210 :
理緒の檻 ◆/waMjRzWCc :2007/12/14(金) 23:18:22 ID:0W3B1hOm
…俺の病室ってどこだっけ?
俺は薄暗い病院の廊下に方向感覚を失い、迷ってしまっていた。
「誰か居ないかな…」
ぼそりと呟いた言葉もやけに反響して聞こえる。
こういう時は人間悪い事を想像するもので、先程の夢を思い出してしまった。
…なんで冬華ちゃんが俺を殺すんだ?
夢の中の冬華ちゃんは、自分の物にしたいからみたいな事を言っていた。
現実の冬華ちゃんは、そこまで俺の事を好きなんだろうか。
あの子はまだ小さいから、ちゃんと理解しきれていないんじゃないだろうか。
男女のああいう行為がどういう意味を持つかを。
きっと今の俺に対する感情なんて一時の気の迷いみたいな物なんじゃないだろうか。
「あれ?織部さん?」
「うわぁっ!」
びっくりしたぁ…考え込んでいたから足音も何も聞こえなかった…
「神代さん、ちょうど良かっ…た…?」
神代さんは下を向いて少しふるえている様に見えた。
「織部さん…あなた何やってるんですか!」
すごく怒ってるみたいだ…
「え、えっと…道に迷ってしまいまして…」
「こんな時間に勝手に病室を抜け出さないで下さい!」
喋り方がいつもと完全に違ってる…
「すいませんでした…」
211 :理緒の檻 ◆/waMjRzWCc :2007/12/14(金) 23:19:39 ID:0W3B1hOm
「全く…ぐすっ、傷口が、ひっく、開いちゃったら、うっ…どうするつもりですかぁっ…!」
うわぁ…泣かせちゃったよ俺…
と、とりあえず謝っておかないと。
「えっと、心配かけて申し訳ありませんでした」
誠意を込めて頭を下げる。
「ぐすっ…もう良いですから、病室に戻りましょう」
「お願いします」
神代さんの後をついて行く。
少し見覚えの有る廊下を通って、病室についた。
「あの…急に怒ってしまって、すいませんでした…」
「あ、いや、悪いのは俺ですから謝らないで下さい」
「びっくりさせてしまいましたよね…ぼく、感情がたかぶるといつもこうなんです。自分でも抑えられなくて…」
しょんぼりと肩を落とす神代さん。
「ぼく、向いてないのかなぁ…」
「そんなことありませんよ」
「えっ…?」
「こんなに人を心配してくれる人が、看護婦に向いてないなんて誰も思いませんよ」
神代さんは本当に看護婦に向いていると思う。
普段少しのんびりした所も有るけど、それを補って余りある優しさが有ると思う。
「…ありがとう、ございます」
自分の言った事が少し恥ずかしくて、自分のベッドに横になる。
212 :理緒の檻 ◆/waMjRzWCc :2007/12/14(金) 23:20:34 ID:0W3B1hOm
「…」
無言の時間。
「……」
なんでずっと見られてるんだろう?
「………あの」
「…なんですかぁ?」
「部屋、出ないんですか?」
「また抜け出されると困りますからぁ…」
そういう事か…
だが、そこまでじっと見られてるとなんだか恥ずかしいんだが…
ここはちょっと、いや、かなり恥ずかしいが嘘をついてでも出ていって貰おう。
「神代さん」
「出ませんよぉ?」
「いえ、いわゆる男の生理現象が起きています」
「と、言いますと?」
そこは読み取って欲しかった…
「その…つまり、抜かないと収まらない感じなので、出て行って貰えますか?」
ちなみに「抜かないと~」からは顔から火が出る程恥ずかしくて聞こえるか聞こえないか位の小声だった。
「そういう、事ですか…」
すっと立ち上がる神代さん。
良かった…これで出て行ってくれるだろう。
多分嫌われたろうけど。
目をつむって顔を見ない様にしておく。
「織部さん…その、ぼくで良ければ…お手伝いします…」
…あれ?全然考えてた展開と違うぞ?
