ある終業式の日の、きょうだい喧嘩

647 名前:ある終業式の日の、きょうだい喧嘩 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/07/26(木) 00:59:19 ID:Ko5ptTCv
 とある県立高校では、今日終業式が行われた。
 明日からは夏休み。待ちに待って待ちくたびれてようやく夏休みがやってきたのだ。
 プール、花火大会、夏祭り、帰宅部には関係ないが合宿などが行われる。
 夏休み自体が一種のイベント期間のようなものだ。

 哲明も明日から来る夏休みを心待ちにしていた。
 哲明は、学校にくるのが――一言で言えば、憂鬱だった。
 学校の立地条件が悪いとか、クラスメイトの中に嫌なやつがいるとか、そういうことではない。
 日々、高確率で下駄箱の中に入っている手紙を見るのが嫌だった。

 哲明は、可愛いハートマークのシールで封をされている便箋を開き、中に入っている紙を見た。

『哲明君へ 
 あなたがいつもクラスで友達と笑いあっている姿を見ていると、私の心はとても熱くなります。
 男の子でも女の子でも分け隔てなく見せる、あの明るい笑顔を私にも見せてください。
 2年A組の、あなたの机の前で待っています 』

 ラブレターだった。誰がどう見てもラブレター。
 好き、の一文字はないが、文を読めば書いた人間の好意は伝わってくる。
 哲明は文章の書かれてある紙を、再度便箋の中に収めた。
 そして、一言。

「……またかよ」

 と、言った。
 続けて鼻から、長いため息を吐き出す。
 便箋をかばんの中に入れると、2年A組の教室、哲明の所属するクラスへと足を向けた。

 哲明という男は、特別容姿がいいわけではない。
 しかし、女生徒の方から笑いながら話しかけてくることから考えて、容姿が悪いわけではない。
 性格は、当たり障りのない平凡な性格。
 癇癪持ちではないし、鬱の気があるわけでもない。
 成績は学年全体で見ればいいほうだ。
 ヤマが当たれば学年でベスト5に入るし、ヤマが外れても学年で上位10番以内には食い込める。
 スポーツは得意ではない。特に野球がだめ。どうしてもボールをキャッチができないのだ。
 それでも体力はそこそこにあるので、体育が嫌いなわけではない。

 哲明はこのように、どこの学校にでも居そうな男子生徒なのだ。
 それなのに、なぜ学校に通う日は8割という高確率でラブレターが下駄箱の中に入っているのか。
 理由は簡単。ラブレターを出している人間が、同一人物だから。


649 名前:ある終業式の日の、きょうだい喧嘩 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/07/26(木) 01:01:28 ID:Ko5ptTCv
 哲明は2年A組の教室の前に到着した。
 ドアを開ける前に、ドアに入っているガラスから、中の様子をを伺った。
 中には、女性教師が1人いる。女子生徒の姿はない。
 普通に考えれば、女子生徒がいないのだから帰るべきなのだろう。
 その普通であったら、どれだけよかったことか。
 ラブレターの送り主が、女性教師でなければどれだけよかったことだろう。
 そんなことをひとりごちながら、哲明は2年A組のドアを開けた。

 教室の窓は全て締め切られていた。
 明日から夏休みだから一ヶ月以上教室が使われない。そのため開けておく必要は無い。
 しかし、窓を閉め切った教室というのは空気の流れが滞っている。
 否応無く入り込んでくる熱気が教室内にこもり、サウナ状態になっている。
 そんな状態の中でも、スーツ姿の女性教師は汗一つかくことなく立っていた。

