221 名前:
パンドーラー6 ◆ZNCm/4s0Dc [sage] 投稿日:2013/11/04(月) 23:36:10.41 ID:CJ92gqF5 [2/7]
「―――昨日の小テスト―――」
「いや―――でもあれは―――」
マキは壁に耳を当て、隣部屋の音を盗み聞きしていた。
隣はトシヤの私室だ。
防音設備はある程度とられているものの、壁に耳を当てれば声が聞こえるくらいにはなる。
どうやらトシヤは電話の最中のようだ。
「(相手は誰?やっぱり紅保ユリコかしら…)」
マキはトシヤとユリコの仲が、気が気ではなかった。
「(どうしよう、どうしよう…。あの二人が付き合ったら…。嫌!そんなの絶対嫌!!)」
気付くとトシヤは電話を終えていた。
―――静かである。
どうやら眠りに入ったようだ。
「はあはあ…」
マキはどこからともなくアルバムを取り出した。
二人がまだ幼かった頃に撮られたものである。
そして、まだ洗ってないトシヤのシャツを取り出し、口に咥えながらオナニーを始めた。
「(トシヤ…トシヤぁ…)」
最近はトシヤの洗い物を部屋にまで持ち込むようになってきた。
そうなると、どういうことになるのか…。
トシヤにバレる危険が一層増すのだ。
しかし、マキはそれすらも快楽のスパイスにしていた。
写真に写る笑顔のトシヤ。
「(ゴメンね、ゴメンね―――)」
マキは心では謝りながらも、手を緩めない。
下着に突っ込まれた右手は自身の敏感な部分に触れて激しく動いていた。
左手は胸の突起をねじりつね上げる。
「―――!―――!!―――!!!」
声にならない快感を味わい、果てた。
222 名前:パンドーラー6 ◆ZNCm/4s0Dc [sage] 投稿日:2013/11/04(月) 23:37:07.96 ID:CJ92gqF5 [3/7]
時期は秋から冬へ移りゆく季節だ。
中学三年生ともなると、高校受験に向けて勉強に励む者が多くなってきた。
「(また…やっちゃった…)」
登校中、マキは険しい顔をしていた。
「(勉強…出来なかったな…)」
夜はオナニーに明け暮れて、翌朝、後悔することが毎日のように続いていた。
そして自己嫌悪に陥るのだ。
「(私達、なんで―――姉弟なの?)」
その問いに答えられる者などいるはずもない。
マキが悶々としたまま時間は午後に移った。
この日のホームルームは下期の委員会決めのようだ。
全く興味がなかったマキは適当に決めることにした。
誰も名前を書いていない箇所が一つ。
人気がない図書委員だ。
本の貸出しの受付をやらなければいけないので誰もやりたがらないのだ。
「(家じゃ勉強にならないし…、いっそ図書室で受付しながら勉強するのもいいかもね)」
ホームルームの終わり頃になり、一通り決まったようだった。
男子の図書委員は―――
「やあ。初めまして」
「ええ、短い間だけどよろしく」
「えっと…たしか弟がいたよね?トシヤっていう…」
「いるけど?」
「部活で一緒だったからさ。あと最近は妹とも仲がいいみたいだから」
ふと、黒板に書かれた名前を見ると“紅保ユウイチ”とあった。
「(こいつ…あの紅保ユリコの兄か…)ああ、ユリコちゃんのお兄さんだったのね。」
「あ、やっとわかってくれた。トシヤにお姉さんがいるってこの間知ったからさ―――」
マキはこいつを利用してやろうと思った。
ユリコの情報を得るために…。
223 名前:パンドーラー6 ◆ZNCm/4s0Dc [sage] 投稿日:2013/11/04(月) 23:38:36.39 ID:CJ92gqF5 [4/7]
早速今日から受付をやるはめになった二人は、図書室にいた。
「向田さんはなんでこの委員にしたの?」
「適当にやったから」
「適当って…まあ俺もそんな感じだけど」
「受験前に委員会の仕事を押し付けるって何様かしらね」
そういいながら参考書を広げるマキ。
とりあえず遅れてる分は挽回しなければならない。
「じゃあ俺も、っと…」
ユウイチも同じようにしていた。
案外真面目なんだろうか…?
しばらくはシャープペンの音が図書室内に響いていた。
「ねえ、ユリコちゃんのことで聞きたいんだけど?」
「うん?」
ノートに向かったまま、マキは聞いた。
ユウイチも顔を上げずに答えた。
「うちのトシヤのことが好きなのかな…?」
「うーん………え?!」
思わず顔を上げたユウイチ。
「そう…なのかな…?仲が良いだけに思えるけど」
「だっていつも一緒じゃないの」
マキは顔を上げずに言った。
ユウイチはしばらく考え込んだ。
224 名前:パンドーラー6 ◆ZNCm/4s0Dc [sage] 投稿日:2013/11/04(月) 23:39:22.01 ID:CJ92gqF5 [5/7]
「うん…、うん、そうかもね」
「なんか煮え切らないようだけど…」
「正直、ユリコのことってよくわからないんだよね」
「兄妹なのに?」
そう言ってマキは自分もそうじゃないかと心中で戒めた。
「顔は可愛いし、態度も親切丁寧だけど…、何を考えてるのかわからないことがあるんだ」
「そういえば…」
マキが実際に言葉を交わしたのは数回だけだったが、掴み所がないように思えた。
「最近は向田さんのことも話したかな」
「私?」
「うん、なんかいい人そうだって…」
「………」
なんなのよ、あの女…。
「紅保君はトシヤとは仲が良い?」
「部活中は結構話したけど、引退してからはあまり話さないかな」
「ふーん…。あとで言っておくわ。紅保君が寂しがってるって」
「まあよろしく」
「(それにしてもユリコは何が狙いなの?)」
マキは紅保ユリコの行動は明らかに何らかの意思があると確信していた。
そう感じたのは、理屈めいた証拠よりも―――女の勘がそう告げていたのだ。
キーンコーンカーンコーン―――
いつのまにか下校時刻のベルが鳴っていた。
225 名前:パンドーラー6 ◆ZNCm/4s0Dc [sage] 投稿日:2013/11/04(月) 23:40:09.14 ID:CJ92gqF5 [6/7]
午後七時。
マキとトシヤは夕食を囲んでいた。
父親はまた出張のようだ。
「今日、あんたの先輩に会ったのよ。ユリコちゃんのお兄さんに」
「紅保先輩?」
「最近つれないってぼやいてたからさ」
「上級生の人って、引退しちゃうと会う機会ないんだよね」
「そこで話題になったんだけど、ユリコちゃんってどんな娘?」
「うーん。聞かれてみると…よくわかんないや。紅保先輩もわからないって?」
「ええ、可愛いとか言ってたからシスコンかって思ったわ」
「まあ実際可愛いからね…」
「そうね…」
可愛い―――か。
トシヤのその言葉に少なからずショックを受けたマキだった。
とりあえずは、紅保ユリコにトシヤを渡さないようにすること。
それが目標だった。
最終更新:2015年03月22日 01:56