…」

コン太は悩んだ。
自身の状況を言うべきか、否か…。

「…何か訳あり?じゃなきゃ、朝早くにここには来ないだろうからね」
「ぐっ!」
「手には…弁当?」
「えーと、実は…」

コン太は観念してキオナに事情を説明した。
とにかくアサネにばれるのは何としても避けなければならない。
その辺りは必死に弁解した。

「―――んー、なるほどね。モテる男は辛い、ってか」
「そんなんじゃ…」
「でもアサネが可哀想だよ。ちゃんと断らなきゃ」
「それはそうだけど、断りきれなくて…」
「…ユキもなかなかエグイことするな」
「え?」
「いや、こっちの話。で、早狩さんの弁当を食べる為に今、アサネの弁当を消化するわけね」
「折角作ってくれたんだから、捨てるわけにはいかないからね」

弁当箱の蓋を開けると、美味しそうな唐揚げ、その他が入っており匂いがまた食欲をそそった。

「…しょうがないわね。私も協力するわよ」
「え!?ホント?…あー、でもいいよ。元々自分が蒔いた種だし」
「話の流れからして、私にも責任はあるわよ」
「…ありがとう」
「ところでさ…」
「ん?」
「早狩さんと付き合ってるってのは本当?」

785 名前:鬼子母神4 ◆ZNCm/4s0Dc [sage] 投稿日:2013/03/02(土) 16:36:23.60 ID:InjY4tMk [5/8]
―――時間は流れ、あっという間に昼休みになった。

「はい、どうぞ。召し上がれ」
「うん、ありがとう…」

まだ胃に残るモノを堪えながら、コン太はユキの弁当に手を付けた。
こちらも、ハンバーグ、トマト、卵焼き、といった具材が並んでおり美味そうにみえた。
実際、口に運ぶと美味かったのだが…。

「うん、美味しいよ!―――ユキちゃんは食べないの?」
「ふふっ、食べるよ」

そう嬉しそうに笑いながらようやく箸を取る。

他愛のない会話をしつつも弁当を平らげるコン太。
腹は限界を超えているようだ。

「ふう、ご馳走様…」
「お粗末様でした。…ちょっと量が多かったかな?」
「ん、いや…大丈夫。今日は朝に食べ過ぎちゃって」

実際、嘘ではない。

「そう…、でも良かった。美味しく食べてもらえて。また明日も作ってくるよ」
「ああ…ゴメン。明日はアサ姉が作ってくれることになってるから…」

……冗談ではなかった!
毎日こんな生活をしていては太ってしまうだろう。

「うーん、それは残念…」
「ゴメンね…」
「いいよ、別に。その代り―――」

786 名前:鬼子母神4 ◆ZNCm/4s0Dc [sage] 投稿日:2013/03/02(土) 16:37:20.72 ID:InjY4tMk [6/8]
放課後―――

「で、結局日曜日に遊びに行く約束をさせられたわけ…ね」パチ
「まぁ…そういうことだね」パチ
「モテるね~」パチ
「う~ん、そうなのか?」パチ
「まぁ向こうにその気はあるよ、絶対」パチ

囲碁将棋部の部室で会話するコン太とキオナ。
将棋盤を広げ、駒の動かし方をうろ覚えで勝負していた。

アサネは叔母に頼まれた買い物のために先に帰宅していた。
コン太も同行するつもりだったが…、ユキの対応にどうすればいいかわからずキオナに相談する次第となったわけだ。

「流石にアサ姉にも言った方がいいかな…」パチ
「いや、止めといたほうがいいよ。あの子、嫉妬深いし」パチ
「…アサ姉は心配症だから」パチ
「あんたもシスコンね。……お互いのためにもそろそろ自立を考えたら?」パチ
「じ、自立?」パチ
「大人になってもそんな生活を続けるつもり?」パチ
「それは……」パチ
「とにかく、アサネにも相手がいないわけだし。それまでは秘密にしといたら、ってことよ。まぁ彼氏でも出来たら、案外そっちに夢中になるかもね」パチ

アサネに彼氏…。
考えたことはなかったが、あまりいい気分ではなかった。
やはり自分もアサネに依存しているのだろうか…。
それがアサネの負担になっているのだとしたら―――!!
コン太の考えは目まぐるしく変化していた。

「そうだね…。ユキちゃんとのことはしばらく黙ってるよ―――、チェックメイト」パチ
「キー!!また負けた!!!」

787 名前:鬼子母神4 ◆ZNCm/4s0Dc [sage] 投稿日:2013/03/02(土) 16:38:38.47 ID:InjY4tMk [7/8]
アサネは商店街で買い物を済ませ、家に帰り着いていた。

「お帰り、アサネちゃん」
「……」
「…どうしたの?」

叔母の言葉は耳に入らず、買い物袋だけ渡し、半ば放心状態で部屋に戻る。
さっき…、昼休みにキオナに聞いた言葉が頭から離れなかった…。

『コン太君と早狩さんはどうも付き合ってるみたいだね―――』

アサネの頭は混乱していた。
コン太が自分から離れて他の女へ…。

「―――うっ…うぅぅぅ…」

自然と…涙が流れ出る。

彼女はこんなどうしようもないとき、よく現実逃避をする。
その手段は―――

「―――ん、…んんぅ!!」

制服のままベッドに寝転び…、下着の上から優しくなぞる…。

「コン…、寂しいよコン…。行かないで…、行っちゃやだ……」

この指はコンの指…。
コンが私を慰めてくれる…、構ってくれる…、優しく…愛してくれる…。

胸も制服の上から触り、つねる…。

彼女にとって、守るべき存在だったコン太が、自身を愛してくれる。
穢してはいけないモノに対し、手を出してしまう背徳感がまた興奮を呼び、辛い現実を忘れさせていた。

「お姉ちゃん、コンのお姉ちゃんだから…。ずっと一緒よ、ずっと、ずっとずっとずっと…、――――コン!!」

ビクビクと身体を振るわせるアサネ。

―――次第に倦怠感が彼女を襲う。
それと同時に…どうするべきかも…。

「コンは…、私のコンだよね…」

彼女の倫理観は崩壊の手前に来ていた…。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2013年10月16日 08:04
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。