 哲明の机の前に。

「テツ」
「なんですか……先生」
「今は私達しかいない。いつも通りに呼んでいいぞ」
「……何の用だ? マカ姉」

 マカ姉、と呼ばれた女性教師は、しかめっ面で哲明を見つめた。

「……テツ、マカ姉というのはやっぱりやめにしないか?」
「昨日俺がクラスの女の子からもらってきたマカダミアンナッツ入りのチョコレートを全て1人で食べつくした罰だ」
「全てと言っても、たかが一箱じゃないか」
「一箱に50個も入っていたけどな」
「……そろそろ、以前のように本名で呼んでくれてもいいだろう?」
「好きなんだろ。マカダミアンナッツ。だったらマカ姉って呼んだ方が嬉しいんじゃないかと思ってな」
「……ちっ」

 マカ姉は苦虫を噛み潰した表情で、舌打ちをした。
 この女性教師は、哲明の姉だ。血の繋がった、実の姉。
 髪型は毛先に少しのくせがある、腰まで伸びた黒のロングヘア。
 手入れが大変であることは確か。それでも彼女は髪を切らない。
 それは黒のロングが好きな哲明にとっては喜ばしいことだった。
 知性を感じさせるような顔には、どことなく眠そうな感じの瞳が貼り付いている。
 華奢な印象を与える体に、今はスーツを纏っている。
 オフィス街を歩けば、その姿はとても様になることだろう。
 マカ姉と哲明の年齢差は6つ。年は離れているが、兄妹の中は良好。
 それもそのはず。年が離れていても、2人が離れることはほとんどなかった。
 正確には、姉の方が離れようとしなかったのだ。


650 名前:ある終業式の日の、きょうだい喧嘩 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/07/26(木) 01:03:32 ID:Ko5ptTCv
 今日哲明の下駄箱の中に手紙を入れたのは、当然マカ姉だ。
 普段の口調と文章から感じる印象が異なるのには、特に意味はないらしい。
 この方が受けがいいから、とでも思っているのかもしれない。
 なぜ彼女が手紙で哲明をわざわざ呼び出したのか。その理由を、哲明はよくわかっていた。

「今日は何時に帰るんだ?」
「5時だ。それまで、学校で待っていてほしい」
「今、12時半だぞ。4時間以上待てっていうのか?」
「いいじゃないか。何か用事があるわけでもないだろう?」

 確かに、哲明に予定はない。しかし、それとこれとは別だ。

「……暑いから、帰りたい。クーラーのある家の中で涼みたい」
「だったら、職員室に来ればいい。それとも生徒指導室のほうがいいか? 今日なら空いているぞ」
「いや、俺は帰る。帰ってゲームの続きをやりたいんだ」
「テツ。お前は私よりもゲームをとるのか?」
「マカ姉。俺が言うのもおかしいけど……社会人として、弟よりも職務を優先してくれ」

 その言葉を残して、哲明は教室から立ち去ろうとする。
 そうすると、当然哲明の背中はマカ姉に向けられる。
 背中を向けるということは、相手に隙を見せるということ。
 マカ姉の白い手が、哲明の尻――ではなく、腕に伸びる。
 次の瞬間。

「ふんっ!」
「……んっ? ああ、マカ姉、俺のかばん返せ!」
「ふははははは! テツ! これが無ければお前は家には帰れまい! 財布も鍵も携帯もこの中に入っているのだろう?!」
「このマカダミアン野郎! 待ちやがれ!」

 姉弟2人は、同時に教室から飛び出した。
 鞄を持って逃げる女性教師と、それを追いかける男子生徒。
 どう見ても、異常な光景だ。

 2人の走る速度はほぼ同じだった。だから一向に距離が縮まらない。
 そうなると、先を走っている姉に、事は有利に運ぶ。
 かばんを持ったマカ姉は、職員室に飛び込んだ。
 哲明も同じように職員室へ飛び込もうとするが――彼は生徒。飛び込めるはずがない。
 ドアに阻まれ、姉の手からかばんを奪うことができなくなった。
 職員室のドアが開いた。顔を覗かせたのは、若い女性教師の面をつけたマカ姉だった。

