侵略者

434 侵略者 sage 2007/11/15(木) 00:20:28 ID:7gBcJfZr
―よくやったな佳奈。
―本当よ、○○大学にトップ合格なんて、父さんも母さんも嬉しいわ。
―ありがとうございます、父上、母上。
―うむ、だが本当の勉強はこれからだ。それを忘れるなよ。
―はい…必ず我が家系に相応しい成績で卒業します…ただ…
―ただ?
―ひとつだけ佳奈のわがままを許して下さい…



書店でとある漫画雑誌をチェックするのが毎週木曜の僕の日課。
あった…今週は巻頭カラーか。
目当ての漫画は「エイリアン・ちゃあみぃ」
地球を守る勇者と勘違いされた平凡な高校生が地球の支配を狙う異星人の戦士「ちゃあみい」(何故かスタイル抜群の幼顔の女の子だ)とドタバタを繰り広げるコメディだ。
毎回、地球の文化を勘違いした「ちゃあみい」が男にとっては夢のような作戦で挑んでくる。
メタボリックにしようと手の込んだ豪華料理を口移しで食わせようとする。
はたまた、窒息死を狙って顔を胸や股で塞ごうとする男の妄想に満ち溢れた迷作。
掲載誌が青年向けのせいか、性表現はやや過激で、最近では深夜枠のアニメが一部のファンに大人気である。
僕は立ち読みで今週のストーリーだけ頭に入れると家へと向かった。



435 侵略者 sage 2007/11/15(木) 00:21:30 ID:7gBcJfZr
僕の家は資産家で家系も由緒があり、地元では名士で通っている。
正門に着くと暗証番号を打込み、静脈流認証システムに人差し指を置く。
オートロックの頑丈な門が開き、僕は家の玄関へと向かった。

いつものことだが両親はまだ帰っていない。
気持ちを落ち着ける。
深呼吸して玄関の扉を開ける。
「ただいま…」
誰も返事をしない。
物音もない。
あれ?もしかしたら今日は2年振りの平穏な木曜日が…
そう思った瞬間、景気のいい音楽が大音量で流れ、僕の儚い希望は砕け散った。

「ふふふ…今日こそは我が軍門に下ってもらうわよ、啓太」
エイリアン・ちゃあみぃの決め台詞が聞き慣れた声で家の中に響く。
「美貌と知性は銀河を統べる!侵略の女神、エイリアン・ちゃあみぃさんじょおっ♪」
目の前に現れたのは僕の姉、佳奈。
エイリアン・ちゃあみぃになりきった僕の姉・佳奈。

ピンクのフリルのスカート(「股上」5センチの超ミニだ)
白のパンティ(土手の部分の帝国のロゴ(ハートを剣で貫いたデザイン)まで再現)
炎を形どった胸当て(半透明)
そして真っ赤なブーツと手袋

いつもながら完璧なコスプレ。



…僕は深い溜め息をついた。


436 侵略者 sage 2007/11/15(木) 00:22:27 ID:7gBcJfZr
漫画好きだが勉強には完璧な姉が厳格な両親に認めさせた唯一のわがままが毎週木曜の「ちゃあみぃごっこ」だった。
厳しい両親によって高校時代を勉強漬けにされた姉の楽しみといえば、弟の僕が買ってくる漫画雑誌だけだった。
僕は勉強に疲れた姉が一生懸命に読んでくれるのが嬉しくて毎週欠かさずお気に入りの雑誌を買ってきた。
鬱積した姉の精神がこんな形で爆発するとは夢にも思わずに。


「今日の作戦は完璧よ♪覚悟しなさい啓太」

「啓太」は僕の名前であり「ちゃあみぃ」に毎回襲われる主人公の名前でもある。
最近僕は両親か漫画の作者か、どちらを恨むべきか真剣に悩んでいる。

はいはい、作戦ね。
今週は人体の急所を成人向け雑誌や女性誌で学んだちゃあみぃが、啓太の首筋や耳朶、挙句に乳首や一物を責めまくる筋書きだ。

「いくぞ啓太」
台詞と同時に姉が飛び掛かってくる。
デフォルメされた漫画のポーズそのままに。
漫画では押し倒されるが僕はひょい、と身を躱す。
ずだあん、と激しい音がして姉が廊下にダイブする。
パンツ丸出しで鼻を押さえて涙目の佳奈。
鼻血がどぼどぼ出て檜張りの廊下に大きな丸をいくつも描く。



437 侵略者 sage 2007/11/15(木) 00:23:18 ID:7gBcJfZr
「ちょっとお、どうして避けるのよ、啓太」
「決ってるだろ、漫画と同じコトされてたまるかよ」
風俗ならVIPコースのプレイだが、実の姉にされれば犯罪だ。
さて、さっさと退散しよう。
自分の部屋に行こうとした僕を佳奈の言葉が金縛りにした。

「ふ~ん…啓太が相手してくんないならお姉ちゃんまた有名になっちゃおっかな~」

「う…」

半年くらい前。
毎週「ちゃあみぃごっこ」に突き合わされた僕が徹底的に無視したことがあった。
その時は拗ねただけの姉だったがとんでもないしっぺ返しをやらかした。
その週末、あろうことか秋葉原にちゃあみぃの姿で闊歩したのだ。
たまたま来ていた取材のインタビューに答える姉をテレビで見た両親は卒倒、近所をカメラを持った怪しげな連中がうろつくようになってしまった。
「啓太、木曜日だけは我慢しなさい」
最近の両親の口癖である。



仕方なく僕は佳奈に向き直る。
姉は再びポーズを取ると懲りもせず飛び掛かる。
「うわ、ちゃあみぃ!だから俺はただの学生だってば」
今週の「啓太」と同じように押し倒されていつもの台詞を吐く。



438 侵略者 sage 2007/11/15(木) 00:24:17 ID:7gBcJfZr
「啓太、いつまでそんな嘘をつくつもりだ?」
記憶力抜群の姉は台詞の暗記も完璧だ。
「ふふふ、覚悟しろ。地球人の弱点は全て把握しているのだあ」


この後僕は、今週の筋書き通りに姉の指と舌で全身をおもちゃにされる。
漫画通りの間抜けな台詞を大まじめに吐きながら。
両親は「エイリアン・ちゃあみぃ」の過激さを知っているのだろうか。
姉の心の歪みを理解しているのだろうか。

恋も遊びも許されず、戻らない高校時代を勉強一筋に過ごした姉。
幼い頃はままごとが大好きだった無邪気な姉。
早々と両親から期待されなくなり好き勝手に過ごした僕をずっと見ていた姉。


今、自由で天然でエッチなちゃあみぃに逃げ込むことで、やっと安らぎを手に入れた姉。


いたずらっ子の表情で僕の乳首を舐めてる姉の頭を、いつしか僕はそっと撫でていた。

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最終更新:2007年11月24日 00:40
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