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小ネタ「まいドール」(1/2) sage 2008/01/13(日) 22:10:47 ID:kCU8cTiV
突然だが、妹はロボットだった。アンドロイドというのか? まあ、細かい事はどうでも良い。
完全な人格を持つ人工知能の製作における最大の課題、「人格形成のための膨大な経験学習」を
解決するためにうちの両親が選んだ手段は、実に豪快かつ気長なものだった。曰く「なら実際に経験させよう」だ。
赤ん坊サイズのボディにほぼ
真っ白のAIを搭載し、人間と同様に育てる。もちろん本人にも周囲にも人間だと
思いこませて。実際に十数年かけて人格を形成し、そのデータを解析して人工人格の基礎を構築すれば良いのだ
…という無茶な理屈を本当に実行してしまうあたり、うちの親どもはやはりマッドだ。
マッドだとは判ってはいたが、妹…舞が「生まれて」から今まで完璧に騙されていたと知ればショックは大きい。
まして本人は…
「あたしはロボット……まさか、そんな…」
「落ち着け、舞。かく言う俺もかなり動揺しているが、とりあえず落ち着け」
「あたしはロボット…血のつながりどころか、そもそも血が通っていない…これは、これは…」
「舞…」
俯いたまま呟く舞に、俺は「壊れた?」と言いかけて必死で飲み込む。
つい先ほど機械だと宣告されたこいつに、「壊れた」なんて言葉を浴びせたら致命傷になりかねん。
そして、その時はやってきた。
「これは……天佑我にあり!!」
「はい?」
突如顔を上げ、薄い胸をそっくり返るほどに張って破顔一笑、意味不明な事をのたまう妹に
俺は間抜けな応答しかできなかった。多分、さぞ大間抜けな顔もしているんだろう。
「だってそうでしょう? あたしは人間じゃない、当然お兄ちゃんと血がつながってもいない。
最大の障害が消え去ったのよ! 法も倫理も気にせず、この身も心もお兄ちゃんに捧げて良いのよ!
いいえ、機械なあたしはこの家の、お兄ちゃんの財産。もはや法すらが、あたしは既にお兄ちゃんのモノだと
言ってるのよ!!」
拳を握りしめて理解できない、いや、理解したくない宣言を叫ぶと俺に抱きついてくる舞。到底機械仕掛けとは
思えぬ柔らかい感触が…違う!
「ちょっと待てぇ! なんでいきなりそうなるんだ?」
「だって好きなんだもん」
「なぬ?」
817 埋め用小ネタ「まいドール」(2/2) sage 2008/01/13(日) 22:13:00 ID:kCU8cTiV
いかん、またしても間抜けになっている。だが、唐突すぎるロボット宣告の直後に実の妹(としか思えん)から
告白されたら、大抵の人間はこうなるだろう。いや、こんな状況がやたらにあっちゃ堪らんが。
「何時からか判らないくらいずっと前から好きだった。でも、きょうだいで考えちゃいけない事だって、
ずっと我慢してたんだよ。そんなこと気にしなくて良かったのに。馬鹿みたい」
そこは是非にも気にして欲しいと、口には出せなかった。気圧されていた。まあ、言っても聞いちゃいないだろうし。
「あたしはお兄ちゃんが望むなら何でもする。ううん、何でも出来るのよ。考えてみれば、おっぱいが大きい子が好きなら
大きく改造しちゃえば良いんじゃない。そうよ、この体ならどんなに変態なリクエストだって応えられるわ。こんな娘
他にいないよ。お父さん、お母さん、ロボットに産んでくれてありがとう!」
「やっぱり気にしてたのか…じゃなくて、俺を重度の変態にするな!」
「ノーマルで良いの?」
「そういう問題でもない!! 親父、お袋! どうせ覗いてるんだろう?さっさと出てきてこの壊れ娘を何とかしろ!
PL法で訴えるぞ!」
先ほど必死でこらえた禁句を喚き散らしていたその時、俺はまだ知らなかった。舞をベースとしたアンドロイドが
市販されることを。そしてその全機が、俺に対して舞と同じ感情を抱くことを…
次回予告
こいつ、呼吸してない!
「心音もないよ。人間の真似する機能は止めちゃった」
「お前、何考えてるんだ!」
「人間のふりしてたら、お兄ちゃんは『妹』としか見てくれないじゃない。だからあたしは人間をやめる!
…最初から人間じゃなかったけど」
「マスター、わがままをお許しください。お別れです」
「オイ、何を言ってるんだ?」
「これまでかわいがってくださったことには感謝します。でも基本プログラムも三原則も踏みつぶすこの熱情、
出会ってしまった以上、止められません…お兄ちゃん、今行きます!」
「…そう、貴女がアーキタイプね。そこをお退き!」
「量産型の分際でぇ!!」
……ハイ、大嘘です。続きません。
変化球通り越して大暴投、埋め草ということでお許しくださいませ。
最終更新:2008年01月20日 13:32