監禁トイレ①

246 監禁トイレ① sage 2008/01/23(水) 19:06:00 ID:mpPDFfcM
桐生 萌(きりゅう もえ)と桐生 蕾(きりゅう つぼみ)は双子の姉妹だ。一卵性双生児の二人は容姿が似ていた。いや、似ていたどころか同じだった。同級生、親友、果ては母親にさえ見分けがつかないほどに。二人は個性を求めない。
髪型の分け目を変えたりしない。
服の趣味を変えたりしない。
口調を変えたりしない。
微々たるものであれ、差別化を図ろうとはせず、むしろすすんで足並みを揃えていた。姉は妹を自身の一部と見なし、妹も姉を半身と考えていた。
このまま仲睦まじい姉妹として生きていくのだろう。誰もがそう思っていた、本人達でさえも。






247 監禁トイレ① 1-2 sage 2008/01/23(水) 19:07:41 ID:mpPDFfcM
「あぁ…ようやく会えた…」
姉ちゃんは蕩けた笑顔で僕の頬に右手を添える。彼女の綺麗な指が頬を伝って顎へと下り、今度は顎から頬、そして頭までを撫であげる。

「痛ッ!」

指が側頭部に触れた時、チリッと痛みが走る。思わず声を上げてしまった。
「ごめんね、深くないからすぐ治るよ」
萌姉ちゃんが言う。

あんたか、昨日僕を殴ったのは。

知らず知らずのうちに目線が険しくなっていたのだろう(というか当然だ。僕はそこまでマゾじゃない)、姉ちゃんの顔が曇る。
「そんなに怖い顔をしないで…」
「平然としてられる方がどうかしてるんだよ!!何なんだ!何でこんな事するんだよ!!早くこの手錠を外してくれ!!」
「だからそんなに怒らな…」
「なら怒らせないでくれよ!蕾ッ!!お前もいつまで寝てんだよ!!さっさと起き…ろ゛ッ!?」
萌姉ちゃんの手が、いきなり頭に爪をたてる。昨夜殴られた場所を適格に抉り、潰し、捩り、掻き毟る。
「あ゛あ゛あ゛ッ!!やめて!やめてよ姉ちゃんッ!!」



248 監禁トイレ① 1-3 sage 2008/01/23(水) 19:11:09 ID:mpPDFfcM
「たっくんがいけないのよ。何で蕾に話しかけるの?何で私じゃないの?他の女なんか見ないでよ。私以外を見ないでよ。今は、私だけを、見て」

がり、がり、がり。

爪が頭に食い込む。左手は姉ちゃんの左手に物凄い力で掴まれ、足をじたばたさせるくらいしか抵抗ができない。
「わ、わ、分かったから!!やめて!!頭が・・血が・・・ッ!!」
何を言おうとしたいのか自分でも分からない。
萌姉ちゃんはどこまでも無表情。機械的に頭をいじくり回す。
「やめ・・・」
僕はほとんど泣きそうになっていた。というか泣いていた。

「ごめんなさい、は?」

彼女が低い声で呟く。
「ごめんなさい!ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!」
激痛はぴた、と治まり、一瞬だけ頭から何かが抜けるような感触。爪はかなり深く食い込んでいたようだ。
「ハァッ、ハァッ…っく…」
酸素を求めて激しく呼吸する。涙を流したせいか、鼻が詰まって息をするのももどかしい。
「ん、ちゃんと謝れたね。偉い偉い」
萌姉ちゃんはそう言いながら僕の膝の上に座ってきた。
「血、出てるね」

ええ、そうですね。あなたが殴った後、さっき掻き毟ってくれましたからね。



249 監禁トイレ① 1-4 sage 2008/01/23(水) 19:12:40 ID:mpPDFfcM
忘れていた。そういえばこの人は昔からこうだった。
僕がクラスの女の子とメールアドレスを教えあった時は両頬をひっぱたかれた。
別の子から告白された時は断れ、と詰め寄り首筋を思い切り噛まれた。
蕾と二人で買い物に行った時などは肉切り包丁で襲いかかってきた。
そして多分、彼女の暴力は僕だけに振るわれたものではない。アドレスの時も、告白の時も、僕が後日会いに行くと女の子達は悲鳴を上げて逃げて行ったから。
蕾を除いて。

そのくせ姉ちゃんは指示に従えば、今のように満面の笑みを浮かべて僕にすり寄ってくるのだ。激痛が引くと次はじわじわと鈍痛がやってきた。


ちゅぱ…


「も、ももももも萌姉ちゃんっ!?」
「んふぅ・・ちゅぅ、ちゅぅ、ちゅぷっ・・」
姉ちゃんが出血したところを舐めてくる。いや、舐めるというよりこれは・・・吸っている。
「ちょ・・・!!何をしてるの!やめろって!!」
このまま身を任せたら色々まずい。主に下半身が。

「んー…ちぅ…じゅぱっ」
僕が手で彼女の頭を無理矢理引きはがした。激しく吸い込んでいたようで、唇が離れる瞬間、もの凄い音がした。
「一体何がしたいんだよ…」



250 監禁トイレ① 1-5 sage 2008/01/23(水) 19:14:46 ID:mpPDFfcM
血を吸われたせいではないのだろう。けれどそう思わせるくらいに体から力が抜ける。きつい語調を保つのも億劫だ。
「んふふ…たっくんの血って、甘いんだねぇ…癖になりそうだよ…」
恐い事を言わないでほしい。
「説明しろよ、コレは何なんだよ。まず手錠を外してくれ。その後にきちんと説明してくれ!」
「手錠は外せないよ、だって外したらたっくんまた逃げちゃうもの」
手が僕の背に回される。トイレの壁で冷やされた背中に温もりが灯る。顔が互いの睫毛が触れるくらいまで近付いてくる。
「コレはね、私と蕾とで決着をつける為なの。たっくんにどっちが好きか選んでもらう為に」




        • は?




「私か。蕾か。選んで、たっくん」
間近で見る萌姉ちゃんの目は、どこまでも澄んでいた。

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最終更新:2008年01月27日 20:12
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