小ネタ『風呂場の攻防戦』

229 小ネタ『風呂場の攻防戦』 sage 2007/08/23(木) 01:14:51 ID:SE1F7dKn
「あ~………今日も疲れた疲れた………」

誰に向けるでもない独り言をポツリと漏らす俺。
今日は色々と忙しかった、学業に部活に買い物にお掃除に料理に。
普段、仕事に出て家に居ない両親と姉ちゃんの代わりに大体の家事は俺がやっている。

それにしても今日は汗だらけ、このままじゃ汗がべたついて気持ち悪いのでさっさと風呂に入ろう。
そう思った俺はさっさと着替えを取ると脱衣所で服を脱ぎ、
身体をさっさと洗って程よい温度の湯で満たされた浴槽へ飛びこむ。

「良い湯~だな!アハハン♪良い湯~だな、アハハン♪」

やはり風呂と言う文化は素晴らしい、これこそ命の洗濯と言うものだ!
ビバ!風呂!グッドだ!風呂!

そう思いながら俺はご機嫌に歌を謡っていた。………………ある人の声を聞くまでは。

「あれ~?、誰か入ってるの?」

この声、姉ちゃんだ!………どうやら今しがた帰ってきた所か………
それに気付いた俺の身体に自然と緊張が走る。

無理もない。
先週、俺が風呂に入っている最中、タオル一丁の姉ちゃんに乱入され、
パニックになった俺が真っ裸のまま、風呂場から逃げ出す出来事が起きたばかりだ。

あの時は本気でヤヴァかった、あの時の姉ちゃんはまさに飢えた狼の目をしていたからだ。
もし逃げ出すのが遅れていたら、もしくは姉ちゃんに捕まっていたら………想像したくもない。

だが、2度も同じ轍を踏むほど俺は甘くない!
数日前に姉ちゃんが仕事に出かけている間、こっそりと風呂のドアの内側に鍵を設置したのだ。
内側から鍵をかけたらドアを蹴り破らない限り絶対に入ることは不可能!
もし蹴破ったとしても音で両親にばれるし、更に後でドアを壊した事で怒られるのも目に見えている。
だから姉ちゃんがドアを蹴り破る、と言う乱暴な真似も出来ない筈だ。

………これで乱入される事なく安心して風呂を楽しめる、ってもんだ。

「弟君が入ってるの?ねえ?」
「ああ、入ってる。だから姉ちゃんは俺が上がるまで待っててくれ。
あ、一応言って置くけど脱衣所で全裸になって待つのも止めろよ?」
「ちっ………じゃあ、あたしも弟君と一緒に入ろうかな~?」

『ちっ』ってなんだ、『ちっ』って。
………俺に言われなければ全裸で待っているつもりだったな!?姉ちゃん!

ま、まあ良い、風呂に入れる物なら入ってみろ!
ドアにしっかりと鍵が掛かっている限り、姉ちゃんは風呂への侵入は不可能!

そう、俺は湯船に浸かりつつ勝ち誇った笑みを浮べてドアの方を見ていた。
やがて服を脱ぎ終わった姉ちゃんがドアの前に来て、ドアを開けようと暫くドアノブに手を掛ける。
……精々ドアをガチャつかせてドアの前で苛立つと良いわフゥアハハハハハ―!



230 小ネタ『風呂場の攻防戦』 sage 2007/08/23(木) 01:17:21 ID:SE1F7dKn
―――だが!

「じゃあ、はいるね~」

ガチャン

え゛!?

俺は耳を疑った。内側からしか開かない筈の鍵が、あっさりと解除される音がしたのだ。

「なっ、にぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」

ドアが開けられる寸前、慌てて湯船から飛び出した俺がドアを抑えて何とか侵入を防ぐ
ど、如何言う事だ!これは一体!?鍵のチョイスと設置は万全だった筈なのに!?

「ちょっと、何でドアを抑えるのよ?入れないじゃない」

直ぐにドアの向こうで開けようとする姉ちゃんの抗議の声が聞こえる。
俺は必死にドアを抑えながら

「待て待て待て!内側から鍵掛けてたのに何で姉ちゃんは鍵を開けられるんだ!?」
「ん~、あたしに黙って鍵を設置した、弟君の懸命な努力は認めるわ。
でもね、弟君が学校に行っている間に鍵を変えられちゃあ意味無いよね?
お陰で1日だけ仕事すっぽかしちゃったけどね?」

し、しまったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?
まさか俺が学校に行っている間に、わざわざ姉ちゃんが家に帰ってドアの鍵を変えているとはっ!?
クソっ、相手の方が一枚上手だったのか!!

「ほらっ、さっさと開けなさい。お姉ちゃんと洗いっこしましょうよ♪」
「断固断わる!つか来るな入るな覗きこむなっ!!」

僅かに開いたドアの隙間から見えた全裸の姉ちゃんの目は、明らかに情欲に燃えていた。
もし侵入を許せば、洗いっこどころかナニされるか分かったもんじゃない!
背筋に走る怖気を感じた俺はドアを抑える力をより強める。

がちゃがちゃがちゃがちゃ!

「もうっ、何を意地になってるのよ。別に痛い事とかしないから開けて頂戴♪」
「痛い事よりも更に性質の悪い事しそうな姉ちゃんだと分かってて開ける馬鹿居るか!」

がちゃがちゃがちゃがちゃ!!

「もう、性質の悪いって如何いう事よ!あたしはただ弟君と性的なスキンシップをやりたいだけじゃない」
「性的って言う言葉か混じっている時点でダウトだっ!」

がちゃがちゃがちゃがちゃ!!!

無理やり風呂場に押し入ろうとする姉ちゃん。貞操を守るべく風呂場への侵入を阻止する俺。
姉弟の一進一退の攻防が続き。

――――そして



231 小ネタ『風呂場の攻防戦』 sage 2007/08/23(木) 01:18:11 ID:SE1F7dKn
              《一時間後》

「くぅ………迂闊だった………まさか湯当りしてしまうなんて………」
「熱気ムンムンの風呂場で暴れるからよ、さっさとあたしを入れてりゃこうはならなかったのに」
「馬鹿……何かしそうな姉ちゃんを素直に入れる訳ないだろ………」
「素直じゃない弟君ね。ま、其処が可愛いんだけど、フフ」
「くっ………弟をからかうな………」

風呂場近くの和室で、見事に湯当りをして布団で寝こむ羽目になった俺と
そんな俺をからかいながら団扇で俺を仰ぐ姉ちゃんの姿があった。

………貞操こそ守れたが、恥かしい姿はバッチリと見られた訳で………かなりの屈辱的………
「これからは銭湯を使おう」と俺は頭の中で硬く決意しただった。

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最終更新:2007年10月21日 00:39
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