素晴らしい一日

276 素晴らしい一日 sage 2008/01/25(金) 10:44:19 ID:mt/MqcdD
 今日は俺にとって、人生の分岐点と言える程、大事な一日だ。
 そう、憧れの彼女とのデート、そして告白を決行するのだ。
 今まで慎重に深めてきた絆、今日の為の準備も万端だ。
 「行くぞー!」
 大きく深呼吸をしてから自分に気合いを入れる。
 「どこに?」
 醒めた冷たい声が返ってきた。

 声の主は妹、生意気どころか、兄を兄とも考えない冷血女だ。

 「お前には関係ねー」
 目的が悟られぬよう、突き放した物言いをする。告白に行く事を知られたら、どんだけ馬鹿にされるか…。
 「フーン…」
 まるで品定めでもするかのように、ジロジロと人を見てくる。
 「何だよ?」
 「分かった。フられに行くんでしょう!」
 俺の中で空気が固まった。

 コイツは人の門出の日に、何を不吉な事を言いやがる。
 「ふ‥ふざけんな!フられに行くんじゃねぇ、告白に行くんだ!」
 精一杯の怒りを篭めた俺の大声、が、妹は嘲笑でそれを受けてやがる。
 「前の2回のこと、もう忘れたんだ?」
 嘲笑いをしたまま、忘れたい過去をついてきた。

 「最初の人には走って逃げられたんだよね♪」
 あのダッシュは速かったです…。
 「次の人には泣き叫ばれたんだっけ!」
 警察を呼ばれるかと思いました…。
 「懲りないねー?」
 過去の傷口を容赦なく刔り出してくる冷血女、だが、ここでくじける訳にはいかない。

 「世の中には三度目の正直って言葉が…」
 「二度あることは三度あるって言うよ?」
 「石の上にも三年、いつかは俺にだってチャンスが来る!」
 「仏の顔も三度まで、次はどうなるかな?」

 これ以上、コイツと話していてもしょうがない。とにかく、彼女との待ち合わせ場所に向かおう。
 フられたって…泣くものか。


 「もう仏じゃいられないんだよ?」
 飛び出していった兄の後ろ姿に、そんな呟きが漏れた。
 どんなに手を尽くしても他の女に靡く兄…。
 自分が誰の物か、しっかりと分からせないといけないらしい。
 「待っててね、お兄ちゃん。ちゃんと教えに行くから…」
 今日は私にとって、人生の分岐点と言える程、素晴らしい一日になりそうだ。
 逸る気持ちを抑えつつ、私はそっと、兄の後を追った。

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最終更新:2008年01月27日 20:14
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