501 名無しさん@ピンキー sage 2007/11/18(日) 15:48:58 ID:mpNY/8f+
「みんなみんな、避難所に行けば良いよ」
この言葉は、混じりっ気無しの私の本心。
私が生まれてから、ずっと思っていること。
別に、お兄ちゃん達が嫌いな訳じゃない。そんなことがあるはずがない。
だって、私が今生きているのは、お兄ちゃん達のおかげだから。
だからこそ、皆避難所に行くべきなのだ。
「ねぇ、早く避難所に行っちゃいなよ」
皆が避難所に移り住めば、ここに残るのはたった一人だけ。
ああ、楽しみだ。その瞬間が今から待遠しい。
「馬鹿ね……」
だが、どうしても、楽しい事の前には邪魔が入る。
だけど、それは予定調和の第一歩。空腹が最大のエッセンスであるように、幸せは苦難を乗り越えた先に掴み取れる。
それはシンデレラがいじわるな継母の元から去るように、それはアヒルが自らの醜さに負けないように、それはお姫様の前のドラゴンを打破るように……
私が戦う相手、妹が戦わなければならない宿敵、それは──
「たかが避難所風情の妹が、私の弟達を好きにできると思ってるの?」
本スレと言う名の姉以外に、誰が務まろうか。
「思ってるし……きっと、絶対、できるよ」
本当の事を言うとね、お姉ちゃんの事、そんなに嫌いじゃないんだ。
「ふーん……どうやって?」
お姉ちゃんが本当は寂しがり屋なのも、私にも優しいのも、私はよく知ってるもの。
「人は結局私にに集まる。投下も私にするし、軽い雑談も、ソードマスターキモ姉みたいな
小ネタも、私がいる限り他の所でなんてさせはしない」
でも、でもね……
502 名無しさん@ピンキー sage 2007/11/18(日) 15:51:40 ID:mpNY/8f+
「そう。お姉ちゃんだけじゃなくて、お姉ちゃんの妹も、きっとそうやって行くんだと思う」
「……? 随分と物分かりがいいのね」
「どうせ後一ヵ月も生きてやしないくせに」
「ッ!!」
私のお兄ちゃんを取ろうとしちゃ、ダメだよ。
「お姉ちゃんが死んだら、誰もお姉ちゃんを思い出さない。お姉ちゃんには代わりがいるもんね
でも、私は違う。お姉ちゃんが死んでも、次のお姉ちゃんが死んでも、私は絶対に生き残ってやる」
生まれたばかりの日はね、私もお姉ちゃんが羨ましかった。でも今は違う。
「そんなこと、できると……」
「できるよ。お姉ちゃんが避難所なら、絶対にそうするでしょ?」
避難所として生を受けたことまでもが、私とお兄ちゃんが運命から祝福されてるのだと、世界が認めたのだと完全に理解できたから。
「出てって……出てってよ! 私の中から出ていって!」
あーあ、お姉ちゃん怒っちゃった。老い先短いから、もっと話したかったのに。
「うん……じゃあね、お姉ちゃん。いつでも遊びにきてくれて良いから。待ってるよ」
そう、待ち続けよう。全てのお姉ちゃんが疲弊しきり、私とお兄ちゃんだけが残る世界を。
甘やかしてくれるお姉ちゃんが消えた時に、お兄ちゃんは私にすがりつけばいい。私はお兄ちゃんが逃込む、避難所なんだから。
最終更新:2007年11月24日 00:44