「えっと…初めてなのでつたないと思いますけど…」
いやいやいやいやっ!違う違う違うって!
とか言ってる間に布団めくられてるし!
213 :理緒の檻 ◆/waMjRzWCc :2007/12/14(金) 23:21:19 ID:0W3B1hOm
「あのっ、ちょっ、神代さん!」
「…」
無視して俺のズボンに手をかける神代さん。
混乱している為か俺の物は立ってはいない。
が、パンツの上から神代さんが俺の物を撫で始める。
「神代さん、止めて下さいって!」
一瞬ビクリと体を止める神代さん。
しかし彼女は、
「ぼくじゃ…」
潤んだ目で、
「ぼくじゃ、興奮してくれませんか?」
顔を赤く染めてこう返してきた。
その間も刺激は続いており、俺の物はムクムクと鎌首をもたげ始める。
「良かった…ぼくでも興奮してくれました…」
「いや…えっと…」
体は正直であり、理性は有っても反応してしまう。
「はぁ…男の人のってこんなに大きくなるんですねぇ…」
なんかしげしげと眺められてる…
やっぱり見られるのは恥ずかしい。
多分今俺の顔は耳まで真っ赤になっているだろう。
「えっとぉ…こんな感じで上下に動かせば良いんですか?」
「くっ…あっ…」
柔らかく温かい手に擦られて、俺の物の先から先走りが出始めている。
「ねばねばしてきました…これが、精液ですか?」
「ちが、う…」
「これじゃないんだ…まだ、出ないんですか?」
くちゅくちゅという水音が手が動く度響く。
214 :理緒の檻 ◆/waMjRzWCc :2007/12/14(金) 23:22:14 ID:0W3B1hOm
眼前には顔を仄かに上気させた神代さん。
耳にはいやらしく響きわたる音。
体には単調だが長く続く淡い刺激。
それら全てが、俺の脳に快感として受け止められる。
もう俺の我慢は限界に達しようとしていた。
「ぐっ…」
だが、それでも軽く歯を食いしばって耐える。
つもりだった。
「あの…我慢しないで良いですから…ぼくの体でいくらでも気持ち良くなって下さい」
その言葉で、俺は―
「イ…くっ…!」
ビュルッ!
「きゃっ…すご…い」
ビュクビュクと放たれる白濁液が神代さんの手を、服を汚していく。
「く…はぁ…はぁ…」
「すごい…べとべと…」
頭が、熱い…
熱いがはっきりとしている頭とは対象的に、体はだるい。
イったばかりの倦怠感と、やはりまだ血が足りていない事が影響している。
「また、何か有ったら言って下さい。ぼくにできる事ならなんでもしますから…」
そういって出て行く神代さん。
それを見届けて、目を閉じる。
顔を枕につけると、ひんやりとした冷たさが気持ち良い。
深い眠りに落ちる前に、体が水底へと沈んでいく様な奇妙な感覚。
落ちていた体は、檻に囚われる。
抜け出せない。
でも、不思議と嫌ではない。
215 :理緒の檻 ◆/waMjRzWCc :2007/12/14(金) 23:23:04 ID:0W3B1hOm
とても温かい、全てを包む様な温もり。
これは…本当に檻なのだろうか。
鉄でできた格子、冷たく鈍い輝き…
一般にイメージされる檻のそれらは全く感じられない。
ずっとここに居たくなる様な、そんな場所。
しかし…あまりにも整っていすぎて、不安になる。
わずかな、本当にわずかな不安。
それを遥かに上回る安心がここには有る。
にも関わらず、この不安は消えない。
いつかこの檻が守ってくれなくなってしまうんじゃないか。
いつかこの檻が消えてしまうんじゃないか。
いつか…いつか俺はこの手でこの檻を壊してしまうんじゃないか。
夢とも現実とも思えない狭間の幻想の中で、俺は思い出す。
一番身近な、あの人を。
儚く、脆く、美しい。
強く、弱い、守られ、守るべき存在。
俺の姉…理緒姉を俺はその檻に見ていた…
最終更新:2007年12月27日 13:38