無題4.5

459 :名無しさん@ピンキー:2007/11/17(土) 06:18:55 ID:qO2jJ4jF
僕は不細工だ。
他人に言われるまでもなく自覚している。
長く伸び放題の髪に悪い目つき。
学校での僕のあだ名はブサ男(不細工な男の略語らしい)。
ただの不細工なら学校中に噂になる事はないが、僕の場合になると少々違ってくる。
なぜなら……。
「お兄ちゃ~~ん!!!」
何かが僕の背中に捕まり、ぎゅっと抱きつく。
柔らかな感触と、柑橘系の香りが鼻腔をくすぐる。
「えへへ。」
横に顔を向けると、僕に抱きついてきた何かが顔をとろけさせていた。
僕が学校で有名(悪い意味で)になったのはコイツのせいだ。
どこで、道を間違ったのか。
実の妹は超絶ブラコンになってしまった。
例え天下の往来であろうが、学校であろうが。
僕を見つけ次第、抱きつく。
好きだ好きだと、連呼する。
だが、最も危険なのは本当に僕と血が繋がっているのか?と疑いたくなるようなその容姿。
可愛い過ぎるのだ。
学校に入学してその日のうちに全校生徒に名が知れ渡り。
次の日には僕に抱きついたのを見られ、僕の見た目もあってか一躍、有名兄妹になった。
不細工な実の兄を愛して止まない、超美少女と。
そんな妹から猛烈アタックされている不細工な兄として…。
「お兄ちゃん今から帰るところ?」
未だに抱きつく妹を無理やり引き剥がすが、今度は強く腕組みをされた。
「まずは離れろ。」
ここはまだ校門で、帰宅途中の学生の注目の的になっている。
正直これ以上目立ちたくない。
僕達を見ている学生達はヒソヒソ話をしているつもりだろうが、所々「ブサ男」という単語が聞こえてくる。
全くもって不愉快だ。
そして、一刻も早く逃げ出したい。
未だに腕組みをしている妹を再び引き剥がすと、早歩きで自宅へと向かった。



自室…それは僕自身にとって最後の砦であり。
唯一の寄りどころな筈だった。
少なくてもさっきまでは…。
「お兄ちゃ~ん。」
僕より、少し遅れて帰ってきた妹は。
自室に戻ることなく、僕の部屋に入ってきた。
本来ならば鍵をかけれたら良いのだが、鍵は妹によって数十回と壊され。
僕も両親も、取り付ける度に壊される鍵を目の当たりにすると、もう諦めるしかなかった。
「なぁ…服着替えて来たらどうだ?」
帰宅してから、直で僕の部屋へ来るなり。
問答無用で僕の片腕を胸元できつく握り締め。
幸せそうに頬摺りをしていた妹は、片腕を抱きしめたまま顔を上げ、僕を見上げる。



460 :名無しさん@ピンキー:2007/11/17(土) 06:21:14 ID:qO2jJ4jF
「だって…お兄ちゃんどっか行きそうだもん。」
ちっ。
妹が着替えてくる間に、コンビニ行こうとしたのだが。
どうやらばれたらしい。
「ほら、やっぱり…。」
僕を見上げていた妹の目尻に涙が溜まっていく。
「分かった!分かった!ずっとここに居るよ。」
「本当?」
「本当。」
「うん、じゃあ着替えてくるねっ。」
今まで泣きかけていたのが嘘みたいに、笑うとやっと自室へ帰ってくれた。
長い栗色の髪が出て行くのを見ながら、溜め息を一つ吐く。
昔は、こんなにブラコンじゃなかったのに…。
数分の間を思考に費やしていたが、ガチャと音を立てながら静かにドアが開くと。
思考が霧散した。
ドアから入ってきた侵入者は、さも当然だといわんばかりに僕の横に座ると。
僕に抱きつき、にっこりと微笑む。
こんな兄でも、慕ってくれるのは正直嬉しいと思う。
だからといって、このままで良いとも思えない。
「えへへ、お兄ちゃん大好きだよ~。」
これからの事を考えると、自然と溜め息が流れ出る。
「お兄ちゃん、溜め息するとね幸せが逃げるらしいよ?」
誰が原因だか分かっているのか?
「だからね…逃げた幸せの分だけ私が幸せにしてあげるねっ!」
妹の将来が本気で心配で仕方ない。
結局夕飯までの間、溜め息と幸せの関係性を教授される事となった。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2007年12月12日 12:25
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。