理緒の檻(その21)

560 理緒の檻 ◆/waMjRzWCc sage 2007/11/21(水) 22:19:28 ID:F15CGXIl
「ねぇ、修くん」
「りおねぇちゃん?なぁに?」
「修くんは理緒と一緒に居てくれる?どこかに行ったりしない?」
「うん、ぼく、りおねぇちゃんといっしょにいるよ」
「修くん…ありがとう。その代わり、理緒は修くんを……」


ん…夢、か?
随分と昔の事を見たな…
あの後、理緒姉は俺に向かってなんて言ったんだろう。
思い出せない…
ぐっ…いってぇ…
そうか…俺、刺されたんだっけ…
あれ、手が温かい…
俺はゆっくりと体を起こす。
「すぅ…すぅ…修くん…」
理緒姉…俺を、見ていてくれたのか?
つーか今何時だ?
時計を見る。
針は3時を指していた。
夜中の3時かよ…
「修くん…?」
「理緒姉、ごめん、起こしちゃったかな?」
「修くん…!ごめんね…理緒のせいで、理緒のせいで…」
俺は理緒姉の髪をくしゃくしゃっと撫でた。
「ふぇっ!?修くん?」
「そんな顔しないでくれ。それじゃ俺が刺された意味が無い」
「ひっく…ひっく…ごめん…ごめんね…」
…理緒姉の泣いてる顔、可愛いよな…
「もう、あんなことしないでくれよ」
「うん…あの、修くん」
「ん、どうしたんだ?」
「一緒に、寝ても…良い?」


561 理緒の檻 ◆/waMjRzWCc sage 2007/11/21(水) 22:21:33 ID:F15CGXIl
いつもは勝手に入ってくるのに。
「あぁ、良いよ」
ぱぁっと理緒姉は顔を明るくする。
こんなにころころと表情の変わる理緒姉を見たのは久しぶりだな…
「おじゃまします…んしょ…」
理緒姉は立ち上がり服を脱いで…って
「ちょっと待て」
「…?」
「何故服を脱ぐ必要がある」
「脱がないと、寝れないから…」
そうだったか?
「裸だけはやめてくれよ」
「理緒の裸見たいの?修くん、えっち…」
あ~もうっ!なんだこの違いは!
「見たい訳じゃない!ちっ、反対側向いてるから早くしてくれよな」
俺の後ろでもぞもぞと入ってくる感覚がある。
「修くん、こっち向いて…?」
駄目だ、向いちゃ駄目だ…
「ねぇ…こっち向いてくれなきゃ寂しいよぉ…」
耳元に理緒姉の息がかかる。
…こんなの、耐えられるかっ!
仕方ないので目をつむって理緒姉の方に振り向く。
「えへへっ…修くん、あったかい…」
あんまりくっつかれると、胸が当たって…
「修くん…大好きだよ…」
…この人は俺を悶絶死させる気か?
「理緒、修くんが居てくれて幸せ…これからもずっと、一緒に居てね…?」
「あぁ…理緒姉、おやすみ」
「おやすみ…」



562 理緒の檻 ◆/waMjRzWCc sage 2007/11/21(水) 22:24:11 ID:F15CGXIl
お母さんの復讐なんて、止めた方が良いのかな…?
でも、私は今までそれだけを考えて生きてきた。
妹達はあまり覚えていないお母さん。
私が覚えていてあげないと、お母さんは消えてしまう。
私がやらないと…
だけど、もし復讐が終わったら?
私は何を考え、何を目標に生きていくの?
織部君を得る事?
織部理緒に復讐したら間違いなく嫌われる。
多分会ってすら貰えないし、話もしてくれない。
そんなの嫌…
私は、どうすれば良いの?
…織部君に、会ってみよう。
織部君なら、なんとかしてくれる気がする。
朝になったらすぐに病院に行ってみよう…
私はそう考えて眠りについた。



どうして、修お兄ちゃんは私だけを見てくれないんだろう。
私は修お兄ちゃんしか見ていないのに。
まだ、子供だから?
それともあの人が居るから?
一つ目なら問題無い。小学生の私はすぐに成長する。
背も、胸も、今より大きくなるだろう。
二つ目だった場合…私はどうすれば良いの?
…あの人を、殺してしまえば良い。
もちろん修お兄ちゃんにバレない様に。
でも、本当にそれで良いのかな…?
人を殺して、修お兄ちゃんと一緒に居られるかな…?