「哲明君。さっき廊下を走った件についてお話があります。生徒指導室で待っていてください」
「……………………わかりました。先生」

 顔にニキビでもできちまえ、と哲明は思った。
 そう願っても、哲明の姉の顔にニキビができるはずもない。
 マカ姉――本名は別にあるが、彼女の顔にニキビができたことは、一度も無いからだった。
 哲明はそのことをおかしいと思っていない。たぶん体の出来が違うんだろう、と自分を納得させていた。


651 名前:ある終業式の日の、きょうだい喧嘩 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/07/26(木) 01:04:54 ID:Ko5ptTCv
*****

 哲明が職員室の隣にある生徒指導室の扉を開けたら、すでに先客がいた。
 女子生徒だった。
 制服に入ったラインは青。青のラインはこの高校では二年生であることを示す。哲明と同級生だ。
 女子生徒は椅子に座って、生徒指導室に置かれている雑誌を読んでいた。
 この女子生徒に、哲明は心当たりがあった。
 正確には、見知った仲だった。とても深く。おそらくブラコンの姉よりも深く。

「明菜?」
「……? テツ兄。どうしたの?」

 明菜、と呼ばれた女子生徒は、雑誌から顔を上げて哲明を見た。

「テツ兄も呼ばれたの? 指導の黒田に」
「いや、違う。明菜こそどうしたんだ。何かやらかしたのか?」
「んなわけないじゃん。……ま、いつも通りってやつよ」
「ああ、また髪のことで呼ばれたのか」

 明菜のボブカットの髪は茶色をしている。染色しているわけではない。自前の色だ。
 その証拠に、双子の兄である哲明の髪も茶色をしている。
 地毛だと言い張っても、指導の先生は信じない。今日のように、明菜をときどき呼び出しては尋問をする。
 哲明も、呼び出されたことがある。

 哲明は明菜の向かいの位置にある椅子に腰を下ろした。

「黒田の奴、何回言っても信じないからな。証明するのもなんだかめんどくさいし」
「ねえ? 双子の兄も同じ色なんです、って言っても、じゃあお前ら2人で同じ色に染めてんだろ、としか言わないし」
「指導の先生、マカ姉に代わってくんねえかな」
「マカ姉って何……ああ、昨日なんか大騒ぎしてたアレね。
 マカダミアンナッツチョコレートを全部食べたから、マカ姉。いい名前じゃん」

 哲明と明菜は双子の兄妹だから、当然同じ家に住んでいる。6つ離れた姉も同じ。
 しかし、ブラコンの姉と双子の妹は、哲明の見た限りではあまり仲が良くない。
 いがみ合っているわけではないが、にらみ合っていることがよくあるのだ。

「ところでさ、テツ兄はなんでここにいるの?」
「ああ、マカ姉に鍵の入ったかばん盗られてな。帰れなくなっちまったんだ」
「……また、あの女…………どうしてくれよう」

 明菜の呟きは、哲明の耳に届かない声量で発せられていた。
 哲明は頭を抱えて、ため息を吐いた。


652 名前:ある終業式の日の、きょうだい喧嘩 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/07/26(木) 01:06:38 ID:Ko5ptTCv
「あー、合鍵作っとけばよかった。ゲームやりてえのに」
「またそれ? あのさ、夜中もあれだけやってんだから今日はやらなくてもいいんじゃない? 目、悪くなるよ」

 哲明は昨晩、正確には今日の午前3時までロールプレイングゲームを遊んでいた。
 中古で買ってきたゲームだったが、ベストセラーになるほどの面白さで、時を忘れて熱中していたのだ。
 なぜ明菜が、哲明が寝る時間を削ってまでゲームをしていたことを知っているのか。
 それは、哲明と明菜が同じ部屋で寝ているからだった。

「別にいいだろ、そんなこと」
「良くない。眼鏡は不便だって友達が言ってたし。テツ兄が眼鏡かけてるのなんて見たくないし」
「お前さ、いい加減に別の部屋に移ればどうだ? 空き部屋、まだあったろ?」
「嫌。めんどいし」
「じゃあ、俺が出て行こうか? 俺はその方がい――」
「駄目っ!」

