最後の微笑み

352 最後の微笑み sage New! 2007/11/13(火) 02:56:36 ID:yJs0MD6e
「出てってよ!…出ていってったら!!」
付き合って1週間のトシヤの部屋。ヒステリックな絶叫が響く。
困惑するトシヤ。
問い掛ける私。
「エリカちゃん…私が嫌いなの?」
「…大っ嫌い!お兄ちゃんから離れて!!」

私が1週間前トシヤに告白したのはその時の気分だった。
でも確かにトシヤは私の好みの男だ。
目立たないけど物静か。気遣いが細やかで繊細な…
でも噂はあった。
実の妹との度を越した中の良さ。
特にこの妹、エリカの執着は学校中である種の下卑た好奇心と共に囁かれていた。
「エリカちゃん、やっぱりあなた、トシヤのこと…」
「なに呼び捨てにしてるの?どうして?どうして赤の他人のあなたが?」
トシヤは困った顔で黙りこんだまま。
こんな頼りなさにも私はトシヤに魅かれたかもしれない。

それから約2時間、私とエリカの言い合いは続いた。
諭す私。敵意むき出しのエリカ。
トシヤはずっと黙ったままだったが最後に私にこう告げた。
「ごめん、今日は帰ってくれ。」
それって
「エリカを傷つけたくない」
そんなコトありなの?
「聞いたでしょ。」
勝ち誇るエリカ。
トシヤはエリカの肩を抱き私に引導を渡す。
「悪かった。でもこれで僕も決心がついた。」
そして目の前でキスされた。
驚きながらも、この上なく幸せそうに身を任せるエリカ。
「何と思ってくれてもいい。」
どうやら私はトシヤが自分でも気付かなかった想いを後押ししてしまったようだ。



家に帰って泣いた。
声を出して泣いた。
泣きじゃくりながら、トシヤの部屋での出来事を話す。
目立たないけど物静か。頼りないけど気遣いが細やかで繊細な私の兄に。
「お兄ちゃん、お兄ちゃん…」
兄は私をそっと抱いたまま何を思っているんだろうか。
私は知っていた。
兄が密かにエリカを気に入っていたことを。
私はただ泣きながら兄に強くしがみつく。
兄の中で強い感情が沸き起こるのを感じる。
そう、性格や気性がエリカに良く似た私に対して。

私は泣きながらも兄の気持ちの動きを感じてそっと微笑む。


ありがとうエリカ。
あなたがくすぶっていた私の想い、後押ししてくれた…。

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最終更新:2007年11月13日 17:15
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