563 理緒の檻 ◆/waMjRzWCc sage 2007/11/21(水) 22:27:16 ID:F15CGXIl
これは、夢か…
だって、あそこで話をしているのは間違いなく昔の俺だ。
ただ…俺と話してるあの男は誰だ?
「修……お前の名前…………意味……檻…」
なんだ?何を言ってるんだ?
良く聞こえない…
「…………それじゃ、もう会う事も無いだろう。俺の息子」
息子?じゃああいつは、俺の父さんなのか?
おい、待て!聞きたい事が…
「待てっ!」
「ひゃうっ!」
父さん…あの人が、俺の父さん…
「修くん?いきなり叫んで、どうしたの?」
「あ…ごめん理緒姉。ちょっと、夢を見てたんだ」
「夢って…理緒の?」
「ごめん、違う…父さんの夢だった…」
「お父さんの…?でも、修くんお父さんの顔なんて覚えてないでしょ?」
「顔は分からなかった。だけど、最後に言ったんだ。俺の息子って」
そう、確かに言ったんだ。
だけど、もう会う事も無いだろうとも…
なんで会えないんだ?
それに俺の名前がどうこうって…
別に俺の名前に特別な事なんかないだろうし。
全然わかんねぇ…
コンコン
「織部さん、入りますよー」
「あ、はい」
えっと、誰だ?
あぁ、ここは病院だから看護師の人かな?
ガチャッ
「お体の具合はいかがですか?」


564 理緒の檻 ◆/waMjRzWCc sage 2007/11/21(水) 22:29:46 ID:F15CGXIl
脇腹は…まだ痛みが残っている。
当然の事だろう。なにしろ昨日刺されたのだから。
「少し痛みますけど、大丈夫です」
本当は結構痛むけど、理緒姉が居るから強がっておく。
「そうですかぁ。でもかなり深くまで刺さってましたからまだ安静にしてて下さいねぇ?」
「…はい」
なんだか、ふわふわとした人だな…
語尾はいちいちのびるし、何も考えてなさそうな感じだし。
「あっ、自己紹介がまだでしたぁ。ぼく、神代千那っていいますぅ」
「神代さん…え~っとぼくって?」
見た目完璧に女性だけど…男なのか?
「ぼくはぼくですよぉ?小さい時からずぅっと自分をぼくって呼んでますぅ」
う~ん…なんだか力が抜けるというか和むというか…
「あの、神代さん」
「なんですかぁ?」
「もう少し、ビシッと話せないかな?」
「えぇ、話せますよ?」
えぇっ!?全然話し方違うぞこの人!
「なんでいつもその話し方をしないんですか?」
「だって、疲れちゃいますから」
「はぁ…そうですかぁ」
っ…ついつられてしまった…恐ろしい人だ。
などと思っていたら服をくいくいと引っ張られた。
「理緒姉?どうしたの?」
理緒姉は無言でこちらに訴えかけてくる。


565 理緒の檻 ◆/waMjRzWCc sage 2007/11/21(水) 22:30:22 ID:F15CGXIl
「あ、お姉さんですねぇ。お見舞い、お疲れ様ですぅ」
理緒姉は何も言わない。
「えっとぉ、何か有りましたら遠慮無くお呼び下さいぃ。それでは、失礼しますぅ」
そう言って神代さんは部屋を出ていった。
「…理緒姉、どうしたんだよ?」
「だって、修くんがあの人と話してるの、いやだったから…」
「だからって挨拶位はしないと」
「だって…うぅ…」
…昨日から理緒姉はおかしい。
今も、たったこれだけの事で目に涙を浮かべている。
先に産まれた子供は大きくなった時に下の子供ができると、幼い時の様な行動を取って親に甘えるってのは聞いた事が有る。
理緒姉も過去の出来事を思い出したせいで、そのショックから自らを守る為に精神を幼くしたのだろうか。
「うっ…うっ…だって、修くんが理緒以外の人と話してるの、いやなんだもん…」
…いくらなんでもこれはどうかと思うぞ?
「あ~分かった分かった。俺が悪かったよ」
全く…これじゃどっちが年上だかわかんねぇな。
「じゃあ、頭撫でて…?」
なんでそうなるんだ…
ただ、断ると本気で泣きそうだから仕方なくぺたぺたと撫でる。
「えへへ…」
これじゃ妹だよ…これから先が思いやられるな…

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最終更新:2007年11月24日 00:53
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