 哲明の言葉を遮るように、明菜が大声で吼えた。

「絶対に駄目! 駄目ったら駄目!」
「……なんでだよ。別にいいじゃんか」
「だって、私から離れたらテツ兄、1人で――」
「1人で?」
「1人で…………アレを……しごいて……」

 明菜の声が小さくなっていく。同時に顔が少しずつ紅くなっていく。
 机の上で指を組み、開いたり閉じたり。さらに目まで落ちつかない。
 哲明は妹のおかしさに疑問を抱きながらも、問い詰めることはしなかった。
 ただ、肩をすくめてみせた。
 明菜もまだ子供だな。1人で寝るのが怖いなんて。
 仕方ない。俺が折れるしかないか。

「そんなに嫌だって言うなら、やめるけどさ」
「いや……ティッシュさえくれるなら、やぶさかでは……ないよ」
「ティッシュなら店に行けばどこでも売ってるだろ」
「いや……テツ兄のアレがついてなきゃ……さすがにそれは売ってないし」
「さっきからアレアレって、何を言ってんだお前は」

 そう言われて、明菜は肩をびくん、と震わせた。

「え、あ……私今、何言ってた……?」
「アレをしごいてとか、ティッシュにアレがついてなきゃ、とか」
「うわ、そんなダイレクトなことを? ごめん、テツ兄、今の忘れて!」

 そう言うと、明菜は目を閉じて顔の前で合掌した。懇願しているらしい。

「このとーり!」
「わかったわかった、わかったから。なんでそんなに必死なんだよ」

 妹がなぜここまで必死になって謝るのか、哲明にはわからなかった。
 ――もし、妹が毎日ゴミ箱の中身を漁っているという事実を知っていたならば、理由がわかったかもしれないが。


653 名前:ある終業式の日の、きょうだい喧嘩 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/07/26(木) 01:07:53 ID:Ko5ptTCv
 哲明は、指導室の壁に掛かっている時計で時刻を確認した。
 すでに1時を10分ほど過ぎている。
 どうりで腹が空腹を訴えているわけだ。
 明菜も同じらしく、落ち着かない素振りを見せていた。

「テツ兄、ご飯食べた?」
「いいや。今日は家で食べるつもりだったから」

 今日は終業式の日なので、校内の食堂は営業していない。
 しかし、なんとかして腹は満たさなければならない。昼飯抜きにするつもりはない。

「明菜は家の鍵持ってたよな?」
「うん」
「じゃあ、帰ろう。腹減ったし。……あ、でもマカ姉がここで待ってろって言ってたっけ」
「放っておけば? 誰もいなければ諦めて帰るでしょ」
「それもそうか」

 哲明は手ぶらで立ち上がった。明菜は机に置いていた学生かばんを持って立ち上がった。
 指導室のクーラーを切り、ドアを開ける。途端に廊下の熱気が2人を襲った。
 気温差に辟易しながらも、2人は指導室を後にした。

 廊下の窓は開け放たれてはいるものの、それでも廊下にこもる熱気を追い払うまでには至らない。
 風は吹いていない。陽光は窓を通って廊下を照らし、さらに気温を上昇させていた。
 廊下を歩いている哲明の額に、汗が浮かんだ。
 汗をハンカチで拭いながら歩いていると、後ろから足音が聞こえてきた。
 明菜の足音ではない。
 明菜は、窓側を歩く哲明の左側にいて、日差しを避けるように歩いている。
 では、誰が?と思い、哲明は振り向いた。
 
 後ろから歩いてきているのは、スーツ姿のマカ姉だった。
 ただし、右手には哲明のかばんを、左手には自分のハンドバッグを握っている。
 哲明はその場で立ち止まった。マカ姉を待とうとしたのだ。
 しかし、明菜に腕を引っ張られて、強制的に歩かされることになった。

「待てって明菜。マカ姉が後ろから来てるぞ」

 と言っても、明菜は歩みを止めない。いや、さらに速度を上げた。
 そうすると、マカ姉の足の動きも忙しくなる。大股で前を歩く二人に近寄っていく。

「おい、明菜ってば――っ?!」

 哲明の言葉が合図になったのか、明菜は哲明の手を引いたまま走り出した。
 わけのわからない展開に、哲明の足が遅れた。
 哲明が後ろを振り向いた。
 その時、目にしたものを見て、哲明は――身の危険を感じ、駆け出した。


654 名前:ある終業式の日の、きょうだい喧嘩 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/07/26(木) 01:09:52 ID:Ko5ptTCv
「待てぇぇぇぇっ!! テツぅぅぅぅっ!!」

 マカ姉が、目を吊り上げ、腕を大きく振り、足を大きく踏み出して、追いかけてきていた。
 廊下を全力疾走。教師にあるまじき行為だ。
 だがそんなことは知ったことではない、といった感じでマカ姉は走り続ける。

 哲明と明菜は、脇目もふらずに全力疾走をしていた。
 廊下を曲がり、階段を駆け上がり、直線の廊下をひたすらに走る。
 哲明はわけもわからないまま走らされていた。
 そもそも、なんで逃げてるんだ?俺も、明菜も。

「明菜ーっ!」
「なー、にー! テツ兄!」
「なんで走ってんだー!?」
「…………知らなーーいっ!」
「はあぁぁぁ?!」

 いきなり逃げておいて、知らないはないだろう。
 哲明が、明菜に文句を言おうとしたとき。

「待て、明菜ぁっ! この卑怯者があ! いろいろ考えてみたが、やっぱり貴様のしたことは許せんっ!」

 走り続けているマカ姉が、呪詛の言葉を吐き出した。そのせいで、哲明は口を開くのを止めた。
 代わりに、マカ姉の台詞に疑問が沸いてきた。卑怯者?どういう意味だ?
 しかし考える必要はなかった。
 後ろから追いかけてくる姉が、わざわざ意味を説明してくれた。

「お前が部屋に持ってきたマカダミアンナッツのチョコ! お前があんなものを持ってこなければ!」
「へーん、だ! 一晩で全部食べるあんたが悪いのよぉ!」
「ふざけるな! 仲直りのしるしだとかなんとか言って、私を罠にはめたのは貴様だろうっ!
 そのせいでマカ姉、なんぞという名前でテツに呼ばれているんだぞ! 撤回させろ!」

 あー、つまり。
 昨晩姉が、俺が女の子からもらってきたチョコを全て食べたのは事実だった。
 んで、そう仕向けたのは妹だった、というわけか。
 しかし、姉よ。さすがに一晩で食べなくてもいいだろう。
 明菜、哲明、そして教師の順で、3階へ向かう階段を駆け上がる。
 そして再び、誰も居ない廊下を全力疾走。もはや暑さも感じない。顔に当たる逆風が涼しいくらいだ。
 
「いい名前じゃん、マカ姉って! この間のマロ姉よりいい感じ!」
「なんだと! あれもお前が同じ手口で仕掛けてきたんだろうが!」
「あはははははは! マシュマロ食べてー、マロ姉ー!」
「こ、の……その顔! テツに見せられないようにしてくれるわぁっ!」

 さらにスピードを上げる明菜。明菜についていく哲明。それを追いかける、お菓子好きの姉。
 いつまでも息を切らさず、怒鳴り散らしながら走りつづける姉妹に挟まれ、哲明は止まろうと考えても止まれなくなった。
 今日の昼飯はなんだろう。できたら、冷やし中華が食べたいな。
 どこまでも加速していく鼓動に危機感を覚えながら、哲明はそう思った。

おしまい

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最終更新:2011年07月06日 08:57
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